クワイエットルームにようこそ
評判
クワイエットルームにようこその評価:
4.10/5点 レビュー 48件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全76件 21〜40 2/4ページ
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クワイエットルームにようこその評価:
4.10/5点 レビュー 48件。 B ランク
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著者の松尾スズキという筆名はインパクトがあって良い。名字が二つ連なっているような、珍しい名前だ。もともとこの人物は劇団を立ち上げ、役者、兼脚本家、兼演出家として活躍していた。そんな松尾スズキのマルチな才能をろくに知りもしない私は、この作品も大して期待もせずに読んだのだ。短編でもない代わりに長編でもないことも幸いして、私は2度ほど読んだ。なるほど、新しいとはこういうことかと、やっと気が付いた。
それはつまり、小説らしからぬ不思議な感覚の、語りの構造を持ち合わせているということだ。
ストーリーそのものは、精神病院の閉鎖病棟が舞台になっていて、主人公はデパスか何かを過剰摂取したせいで薬物中毒になってしまうという設定だ。きっかけは恋人との酷い喧嘩なのだが、昭和の文学なら絶望と孤独に打ちひしがれた、哀切極まりない展開になるだろう。だが時代は変わった。平成の文学は、もっとドライでリズミカルでそして柔軟性に富むものだ。
主人公・明日香は、同棲している男と大ゲンカをしたことが原因で、家に置いてあった薬を過剰に飲んでしまった。その薬というのも、明日香が元亭主との離婚にまつわる軽いうつ症状に悩まされている時、心療内科で処方された精神安定剤やら抗うつ剤などだった。その現場を発見した同棲相手は、急いで救急車を呼んだ。運ばれた先は本格的な精神病院で、危険度レベル3の、病室にはマイクが設置され、ナースセンターに全て状況が把握されるという徹底した施設だった。そこには様々なタイプの患者が入院していて、正常と異常との境界がつきにくい環境なのだった。
この作品を読了してつくづく思ったのは、この先、純文学はますますその立場が微妙になって行くだろうということだ。正統派の純文学路線を突き進むことは、昭和の文学を模倣するか、あるいは素朴で単調化してしまう危険性を孕んでいるからだ。逆に斬新さを追求しすぎると、万人に受け入れられにくくなる恐れがある。他者との差別化を図った作品は独特だけれど、必ずしも皆が読みたくなるものかどうかは分からない。
『クワイエットルームにようこそ』は正に平成の純文学で、しかも新しい。
しいて言えば、変わった読書傾向のある人向きかもしれない。