千尋の闇
評判
千尋の闇の評価:
4.47/5点 レビュー 15件。 B ランク
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全15件 1〜15 1/1ページ
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千尋の闇の評価:
4.47/5点 レビュー 15件。 B ランク
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この作品はゴダード30代のときの出世作である。作中の歴史教師マーチン・ラドフォードは小説の設定時代である1970年代末には30歳であり,性的スキャンダルによって教師を失職し,離婚していることが明かされる。その主人公がマデイラ在住の実業家セリックの依頼で,かつてのイギリスの有力政治家ストラフォードの残したメモを手掛かりにして,その1910年の突然の政治的失墜と婚約者エリザベス・ラティマーからの拒絶,1951年の死亡の原因を調べる。ストラフォードをめぐる人々の裏切りの構図が明かすべき謎である。主人公もまた自らが招いた苦境のなかで調査を行う。その結果,会ったこともなく,すでに1951年に75歳で死んでいるストラフォードに対する共感を深め,クーシュマン夫人として90歳近くの高齢となったエリザベスとの交流のなかで,ついにはストラフォードに代わって,彼女の名誉を守る行動にでる。時代と世代をまたいだ共感に基づく主人公再生の物語である。
この小説のささやかな限界は,高齢者が読めば簡単に気が付くことだが,高齢者の心理と行動が,30代の著者が描く30代の主人公の目をとおして表現されているという点である。享年75歳のストラフォード,1977年において,90歳のエリザベス・クーシュマンはもとより70代のセリックも,30代の著者の想像によって描かれている。実際のところ加齢は人の感情と行動の在り方を変える。例えば,大半の老人の読者には30代の主人公の行動は単なる迷惑でしかなく,また,美しく身勝手な女性歴史家イブ・ランドールに対する主人公の情欲ゆえの行動は見て見ぬふりをしたい無様なものでしかない。逆に,大半の若い読者には本書の時代背景や,老人の行動そのものが了解不能であろう。
これはこの小説が世界的ベストセラーになりながら,日本ではすでに絶版となっている事情とも思える。元々は時代と世代を超えた共感の話に魅力を感じる少数の読者のための上質の娯楽小説である。その読者を対象にして,現在の邦題『千尋の闇』ではなく,原題の「Past Caring」の意味を反映した適切な題名を工夫して再刊されることを望む。