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(短編集)
待っている男
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待っている男の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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短編小説の中の設定やオチの面白さは 本書に限らず、 阿刀田高の短編全般に言えることだ。 出版社によってなんとなく それぞれのカラーがあるような気がするが、 25年以上前から読み続けてきて、 特に面白い話が多いなと思ったのは 角川文庫、文春文庫、講談社文庫だ。 その中でも角川は、 さすが角川と思わされるような話が多い気がする。 元々新潮文庫で出版された長編『花の図鑑』まで 角川から再発したのだから、 面白いもの見つける触手があったのだと思ってしまう。 阿刀田の小説は 短編、中編、長編、エッセイ合わせて 100冊以上読んできたが、 とてもじゃないけど 1冊ずつレビューを書くのはたいへん。 阿刀田の短編は推理小説として楽しめる作品が多いので なるべくネタバラシにならないように なおかつ一編ごとの面白さを解説するのは難しい。 本書だと、「待っている男」が待っているもの、 「西瓜流し」で供養したもの、 「藁の人形」で主人公二人が心の中で懺悔したこと、 「ありふれた誘拐」で誘拐されたものなど、 平凡な中にありふれた恨み、 生きた人間の恐ろしさが おどろおどろしくなく 快活な筆致で語られていく。 阿刀田の男女の物語はどれも面白い。 | ||||
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昭和61年初版発行ということは、このミステリー短編集が書かれ てから既に四半世紀が経っているということになる。ああ時の過ぎ るのは早いと例によって僕は感慨に浸る。阿刀田高の作品は新聞小 説でちらっと見たことがあるだけで読んだことがなかった。僕の中 で阿刀田高という作家をミステリー作家とは認識していなかったの で、今回初めて阿刀田の書いた本を読んで意外な感じがした。 表題作「待っている男」に始まり、全てミステリーなのだ。探偵に よる謎解きではなく、何か不可思議な流れが人を犯罪に誘って行く 光景を描くのが巧みな作家だと思った。そしてこの本のほぼ全編を 男と女の不倫の性交渉の情景が覆うと言っても過言ではない。ミス テリーと不倫の性関係を描くことが現代日本で読者の要望に応える 最も手っ取り早い道なのだろうか? 阿刀田は非常にスマートに、 この要望に対応しているような印象を受けた。 ところで、この作品集の中盤では、「西瓜流し」と称して人間の首 を川に流させ、覗き趣味の老人の眼球には死後も「鈍色の眼」とな って水槽の中から愛欲シーンを凝視させた。そして妙に「鳥」のよ うな印象の若者が女に産ませた卵の中に人間の顔のようなものが出 てきたりして、グロテスクが気味の悪いほどエスカレートして行く 。 がしかし、最終章前の「藁人形」は綺麗な十字架に変わり、「あり ふれた誘拐」はしたたかな女が間抜け男の子供を孕むことで男の首 根っこを押さえる。中盤の悪趣味で読者を辟易とさせておいて、最 終章でお洒落な落ちをつけて、この短編集を締めるあたり、この作 家は相当にしたたかだ。 僕がこの作品集で一番気に入った作品は前半に出てくる「紙の女」 で、これは手塚治虫初期の名作「新世界ルルー」と映画の傑作 「バックトゥザフューチャー」を連想させる作品だ。ただここでは 時間というか次元というか、そういうものを超えていって殺人を犯 した男が報いを受けないで済みそうなのが、どうも面白くない。 | ||||
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