あの本は読まれているか

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あの本は読まれているかの評価:

3.96/5点 レビュー 24件。 B ランク

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平均点3.96pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全34件 1〜20 1/2ページ
No.34
(4pt)

映画「ドクトル・ジバコ」は見ていないけど

映画「ドクドル・ジバコ」は聞いたことはあるけど見ていません。本は図書館で借りて読みました。
ソ連国民に「ドクドル・ジバコ」が渡ってから、どのように影響が広がったのか興味があって手に取りましたが、
その内容は殆どなく、3人の女性のストーリーが「西・東」に分かれて交互に語られて、その合間に狂言回しで西側のタイピストの語りが出てきます。途中から章の小見出しに二重線が引かれているに気がつき、一度読み終わってから、もう一度、二重線がついた小見出しのみを追って読み返して、やっと全体が掴めました。
東側のオリガのような女性の生き方は現代で考えると、「そんな男とは別れたほうがいい」と言われそうですが、
困難を抱えながらも付き合っていく生き方はどんなもんだろと考えました。
あの本は読まれているか (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているか (創元推理文庫)より
4488270077
No.33
(4pt)

映画「ドクトル・ジバコ」は見ていないけど

映画「ドクドル・ジバコ」は聞いたことはあるけど見ていません。本は図書館で借りて読みました。
ソ連国民に「ドクドル・ジバコ」が渡ってから、どのように影響が広がったのか興味があって手に取りましたが、
その内容は殆どなく、3人の女性のストーリーが「西・東」に分かれて交互に語られて、その合間に狂言回しで西側のタイピストの語りが出てきます。途中から章の小見出しに二重線が引かれているに気がつき、一度読み終わってから、もう一度、二重線がついた小見出しのみを追って読み返して、やっと全体が掴めました。
東側のオリガのような女性の生き方は現代で考えると、「そんな男とは別れたほうがいい」と言われそうですが、
困難を抱えながらも付き合っていく生き方はどんなもんだろと考えました。
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.32
(4pt)

ドクトルジバゴからあの本へ

10代40代そして70代でジバゴを見て感動したところに、タイミングよく「あの本はよまれているか」を紹介され、手に取る。スリリングな展開と流れるような運びに、満足しました。
あの本は読まれているか (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているか (創元推理文庫)より
4488270077
No.31
(4pt)

ドクトルジバゴからあの本へ

10代40代そして70代でジバゴを見て感動したところに、タイミングよく「あの本はよまれているか」を紹介され、手に取る。スリリングな展開と流れるような運びに、満足しました。
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.30
(5pt)

小説『ドクトル・ジバゴ』を武器に、ソ連の政治体制を揺さぶろうという作戦

『あの本は読まれているか』(ラーラ・プレスコット著、吉澤康子訳、創元推理文庫)は、スパイ小説、政治小説であり、恋愛小説、不倫小説、同性愛小説でもあります。それも、一級品の。

1950年代後半の冷戦時代、米国のCIA(中央情報局)にタイピストとして雇われた若き女性イリーナは、ある特殊作戦のメンバーに抜擢されます。その作戦とは、反ソ的だとしてソ連で出版禁止となっている小説をソ連国民の手に届け、ソ連政府がどれほど酷い言論統制や検閲を行っているかを知らせ、自国の政治体制に対する批判の芽を植え付けようというものです。その特殊作戦の武器とされたのは、ソ連の有名な作家であるボリス・パステルナークが渾身の力を込めて書き上げた小説『ドクトル・ジバゴ』でした。

その後、ノーベル賞を受賞するこの作品では、ロシア革命の混乱に翻弄されつつ生きるジバゴと、恋人ラーラの愛が描かれています。「ドクトル・ジバゴ作戦」はCIAが実際に行った謀略行動だが、文学の力を利用しようという戦略に基づいていました。

本書が一級品である理由は、3つあります。

第1は、歴史的事実と著者の想像力が見事に融合して、臨場感豊かな小説に仕上がっていること。

第2は、文学が大きな影響力を持つことを再認識させてくれたこと。

第3は、当然のことながら、有名な作家パステルナークにも、その愛人オリガにも、スパイの女性イリーナにも、その仲間たちにも、それぞれの人生があり、それは一筋縄ではいかないものだと思い知らされたこと。

最終章には、オリガの言葉がこう綴られています。「彼が初めてわたしの手を取ろうとしたときのことを思い浮かべた。我ながら、体があれほど震えるとは思ってもいなかった。初めのころ、『ドクトル・ジバゴ』を読んで聞かせてくれて、わたしの反応を見ようと段落が終わるたびにひと呼吸おいていた彼の姿を思い浮かべた。モスクワの大通りをふたりで歩いた午後、彼がわたしのほうを見るたびに世界が広がるような気がしたことを思い出した。彼と愛し合ったたくさんの午後や、彼がわたしのベッドから出たくないと言ったたくさんの夜を思い出した。行かないでと懇願するわたしを置いてベッドを出る彼の姿も思い浮かべた。(パステルナークの愛人ということで)ポチマ(の矯正収容所)で3年間すごしたあとで駅へ入っていったとき、彼がそこに来ていないのを知って、くるりと向きを変えて来た道を引き返したくなったことを思い出した。彼から幾度となく別れようと告げられ、幾度となくひどい言葉を返したことを思い出した。全盛期の彼の肥大したエゴや、『ドクトル・ジバゴ』を書いたあとの弱々しくなってしまった彼のことを考えた」。

「(彼の)棺が土のなかへ下ろされるのに合わせて、『パステルナークに栄光を!』というシュプレヒコールが人々から起こり、全体に広がった。わたしはずっと前に朗読している彼を初めて見たときのことを思い出していた。彼よりも先に、ファンたちが詩の最後の言葉を口にせずにはいられなかったことを。バルコニーに座ったわたしが、まばゆい光を浴びた自分を彼に見てもらいたいとどれほど願っていたかを。そして実際、彼がわたしを見て、そのためにわたしの世界がどれほど変わったかを」。

この作品に出会えた幸せを噛み締めています。
あの本は読まれているか (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているか (創元推理文庫)より
4488270077
No.29
(5pt)

小説『ドクトル・ジバゴ』を武器に、ソ連の政治体制を揺さぶろうという作戦

『あの本は読まれているか』(ラーラ・プレスコット著、吉澤康子訳、創元推理文庫)は、スパイ小説、政治小説であり、恋愛小説、不倫小説、同性愛小説でもあります。それも、一級品の。

1950年代後半の冷戦時代、米国のCIA(中央情報局)にタイピストとして雇われた若き女性イリーナは、ある特殊作戦のメンバーに抜擢されます。その作戦とは、反ソ的だとしてソ連で出版禁止となっている小説をソ連国民の手に届け、ソ連政府がどれほど酷い言論統制や検閲を行っているかを知らせ、自国の政治体制に対する批判の芽を植え付けようというものです。その特殊作戦の武器とされたのは、ソ連の有名な作家であるボリス・パステルナークが渾身の力を込めて書き上げた小説『ドクトル・ジバゴ』でした。

その後、ノーベル賞を受賞するこの作品では、ロシア革命の混乱に翻弄されつつ生きるジバゴと、恋人ラーラの愛が描かれています。「ドクトル・ジバゴ作戦」はCIAが実際に行った謀略行動だが、文学の力を利用しようという戦略に基づいていました。

本書が一級品である理由は、3つあります。

第1は、歴史的事実と著者の想像力が見事に融合して、臨場感豊かな小説に仕上がっていること。

第2は、文学が大きな影響力を持つことを再認識させてくれたこと。

第3は、当然のことながら、有名な作家パステルナークにも、その愛人オリガにも、スパイの女性イリーナにも、その仲間たちにも、それぞれの人生があり、それは一筋縄ではいかないものだと思い知らされたこと。

最終章には、オリガの言葉がこう綴られています。「彼が初めてわたしの手を取ろうとしたときのことを思い浮かべた。我ながら、体があれほど震えるとは思ってもいなかった。初めのころ、『ドクトル・ジバゴ』を読んで聞かせてくれて、わたしの反応を見ようと段落が終わるたびにひと呼吸おいていた彼の姿を思い浮かべた。モスクワの大通りをふたりで歩いた午後、彼がわたしのほうを見るたびに世界が広がるような気がしたことを思い出した。彼と愛し合ったたくさんの午後や、彼がわたしのベッドから出たくないと言ったたくさんの夜を思い出した。行かないでと懇願するわたしを置いてベッドを出る彼の姿も思い浮かべた。(パステルナークの愛人ということで)ポチマ(の矯正収容所)で3年間すごしたあとで駅へ入っていったとき、彼がそこに来ていないのを知って、くるりと向きを変えて来た道を引き返したくなったことを思い出した。彼から幾度となく別れようと告げられ、幾度となくひどい言葉を返したことを思い出した。全盛期の彼の肥大したエゴや、『ドクトル・ジバゴ』を書いたあとの弱々しくなってしまった彼のことを考えた」。

「(彼の)棺が土のなかへ下ろされるのに合わせて、『パステルナークに栄光を!』というシュプレヒコールが人々から起こり、全体に広がった。わたしはずっと前に朗読している彼を初めて見たときのことを思い出していた。彼よりも先に、ファンたちが詩の最後の言葉を口にせずにはいられなかったことを。バルコニーに座ったわたしが、まばゆい光を浴びた自分を彼に見てもらいたいとどれほど願っていたかを。そして実際、彼がわたしを見て、そのためにわたしの世界がどれほど変わったかを」。

この作品に出会えた幸せを噛み締めています。
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.28
(5pt)

単純なスパイものではなかった

恋や夢、家族など割とテーマがてんこ盛り
禁断の本を出版するというスリルも良かった
あの本は読まれているか (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているか (創元推理文庫)より
4488270077
No.27
(5pt)

単純なスパイものではなかった

恋や夢、家族など割とテーマがてんこ盛り
禁断の本を出版するというスリルも良かった
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.26
(5pt)

良品でした

本日届きました。説明通りの良品でした。フィルムのカバーもついており安心して読めます。読後は図書館に寄附しようと思います。
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4488270077
No.25
(5pt)

良品でした

本日届きました。説明通りの良品でした。フィルムのカバーもついており安心して読めます。読後は図書館に寄附しようと思います。
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4488011020
No.24
(5pt)

「文学の力で人生の意義や世界を変えられる」事と逞しい女性賛歌とをエスピオナージュ風のエンターテインメントとして力強く謳った傑作

舞台は冷戦下。ロシア系移民でCIAのタイピストのイリーナ(スパイにさせられる)をヒロインとして、「文学の力で人生の意義や世界を変えられる」事と逞しい女性賛歌とをエスピオナージュ風のエンターテインメントとして力強く謳った傑作。焦点の書籍は「ドクトル・ジバゴ」(のヒロインの名前が作者の本名ラーラと同一)。また、本作には巧妙なフェミニズム小説の趣きもあり、逞しい女性賛歌の源泉となっている。なお、本作の章構成は「東→西→東→西...」となっているが、必ずしも時系列順ではない。

旧ソ連側の中心人物は高名な詩人・作家のボリスとその愛人(不倫の上に妊娠してしまう)のオルガ(もう1人のヒロインと言って良く、ラーラのモデルだろう)。ボリスが検閲・発禁となるであろう「ドクトル・ジバゴ」の執筆を進めていたため、オルガはその証人として収容所(その劣悪な環境も描き込まれている)行きとなってしまうが、ボリスの意向に関して決して口を割らない反骨心とボリスへの愛情。一方、CIA(前身のOSSの職員含む)の様々な女性達の矜持・享楽・同性愛・連帯感・嫉妬・上昇志向・受けるハラスメント、イリーナの経歴、そして、イリーナが如何にスパイ向きであるかの説明さえも、男性への揶揄を織り込みながら硬軟交えて自在に描き分ける作者の筆力には感心すると共に哄笑した。一転、出所したオルガが挫折しかけた高齢のボリスを励まして執筆続行を決意させる辺りの描写は情に厚く木目細かくて、これまた感心した(ボリスを看取る際の哀切感も印象に残る)。結局、"スパイとしての"イリーナの役割は「ドクトル・ジバゴ」の"運び屋"なのだが次第に自身の才能を開花させ、ラスト四行の仄めかしに繋げる構想が洒脱かつ秀逸。

レズを含む幾つかの恋愛模様、実在の人物・実際のエピソード、ラーラの三重奏、フェミニズム風味、諧謔味、二重スパイ等の夥しいガジェットを作中に縦横に散りばめながら、冷戦当時の米ソの状況を色濃く映した上で、テーマへと堅実に着地させる作者の手腕が際立つ傑作だと思った。
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4488011020
No.23
(5pt)

「文学の力で人生の意義や世界を変えられる」事と逞しい女性賛歌とをエスピオナージュ風のエンターテインメントとして力強く謳った傑作

舞台は冷戦下。ロシア系移民でCIAのタイピストのイリーナ(スパイにさせられる)をヒロインとして、「文学の力で人生の意義や世界を変えられる」事と逞しい女性賛歌とをエスピオナージュ風のエンターテインメントとして力強く謳った傑作。焦点の書籍は「ドクトル・ジバゴ」(のヒロインの名前が作者の本名ラーラと同一)。また、本作には巧妙なフェミニズム小説の趣きもあり、逞しい女性賛歌の源泉となっている。なお、本作の章構成は「東→西→東→西...」となっているが、必ずしも時系列順ではない。

旧ソ連側の中心人物は高名な詩人・作家のボリスとその愛人(不倫の上に妊娠してしまう)のオルガ(もう1人のヒロインと言って良く、ラーラのモデルだろう)。ボリスが検閲・発禁となるであろう「ドクトル・ジバゴ」の執筆を進めていたため、オルガはその証人として収容所(その過酷な環境も描き込まれている)行きとなってしまうが、ボリスの意向に関して決して口を割らない反骨心とボリスへの愛情。一方、CIA(前身のOSSの職員含む)の様々な女性達の矜持・享楽・同性愛・連帯感・嫉妬・上昇志向・受けるハラスメント、イリーナの経歴、そして、イリーナが如何にスパイ向きであるかの説明さえも、男性への揶揄を織り込みながら硬軟交えて自在に描き分ける作者の筆力には感心すると共に哄笑した。一転、出所したオルガが挫折しかけた高齢のボリスを励まして執筆続行を決意させる辺りの描写は情に厚く木目細かくて、これまた感心した(ボリスを看取る際の哀切感も印象に残る)。結局、"スパイとしての"イリーナの役割は「ドクトル・ジバゴ」の"運び屋"なのだが、CIAを退職後、次第に自身の才能を開花させ、ラスト四行の仄めかしに繋げる構想が夢とロマンに溢れている。

レズを含む幾つかの恋愛模様、実在の人物・実際のエピソード、ラーラの三重奏、フェミニズム風味、諧謔味、二重スパイ等の夥しいガジェットを作中に縦横に散りばめながら、冷戦当時の米ソの状況を色濃く映した上で、テーマへと堅実に着地させる作者の手腕が際立つ傑作だと思った。
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4488270077
No.22
(5pt)

本で歴史を動かす。

映画『ドクトル・ジバゴ』ファンの女性が娘にラーラと名を付けたのが著者。2014年にCIA『ドクトル・ジバゴ』作戦の公文書が公開され、それを読んだ著者が小説学校に3年間通ってまでして、その黒塗りの部分をフィクションで補ったのが本書です。

 CIAが、「文学で社会を変える」という長期戦略を採っていたこと、『ドクトル・ジバゴ』の原稿がイタリアの出版社から世界に広まり、その内容から「ソ連の人々に読ませよう」とCIAが作戦実行したこと、初めて知りました。そして、『ドクトル・ジバゴ』著者のボリス・パステルナークには、ラーラのモデルになった愛人: オルガ・イヴィンスカヤがいて、彼女がこの本の執筆・出版によって強制収容所に入れられたことも。

 『ドクトル・ジバゴ』は、十月革命やボリシェヴィキが出てはきても、大筋は「叶わぬ憧れ」が主題だと思うのですが、ソ連は禁書に。その原稿・配布にまつわるスパイ術にも触れられる本書、独・露小説で見たことのある登場人物による独白型の文体で、読み出すと惹き込まれます。「本で歴史を動かす」というのは、非暴力の正統な活動なのではないでしょうか?
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4488270077
No.21
(5pt)

本で歴史を動かす。

映画『ドクトル・ジバゴ』ファンの女性が娘にラーラと名を付けたのが著者。2014年にCIA『ドクトル・ジバゴ』作戦の公文書が公開され、それを読んだ著者が小説学校に3年間通ってまでして、その黒塗りの部分をフィクションで補ったのが本書です。

 CIAが、「文学で社会を変える」という長期戦略を採っていたこと、『ドクトル・ジバゴ』の原稿がイタリアの出版社から世界に広まり、その内容から「ソ連の人々に読ませよう」とCIAが作戦実行したこと、初めて知りました。そして、『ドクトル・ジバゴ』著者のボリス・パステルナークには、ラーラのモデルになった愛人: オルガ・イヴィンスカヤがいて、彼女がこの本の執筆・出版によって強制収容所に入れられたことも。

 『ドクトル・ジバゴ』は、十月革命やボリシェヴィキが出てはきても、大筋は「叶わぬ憧れ」が主題だと思うのですが、ソ連は禁書に。その原稿・配布にまつわるスパイ術にも触れられる本書、独・露小説で見たことのある登場人物による独白型の文体で、読み出すと惹き込まれます。「本で歴史を動かす」というのは、非暴力の正統な活動なのではないでしょうか?
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.20
(4pt)

(2020年―第107冊)スパイ小説というよりは女性の愛の物語として楽しんだ

1950年代、冷戦下のソ連で一冊の小説が書かれた。『ドクトル・ジバゴ』。スターリニズム圧政下の悲恋を描いたこの小説は国内で出版が禁じられたため、原稿はひそかにイタリアに持ち出され、異国で翻訳出版された。アメリカのCIAは共産主義国家の非情を訴えるためにこの小説をロシア語原文のまま本にしてソ連に持ち込む秘密作戦を開始する……。
--------------------------
 21世紀になってその一部が明らかになったCIAの秘密工作を基に、アメリカ人作家ラーラ・プレスコットが想像を膨らませて書いたデビュー作です。
 このフィクションの中で『ドクトル・ジバゴ』の物語そのものについての詳細が記されることはありません。そのため、共産主義者たちがこの発禁小説のどこにどのような害毒をもつと恐れたのかが、『ドクトル・ジバゴ』に触れたことのない読者には伝わらない恨みがあります。その点がこの小説の弱点になっていると思います。
 またCIA秘密工作に想を得たフィクションといいつつも、スパイ小説ばりのサスペンスはあまりありません。冷戦期を舞台にした米ソ諜報合戦を期待した向きには、手に汗握るような展開がない点は肩透かしと思うことでしょう。

 その一方で、見るべき点はいくつもありました。
『ドクトル・ジバゴ』の作者パステルナークの実在した愛人オリガの過酷な運命は読ませます。反体制作家の愛人であったがゆえに、彼女は自由を奪われていきます。それでもパステルナークに身を寄せ続けた彼女の悲恋が胸に迫ります。
 またCIA工作員として登場する二人の女性の、当時は許されなかった恋路が魅力的です。ソ連側の二人を時代と政治が許さなかったのと同じように、アメリカ側の二人もまた時代と政治に許されない存在でした。この対比が、1950年代の時代の空気を鋭く描いているように思います。

 邦題『あの本は読まれているか』はあまり好みません。『 パリは燃えているか 』を意識したのでしょうか。ですが、原題の『The Secrets We Kept』の《秘密》が小説『ドクトル・ジバゴ』だけではなく、それを書いた作家と愛人の道ならぬ恋、CIA工作員ふたりの許されない恋など、様々なものを包括しているように思えて、そのほうがこのフィクションの性格を言い当てていると感じます。ただし『私たちの秘密』では邦題として魅力に欠けるのもわかりますが。

 翻訳者・吉澤康子氏の見事な訳業にも触れておきたいと思います。
 私は以前、エリザベス・ウェイン『 コードネーム・ヴェリティ 』で吉澤氏の訳文に接したことがあります。この小説がYAものだったために私の好みには合いませんでしたが、氏の訳文に助けられて最後まで読むことができました。
 今回の『あの本は読まれているか』の訳文は実に読みやすく、バタ臭い翻訳調の和文は一切ありません。こんな日本語文が書けたらいいなと羨ましくなります。
 吉澤氏の名前を次回見つけたら、ぜひまたその訳文を味わってみたいものです。 

 最後に、この小説の言葉で印象深く感じたものを引き写しておきます。
「そもそも、男女を問わずだれもが秘かに大いなる悲劇を待ち望んでるのさ。それは生という経験を研ぎ澄まし、より深みのある人間にしてくれる。そうは思わないか?」(260-261頁)

--------------------------
*300頁:イリーナが母を連れてある場所に行き、待合室で「椅子に座り、<タイムズ>をめくって一時間をすごした」とあります。ワシントンDCの<タイムズ>といえば統一教会が発刊する保守系の『ワシントン・タイムズ』紙がありますが、あれは1980年代のレーガン政権時代に創刊されたはず。イリーナが1950年代に待合室で『ワシントン・タイムズ』紙を手にするというのは奇妙です。
 英語の原文を確認したところ「... sat back down, and flipped through Time magazines for an hour.」となっていました。つまり「新聞の<タイムズ>」ではなく、「雑誌<タイム>を何冊か」です。
--------------------------
 この小説から連想した以下の書を紹介しておきます。

◆モリー・グプティル・マニング『 戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊) 』(東京創元社)
:第二次世界大戦中、ナチス・ドイツは膨大な数の非ドイツ的書籍を焼却処分しました。その焚書行為に対抗するかのようにアメリカは国を挙げて、海外派兵した自国の兵士たちに大量のペーパーバック本を送ります。これは「兵隊文庫」と称された書物送付計画の誕生から終結までを追ったノンフィクションです。書物が持つ力を強く信じた人々の第二次世界大戦史ともいえる書です。

◆ジョージ・オーウェル『 一九八四年 』(ハヤカワepi文庫)
:このSF小説の主人公ウィンストン・スミスは、全体主義国家オセアニアの独裁政治に抵抗する活動家エマニュエル・ゴールドスタインが書いたとされる禁書を手に入れます。これもまた、全体主義とそれに対する禁書の話です。

◆フィリップ・K・ディック『 高い城の男 』(ハヤカワ文庫 SF)
:ナチス・ドイツと大日本帝国が第二次世界大戦の戦勝国となった時代、両国によって分割統治されたアメリカ合衆国で、『イナゴ身重く横たわる』という小説が巷に流布するようになります。その小説は世界大戦でアメリカが勝利していたらと仮定していたために発禁本とされています。

◆高木 徹『 大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか 』(文藝春秋)
:アフガニスタンのバーミアンにあった大仏二体が破壊されるまでの経緯を、アフガン国内の政治闘争や諸外国の外交努力などを丹念に取材してまとめた一冊。タリバン政権内部にも穏健派がおり、アメリカはそうした穏健派要人を自国に招待して文化財保護の実際を見聞させる戦略を取っていた時期があるという箇所を興味深く読みました。このようにアメリカの外交戦略は文化面で相手の心を巧みにつかみとろうとする側面があったのです。

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あの本は読まれているか (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているか (創元推理文庫)より
4488270077
No.19
(4pt)

(2020年―第107冊)スパイ小説というよりは女性の愛の物語として楽しんだ

1950年代、冷戦下のソ連で一冊の小説が書かれた。『ドクトル・ジバゴ』。スターリニズム圧政下の悲恋を描いたこの小説は国内で出版が禁じられたため、原稿はひそかにイタリアに持ち出され、異国で翻訳出版された。アメリカのCIAは共産主義国家の非情を訴えるためにこの小説をロシア語原文のまま本にしてソ連に持ち込む秘密作戦を開始する……。
--------------------------
 21世紀になってその一部が明らかになったCIAの秘密工作を基に、アメリカ人作家ラーラ・プレスコットが想像を膨らませて書いたデビュー作です。
 このフィクションの中で『ドクトル・ジバゴ』の物語そのものについての詳細が記されることはありません。そのため、共産主義者たちがこの発禁小説のどこにどのような害毒をもつと恐れたのかが、『ドクトル・ジバゴ』に触れたことのない読者には伝わらない恨みがあります。その点がこの小説の弱点になっていると思います。
 またCIA秘密工作に想を得たフィクションといいつつも、スパイ小説ばりのサスペンスはあまりありません。冷戦期を舞台にした米ソ諜報合戦を期待した向きには、手に汗握るような展開がない点は肩透かしと思うことでしょう。

 その一方で、見るべき点はいくつもありました。
『ドクトル・ジバゴ』の作者パステルナークの実在した愛人オリガの過酷な運命は読ませます。反体制作家の愛人であったがゆえに、彼女は自由を奪われていきます。それでもパステルナークに身を寄せ続けた彼女の悲恋が胸に迫ります。
 またCIA工作員として登場する二人の女性の、当時は許されなかった恋路が魅力的です。ソ連側の二人を時代と政治が許さなかったのと同じように、アメリカ側の二人もまた時代と政治に許されない存在でした。この対比が、1950年代の時代の空気を鋭く描いているように思います。

 邦題『あの本は読まれているか』はあまり好みません。『パリは燃えているか』を意識したのでしょうか。ですが、原題の『The Secrets We Kept』の《秘密》が小説『ドクトル・ジバゴ』だけではなく、それを書いた作家と愛人の道ならぬ恋、CIA工作員ふたりの許されない恋など、様々なものを包括しているように思えて、そのほうがこのフィクションの性格を言い当てていると感じます。ただし『私たちの秘密』では邦題として魅力に欠けるのもわかりますが。

 翻訳者・吉澤康子氏の見事な訳業にも触れておきたいと思います。
 私は以前、エリザベス・ウェイン『コードネーム・ヴェリティ』で吉澤氏の訳文に接したことがあります。この小説がYAものだったために私の好みには合いませんでしたが、氏の訳文に助けられて最後まで読むことができました。
 今回の『あの本は読まれているか』の訳文は実に読みやすく、バタ臭い翻訳調の和文は一切ありません。こんな日本語文が書けたらいいなと羨ましくなります。
 吉澤氏の名前を次回見つけたら、ぜひまたその訳文を味わってみたいものです。 

 最後に、この小説の言葉で印象深く感じたものを引き写しておきます。
「そもそも、男女を問わずだれもが秘かに大いなる悲劇を待ち望んでるのさ。それは生という経験を研ぎ澄まし、より深みのある人間にしてくれる。そうは思わないか?」(260-261頁)

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*300頁:イリーナが母を連れてある場所に行き、待合室で「椅子に座り、<タイムズ>をめくって一時間をすごした」とあります。ワシントンDCの<タイムズ>といえば統一教会が発刊する保守系の『ワシントン・タイムズ』紙がありますが、あれは1980年代のレーガン政権時代に創刊されたはず。イリーナが1950年代に待合室で『ワシントン・タイムズ』紙を手にするというのは奇妙です。
 英語の原文を確認したところ「... sat back down, and flipped through Time magazines for an hour.」となっていました。つまり「新聞の<タイムズ>」ではなく、「雑誌<タイム>を何冊か」です。
--------------------------
 この小説から連想した以下の書を紹介しておきます。

◆モリー・グプティル・マニング『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』(東京創元社)
:第二次世界大戦中、ナチス・ドイツは膨大な数の非ドイツ的書籍を焼却処分しました。その焚書行為に対抗するかのようにアメリカは国を挙げて、海外派兵した自国の兵士たちに大量のペーパーバック本を送ります。これは「兵隊文庫」と称された書物送付計画の誕生から終結までを追ったノンフィクションです。書物が持つ力を強く信じた人々の第二次世界大戦史ともいえる書です。

◆ジョージ・オーウェル『一九八四年』(ハヤカワepi文庫)
:このSF小説の主人公ウィンストン・スミスは、全体主義国家オセアニアの独裁政治に抵抗する活動家エマニュエル・ゴールドスタインが書いたとされる禁書を手に入れます。これもまた、全体主義とそれに対する禁書の話です。

◆フィリップ・K・ディック『高い城の男』(ハヤカワ文庫 SF)
:ナチス・ドイツと大日本帝国が第二次世界大戦の戦勝国となった時代、両国によって分割統治されたアメリカ合衆国で、『イナゴ身重く横たわる』という小説が巷に流布するようになります。その小説は世界大戦でアメリカが勝利していたらと仮定していたために発禁本とされています。

◆高木 徹『大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか』(文藝春秋)
:アフガニスタンのバーミアンにあった大仏二体が破壊されるまでの経緯を、アフガン国内の政治闘争や諸外国の外交努力などを丹念に取材してまとめた一冊。タリバン政権内部にも穏健派がおり、アメリカはそうした穏健派要人を自国に招待して文化財保護の実際を見聞させる戦略を取っていた時期があるという箇所を興味深く読みました。このようにアメリカの外交戦略は文化面で相手の心を巧みにつかみとろうとする側面があったのです。

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あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.18
(4pt)

CIAタイピスト嬢たちが主役

さまざまな読み方、楽しみ方ができる本だ。一体誰が主役なのか。
冷戦時代、東側のソ連、西側のアメリカの物語が同時進行で展開する。

東側;パステルナークの愛人オリガ(「ドクトル・ジバゴ」ラーラのモデル)の視線で読み進めれば、そこではソ連時代の知識人弾圧、ソルジェニーツィン著「収容所列島」に繋がる物語が展開され、ひいては今日の中国共産党の人権弾圧(法輪功学習者、香港、チベット・ウイグル・南モンゴル人)や、獄死同然の死を遂げたノーベル平和賞受賞作家、人権活動家、劉暁波氏をも想起させる戦慄の物語となる。

西側;ロシア移民の娘イリーナ、そして受付嬢フォレスターそれぞれの視線でも語られる物語。
ここではタイピスト嬢たちのおしゃべりが秀逸に描かれ、一見他愛ない日常会話の中に潜むハッとするような観察眼と核心は巧みな狂言回しとなっている。
同性愛が違法だったかってのアメリカ、リリアン・ヘルマン著「子供の時間」(W.ワイラー監督、O.ヘプバーン・S.マクレーン共演・映画「噂の二人(1961)」)には当時の状況が痛烈に描かれている。優れた映画なので併せてお勧めしたい。

アメリカ史の汚点となったマッカーシズムについてほとんど触れられていないが、CIAが舞台となっているだけに複雑な要素をあえて盛り込まなかったのも読者に対する著者の配慮と考えたい。
ヘルマン氏やD.トランボ氏の非米活動委員会との闘い、ハリウッド・テン(「真実の瞬間」として映画化)などのレッド・パージは、語るに尽きないところだ。

グイグイと読み進ませるプレスコット氏の筆力には非凡なものがある。次作にも期待したい。
映画化されたらどんなキャスティングになるのか、楽しみなところだ。
映画「ドクトル・ジバゴ」でラーラを演じたJ・クリスティーが、オリガの回想シーンでナレーション(どこかでチラッと特別出演)などがあると、オールド・ファンとしては随喜の涙なのだが、、、。
あの本は読まれているか (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているか (創元推理文庫)より
4488270077
No.17
(4pt)

CIAタイピスト嬢たちが主役

さまざまな読み方、楽しみ方ができる本だ。一体誰が主役なのか。
冷戦時代、東側のソ連、西側のアメリカの物語が同時進行で展開する。

東側;パステルナークの愛人オリガ(「ドクトル・ジバゴ」ラーラのモデル)の視線で読み進めれば、そこではソ連時代の知識人弾圧、ソルジェニーツィン著「収容所列島」に繋がる物語が展開され、ひいては今日の中国共産党の人権弾圧(法輪功学習者、香港、チベット・ウイグル・南モンゴル人)や、獄死同然の死を遂げたノーベル平和賞受賞作家、人権活動家、劉暁波氏をも想起させる戦慄の物語となる。

西側;ロシア移民の娘イリーナ、そして受付嬢フォレスターそれぞれの視線でも語られる物語。
ここではタイピスト嬢たちのおしゃべりが秀逸に描かれ、一見他愛ない日常会話の中に潜むハッとするような観察眼と核心は巧みな狂言回しとなっている。
同性愛が違法だったかってのアメリカ、リリアン・ヘルマン著「子供の時間」(W.ワイラー監督、O.ヘプバーン・S.マクレーン共演・映画「噂の二人(1961)」)には当時の状況が痛烈に描かれている。優れた映画なので併せてお勧めしたい。

アメリカ史の汚点となったマッカーシズムについてほとんど触れられていないが、CIAが舞台となっているだけに複雑な要素をあえて盛り込まなかったのも読者に対する著者の配慮と考えたい。
ヘルマン氏やD.トランボ氏の非米活動委員会との闘い、ハリウッド・テン(「真実の瞬間」として映画化)などのレッド・パージは、語るに尽きないところだ。

グイグイと読み進ませるプレスコット氏の筆力には非凡なものがある。次作にも期待したい。
映画化されたらどんなキャスティングになるのか、楽しみなところだ。
映画「ドクトル・ジバゴ」でラーラを演じたJ・クリスティーが、オリガの回想シーンでナレーション(どこかでチラッと特別出演)などがあると、オールド・ファンとしては随喜の涙なのだが、、、。
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020
No.16
(4pt)

苦難の時代

CIA女性諜報員二人の生涯。実在を消すような漂泊人生。二人のもと職場の同僚女性たちの若く華やいだ生活。その開放感と奔放さは作品の魅力である。「ドクトル・ジバコ」の作者ボリスと愛人オリガ。米ソの諜報活動に翻弄された二人の生涯は苦難の連続。それぞれがそれぞれの人生に真剣である。死と隣り合わせの生はごまかしがきかないだけに肉体だけでなく精神も死への距離が近いようだ。
あの本は読まれているか (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているか (創元推理文庫)より
4488270077
No.15
(4pt)

苦難の時代

CIA女性諜報員二人の生涯。実在を消すような漂泊人生。二人のもと職場の同僚女性たちの若く華やいだ生活。その開放感と奔放さは作品の魅力である。「ドクトル・ジバコ」の作者ボリスと愛人オリガ。米ソの諜報活動に翻弄された二人の生涯は苦難の連続。それぞれがそれぞれの人生に真剣である。死と隣り合わせの生はごまかしがきかないだけに肉体だけでなく精神も死への距離が近いようだ。
あの本は読まれているか Amazon書評・レビュー: あの本は読まれているかより
4488011020