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僕の違和感
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僕の違和感の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点5.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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図書館で借りた本を紛失したので、返却のため購入した。安くて助かった | ||||
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本書はボザ売りの男、メヴルトの人生について書かれた物語である。 ボザとは、中央アジアに起源を持つ麦芽を用いた伝統的な発酵飲料で、かつてのイスタンブールには、担ぎ棒を提げてボザを売り歩く男たちが多く存在し、彼らの「ボーザー」という呼び声は都市の名物でもあったという。 1957年にトルコの農村で産まれたメヴルトも、父に連れられてイスタンブールへと移り住み、少年の頃からボザを売り歩く。 「背が高くて、頑健でありながらも華奢であって、見栄えが良」く、「常日頃から楽観的かつ善意の人」であるメヴルトの少年時代は平凡そのものだ。学校に通いながら父とともにヨーグルトやボザを売り歩き、親友と政治活動を行ったり、手淫に耽ったりもする。 メヴルトの人生に転機が訪れるのは25歳のとき、親戚の結婚披露で見初めた女との駆け落ちだった。雷鳴が轟き大雨が降りしきる逃避行のさなか、稲光に照らし出された女の顔を初めて間近に見て、彼は強い違和感を覚える。その違和感が、彼の人生を決定付ける。 親戚や親友が都市の中でしたたかに成功していくなかにあって、商才に恵まれなかったメヴルトの生活は貧しい。けれども妻と2人の娘を儲け、夜になるとボザを売り歩いて都市との対話を繰り返すことで、平凡ながらも彼は彼の人生を生きる。 メヴルトが生きるトルコは、農村から都市部への人口流入が急加速し、経済的にも政治的にも激動の時代にあり、イスタンブールの街並みも刻々と移り変わっていく。その状況下ですっかり廃れたボザ売りを続ける彼の姿は物悲しくもあり、同時に時代と都市に呑み込まれまいとする静かな意志を感ずる。 また本書は、構成的にはシンプルでありながら、トルコの歴史が物語と濃密に絡まり合い、様々な登場人物の独白を多用することによって、イスタンブールという大都市を重層的に浮かび上がらせて読み手を退屈させない。 やはりパムクの小説は面白い。 | ||||
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この本について一言で表すならば、冒頭にある作者の言葉より良いものはないだろう: 「本書は、ボザ売りのメヴルト・カラタシュの人生と冒険、夢、そしてその友人たちの物語にして、 一九六九年から二〇一二年に至る時期のイスタンブルの暮らしぶりを様々な人々の視点から解説した写し絵である。」 物語は時系列になっておらず、語り手によると、読者に「よりよくご理解いただく」ためであるという。 上巻の構成は大体以下のようなものである。 第一部:メヴルトとライハの駆け落ち 第二部:イスタンブルに来て二十五年目のメヴルトの冬の晩 第三部:メヴルトの少年時代から駆け落ちまで 第四部:メヴルトの結婚生活 冒頭の言葉にあるように、この物語は様々な人々が自分自身の声で語る形式になっている。 メヴルト以外の人物に関しては、名前とそのセリフがまるで戯曲のように書かれている。 物語に割り込むようにして話し出す者もいれば、前の人物の話を訂正するように話す者もいる。 語り手と諸人物の語りの相手は私たち「読者」であり、折に触れて読者への呼びかけがある。 語り手は基本的にメヴルトよりの視点から語っているが、物語を語り手やメヴルトの視点に集約しようとはしていない。 特定の人物の声が優勢になることなく、様々な声が混然一体となって、読者をイスタンブルの雑踏の中に引き込んでいく。 西欧とアラブ諸国の間に位置するイスタンブルにおける、ある種の秩序からの逸脱や生命力あふれる祝祭的な雰囲気は、 物語の多声性に多くを依拠している。 物語は(今のところ)大事件こそないものの、サスペンスフルな展開で先が気になる構成。 時々出てくるメヴルトの「違和感」は結局何なのか、ということも気にかかる。 エンターテイメントとしても成功しているのではないかと思った。 | ||||
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本書は、主人公の違和感が純真で公明正大な性格によって解かれて消えていく過程を描いている。同時に、トルコの現代史と文学史の双方における著者自身の種々の違和感についても、本書の主人公の人生の解消過程を通じて、踏み越えて行こうとする著者の意志に思えた。 本書(下巻)末尾の「年表」に注目したからだ。そこには、小説の主人公の個人的出来事と並んで、トルコの政治的、歴史的事件が混然一体に記録されている。あたかも、小説の主人公が実在のトルコ人かのように。 その次の頁には、本作品のトルコ語第一版のカバーに掲載された写真がある。石畳の路上呼び売り商人という、不安定な商いを頑なに続ける主人公の立ち姿がそこに写っている。この商いを通じてイスタンブルという都市の声に耳を傾けることは、主人公の無上の喜びなのである。こういう主人公の目線が主軸に据えられた小説である。 この長編小説は、トルコの現代史と歩みをひとつにしている点で、現代トルコの叙事詩と呼ぶべき物語になっている。本書の愛の歌は、日本人のボクにも聞こえる。「人間というのは幸せに、正しく、公明正大に生きるために創造されたはず」というノーベル賞作家の人生哲学に共鳴させられた。 | ||||
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駆け落ちの雨の夜、稲妻の光の下で彼女の面立ちに「違和感」を覚え、自分と世界について、ひそかな「違和感」に思いをめぐらし、顎鬚を剃ったあと、ずっと前から「違和感」を憶えていたある事実に気が付き、「違和感」が頭から離れない僕。 何をしていても、この世界にひとりぼっちのような気がしてしまい、幸せではあったのだが、妻さえ気付かないような奇妙な「違和感」を覚え、この世で自分を悩ませるものはすべて、自分自身の頭の中の「違和感」に端を発しているにすぎないのだと、そう悟った僕。 いとこの結婚披露宴で一目ぼれの運命の恋をしたことから僕の「違和感」は展開する。次々と現れる「違和感」を解消しないまま、僕の人生は転回していく。路上呼び売りの仕事だけはやめずに続けている僕だが、いつになったら「違和感」は解消できるのか?僕の呼び声だけが、夜の裏道の闇の路上に響きわたる。野良犬しかいない路上に。 | ||||
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p200~ その晩、メヴルトは家に帰ると朝まで手淫にふけった。 一回すませてすっきりして人心地つくたびに、 恥ずかしさと罪悪感でいっぱいになりながら 二度とすまいと誓いを立て、 しかし しばらくしたら誓いを破ってまた罪にふけってしまうのではないかという不安に駆られる。 罪を犯さぬための最良の方法は、すぐにもう一度手淫をし、あとはもう死ぬまでこの罪を忘却してしまうしかない。 こんな調子でメヴルトは、二時間ごとに人生最後の自涜を犯すのだった。。 :::::うーん、そうゆう中一の夜もあったなあ・・・と感慨深い。 今回のパムクは笑える感じだ。 むしろ、彼が最初から持っていたユーモアの感覚が、初めて邦訳された、とも考えられる。 あと、一人の少年の成長を描くことでトルコの歴史を描いているので、 西加奈子さんの「サラバ」方式というか、 人の物語と国の歴史がリンクしていて 全体がすんなり頭に入る。 日本人としては その偉大さがなかなか実感としてつかみにくいアタチュルクのこともたっぷり出てきてうれしい。 個人的には、しょうみ、パムク作品で初めて「意味」の分かる作品である。 とくに感心するのは細部。 例)) 夫婦で味の好みがちがう。旦那は酸っぱいボザ(という飲み物)が好きで、奥さんは酸っぱくないボザが好き。ってとことか。 | ||||
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田舎から都市部に出てきた主人公の青年が様々な体験を重ね・・・というお話。 訳者あとがきに書かれている通り、トルコの一青年の人生を描く事で激動の20世紀後半から現代にかけてのトルコの歴史や歩みを綴った小説でした。都市部のイスタンブルでボサと呼ばれる飲み物の行商をしたり、恋した娘と駆け落ちしたり・・・とトルコという国でよくあったという事象を主人公に辿らせる事でトルコの庶民の歴史を浮き彫りにするというシンプルな大作。また、国や民族が違っても人間の営為が本質的に変わらないという事が判って興味深かったです。 日本に限らず、20世紀は激動な時代だったようですが、トルコという国も例外ではなく、戦争やクーデター等で庶民が困惑していた様子が行間から伝わってきました。題名の違和感もこの困惑から来ている様に思いました。個人的にはあまりトルコという国は知らないし、それ程の興味もなかったりしますが、パムクの手にかかると途轍もない面白さ(と言うと多少語弊がありますが)の小説に変わるのが、このパムクという傑出した作家の力量ではないかと思いました。こういう人を賞を獲るまで知らなかった己の不明を恥じます。これは私見ですが、これだけ面白い作家がいるという事はこの人程ではないにしても凄く面白い小説を書く人が他にもいるのではないかと勘繰りたくなります。そういう人がいたら紹介して頂きたいです。 現代最強作家のトルコという国を描いた大作。是非ご一読を。 | ||||
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