あの本は読まれているか

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あの本は読まれているかの評価:

3.96/5点 レビュー 24件。 B ランク

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平均点3.96pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全34件 21〜34 2/2ページ
No.14
(5pt)

女性たちのしたたかさ!

"わたしたちはみなタイピストだったけれど、それ以上のことをする者もいた。毎日、仕事を終えてタイプライターにカバーをかけたあとにした仕事については、ひと事も口外しなかった。"2019年発刊の本書は冷戦中のドクトル・ジバコ作戦を下敷に描かれた著者のデビュー作にしてミステリ傑作。

個人的にはミステリに最近はまりつつある事から2020年の国内発売後に評価の軒並み高い本書も手にとってみました。

さて、そんな本書は冷戦下、黎明期の米CIAのタイピスト』たち、実際にタイピストとして雇われつつも運び屋などの諜報活動も行う女性たち、そして一方ではソ連、スターリン粛清下、言論統制や強制収容所行きの危険がある中、文学活動を行うパステルナークの姿を愛人、オリガの視点で【平行線に描きながら進み】CIAがパステルナークの『ドクトル・ジバコ』の海外出版を目論む作戦を立案した事から『タイピストたち』パステルナークたちの【互いの人生が交差、収斂する】するわけですが。

『ドクトル・ジバコ』の原作もハリウッド映画版も残念ながら読んだことも観たこともないのですが、スパイものとしての手に汗握る騙し合いというよりは、米ソの1950年〜1960年における男性社会、女性への性差別が当然に行われる中で強く逞しく、したたかに【生きる女性たちの姿が鮮明に描かれていて】まず印象に残りました。

また、本の力による『世界平和の為の作戦』が実際に行われた事にも驚きつつ、各所に本好きならニヤリとさせられる【文学作品の名前やセリフが頻出する本書】海外文学好き、本好きな人なら堪らないんじゃないだろうか。とも思いました。(しかし『ドクトル・ジバコ』のヒロインと同じ本名、ラーラを持つ著者、出来過ぎな位に運命を感じさせられる)

女性たちが華麗に活躍する作品が好きな人や、スプートニク他、1950年〜1960時代の文化が好きな人にオススメ。
あの本は読まれているか (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているか (創元推理文庫)より
4488270077
No.13
(5pt)

女性たちのしたたかさ!

"わたしたちはみなタイピストだったけれど、それ以上のことをする者もいた。毎日、仕事を終えてタイプライターにカバーをかけたあとにした仕事については、ひと事も口外しなかった。"2019年発刊の本書は冷戦中のドクトル・ジバコ作戦を下敷に描かれた著者のデビュー作にしてミステリ傑作。

個人的にはミステリに最近はまりつつある事から2020年の国内発売後に評価の軒並み高い本書も手にとってみました。

さて、そんな本書は冷戦下、黎明期の米CIAのタイピスト』たち、実際にタイピストとして雇われつつも運び屋などの諜報活動も行う女性たち、そして一方ではソ連、スターリン粛清下、言論統制や強制収容所行きの危険がある中、文学活動を行うパステルナークの姿を愛人、オリガの視点で【平行線に描きながら進み】CIAがパステルナークの『ドクトル・ジバコ』の海外出版を目論む作戦を立案した事から『タイピストたち』パステルナークたちの【互いの人生が交差、収斂する】するわけですが。

『ドクトル・ジバコ』の原作もハリウッド映画版も残念ながら読んだことも観たこともないのですが、スパイものとしての手に汗握る騙し合いというよりは、米ソの1950年〜1960年における男性社会、女性への性差別が当然に行われる中で強く逞しく、したたかに【生きる女性たちの姿が鮮明に描かれていて】まず印象に残りました。

また、本の力による『世界平和の為の作戦』が実際に行われた事にも驚きつつ、各所に本好きならニヤリとさせられる【文学作品の名前やセリフが頻出する本書】海外文学好き、本好きな人なら堪らないんじゃないだろうか。とも思いました。(しかし『ドクトル・ジバコ』のヒロインと同じ本名、ラーラを持つ著者、出来過ぎな位に運命を感じさせられる)

女性たちが華麗に活躍する作品が好きな人や、スプートニク他、1950年〜1960時代の文化が好きな人にオススメ。
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4488011020
No.12
(5pt)

このすばらしき偶然の一致に乾杯を!

朝日新聞の書評欄で見つけて、その日のうちにAmazonに注文。翌日には手にすることができた。いつものように毎晩少しづつ読むつもりでいたが、二日目には止まらなくなり、明け方まで読んでしまった。
 高二の時、友人に誘われて地方の映画館でなんの予備知識もなしに『ドクトル・ジバゴ』を見た。パステルナークの名も、ノーベル文学賞受賞作であることも、映画のロケ地がスペインであることも、いっさい知らなかった。ただ、世界史で習ったロシア革命とは別の、知識人の側から見たロシア革命というものを知ってショックをうけた。
 その後『ドクトル・ジバゴ』は原子林次郎さんの訳で何度も読み、江川卓さんの訳でも読んだ。おおよそのことはわかっている気でいたが、この本は知識の隙間を見事に埋めてくれた。
 巻末に「本書はフィクションであり(……)生死を問わず、実在の人物、出来事、場所に似ているとしても、すべて偶然の一致です」との断り書きがある。このすばらしき偶然の一致に乾杯を!
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4488270077
No.11
(5pt)

このすばらしき偶然の一致に乾杯を!

朝日新聞の書評欄で見つけて、その日のうちにAmazonに注文。翌日には手にすることができた。いつものように毎晩少しづつ読むつもりでいたが、二日目には止まらなくなり、明け方まで読んでしまった。
 高二の時、友人に誘われて地方の映画館でなんの予備知識もなしに『ドクトル・ジバゴ』を見た。パステルナークの名も、ノーベル文学賞受賞作であることも、映画のロケ地がスペインであることも、いっさい知らなかった。ただ、世界史で習ったロシア革命とは別の、知識人の側から見たロシア革命というものを知ってショックをうけた。
 その後『ドクトル・ジバゴ』は原子林次郎さんの訳で何度も読み、江川卓さんの訳でも読んだ。おおよそのことはわかっている気でいたが、この本は知識の隙間を見事に埋めてくれた。
 巻末に「本書はフィクションであり(……)生死を問わず、実在の人物、出来事、場所に似ているとしても、すべて偶然の一致です」との断り書きがある。このすばらしき偶然の一致に乾杯を!
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4488011020
No.10
(5pt)

スタイルが独特

1969年、会社からひと月の休暇を頂き、ヨーロッパ旅行をしました。 ドクトルジバゴの映画がヒットした後で、
ヨーロッパはどこへ行っても「ラーラ」のテーマ曲が流れていました。 私もラーラの曲が入ったオルゴールを
ソレントで求め、今も懐かしく聴いて居ります。 作家の名前が、ドクトルジバゴのファンだったお母様によるものであり、彼女もラーラのテーマをオルゴールで聴いて育ったとの事、親しみを感じます。 小説とは言え、CIA がこの本をプロパガンダに使ったスリルと、パステルナーク、愛人のオリが、かかわった男性たち、タイピストたちの丁寧な描写で性格までが生き生きと伝わる表現力に感銘を受けました。
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4488270077
No.9
(5pt)

スタイルが独特

1969年、会社からひと月の休暇を頂き、ヨーロッパ旅行をしました。 ドクトルジバゴの映画がヒットした後で、
ヨーロッパはどこへ行っても「ラーラ」のテーマ曲が流れていました。 私もラーラの曲が入ったオルゴールを
ソレントで求め、今も懐かしく聴いて居ります。 作家の名前が、ドクトルジバゴのファンだったお母様によるものであり、彼女もラーラのテーマをオルゴールで聴いて育ったとの事、親しみを感じます。 小説とは言え、CIA がこの本をプロパガンダに使ったスリルと、パステルナーク、愛人のオリが、かかわった男性たち、タイピストたちの丁寧な描写で性格までが生き生きと伝わる表現力に感銘を受けました。
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4488011020
No.8
(5pt)

歴史上の事実に基づいて描かれたスリリングでドラマティックで野心満ちた作品

大作映画『ドクトル・ジバゴ』は、まず映画雑誌『スクリーン』の広告で知り、実際には中高生自分にTVの日曜洋画劇場あたりで夢中になって観たことがある。ストーリーまでは如何せんほとんど覚えていないのだが、壮大なロマンだったという印象は強く残る。

 この映画の原作本は、冷戦下のソヴィエトで書かれたが、スターリニズムに批判的な思想書として国内で発禁となっていた。原作が国外に持ち出され、イタリアで出版され、ノーベル文学賞に選考されたが歴史上類を見ぬ作者による辞退に至った経緯は、ウィキペディアなどにもその背景の記述が見られる。

 本書は『ドクトル・ジバゴ』を冷戦下プロパガンダ政策の強力な武器としてスパイ活動に使ったCIAの記録と、当時の綿密な歴史資料を集めて黒字で伏せられた部分を創作として丹念に綴った一大力作であり、作者ラーラとしての力作である。ちなみにラーラは本名であり、両親が映画『ドクトル・ジバゴ』のヒロインの名前を下に命名したというから、本書もまた運命の一作として熱の入った傑作に仕上がっている。

 本書は、『ドクトル・ジバゴ』原作者のボリス・パステルナークと、愛人オリガ(小説のヒロイン≪ラーラ≫のモデルとなった人物)の圧政下でのスリリングな恋愛を軸とした<東>の物語と、鉄のカーテンの内側に『ドクトル・ジバゴ』の本を持ち込んだ女性スパイたちの動きを軸とする<西>の物語として交互に語られてゆく。

 <西>の物語を受け持つのは二人のヒロイン、ロシア生まれのイリーナと天性の女スパイ、サラ・ジョーンズである。二人は当時のハラスメント、息が詰まりそうな性差別に抗いつつ、『ドクトル・ジバゴ』オペレーションに強く関わる運命に身を投じる。独自のヒューマンでタフな一人称文体で語られる彼女らの人生がずしりとした読みごたえを与えてくれる。

 彼女らの所属するCIAタイピスト部屋の個性的な面々と、ここから世界を動かしに出かけてゆくイリーナらとのつかず離れずの関係もリアルに活写され何とも力強い。作家のペンは繊細かつタフで、時と場を移動しつつ、<東>と<西>の国家的非情さを横目に、個として生きる人間ドラマを紡ぎ出してゆく。

 歴史上の事実に基づいて描かれたスリリングでドラマティックで野心満ちた作品である。高額な翻訳権争いが生じたほどの魅力的な題材であり、映画化も予定されているというが、本書そのものが何とも映像的で美しい時代と季節を背景に、感性に満ちて濃密な美しさを纏う。

 『ザリガニの鳴くところ』の後に読んだ『あの本は読まれているか』、どちらも世界的ベストセラー、女流作家によるデビュー作、密度の濃い内容、とドラマ性。充実する作品群は何とも頼もしく有難い季節なのである。
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4488270077
No.7
(5pt)

歴史上の事実に基づいて描かれたスリリングでドラマティックで野心満ちた作品

大作映画『ドクトル・ジバゴ』は、まず映画雑誌『スクリーン』の広告で知り、実際には中高生自分にTVの日曜洋画劇場あたりで夢中になって観たことがある。ストーリーまでは如何せんほとんど覚えていないのだが、壮大なロマンだったという印象は強く残る。

 この映画の原作本は、冷戦下のソヴィエトで書かれたが、スターリニズムに批判的な思想書として国内で発禁となっていた。原作が国外に持ち出され、イタリアで出版され、ノーベル文学賞に選考されたが歴史上類を見ぬ作者による辞退に至った経緯は、ウィキペディアなどにもその背景の記述が見られる。

 本書は『ドクトル・ジバゴ』を冷戦下プロパガンダ政策の強力な武器としてスパイ活動に使ったCIAの記録と、当時の綿密な歴史資料を集めて黒字で伏せられた部分を創作として丹念に綴った一大力作であり、作者ラーラとしての力作である。ちなみにラーラは本名であり、両親が映画『ドクトル・ジバゴ』のヒロインの名前を下に命名したというから、本書もまた運命の一作として熱の入った傑作に仕上がっている。

 本書は、『ドクトル・ジバゴ』原作者のボリス・パステルナークと、愛人オリガ(小説のヒロイン≪ラーラ≫のモデルとなった人物)の圧政下でのスリリングな恋愛を軸とした<東>の物語と、鉄のカーテンの内側に『ドクトル・ジバゴ』の本を持ち込んだ女性スパイたちの動きを軸とする<西>の物語として交互に語られてゆく。

 <西>の物語を受け持つのは二人のヒロイン、ロシア生まれのイリーナと天性の女スパイ、サラ・ジョーンズである。二人は当時のハラスメント、息が詰まりそうな性差別に抗いつつ、『ドクトル・ジバゴ』オペレーションに強く関わる運命に身を投じる。独自のヒューマンでタフな一人称文体で語られる彼女らの人生がずしりとした読みごたえを与えてくれる。

 彼女らの所属するCIAタイピスト部屋の個性的な面々と、ここから世界を動かしに出かけてゆくイリーナらとのつかず離れずの関係もリアルに活写され何とも力強い。作家のペンは繊細かつタフで、時と場を移動しつつ、<東>と<西>の国家的非情さを横目に、個として生きる人間ドラマを紡ぎ出してゆく。

 歴史上の事実に基づいて描かれたスリリングでドラマティックで野心満ちた作品である。高額な翻訳権争いが生じたほどの魅力的な題材であり、映画化も予定されているというが、本書そのものが何とも映像的で美しい時代と季節を背景に、感性に満ちて濃密な美しさを纏う。

 『ザリガニの鳴くところ』の後に読んだ『あの本は読まれているか』、どちらも世界的ベストセラー、女流作家によるデビュー作、密度の濃い内容、とドラマ性。充実する作品群は何とも頼もしく有難い季節なのである。
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.6
(5pt)

世を忍ぶ恋

ボリス・パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』は1989年の文庫出版(江川卓の名訳)以来のわたしの愛読書である。当時、作家の丸谷才一がこの小説を褒めちぎっているのを読んで、早速書店で文庫化されたばかりの本を買い求めたのだった。前に見ていたデヴィッド・リーンの映画にはさして心が動かなかったが、小説は滅多にない、スケールが大きく、きめ細やかなラブロマンスの傑作だった。『あの本は読まれているか』はこの『ドクトル・ジバゴ』という小説をめぐる人々の人生を描いた小説である。CIAの作戦にスパイたちが暗躍する部分はそれなりに面白く読ませる。パステルナークと愛人オリガの生活にも興味をひかれる。それらは作者が膨大な資料を読み込んだ上で書いていったものだろう。しかし、わたしが常にもっとも心を動かされるのは、よく書かれたフィクションを読んだときなのである。この小説でいえば、イリーナとサリーという女スパイ同士の世を忍ぶ恋を描いた部分だ。『ドクトル・ジバゴ』のジバゴとラーラの恋は結局成就することはなかった。ジバゴの遺体を前にして、抑えに抑えた慟哭にふるえたラーラが、滂沱の涙を流し、死者に連綿と語り続ける終幕を到底忘れることはできない。では、イリ-ナとサリーの恋はどうなるのか。それだけを念頭に読み進み、最後の一ページで明かされる真相に心震えた。二人の恋の細かい顛末はこの小説で描かれることはなく、世間に埋もれたまま終わるというラストにいつまでも余韻が残る。
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4488270077
No.5
(5pt)

世を忍ぶ恋

ボリス・パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』は1989年の文庫出版(江川卓の名訳)以来のわたしの愛読書である。当時、作家の丸谷才一がこの小説を褒めちぎっているのを読んで、早速書店で文庫化されたばかりの本を買い求めたのだった。前に見ていたデヴィッド・リーンの映画にはさして心が動かなかったが、小説は滅多にない、スケールが大きく、きめ細やかなラブロマンスの傑作だった。『あの本は読まれているか』はこの『ドクトル・ジバゴ』という小説をめぐる人々の人生を描いた小説である。CIAの作戦にスパイたちが暗躍する部分はそれなりに面白く読ませる。パステルナークと愛人オリガの生活にも興味をひかれる。それらは作者が膨大な資料を読み込んだ上で書いていったものだろう。しかし、わたしが常にもっとも心を動かされるのは、よく書かれたフィクションを読んだときなのである。この小説でいえば、イリーナとサリーという女スパイ同士の世を忍ぶ恋を描いた部分だ。『ドクトル・ジバゴ』のジバゴとラーラの恋は結局成就することはなかった。ジバゴの遺体を前にして、抑えに抑えた慟哭にふるえたラーラが、滂沱の涙を流し、死者に連綿と語り続ける終幕を到底忘れることはできない。では、イリ-ナとサリーの恋はどうなるのか。それだけを念頭に読み進み、最後の一ページで明かされる真相に心震えた。二人の恋の細かい顛末はこの小説で描かれることはなく、世間に埋もれたまま終わるというラストにいつまでも余韻が残る。
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.4
(4pt)

ラーラ・プレスコットが最近まれな面白い本を出してくれた

COVID-19で外出も控えて生活しているときに購入した、B・パステルナークの「ドクトル・ジバゴ」をCIAがソ連に持ち込んでソ連への武器として戦おうとする、フィクションである。「あの本は読まれているか」の題名はいまいちの感があるが。
CIAの極秘文書をタイプする女性タイピストたちが登場する自由なアメリカCIA場面を西として、パステルナークとオリガ・イヴィンスカヤの動きを中心とするソ連の場面を東とする章分けでストーリを展開する方式と、ほぼ一人称形式で文章を書いて読者をフィクションの当事者の目から入り込んで行く方式を取っている。
 記述方式は軽く見えるが、パステルナークの悲劇と「ドクトル・ジバゴ」の悲劇(不倫恋愛物語と思われているが、戦争と革命の中で歴史に翻弄されるユーリとラーラ、トーニャの物語である)が上手くラップされて、深い内容を数多く盛り込んでいるのが分かる。「ドクトル・ジバゴ」を読んでいる人や映画「ドクトル・ジバゴ」を観ている人は、更に深く理解され、考えさせながら読ませる。
フィクションであるがゆえに、パステルナーク、オリガ、ジナイダなど、いきいきとした考えと動きがまるで映画をみているような印象。これは映画化を意図した書籍であると思える。。
パステルナーク最後の作品で未完の戯曲「盲目の美女」の記述が興味がわいた。

ここ最近読んだ中で一番面白く読めた、東京創元社最新作である。
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4488270077
No.3
(4pt)

ラーラ・プレスコットが最近まれな面白い本を出してくれた

COVID-19で外出も控えて生活しているときに購入した、B・パステルナークの「ドクトル・ジバゴ」をCIAがソ連に持ち込んでソ連への武器として戦おうとする、フィクションである。「あの本は読まれているか」の題名はいまいちの感があるが。
CIAの極秘文書をタイプする女性タイピストたちが登場する自由なアメリカCIA場面を西として、パステルナークとオリガ・イヴィンスカヤの動きを中心とするソ連の場面を東とする章分けでストーリを展開する方式と、ほぼ一人称形式で文章を書いて読者をフィクションの当事者の目から入り込んで行く方式を取っている。
 記述方式は軽く見えるが、パステルナークの悲劇と「ドクトル・ジバゴ」の悲劇(不倫恋愛物語と思われているが、戦争と革命の中で歴史に翻弄されるユーリとラーラ、トーニャの物語である)が上手くラップされて、深い内容を数多く盛り込んでいるのが分かる。「ドクトル・ジバゴ」を読んでいる人や映画「ドクトル・ジバゴ」を観ている人は、更に深く理解され、考えさせながら読ませる。
フィクションであるがゆえに、パステルナーク、オリガ、ジナイダなど、いきいきとした考えと動きがまるで映画をみているような印象。これは映画化を意図した書籍であると思える。。
パステルナーク最後の作品で未完の戯曲「盲目の美女」の記述が興味がわいた。

ここ最近読んだ中で一番面白く読めた、東京創元社最新作である。
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.2
(5pt)

今でもラーラのテーマが鳴り続けている

予備知識なく「あの本は読まれているか "The Secrets We Kept"」(ラーラ・プレスコット 東京創元社)を読みました。途中から、モーリス・ジャールによる「ラーラのテーマ」が鳴り続けます。
 CIA黎明期のタイピストたちを描くウキウキするプロローグから、くるりと1950年代のソヴィエトへと世界が暗転します。
 物語は、あの「ドクトル・ジバゴ」の作者ボリス・パステルナークの半生が、主にその愛人・オリガの視点から語られていきます。スターリンによる粛清、強制収容所、言論統制。一方、この物語のとてもユニークなところでもありますが、冷戦の頃、亡命ロシア人の母を持ち、CIAにタイピストとして雇われながら、密かにもうひとつの「仕事」を得るようになるイリーナが動き出し、もう一人の諜報員・サリーとそのタイピストの「仲間たち」の側のストーリーが、東と西、交互に語られていきます。1950~60年代のアメリカ、ワシントンD.C.。男社会。その当時の、もしかすると一番綺麗だった頃のアメリカの風俗。女性ファッション。多くの出来事。スプートニク。IVYリーグの男たちはどこへ行った(笑)
 そして、その二つのストーリーが、後に「ノーベル文学賞」をもたらす「ドクトル・ジバゴ」を西側に紹介するというCIA側の「ドクトル・ジバゴ」作戦へと収斂していきます。詳細は、お読みいただければと思います。
 歴史的事実に裏打ちされていますが、虚実皮膜、読者はその歴史を確かめつつ、時にその当時の女性たちの迸るような「存在感」にため息をつきながら読み進めることができると思います。また、作者の尽きない想像力は、東側のボリスとその妻・ジナイダ、愛人・オリガのトライアングルに注がれていて、その関係が「ドクトル・ジバゴ」のユーリーとトーニャ、ラーラのトライアングルを呼び覚まし、尚且つ、ここでは「秘密」にすべきCIA側の諜報員たちの関係へとオーヴァーラップしていくところにあり、作者はそのとてもスリリングな構造を繊細に、伝わるように描き切っていますね。そういう意味では、作者を含む、3人のラーラによって花開いた「女性たちのエスピオナージュ」、"HUMINT"の物語が、氷雪に閉ざされた別荘(ダーチャ)へ向かう映画「ドクトル・ジバゴ」の過酷で、哀切で、強い愛の道行へと導かれていくことになります。

 数年前、ある女性と映画「ドクトル・ジバゴ」をDVDで鑑賞しました。私がラーラ(ジュリー・クリスティ)がひときわ綺麗だったと言ったところ、一緒に見ていた人は、あっさりと「私は、ラーラよりもトーニャ(ジェラルディン・チャップリン)が良かった」と言っていました。私たちに夢々"The Secrets We Kept"は、ない(笑)
あの本は読まれているか (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているか (創元推理文庫)より
4488270077
No.1
(5pt)

今でもラーラのテーマが鳴り続けている

予備知識なく「あの本は読まれているか "The Secrets We Kept"」(ラーラ・プレスコット 東京創元社)を読みました。途中から、モーリス・ジャールによる「ラーラのテーマ」が鳴り続けます。
 CIA黎明期のタイピストたちを描くウキウキするプロローグから、くるりと1950年代のソヴィエトへと世界が暗転します。
 物語は、あの「ドクトル・ジバゴ」の作者ボリス・パステルナークの半生が、主にその愛人・オリガの視点から語られていきます。スターリンによる粛清、強制収容所、言論統制。一方、この物語のとてもユニークなところでもありますが、冷戦の頃、亡命ロシア人の母を持ち、CIAにタイピストとして雇われながら、密かにもうひとつの「仕事」を得るようになるイリーナが動き出し、もう一人の諜報員・サリーとそのタイピストの「仲間たち」の側のストーリーが、東と西、交互に語られていきます。1950~60年代のアメリカ、ワシントンD.C.。男社会。その当時の、もしかすると一番綺麗だった頃のアメリカの風俗。女性ファッション。多くの出来事。スプートニク。IVYリーグの男たちはどこへ行った(笑)
 そして、その二つのストーリーが、後に「ノーベル文学賞」をもたらす「ドクトル・ジバゴ」を西側に紹介するというCIA側の「ドクトル・ジバゴ」作戦へと収斂していきます。詳細は、お読みいただければと思います。
 歴史的事実に裏打ちされていますが、虚実皮膜、読者はその歴史を確かめつつ、時にその当時の女性たちの迸るような「存在感」にため息をつきながら読み進めることができると思います。また、作者の尽きない想像力は、東側のボリスとその妻・ジナイダ、愛人・オリガのトライアングルに注がれていて、その関係が「ドクトル・ジバゴ」のユーリーとトーニャ、ラーラのトライアングルを呼び覚まし、尚且つ、ここでは「秘密」にすべきCIA側の諜報員たちの関係へとオーヴァーラップしていくところにあり、作者はそのとてもスリリングな構造を繊細に、伝わるように描き切っていますね。そういう意味では、作者を含む、3人のラーラによって花開いた「女性たちのエスピオナージュ」、"HUMINT"の物語が、氷雪に閉ざされた別荘(ダーチャ)へ向かう映画「ドクトル・ジバゴ」の過酷で、哀切で、強い愛の道行へと導かれていくことになります。

 数年前、ある女性と映画「ドクトル・ジバゴ」をDVDで鑑賞しました。私がラーラ(ジュリー・クリスティ)がひときわ綺麗だったと言ったところ、一緒に見ていた人は、あっさりと「私は、ラーラよりもトーニャ(ジェラルディン・チャップリン)が良かった」と言っていました。私たちに夢々"The Secrets We Kept"は、ない(笑)
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4488011020