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4.00/5点 レビュー 21件。 B ランク

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平均点4.00pt

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全50件 41〜50 3/3ページ
No.10
(5pt)

侵食する氷に仮託される不安と孤独のイメージ

原題 Ice (原著刊行1967年)
2008年にバジリコから刊行された単行本の文庫化復刊。版権の問題によりサンリオSF文庫版と単行本版に付されていたブライアン・オールディスの序文がクリストファー・プリーストによるものに差し替えられている。

世界を侵食し覆い尽くす禍々しくも美しい氷のイメージに圧倒される。それはまるで我々が決して逃れることの出来ない人生における不安と絶望の結晶の様だ。そして偏執的なまでに語り手の男に追い求められ、長官と呼ばれる独裁者に幽閉される少女の宿命に、蹂躙され汚される絶対的な無垢の存在を見る。勿論これは評者個人の一面的な見方に過ぎないが、本書の透徹された幻想の純度の高さと力強さは全ての読者が様々な感情を仮託する事を許す揺るぎなさを持っている。男と少女の逃避行の果てに訪れる美しくも悲痛で冷酷な結末はその象徴だ。

スリップストリーム文学の流れに本書を位置付けた卓抜した序文、実作者らしい示唆に富む川上弘美氏の解説を含め、素晴らしい復刊であり、スリリングで稀有な読書体験を約束してくれる一冊だ。
氷 (ちくま文庫) Amazon書評・レビュー: 氷 (ちくま文庫)より
4480432507
No.9
(5pt)

カフカ以上の孤独を求めるものへ送りたい

正直なところ、これほど優れた小説に対しレビューを書くのは難しい。この本を、少なくともカフカやバラードなどと比較して読むべきではない。また登場人物たちに名前がないことも、さしたる問題とは思えない。この小説は、他の小説にはないものをもっているのだが、それを上手く説明するのは難しい。とにかくこの作品の中では、どの主人公たちも極めて孤独で、精神状態が安定していない。しかも深刻なのは、この孤独感は読者を遠ざける類のものだ。誰もその孤独をつかむことなどできない。世界はすっかり氷に閉ざされている。そして、少女はどんな理解をも拒む。なぜ、少女は理解を拒むのか、ということは示されない。後半に薄っすらとその答えらしいものが見え隠れするが、それさえも主人公の幻想かもしれない。人々の理解を拒むほど徹底されたこの孤独には、かえって吸い寄せられそうなほどだ。

孤独感を癒したい人ではなく、その孤独を超越するさらなる孤独の物語を読むことで、やっと自分の孤独が楽なものに思えてくる、それほどの孤独感を抱えた人間こそが読むべき本だと、私は思う。ただのディストピア小説と読むのは違う、そうした読み方はこの小説の価値を下げるものでしかない。いるならば、カフカ以上の孤独を求めるものへこの小説を送りたい。

ところどころ破綻しているようにさえ見えるが、そのスタイルは強烈に魅力的である。いや、むしろ破綻しながらもどこまでも突っ走るこの書きっぷりが真の魅力なのかもしれない。
氷 Amazon書評・レビュー: より
4862381006
No.8
(5pt)

カフカ以上の孤独を求めるものへ送りたい

正直なところ、これほど優れた小説に対しレビューを書くのは難しい。この本を、少なくともカフカやバラードなどと比較して読むべきではない。また登場人物たちに名前がないことも、さしたる問題とは思えない。この小説は、他の小説にはないものをもっているのだが、それを上手く説明するのは難しい。とにかくこの作品の中では、どの主人公たちも極めて孤独で、精神状態が安定していない。しかも深刻なのは、この孤独感は読者を遠ざける類のものだ。誰もその孤独をつかむことなどできない。世界はすっかり氷に閉ざされている。そして、少女はどんな理解をも拒む。なぜ、少女は理解を拒むのか、ということは示されない。後半に薄っすらとその答えらしいものが見え隠れするが、それさえも主人公の幻想かもしれない。人々の理解を拒むほど徹底されたこの孤独には、かえって吸い寄せられそうなほどだ。

孤独感を癒したい人ではなく、その孤独を超越するさらなる孤独の物語を読むことで、やっと自分の孤独が楽なものに思えてくる、それほどの孤独感を抱えた人間こそが読むべき本だと、私は思う。ただのディストピア小説と読むのは違う、そうした読み方はこの小説の価値を下げるものでしかない。いるならば、カフカ以上の孤独を求めるものへこの小説を送りたい。

ところどころ破綻しているようにさえ見えるが、そのスタイルは強烈に魅力的である。いや、むしろ破綻しながらもどこまでも突っ走るこの書きっぷりが真の魅力なのかもしれない。
氷 (1985年) (サンリオSF文庫) Amazon書評・レビュー: 氷 (1985年) (サンリオSF文庫)より
B000J6WP2G
No.7
(4pt)

翻訳がいい

サンリオSF文庫の復刊。当時は読んだことがなかったカヴァンだが、ものすごく面白かった。アルビノの少女をめぐる主人公の執着。彼女との関係もよくわからないが、奇妙にエロチックな小説だ。

氷に象徴される世界の破滅と少女を追う主人公の狂気ともいうべき愛。翻訳がいいのか、とても美しい小説だ。

他の作品も読んでみたいが残念ながら入手困難らしい。探してみよう。
氷 (1985年) (サンリオSF文庫) Amazon書評・レビュー: 氷 (1985年) (サンリオSF文庫)より
B000J6WP2G
No.6
(4pt)

翻訳がいい

サンリオSF文庫の復刊。当時は読んだことがなかったカヴァンだが、ものすごく面白かった。アルビノの少女をめぐる主人公の執着。彼女との関係もよくわからないが、奇妙にエロチックな小説だ。

氷に象徴される世界の破滅と少女を追う主人公の狂気ともいうべき愛。翻訳がいいのか、とても美しい小説だ。

他の作品も読んでみたいが残念ながら入手困難らしい。探してみよう。
氷 Amazon書評・レビュー: より
4862381006
No.5
(5pt)

高揚感にともに流される

アンナ・カヴァン、死の前年に書かれた長編。
85年にサンリオ文庫から出ていたものを、同じ訳者による
大幅な改訳が施され、今年リリースされた。
夏に出た本だと思うが、この本を本当に読むには
寒い、凍えるような季節がいい。

自身に酔いしれるような男の、身勝手とも取れる行動が
延々と綴られており、現実と幻覚が何の前置きもなく入り混じる。
この描写に読者も酔うことになる。
文章に翻弄されて、その高揚感にともに流される体験が満喫できた。

登場人物にはひとりも名前がない。彼らの行動は、
実に自分本位でありながら弱々しく、痛ましさすら感じるが、
氷と雪に覆われた世界とあいまって、
読む間、ずっと不安な印象を抱き続けた。
また、具体的な国名なども当然ないが、極寒の地に、
氷に覆われていく世界の終わりを描き出した筆致は果てしなく美しい。
夢野久作「氷の涯」のラストを髣髴とさせる。印象的だった。

カヴァンの生涯の壮絶さはともかく(解説に詳しい)、
個人的には改訳版を出すに至った経緯などを記してくださった
山田さんの訳者あとがきがとてもよかった。拍手。
氷 (1985年) (サンリオSF文庫) Amazon書評・レビュー: 氷 (1985年) (サンリオSF文庫)より
B000J6WP2G
No.4
(5pt)

高揚感にともに流される

アンナ・カヴァン、死の前年に書かれた長編。
85年にサンリオ文庫から出ていたものを、同じ訳者による
大幅な改訳が施され、今年リリースされた。
夏に出た本だと思うが、この本を本当に読むには
寒い、凍えるような季節がいい。

自身に酔いしれるような男の、身勝手とも取れる行動が
延々と綴られており、現実と幻覚が何の前置きもなく入り混じる。
この描写に読者も酔うことになる。
文章に翻弄されて、その高揚感にともに流される体験が満喫できた。

登場人物にはひとりも名前がない。彼らの行動は、
実に自分本位でありながら弱々しく、痛ましさすら感じるが、
氷と雪に覆われた世界とあいまって、
読む間、ずっと不安な印象を抱き続けた。
また、具体的な国名なども当然ないが、極寒の地に、
氷に覆われていく世界の終わりを描き出した筆致は果てしなく美しい。
夢野久作「氷の涯」のラストを髣髴とさせる。印象的だった。

カヴァンの生涯の壮絶さはともかく(解説に詳しい)、
個人的には改訳版を出すに至った経緯などを記してくださった
山田さんの訳者あとがきがとてもよかった。拍手。
氷 Amazon書評・レビュー: より
4862381006
No.3
(2pt)

内容はともかく

新訳というので楽しみに待っていた…。しかし、内容はもうはるか昔の匂いではない、新たなチャレンジを微妙にアレンジしている。これを是とするか否とするかは論議の分かれる所であろうから触れるのはよそう。
しかし、そうした内容の誤差や意訳はまだ許容範囲としても、もう何も「異論」を唱えられないアンナ自身がこの表紙カバーを見たらどう思うだろう。この表紙を制作した張本人は、原作は無理としても、旧作品を読んでいないのではないか、あるいは、作品の味わいを理解する能力に欠けるのではないかとさえ思う。耽美に自己陶酔した自己満足は、ヤキの回った「手なり仕事」を思わせる。
鳴り物入りでの出版…、作者アンナの人生を思うと、彼女に代わってこの作品に施された「死に化粧」に「異論」を唱えたい。憤りすら感じる。
氷 Amazon書評・レビュー: より
4862381006
No.2
(2pt)

内容はともかく

新訳というので楽しみに待っていた…。しかし、内容はもうはるか昔の匂いではない、新たなチャレンジを微妙にアレンジしている。これを是とするか否とするかは論議の分かれる所であろうから触れるのはよそう。
しかし、そうした内容の誤差や意訳はまだ許容範囲としても、もう何も「異論」を唱えられないアンナ自身がこの表紙カバーを見たらどう思うだろう。この表紙を制作した張本人は、原作は無理としても、旧作品を読んでいないのではないか、あるいは、作品の味わいを理解する能力に欠けるのではないかとさえ思う。耽美に自己陶酔した自己満足は、ヤキの回った「手なり仕事」を思わせる。
鳴り物入りでの出版…、作者アンナの人生を思うと、彼女に代わってこの作品に施された「死に化粧」に「異論」を唱えたい。憤りすら感じる。
氷 (1985年) (サンリオSF文庫) Amazon書評・レビュー: 氷 (1985年) (サンリオSF文庫)より
B000J6WP2G
No.1
(4pt)

少女を守りながら残されたいくばくかの生を引き伸ばす男の姿が胸を打ちます。

1968年11月に享年67歳で謎の死を遂げて後に評価され始めた女流SF作家カヴァンが死の前年に発表して絶賛された伝説的名作が23年振りに改訳の上で復刊されました。本書は人類の終焉テーマに少女を追い続ける男の姿を絡ませた歴史的なSF長編小説です。地球全土を襲った異常気象による寒波の中、男は少女を追い続ける。何故か男を毛嫌いして逃げる少女。やがて某独裁国家を支配する強大な権力を持つ〈長官〉に捕えられ庇護を受ける少女を追って行く男だったが・・・。
本書の読み所は、男が追跡の途上で立ち寄る町や村の人々が危機的状況が進むにつれて人間性を喪失して行き躁鬱状態を繰り返す姿の描写、男がスパイ小説さながらに方々で危機を乗り越えて生き延び続ける強靭な生命力、そして男が妄念のように唯少女を救う事のみを生きる目的にして彷徨う姿にあるでしょう。男が望むのは性的な物では全くありませんし、恋愛対象ではなく大人と子供のような関係で、ひたすら守ってあげたいという渇望である事が純粋な感動を呼びます。個人の力では最早如何ともし難い運命を受け入れて、守るべき存在と共にいられる幸福を味わいながら、残されたいくばくかの生を引き伸ばす男の姿が胸を打ちます。唯、難を言えば男が少女に対して異常な程の思い入れを抱くに至った背景が最後まで明かされない所、物語の展開が大きな変化に乏しく面白味に欠ける点、人類の叡智や底力の頑張りが見られない所です(これは作品の性格上、止むを得ませんが)。細かい部分で物足りなさもありますが、構成がシンプルで理解し易く執筆された時代の息吹が感じられ、時を超えて読み継がれる普遍的な作品である事に疑いはありません。尚、巻末に著者の真価を認めたSF作家ブライアン・オールディス氏の懇切丁寧な解説文がついていて感動的です。最後に著者の作風の全貌を知る為に、他の傾向の作品群も多く読んで見たいと思いました。
氷 Amazon書評・レビュー: より
4862381006