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(アンソロジー)
上海のシャーロック・ホームズ ホームズ万国博覧会 中国篇
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上海のシャーロック・ホームズ ホームズ万国博覧会 中国篇の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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こんな言い方は一般的には失礼なのだが、この本の場合は失礼に当たらないように思う。著者もおそらくそのつもりで書いているのではあるまいか。中国における「翻訳」や海外作品の扱いに接していて、そこはかとなく覚える違和感の正体を、みごとに射抜いていると思う。収録作品の出来を上回る力がこもっている。 | ||||
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推理小説としてはなんだか違和感を感じさせるかもしれないけれども、シャーロック・ホームズのパロディを清朝、つまりまだ弁髪を結っていた時代の中国人がこんなに沢山書いていたってこと事態がびっくりじゃありませんか。小説の面白さの一つは、その時代の物の考え方や視点がわかるということだけれども、まさにこの本はその通り。ラストエンペラーが治めていた時代の中国人が、イギリス人やヨーロッパ人のことをどう見ていて、どう感じていたのかというのが肌で分かる。推理小説だからというんじゃなくて、当時の中国の文化や考え方を知りたい人はぜひ読んでもらいたいと思う。 翻訳している樽本さんは、この分野の第一人者で、たくさんの中国の翻訳文学や外国文学の移入史の論文を発表している。中国ではそんな分野の研究はようやく最近はじまったばかりだと書いてあったから、もしかしたら世界一の専門家なんじゃないだろうか。そんな方の翻訳が読めるというのは幸せなことだ。 しかもこれらは中国語では一切現在は手に入らない。すべて当時の雑誌から樽本教授が発掘して来たものばかりだ。世界中でこれら清朝のホームズパロディを読めるのは日本だけ。なんという幸せなことだろうか。 | ||||
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4本のホームズ・パロディ(いずれも掌篇)と、長めの短篇2本・短めの長篇1本のパスティーシュが収録されている。 巻頭の掌篇「上海のシャーロック・ホームズ 最初の事件」は1904年の作なのだが、最初の口上で数々のホームズ中国語訳があり『新民叢報』には「シャーロック復活第一の事件、第二の事件」が掲載されている、などとある。この時点で『シャーロック・ホームズの帰還』所載の作品が訳されていたとは驚きだ。しかも、パロディまで書かれているのだから、まったく乱歩が言うように「少なくともホームズの翻訳では向こう〔中国〕の方が進んでいた」わけだ。清朝末期の文学状況は意外なほど成熟していたようである。 そのパロディの内容だが、ホームズを笑うようなものではあるのだが、基本的にアヘンに染まった上海人に対する自虐的なもので、嫌中派が読んでもニヤリとするような内容。一方で今の中国人が、こういう作品を知らない(言わば隠されている)のも分かる気がする。 訳者の「作品解説」「あとがき」は嫌中派が読むと膝を打ちそうだが、探偵小説を侮蔑した民国初期の文学革命派も、60年代後半からの文化大革命も、現代中国人の翻訳文学に対する無視も十把一絡げになってる感はあるにせよ、正当な批判である。 だが訳者は中国に大いに不満を持ってるにせよ、翻訳は手を抜いていない。中華風の言い回しなどを生かし面白く読ませる工夫を凝らしていて、チャイナ好きにも愉しめそうだ。 好みから言えば星5つでも良いのだが、小説の出来から言えば星3つ(「福爾摩斯(フウアルモス)最後の事件」は星2つ。福爾摩斯はホームズの意。これのみ中国伝統の「旧小説」の形式で書かれている)というところ。 いずれのパスティーシュでも主犯はすぐに予測が付いてしまう。しかし、発表時期の早さなどを考えると、かなり健闘しているのではないか。というか現在でも贋作ホームズって、この程度のが多いし。 しかし、推理小説としての出来よりは、昔日の中国でのホームズの受容のさまを愉しむ本なのである。 | ||||
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