(短編集)

黒い画集

評判

黒い画集の評価:

4.27/5点 レビュー 79件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.27pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全106件 61〜80 4/6ページ
No.46
(4pt)

黄金バット

「陸行水行」邪馬台国の存在に魅せられた男たちのロマンと末路・・・他3篇。
陸行水行―別冊黒い画集〈2〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 陸行水行―別冊黒い画集〈2〉 (文春文庫)より
4167697114
No.45
(4pt)

ブラックな感情が綴られた短編集

松本清張作品だが、社会派と言うよりは「奇妙な味」系の短編集。いずれも読み応えのある作品だが、「凶器」のブラック感が特に印象に残った。

「遭難」
前半は、山岳雑誌に掲載された道迷い遭難事故の手記。後半は、その時のリーダー江田が被害者の姉の依頼で従兄の槙田と弔い山行に出掛ける様子が江田の視点で描かれる。後半は倒叙系に変わって、二人の心理戦を描いたサスペンス小説。山岳小説としても楽しめる作品。

「証言」
会社や家族に内緒で元部下の女性をかこって逢い引きを重ねる石野。その帰りに近所の住人と会ったばかりに厄介事に巻き込まれる。「人間の嘘には、人間の嘘が復讐する」という結末。

「天城越え」
主人公が家出をして、天城越えをしようとするも断念し、引き返す際に魅力的な女と出逢い、その女と別れるまでの印象深い体験談が綴られる。年月が経ち、印刷工になった主人公のもとに、警察からその当時に起こった事件資料の印刷を依頼される。その資料が紹介されるとともに、意外な真相が明らかに。

「寒流」
主人公沖野は、大学の同期であり、銀行での上役にあたる桑山に恋人奈美を奪われ、仕事でも地方支店という”寒流”に左遷され、復讐を果たそうと画策するが、何度も苦い思いを味わう話。沖野は無用な執着に捉われて、エネルギーを使うところを間違えていると感じる。ラストはちょっとあっけなく、物足りない。

「凶器」
九州の田舎の村で見つかった撲殺死体。容疑者の女が浮かび上がり、凶器の「丸太ン棒のようなもの」を探すが、見当たらない。刑事は三年後にふとした出来事から、その凶器に思い当たる。最後の一行のブラック感がすばらしい。

「紐」
多摩川の川原で見つかった男の変死体。その妻の鉄壁のアリバイ崩しの話。最初は刑事視点で、途中から保険会社の調査員の視点で、調査の過程が描かれる。真相自体は想定の範囲内であったが、死体の両面の死斑の謎、最後に明らかになるある人物の真意が面白い。

「坂道の家」
キャバレーで働く若い女とひょんなことで知り合った中年男がその恋にのめり込んで、身を滅ぼしていく話。騙される男の哀れさが痛切に描写されている。真相発覚に至る手掛かりが工夫されている。
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068
No.44
(4pt)

ブラックな感情が綴られた短編集

松本清張作品だが、社会派と言うよりは「奇妙な味」系の短編集。いずれも読み応えのある作品だが、「凶器」のブラック感が特に印象に残った。

「遭難」
前半は、山岳雑誌に掲載された道迷い遭難事故の手記。後半は、その時のリーダー江田が被害者の姉の依頼で従兄の槙田と弔い山行に出掛ける様子が江田の視点で描かれる。後半は倒叙系に変わって、二人の心理戦を描いたサスペンス小説。山岳小説としても楽しめる作品。

「証言」
会社や家族に内緒で元部下の女性をかこって逢い引きを重ねる石野。その帰りに近所の住人と会ったばかりに厄介事に巻き込まれる。「人間の嘘には、人間の嘘が復讐する」という結末。

「天城越え」
主人公が家出をして、天城越えをしようとするも断念し、引き返す際に魅力的な女と出逢い、その女と別れるまでの印象深い体験談が綴られる。年月が経ち、印刷工になった主人公のもとに、警察からその当時に起こった事件資料の印刷を依頼される。その資料が紹介されるとともに、意外な真相が明らかに。

「寒流」
主人公沖野は、大学の同期であり、銀行での上役にあたる桑山に恋人奈美を奪われ、仕事でも地方支店という”寒流”に左遷され、復讐を果たそうと画策するが、何度も苦い思いを味わう話。沖野は無用な執着に捉われて、エネルギーを使うところを間違えていると感じる。ラストはちょっとあっけなく、物足りない。

「凶器」
九州の田舎の村で見つかった撲殺死体。容疑者の女が浮かび上がり、凶器の「丸太ン棒のようなもの」を探すが、見当たらない。刑事は三年後にふとした出来事から、その凶器に思い当たる。最後の一行のブラック感がすばらしい。

「紐」
多摩川の川原で見つかった男の変死体。その妻の鉄壁のアリバイ崩しの話。最初は刑事視点で、途中から保険会社の調査員の視点で、調査の過程が描かれる。真相自体は想定の範囲内であったが、死体の両面の死斑の謎、最後に明らかになるある人物の真意が面白い。

「坂道の家」
キャバレーで働く若い女とひょんなことで知り合った中年男がその恋にのめり込んで、身を滅ぼしていく話。騙される男の哀れさが痛切に描写されている。真相発覚に至る手掛かりが工夫されている。
黒い画集 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (新潮文庫)より
4101109192
No.43
(4pt)

男の嫉妬。悲しい生き物。

「坂道の家」などの長編や、「天城越え」の様な短編まで、多彩に収録。
私の場合、映画やドラマの「天城越え」が好き過ぎて、現地(=天城峠)に行くにあたって原作を読んだのが購入のきっかけ。
この中の作品で他に映画、テレビドラマ化されたものがいくつかあるので、DVDを借りてチェックして原作と比較してみても面白い。
殺人には、手口と動機が重要である。そこをどう形成し展開していくかが、松本清張の腕の見せどころである。
こうしていくつか作品を読み進めると、一定のパターンが見えてくる。強烈なまでの男の嫉妬が全て発端になり、
それが怒りに変じ暴発した時に、コトが起きている。
所詮、男は女に利用されるだけの駒、消耗品に過ぎないのか。男とは悲しい生き物である。
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068
No.42
(4pt)

男の嫉妬。悲しい生き物。

「坂道の家」などの長編や、「天城越え」の様な短編まで、多彩に収録。
私の場合、映画やドラマの「天城越え」が好き過ぎて、現地(=天城峠)に行くにあたって原作を読んだのが購入のきっかけ。
この中の作品で他に映画、テレビドラマ化されたものがいくつかあるので、DVDを借りてチェックして原作と比較してみても面白い。
殺人には、手口と動機が重要である。そこをどう形成し展開していくかが、松本清張の腕の見せどころである。
こうしていくつか作品を読み進めると、一定のパターンが見えてくる。強烈なまでの男の嫉妬が全て発端になり、
それが怒りに変じ暴発した時に、コトが起きている。
所詮、男は女に利用されるだけの駒、消耗品に過ぎないのか。男とは悲しい生き物である。
黒い画集 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (新潮文庫)より
4101109192
No.41
(5pt)

日本人の腹黒さのようなものをえぐり出す短編集

だから黒い画集とはよくぞ付けたと思う、
日本人の心性の最も深い部分に巣食う嫌らしさ・汚さ・見苦しさのような価値観や感情が蒸留されたような作品ばかり、
発表からゆうに半世紀を越え、すでに古典の風格だと思う、
「遭難」「凶器」などどうしてそんなことが殺人に結びつくのか?と動機に疑問を感じもするが、だからこそ最悪の結末が用意されてしまうのが人の世の苦味なのだと思う、
そんな見苦しさはいまもまったく変っていない、
福島からの避難民に同情するどころか、彼らが義捐金を受け取ったことに対する僻み妬みから小学校でこどもが金銭が恐喝されてしまうのが今日現在の日本なのである(場所が横浜というのになにか肯ける部分があるのだが)、

既に古典の域なので風俗描写に一瞬考えてしまう箇所がいくつもある、

「寒流」P.184
外苑の森の隙間から、屋根にあげたさまざまな屋号のネオンが並んで見える。
→当時、市谷方面に待合・連れ込み宿(現在のラブホテルと同じ目的で利用された)が集中して存在したからである、
 もろもろの事情で現在その面影は薄い、

「凶器」P.311
一帯にこの辺は籾扱きに暇がかかる。
→この一文はいったい何のことか? ほとんど古文の同類だと思う、
  つまり舞台となる地域一帯では、稲を刈り取った後に米となる籾の部分だけを稲穂から取り外す作業に時間がかかり、事件は真冬に起きているが、事件現場には新しい藁が積んであったということらしい、
農作業の機械化以前、作業が人と牛馬だけでなされた事と、気候区分による作業手順には地域差があった可能性が前後の記述から想像できる、
その先は歴史地理として郷土史家が語る領域になると思う、

「紐」
映画二本「男を捨てろ」「川霧の決闘」を見た設定は映画版「砂の器」が引用している、
同じく映画の半券のトリックは「容疑者Xの献身」に引用されている、
P.440に”冷やしコーヒー”とある、さて、アイス・コーヒーという用語はいつ頃から普及したものか?
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068
No.40
(5pt)

日本人の腹黒さのようなものをえぐり出す短編集

だから黒い画集とはよくぞ付けたと思う、
日本人の心性の最も深い部分に巣食う嫌らしさ・汚さ・見苦しさのような価値観や感情が蒸留されたような作品ばかり、
発表からゆうに半世紀を越え、すでに古典の風格だと思う、
「遭難」「凶器」などどうしてそんなことが殺人に結びつくのか?と動機に疑問を感じもするが、だからこそ最悪の結末が用意されてしまうのが人の世の苦味なのだと思う、
そんな見苦しさはいまもまったく変っていない、
福島からの避難民に同情するどころか、彼らが義捐金を受け取ったことに対する僻み妬みから小学校でこどもが金銭が恐喝されてしまうのが今日現在の日本なのである(場所が横浜というのになにか肯ける部分があるのだが)、

既に古典の域なので風俗描写に一瞬考えてしまう箇所がいくつもある、

「寒流」P.184
外苑の森の隙間から、屋根にあげたさまざまな屋号のネオンが並んで見える。
→当時、市谷方面に待合・連れ込み宿(現在のラブホテルと同じ目的で利用された)が集中して存在したからである、
 もろもろの事情で現在その面影は薄い、

「凶器」P.311
一帯にこの辺は籾扱きに暇がかかる。
→この一文はいったい何のことか? ほとんど古文の同類だと思う、
  つまり舞台となる地域一帯では、稲を刈り取った後に米となる籾の部分だけを稲穂から取り外す作業に時間がかかり、事件は真冬に起きているが、事件現場には新しい藁が積んであったということらしい、
農作業の機械化以前、作業が人と牛馬だけでなされた事と、気候区分による作業手順には地域差があった可能性が前後の記述から想像できる、
その先は歴史地理として郷土史家が語る領域になると思う、

「紐」
映画二本「男を捨てろ」「川霧の決闘」を見た設定は映画版「砂の器」が引用している、
同じく映画の半券のトリックは「容疑者Xの献身」に引用されている、
P.440に”冷やしコーヒー”とある、さて、アイス・コーヒーという用語はいつ頃から普及したものか?
黒い画集 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (新潮文庫)より
4101109192
No.39
(4pt)

心理の描写が見事

「黒い画集」を読もうと思ったが、色々出ているようで、
何が「黒い画集」なのか、読むまで分からなかった。

が、当著の解説に
昭和33年9月から昭和35年6月まで「週刊朝日」に連載された作品の中から
著者が自ら選んだ7編
と記載されていた。

Wikiによると、「天城越え」だけ上記と違っているようである。

全て短編だが、以下の通り、読み応えのあるものも有る。

・遭難  :132頁
・証言  : 24頁
・天城越え: 42頁
・寒流  :148頁
・凶器  : 48頁
・紐   :140頁
・坂道の家:191頁

「遭難」が1番面白かった。

3人で登山し、Aの心理/行動を巧みに読み、
なおかつ、Bには気付かれないよう、仕掛けていく様が見事だ。

それも、最後の方でネタが明かされるため、
それまで読者も全く気付かない。

Aの従弟が登場し、
最後はハラハラさせられる。

「紐」は 分からない部分があった。
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068
No.38
(4pt)

心理の描写が見事

「黒い画集」を読もうと思ったが、色々出ているようで、
何が「黒い画集」なのか、読むまで分からなかった。

が、当著の解説に
昭和33年9月から昭和35年6月まで「週刊朝日」に連載された作品の中から
著者が自ら選んだ7編
と記載されていた。

Wikiによると、「天城越え」だけ上記と違っているようである。

全て短編だが、以下の通り、読み応えのあるものも有る。

・遭難  :132頁
・証言  : 24頁
・天城越え: 42頁
・寒流  :148頁
・凶器  : 48頁
・紐   :140頁
・坂道の家:191頁

「遭難」が1番面白かった。

3人で登山し、Aの心理/行動を巧みに読み、
なおかつ、Bには気付かれないよう、仕掛けていく様が見事だ。

それも、最後の方でネタが明かされるため、
それまで読者も全く気付かない。

Aの従弟が登場し、
最後はハラハラさせられる。

「紐」は 分からない部分があった。
黒い画集 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (新潮文庫)より
4101109192
No.37
(5pt)

清張連作短篇集の頂点

舌なめずりして読んだ名著。真に個人的なことながら、都会での不安な学生時代の始めに故郷から離れた淋しさを癒すために読んだ。「遭難」のピカレスクな結末に惑乱した。ミステリーの快楽に目覚めた本。「推理小説なんてムダで無意味」と思っているペダンティックな自意識インテリさん。ミステリーの醍醐味に目覚めない人生って淋しいと思いますよ。「草」や「濁った陽」が入っている、入っていないは重要ではない。「遭難」「証言」は必須ですが。
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068
No.36
(5pt)

清張連作短篇集の頂点

舌なめずりして読んだ名著。 真に個人的なことながら、都会での不安な学生時代の始めに故郷から離れた淋しさを癒すために読んだ。 「遭難」のピカレスクな結末に惑乱した。 ミステリーの快楽に目覚めた本。 「推理小説なんてムダで無意味」と思っているペダンティックな自意識インテリさん。 ミステリーの醍醐味に目覚めない人生って淋しいと思いますよ。 「草」や「濁った陽」が入っている、入っていないは重要ではない。 「遭難」「証言」は必須ですが。
黒い画集 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (新潮文庫)より
4101109192
No.35
(5pt)

遭難が秀逸ー全体的に古い、そのくせ高い

おそらく、登山に全くの素人故、読みきれないのだとは思います。でも、「遭難」はゾクゾクしました。
他の作品は、やはり古いため、どうしても現実感が乏しくなる。今の時代なら、有り得ないトリックや、会話が多出するからです。「けものみち」でも常にそう感じ続け、読み辛かったです。当時の情景が浮かぶ年代の方、あるいは当時の人々の風俗(貧しさなども)や風潮(男女格差など)などの情緒的なものも含めて、相応しく想像力が働かないとリアルに物語に入り込めないと思います。私はそうでした。

この星5は「遭難」へ捧げます。登山がわからなくてよかった!
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068
No.34
(5pt)

遭難が秀逸ー全体的に古い、そのくせ高い

おそらく、登山に全くの素人故、読みきれないのだとは思います。でも、「遭難」はゾクゾクしました。
他の作品は、やはり古いため、どうしても現実感が乏しくなる。今の時代なら、有り得ないトリックや、会話が多出するからです。「けものみち」でも常にそう感じ続け、読み辛かったです。当時の情景が浮かぶ年代の方、あるいは当時の人々の風俗(貧しさなども)や風潮(男女格差など)などの情緒的なものも含めて、相応しく想像力が働かないとリアルに物語に入り込めないと思います。私はそうでした。

この星5は「遭難」へ捧げます。登山がわからなくてよかった!
黒い画集 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (新潮文庫)より
4101109192
No.33
(5pt)

天城越えの途中で知り合った若い女が殺人事件の犯人と疑われていたとは

茨城県古河市の古賀総合公園では、ソメイヨシノとハナモモが美しく咲き競っていました。女房も、文字どおり桃源郷ねと、至極満足そうでした。しかし、この世に桃源郷などは存在せず、現実の世界は厳しいものであることを私は知っているのです。

このことを確認したくなって、書斎の本棚から短篇集『黒い画集』(松本清張著、新潮文庫)を取り出し、『天城越え』を40年ぶりに読み返しました。

「私が、はじめて天城を越えたのは30数年昔になる」と書き出されていますが、これは、川端康成の『伊豆の踊子』の主人公の高等学校生が天城トンネルを越えたのとほぼ同時期のことでした。もっとも、この後、展開されるストーリーは川端の純愛物語とは程遠いものですが。

生活が楽ではない鍛冶屋の三男で16歳の「私」は、親に黙って家出をします。その途中、天城の山道で22~23歳の女と出会います。「女の顔は白く、あざやかな赤い口紅を塗っていた。白粉のよい匂いが、やわらかい風といっしょに私の鼻にただよった」。この「黒瞳(くろめ)の張った、美しい顔」の女と同行することになりました。

暫く行った所で流れ者の男の後ろ姿が見えた時、女が急に私に向かって、「兄さん、悪いけれど、あんた、先に行って頂戴」と言います。びっくりして唖然とする私に、「あのひとにぜひ話があるんでね、先に行って頂戴。話がすんだら、また、兄さんに追いつくからね」と言い聞かせるのです。

「それから30数年経った。私は、現在、静岡県の西側の中都市で、印刷業を営んでいる。・・・私が、なぜいまごろ、30余年前のことを思いだしたかというと、最近、静岡県警察本部のある課から『刑事捜査参考資料』という本の印刷を頼まれたからだ。私は自分の所で印刷し、製本したこの本を、ある日、何気なく読んだのだが、4つか5つ集めた静岡県内の犯罪例の中に、思いがけなく、30数年前、私が天城越えのときに遭遇した土工と、きれいな女とのことが書いてあった。そして、そこには、私自身も登場していた」。

その資料集の「天城山の土工殺し事件」には、あの女が犯人と疑われ、取り調べを受けたが、証拠不十分で無罪となったことが記されているではありませんか。

最後に思いがけないどんでん返しが待ち構えているのですが、いかにも清張らしい練達の推理小説に仕上がっています。おかげで、やはり桃源郷などというものは現実には存在しないことを実感することができました。
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068
No.32
(5pt)

天城越えの途中で知り合った若い女が殺人事件の犯人と疑われていたとは

茨城県古河市の古賀総合公園では、ソメイヨシノとハナモモが美しく咲き競っていました。女房も、文字どおり桃源郷ねと、至極満足そうでした。しかし、この世に桃源郷などは存在せず、現実の世界は厳しいものであることを私は知っているのです。

このことを確認したくなって、書斎の本棚から短篇集『黒い画集』(松本清張著、新潮文庫)を取り出し、『天城越え』を40年ぶりに読み返しました。

「私が、はじめて天城を越えたのは30数年昔になる」と書き出されていますが、これは、川端康成の『伊豆の踊子』の主人公の高等学校生が天城トンネルを越えたのとほぼ同時期のことでした。もっとも、この後、展開されるストーリーは川端の純愛物語とは程遠いものですが。

生活が楽ではない鍛冶屋の三男で16歳の「私」は、親に黙って家出をします。その途中、天城の山道で22~23歳の女と出会います。「女の顔は白く、あざやかな赤い口紅を塗っていた。白粉のよい匂いが、やわらかい風といっしょに私の鼻にただよった」。この「黒瞳(くろめ)の張った、美しい顔」の女と同行することになりました。

暫く行った所で流れ者の男の後ろ姿が見えた時、女が急に私に向かって、「兄さん、悪いけれど、あんた、先に行って頂戴」と言います。びっくりして唖然とする私に、「あのひとにぜひ話があるんでね、先に行って頂戴。話がすんだら、また、兄さんに追いつくからね」と言い聞かせるのです。

「それから30数年経った。私は、現在、静岡県の西側の中都市で、印刷業を営んでいる。・・・私が、なぜいまごろ、30余年前のことを思いだしたかというと、最近、静岡県警察本部のある課から『刑事捜査参考資料』という本の印刷を頼まれたからだ。私は自分の所で印刷し、製本したこの本を、ある日、何気なく読んだのだが、4つか5つ集めた静岡県内の犯罪例の中に、思いがけなく、30数年前、私が天城越えのときに遭遇した土工と、きれいな女とのことが書いてあった。そして、そこには、私自身も登場していた」。

その資料集の「天城山の土工殺し事件」には、あの女が犯人と疑われ、取り調べを受けたが、証拠不十分で無罪となったことが記されているではありませんか。

最後に思いがけないどんでん返しが待ち構えているのですが、いかにも清張らしい練達の推理小説に仕上がっています。おかげで、やはり桃源郷などというものは現実には存在しないことを実感することができました。
黒い画集 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (新潮文庫)より
4101109192
No.31
(4pt)

清張ワールドを楽しむ

読書を口実に旨い酒を飲む会が伊豆天城近辺に出張し、清張の「天城超え」を肴に盛り上がった。「天城越え」が収録されている「黒い画集」を結局全編読むこととなった。また、同時期にテレビで清張のドラマ放送があり、個人的には一瞬清張ブームの感がある。「黒い画集」は、全編を通して人間の業ともいうべき「悪意」をいろいろな形で展開している。不思議と「悪意」を持った登場人物に共感を覚えてしまった。人間の自然な感情の延長上にある「悪意」は読み手に抵抗無く入り込んで来る。そして、その「悪意」は緻密に組み上げられた構図のちょっとした糸屑から引きずり出され全てを崩してしまう所が清張ワールドの醍醐味であろう。
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068
No.30
(4pt)

清張ワールドを楽しむ

読書を口実に旨い酒を飲む会が伊豆天城近辺に出張し、清張の「天城超え」を肴に盛り上がった。「天城越え」が収録されている「黒い画集」を結局全編読むこととなった。また、同時期にテレビで清張のドラマ放送があり、個人的には一瞬清張ブームの感がある。「黒い画集」は、全編を通して人間の業ともいうべき「悪意」をいろいろな形で展開している。不思議と「悪意」を持った登場人物に共感を覚えてしまった。人間の自然な感情の延長上にある「悪意」は読み手に抵抗無く入り込んで来る。そして、その「悪意」は緻密に組み上げられた構図のちょっとした糸屑から引きずり出され全てを崩してしまう所が清張ワールドの醍醐味であろう。
黒い画集 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (新潮文庫)より
4101109192
No.29
(4pt)

鹿島槍山行のお供に最適です

私は登山を趣味にしています。この本は、知人に教えられて手に取りました。

この本はレビューを読むと、不倫×サラリーマン×殺人、をテーマにしているようですが、中に「遭難」と題する山中の完全密室犯罪劇があります。

これは、山の調査もよくやったなと思えるほど詳細で、山行の流れも、山を良く知っている人にしか書けない感じです。
牛首尾根とか、鹿島槍北股本谷なんて出てきます。 

とても印象に残る短編でしたので、鹿島槍山行のお供に最適です☆

当方のブックレビュー 内容が詳細です。登山をする方に。 
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/09/blog-post_15.html
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068
No.28
(4pt)

鹿島槍山行のお供に最適です

私は登山を趣味にしています。この本は、知人に教えられて手に取りました。

この本はレビューを読むと、不倫×サラリーマン×殺人、をテーマにしているようですが、中に「遭難」と題する山中の完全密室犯罪劇があります。

これは、山の調査もよくやったなと思えるほど詳細で、山行の流れも、山を良く知っている人にしか書けない感じです。
牛首尾根とか、鹿島槍北股本谷なんて出てきます。 

とても印象に残る短編でしたので、鹿島槍山行のお供に最適です☆

当方のブックレビュー 内容が詳細です。登山をする方に。 
http://stps2snwmt.blogspot.jp/2013/09/blog-post_15.html
黒い画集 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (新潮文庫)より
4101109192
No.27
(5pt)

やはり面白い

多分再読だと思うが、この面白さはなんだ、見事なまでの、登場人物の心理描写二、先をいそいで読み進める。
黒い画集 (カッパ・ノベルス) Amazon書評・レビュー: 黒い画集 (カッパ・ノベルス)より
4334030068