終わらざる夏

【この小説が収録されている参考書籍】

評判

終わらざる夏の評価:

3.92/5点 レビュー 172件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点3.92pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全331件 261〜280 14/17ページ
No.71
(3pt)

翻訳編集長 若い医者 暴れん坊軍人の運命は、、、

岩手出身のこの奇妙な3人が終戦間近に召集される。
それぞれに生活があり、召集されたのにもそれぞれの理由があった。
上巻ではそれが丁寧に書かれていて感情移入できます。
さて 下巻では、、
終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18)より
4087450783
No.70
(5pt)

誰も戦いとうは、なかった…。

昨年、TVや書評などで注目されていた本だ。占守島(シュムシュ)でのロシアとの戦いにむけて、それぞれの兵とその家族がどのような状況だったのかが丁寧に描かれている。
あの時代の空気や人々の感性が敗戦を意識させる情勢の中で、切なく悲しく迫ってくる。45歳の夫を送り出す妻のやるせなさ、父を慕う学童疎開中の小学生、母親を戦災で亡くした少女。応召されないものの会社に残り同僚の無事を祈る上司や同僚、果ては動員計画を策定する大本営の士官やその通知を届ける役場の職員まで、それぞれの持ち場で、出口の見えない戦争に翻弄される個人の心情が切々と迫ってくる。
天皇の神格化に対する筆者の洞察などは、まさしくそれが真相などではないかと納得してしまうほど、説得力がある。常々、後世の人が、先の戦争を無謀な侵略戦争だったと一刀両断にする言質を耳にすることも多いが、その時代にあっては、そうせざるを得ない状況であったということも、しっかり認識しておくことが重要だと思う。徒に、当時の指導者を糾弾したり、または正当化したりせず、温故知新の心持で国際社会の中で一定の存在感と豊かさを実感できる日本にしていく責務が今の私たちにあることを改めて感じさせてくれた本だ。
終わらざる夏 上 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上より
4087713466
No.69
(5pt)

誰も戦いとうは、なかった…。

昨年、TVや書評などで注目されていた本だ。占守島(シュムシュ)でのロシアとの戦いにむけて、それぞれの兵とその家族がどのような状況だったのかが丁寧に描かれている。
あの時代の空気や人々の感性が敗戦を意識させる情勢の中で、切なく悲しく迫ってくる。45歳の夫を送り出す妻のやるせなさ、父を慕う学童疎開中の小学生、母親を戦災で亡くした少女。応召されないものの会社に残り同僚の無事を祈る上司や同僚、果ては動員計画を策定する大本営の士官やその通知を届ける役場の職員まで、それぞれの持ち場で、出口の見えない戦争に翻弄される個人の心情が切々と迫ってくる。
天皇の神格化に対する筆者の洞察などは、まさしくそれが真相などではないかと納得してしまうほど、説得力がある。常々、後世の人が、先の戦争を無謀な侵略戦争だったと一刀両断にする言質を耳にすることも多いが、その時代にあっては、そうせざるを得ない状況であったということも、しっかり認識しておくことが重要だと思う。徒に、当時の指導者を糾弾したり、または正当化したりせず、温故知新の心持で国際社会の中で一定の存在感と豊かさを実感できる日本にしていく責務が今の私たちにあることを改めて感じさせてくれた本だ。
終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18)より
4087450783
No.68
(4pt)

切なくなりました

終戦直後のソ連軍の侵攻。
領土拡張、戦後の発言力強化の意図がありありで読んでいて憤りを覚えました。

終戦を迎えたのに戦地に投入されるソ連兵。
そしてそれを迎え撃つ日本兵。
多分に複雑な心情だったのだろうと推察されます。

日本とロシアが主張する終戦日が違うため、北方領土問題は複雑化しているという
解説が最近多くなされています。
話としては知っていたのですが、実際問題としてこれを実感していたかというと
少々疑問です。
小説とはいえ、本書を読み当時を追体験することで問題の根深さが少しは体験できた気がしました。

これまで主役級だった登場人物の末期が、ソ連兵の視点で淡々と表現されています。
この点について物足りなさを感じる人も多いようですが、読み手側がそれぞれの登場人物の心情を想像する余地ができるので私は非常によいと思いました。
過度に泣かせるための演出を施すことは、本書に限り適当ではないのではと思いました。
終わらざる夏 下 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 下より
4087713474
No.67
(4pt)

切なくなりました

終戦直後のソ連軍の侵攻。
領土拡張、戦後の発言力強化の意図がありありで読んでいて憤りを覚えました。

終戦を迎えたのに戦地に投入されるソ連兵。
そしてそれを迎え撃つ日本兵。
多分に複雑な心情だったのだろうと推察されます。

日本とロシアが主張する終戦日が違うため、北方領土問題は複雑化しているという
解説が最近多くなされています。
話としては知っていたのですが、実際問題としてこれを実感していたかというと
少々疑問です。
小説とはいえ、本書を読み当時を追体験することで問題の根深さが少しは体験できた気がしました。

これまで主役級だった登場人物の末期が、ソ連兵の視点で淡々と表現されています。
この点について物足りなさを感じる人も多いようですが、読み手側がそれぞれの登場人物の心情を想像する余地ができるので私は非常によいと思いました。
過度に泣かせるための演出を施すことは、本書に限り適当ではないのではと思いました。
終わらざる夏 下 (集英社文庫 あ 36-20) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 下 (集英社文庫 あ 36-20)より
4087450805
No.66
(5pt)

1945年を舞台に、現代を映し出す

この小説は終戦の年、1945年を舞台に描かれた物語ですが、私には1945年という舞台を通して、現代を描いた作品として読めました。
生に対する軽視、意志の放棄、思考停止、個人の孤立、誰もが望んでいない方向へと世界が動いていく不条理さ、といったものが、2010年の現代にもみられるもののように思えます。
改めて、浅田次郎氏の、普遍性を描き出す、文学の力に惚れました。

「終わらざる夏」
夏は未だ終わっていないのでしょうか。
終わらざる夏 上 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上より
4087713466
No.65
(5pt)

1945年を舞台に、現代を映し出す

この小説は終戦の年、1945年を舞台に描かれた物語ですが、私には1945年という舞台を通して、現代を描いた作品として読めました。
生に対する軽視、意志の放棄、思考停止、個人の孤立、誰もが望んでいない方向へと世界が動いていく不条理さ、といったものが、2010年の現代にもみられるもののように思えます。
改めて、浅田次郎氏の、普遍性を描き出す、文学の力に惚れました。

「終わらざる夏」
夏は未だ終わっていないのでしょうか。
終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18)より
4087450783
No.64
(4pt)

多少のことは

登場人物が多いから把握しづらいところはある。
そんなわけで上巻はなかなか読み進めるのに時間がかかってしまった。
しかし、ここをきちんと読まないと下巻のそれぞれの生きざまに辿りつかない。
立場も過去もも未来も年齢もまったく違う人たちが、ひとからげで戦争という事象に巻き込まれてゆくのが戦争であるならば、こうした書き方も必要なのだろう。

ちゃんと読んでほしいと思う作品のネタばれはしたくないから、詳細には触れないが、鬼軍曹がよかった。
翻訳家も、少年兵も、赤紙を届け続ける男も、疎開先から東京を目指す子供も、先生も…。
彼らの誰ひとり、たとえ世の中においてどんな些細な役割を担う人間であっても、失ってもよい人生などではなかったのだ。
戦争をテーマにした作品は数多いが、登場人物の声が聞こえる作品は意外に少ない。
その点ではさすが浅田次郎、彼はやはり小説家なのだと認識させられた。
☆は5つでもよかったが、「蒼穹の昴」が5つならという意味です。
終わらざる夏 下 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 下より
4087713474
No.63
(4pt)

多少のことは

登場人物が多いから把握しづらいところはある。
そんなわけで上巻はなかなか読み進めるのに時間がかかってしまった。
しかし、ここをきちんと読まないと下巻のそれぞれの生きざまに辿りつかない。
立場も過去もも未来も年齢もまったく違う人たちが、ひとからげで戦争という事象に巻き込まれてゆくのが戦争であるならば、こうした書き方も必要なのだろう。

ちゃんと読んでほしいと思う作品のネタばれはしたくないから、詳細には触れないが、鬼軍曹がよかった。
翻訳家も、少年兵も、赤紙を届け続ける男も、疎開先から東京を目指す子供も、先生も…。
彼らの誰ひとり、たとえ世の中においてどんな些細な役割を担う人間であっても、失ってもよい人生などではなかったのだ。
戦争をテーマにした作品は数多いが、登場人物の声が聞こえる作品は意外に少ない。
その点ではさすが浅田次郎、彼はやはり小説家なのだと認識させられた。
☆は5つでもよかったが、「蒼穹の昴」が5つならという意味です。
終わらざる夏 下 (集英社文庫 あ 36-20) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 下 (集英社文庫 あ 36-20)より
4087450805
No.62
(4pt)

日本人の心

終戦をまじかに控え、すべてを失いつつある日本において、
人を思いやる心を失わない人達の姿が涙を誘いました。

ストーリー性はやや低いので、誰に感情移入してよいか難しい気もしました。
読み手側としては評価がわかれそうな一冊です。
終わらざる夏 上 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上より
4087713466
No.61
(4pt)

日本人の心

終戦をまじかに控え、すべてを失いつつある日本において、
人を思いやる心を失わない人達の姿が涙を誘いました。

ストーリー性はやや低いので、誰に感情移入してよいか難しい気もしました。
読み手側としては評価がわかれそうな一冊です。
終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18)より
4087450783
No.60
(4pt)

終わらざる頁

長すぎたのではないだろうか。波に乗っては潮が引き、微妙に感情を逆撫でする箇所にいらつきつつも、登場人物の魅力に励まされての読了だった。最後はあのような終わり方で納得する読者がどれぐらいいるのだろうか。何を意図して書いたのか、も読み手を不安にさせる筋立てである。
終わらざる夏 上 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上より
4087713466
No.59
(4pt)

終わらざる頁

長すぎたのではないだろうか。波に乗っては潮が引き、微妙に感情を逆撫でする箇所にいらつきつつも、登場人物の魅力に励まされての読了だった。最後はあのような終わり方で納得する読者がどれぐらいいるのだろうか。何を意図して書いたのか、も読み手を不安にさせる筋立てである。
終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18)より
4087450783
No.58
(3pt)

恥ずかしながら

本書で書かれている千島での戦いを、あまり知らなかった。
テーマも良く、浅田節も十二分に楽しめる。

ただ、少々消化不良。
登場人物の描写は相変わらず良いのだが、尻つぼみで終わっているのが残念。
勿論駄作ではなく、一読する価値有りの1冊なのだが、
上巻からの期待値が大きすぎたかな。

それにしても、戦争に勝ちも負けもない。
あるのはただただ悲しみだけだと改めて痛感した。
国と国との争いに民衆が巻き込まれて行く。
夢や希望を抱えた民衆がだ。
自分を含め、戦争を経験してない世代の人間が、夢や希望を諦めてる場合じゃないな。
終わらざる夏 下 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 下より
4087713474
No.57
(3pt)

恥ずかしながら

本書で書かれている千島での戦いを、あまり知らなかった。
テーマも良く、浅田節も十二分に楽しめる。

ただ、少々消化不良。
登場人物の描写は相変わらず良いのだが、尻つぼみで終わっているのが残念。
勿論駄作ではなく、一読する価値有りの1冊なのだが、
上巻からの期待値が大きすぎたかな。

それにしても、戦争に勝ちも負けもない。
あるのはただただ悲しみだけだと改めて痛感した。
国と国との争いに民衆が巻き込まれて行く。
夢や希望を抱えた民衆がだ。
自分を含め、戦争を経験してない世代の人間が、夢や希望を諦めてる場合じゃないな。
終わらざる夏 下 (集英社文庫 あ 36-20) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 下 (集英社文庫 あ 36-20)より
4087450805
No.56
(4pt)

戦争とは何か、いのちを落とした多くの人びとが何を残したか

先の大戦において、千島列島の中でカムチャッカ半島にもっとも近い占守(シュムシュ)島でどういう戦争が展開されたかは、多分、余り多くの人の知るところでないと思われます。当時の大本営ですら、それを予測するところ少なかったと本書においても描かれます。確かに、そこはソ連と鼻をつき合わせる地ではあるものの、当時の最大の敵、アメリカへの最短コースに位置する地でもあり、実際にアメリカはアッツ島の奪還を果たしていましたから、千島でアメリカの来襲を防ぐことが主要な関心であったことは理由があります。ところが、実際には、終戦3日目になってカムチャツカの尖端からソ連軍が攻め込んできたのでした。作中ではスターリンの領土的野望の表れとほのめかされています。

最終盤で、舞台はシベリアのラーゲリに移ります。そして最終章は、凍土の土から顔を出した野花のごとく春の陽に輝くヘンリー・ミラーの「セクサス」の一場面なのです。

主要な登場人物が、戦争末期、大木に降った雨粒のごとくそれぞれの幹を伝い紆余曲折の後にたどり着いた根元には、戦争の不条理が待っていました。しかし、それがそのまま北国の土に染みこんで終わりなのではなく、不死身に蘇り花を咲かすこととなるのです。北の最果ての島を主な舞台に展開された戦を通して、あの大戦が何であったのか、そこで命を落とした多くの人びとが示していることは何であるのか、それらをじわりと心に沈潜させる物語、それが「終わらざる夏」なのだろうと思います。
終わらざる夏 下 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 下より
4087713474
No.55
(4pt)

戦争とは何か、いのちを落とした多くの人びとが何を残したか

先の大戦において、千島列島の中でカムチャッカ半島にもっとも近い占守(シュムシュ)島でどういう戦争が展開されたかは、多分、余り多くの人の知るところでないと思われます。当時の大本営ですら、それを予測するところ少なかったと本書においても描かれます。確かに、そこはソ連と鼻をつき合わせる地ではあるものの、当時の最大の敵、アメリカへの最短コースに位置する地でもあり、実際にアメリカはアッツ島の奪還を果たしていましたから、千島でアメリカの来襲を防ぐことが主要な関心であったことは理由があります。ところが、実際には、終戦3日目になってカムチャツカの尖端からソ連軍が攻め込んできたのでした。作中ではスターリンの領土的野望の表れとほのめかされています。

最終盤で、舞台はシベリアのラーゲリに移ります。そして最終章は、凍土の土から顔を出した野花のごとく春の陽に輝くヘンリー・ミラーの「セクサス」の一場面なのです。

主要な登場人物が、戦争末期、大木に降った雨粒のごとくそれぞれの幹を伝い紆余曲折の後にたどり着いた根元には、戦争の不条理が待っていました。しかし、それがそのまま北国の土に染みこんで終わりなのではなく、不死身に蘇り花を咲かすこととなるのです。北の最果ての島を主な舞台に展開された戦を通して、あの大戦が何であったのか、そこで命を落とした多くの人びとが示していることは何であるのか、それらをじわりと心に沈潜させる物語、それが「終わらざる夏」なのだろうと思います。
終わらざる夏 下 (集英社文庫 あ 36-20) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 下 (集英社文庫 あ 36-20)より
4087450805
No.54
(4pt)

大木に降る雨が、多くの幹を伝って根元に向かうがごとく

ストーリーで読ませる浅田次郎の作品ですから、具体的な筋書きには出来るだけ触れないようにします。

根元から何本にも枝分かれした大木にたとえられる物語です。枝は、云うまでもなく登場人物です。読者は、その木に降りかかる雨粒のように、いろいろな枝を伝っては根元に向け時間とともに流れ下ります。

時代は、先の大戦の末期、アッツ島の玉砕の余燼が残る頃から終戦後まで、とりわけ、ポツダム宣言受諾の8月15日を挟む比較的短い時期が描かれます。ところは、主に、千島列島の最北端、カムチャツカ半島に鼻付き合わせる占守(シュムシュ)島です。

物語は、占守島における思いがけない戦いに向け、終戦間近な盛岡、東京、信州などを舞台に何人もの人びとが登場し展開してゆきます。上巻は、それらの人たち(ソ連兵も登場します)が、戦争に巻き込まれ翻弄されながら、主要登場人物が占守島に舟で向かうところまでが描かれます。すなわち、何人もの登場人物が、互いにふれあい影響しあいながら、大木に降りかかった雨ツブとともに、それぞれの幹を伝って根元に向かって流れ下るように、千島の果てに向かって濃縮してゆく物語が展開するのです。

なお、上下巻を通じて顔を現す多くの登場人物はいずれも良い人たちです。悪い人間は一人も登場しません。懲役帰りのヤクザも、鬼熊と呼ばれる連戦の兵も優しいのです。それは、戦争という権力及び個人の暴力が大手を振る不条理の中で、いっそう際立っています。浅田文学のひとつの特徴だと思われます。
終わらざる夏 上 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上より
4087713466
No.53
(4pt)

大木に降る雨が、多くの幹を伝って根元に向かうがごとく

ストーリーで読ませる浅田次郎の作品ですから、具体的な筋書きには出来るだけ触れないようにします。

根元から何本にも枝分かれした大木にたとえられる物語です。枝は、云うまでもなく登場人物です。読者は、その木に降りかかる雨粒のように、いろいろな枝を伝っては根元に向け時間とともに流れ下ります。

時代は、先の大戦の末期、アッツ島の玉砕の余燼が残る頃から終戦後まで、とりわけ、ポツダム宣言受諾の8月15日を挟む比較的短い時期が描かれます。ところは、主に、千島列島の最北端、カムチャツカ半島に鼻付き合わせる占守(シュムシュ)島です。

物語は、占守島における思いがけない戦いに向け、終戦間近な盛岡、東京、信州などを舞台に何人もの人びとが登場し展開してゆきます。上巻は、それらの人たち(ソ連兵も登場します)が、戦争に巻き込まれ翻弄されながら、主要登場人物が占守島に舟で向かうところまでが描かれます。すなわち、何人もの登場人物が、互いにふれあい影響しあいながら、大木に降りかかった雨ツブとともに、それぞれの幹を伝って根元に向かって流れ下るように、千島の果てに向かって濃縮してゆく物語が展開するのです。

なお、上下巻を通じて顔を現す多くの登場人物はいずれも良い人たちです。悪い人間は一人も登場しません。懲役帰りのヤクザも、鬼熊と呼ばれる連戦の兵も優しいのです。それは、戦争という権力及び個人の暴力が大手を振る不条理の中で、いっそう際立っています。浅田文学のひとつの特徴だと思われます。
終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18) Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上 (集英社文庫 あ 36-18)より
4087450783
No.52
(3pt)

思ったより・・・

広告の内容に惹かれ、おもしろいそうだと思い、著者の作品を初めて読みました。
しかし、この作品で最も期待していた、占守島での終戦調停の様子などはまるでなし。ロシア上陸後の記述も、ロシア将校の回想風で内容も少なく、玉音放送(日本の敗戦)後に占守島で何があったのか?を知りたいと思い、ドキドキしている方には物足りないかもしれません。
ただ、戦時中のいろいろな階層の人々(軍人、民間人など)の視点から、時にはロシア人の視点も含ながら物語を展開しているので、最後まで飽きずに読めると思います。
占守島で本当は何があったのか気になる方は、大野芳氏著「8月17日ソ連軍上陸す 最果ての要衝・占守島攻防記」もあわせて読むと、よりこの作品を楽しめます。
終わらざる夏 上 Amazon書評・レビュー: 終わらざる夏 上より
4087713466