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(短編集)
タイム屋文庫
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タイム屋文庫の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.25pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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時間をテーマとするSF作品が数多く登場するのかと思えば、それらは多少の書名が登場するか、あるいは章題に仄めかされる程度である。主題はそこにはない。タイム屋文庫で時間はゆっくりと過ぎてゆく。あるいはのどかに流れてゆくのだ。出来事は起こるが、それらにある意味発端はなく、結末もないに等しい。主人公の柊子はタイム屋文庫に固定され、出来事が人とともにそこを通り過ぎてゆくような印象を受ける。しかも本書そのものが『タイム屋文庫』という本として、タイム屋文庫に所蔵されているという入れ子構造となっていることや、しばしば登場する「竜の舌」というイメージなどが暗示するのは「円環」である。 | ||||
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30歳になった主人公。ただなんとなしに過ごし、過ぎていく時間。 そんな彼女がとった行動は初恋の人を待つために 貸本屋を開くこと。 そして彼が好きだったタイムトラベル関係の本屋を実際に開き、 物語はその彼女を囲む人々とのやさしい関係を、 上手に切り取っていく。 人は、いま自分が置かれている場所は自分ではわからないのかもしれない。 きっと彼女は人生の中での曲がり角に立っている。とても大切な時に立っている。 その瞬間が垣間見えるようで、 そして応援したくなった。 | ||||
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西日のような表紙の色。 作品に関わる小物がランダムに配されていて、愛らしい。 時をまたいで仕掛ける恋の続きと帯の惹句にある。 前作『田村はまだか』の緊張感溢れる「時間の仕掛け」とは異なるものの、 心の中でくすぶり続けた思い、時間というものを朝倉かすみさんは またテイストを換えて料理してみせてくれた。 たったひとりの人を待つための「タイム屋文庫」を開くという柊子の思いつき。 時間旅行の本(CD、DVD)しかないのは、かつての恋人?吉成くんのことばを 忘れられなかったから。まったく何も考えちゃいないのだ。 祖母ツボミをして「考えなし」の「抜け作」と言わしめた性格は、30歳になっても なおるはずもない。 それでも、仕事も不倫も清算し、亡くなった祖母の古い家に移り住んで 貸本屋を開店する決意は変わらない。 “市居のばあさん”と呼ばれていた祖母の人柄が、この柊子の抜け作ぶりを 周りの人にうまくフォローされるように導いていくのもなんだかおもしろい。 だいたい祖母ツボミさんの人生の破天荒ぶりからして、物語に精彩を与える ものだ。大胆で、かつ愛すべきひとという印象だ。 柊子の思いがつまった店のためか、はたまた祖母が住んだ古い家のためか タイム屋文庫を訪れる人々の心に起こる不思議なことは、 柊子の恋のゆくえとともにこの物語のもうひとつの大切な核心だ。 時を超えてつながるものはあった。「案外遠くて、案外近い」「ここ」を 見つけた柊子の、その思いがかわいいじゃないか。 ウィットとユーモアの効いたどこかドライな印象の文体が、 ロマンチックな物語にちょうどよいさじ加減だ。 | ||||
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