(短編集)

ビタミンF

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評判

ビタミンFの評価:

3.98/5点 レビュー 146件。 B ランク

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平均点3.98pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全287件 141〜160 8/15ページ
No.147
(5pt)

重松清とはこういう作家

重松清の小説を最初に読むとしたらこの『ビタミンF』が最適だろう。
彼の小説の登場人物の大半は思春期の子供か、そんな子供を持つ父親だ。この小説でも、そんな彼らを中心としたオムニバス小説になる。
どれも素晴らしい作品ではあるが、中でも「セッちゃん」は秀悦であり、重松清の小説とはなにか、ということを凝縮したような物語でもある。
主人公は中学生の娘を持った父親で、娘は最近転校してきたセッちゃんという女子生徒がクラスに馴染めないでいる様子を父親に語る。初めは呑気に、作中の父親同様、そんなセッちゃんの話を聞かされても困るわけで、ああそうなのか可哀想だな、と思うのだけど、あるところを境にしてガラリと物語の流れが変わり、一転して世界観が変わる。その瞬間の、ぞわっとした感覚がたまらく、それでいてとたんにこの物語の胸を締めつけられるような残酷性を感じる。
重松清の小説というのは、概ねこういった物語が多い。残酷な世の中、どうしようもない現実、それが無垢な子供に、なにもできない大人にふりかかる。
そこで彼らは苦しむ。とても読んでいられずに何度も本を閉じたくなる。しかし同時に先が、彼らがいったいどうなるのか気になるので、辛い思いをしながらも読む。すると、その先には必ず希望が待っている。そう、重松清の小説は必ず最後には希望が待っている。それが救いなのだ。もちろんすべてがさっぱり解決するわけではない。そんな簡単に問題は解決しない。しかし、それでも主人公達は必ずなにかしらの希望を見つけ出し、そこに向かって進みだそうと足を一歩踏み出す。それが読んでいる人間にとって救いになる。
「セッちゃん」も同様に、決して問題は解決していない。むしろこれからが本番になる。でも最後にあたたかな希望によって締めくくられる。多くの重松清作品のように。
だからもしこれから重松清の作品を読むとして、「セッちゃん」が好きであれば存分に彼の作品を読むといいと思う。一方、もしこれがあまり好きではなかったとしたら、重松清の作品はあまり合わないかもしれない。
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.146
(5pt)

暖かい平凡物語

平凡・とことん平凡な登場人物の暖かい物語。スターも天才も極悪人も出てこない平凡な人間たちが平凡に悩み生きる。読後爽やかな平凡物語
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035
No.145
(5pt)

暖かい平凡物語

平凡・とことん平凡な登場人物の暖かい物語。スターも天才も極悪人も出てこない平凡な人間たちが平凡に悩み生きる。読後爽やかな平凡物語
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.144
(1pt)

直木賞ってこんなもんなの?

偶々、直木賞の本でも読んで大人文学の仲間入りでもするかと
手にとったこの本でしたが、結果はだから何?って感じでした。
ステレオタイプの登場人物たちのどっきりしないドキドキしない
つまらない話が綴られているという印象でした。

これ以来、自然と○○賞物は避けてしまいます。
ただ子育てに悩み、疲れたお父さんにはお勧めでしょうかね。
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035
No.143
(1pt)

直木賞ってこんなもんなの?

偶々、直木賞の本でも読んで大人文学の仲間入りでもするかと
手にとったこの本でしたが、結果はだから何?って感じでした。
ステレオタイプの登場人物たちのどっきりしないドキドキしない
つまらない話が綴られているという印象でした。

これ以来、自然と○○賞物は避けてしまいます。
ただ子育てに悩み、疲れたお父さんにはお勧めでしょうかね。
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.142
(5pt)

おとうさんの、現実的なファンタジー

ビタミンとは、生命活動に欠かせない有機物なのだそうだ。
それは炭水化物のように大量には要らない、ほんの少し摂取すれば十分なのだ。

しかしながら現代社会では、心に効く“ビタミンF”を摂るのは難しい。
私自身もビタミンF不足であるし、この物語に出てくるおとうさん達も最初はそうだ。

では、このビタミンはどこで得ることが出来るのだろうか。
それは、彼らが生活のあちこち散らばっていることを教えてくれる。
頼りない息子、いじめに遭う娘、交流がない両親・・・
良好とは言えない互いの関係の中で、ほんの少しだけの勇気を出すだけで、
“希望”というビタミンが少しだけ得られるのだ。

彼らには、理想の家族生活とは違う、という認識があった。
しかし皆最後に、これから好転するかもしれない、という希望を持つ。
実際に好転するのかはまた別問題で、家族を前向きに捉え始めることが重要なのだ。

そこに至るプロセスは、出来すぎている気もするが、
ひとつのファンタジーなのだと思うと、すんなり受け入れられる。

そういった、優しく心温まる物語。読後感が大変よいので星5つ。
ビタミンFをおすそ分けしてもらいたい人にお薦め。
そして過去にも未来にも、おとうさんとなることのない女性に読んで欲しい。
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035
No.141
(5pt)

おとうさんの、現実的なファンタジー

ビタミンとは、生命活動に欠かせない有機物なのだそうだ。
それは炭水化物のように大量には要らない、ほんの少し摂取すれば十分なのだ。

しかしながら現代社会では、心に効く“ビタミンF”を摂るのは難しい。
私自身もビタミンF不足であるし、この物語に出てくるおとうさん達も最初はそうだ。

では、このビタミンはどこで得ることが出来るのだろうか。
それは、彼らが生活のあちこち散らばっていることを教えてくれる。
頼りない息子、いじめに遭う娘、交流がない両親・・・
良好とは言えない互いの関係の中で、ほんの少しだけの勇気を出すだけで、
“希望”というビタミンが少しだけ得られるのだ。

彼らには、理想の家族生活とは違う、という認識があった。
しかし皆最後に、これから好転するかもしれない、という希望を持つ。
実際に好転するのかはまた別問題で、家族を前向きに捉え始めることが重要なのだ。

そこに至るプロセスは、出来すぎている気もするが、
ひとつのファンタジーなのだと思うと、すんなり受け入れられる。

そういった、優しく心温まる物語。読後感が大変よいので星5つ。
ビタミンFをおすそ分けしてもらいたい人にお薦め。
そして過去にも未来にも、おとうさんとなることのない女性に読んで欲しい。
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.140
(2pt)

うすっぺらなステレオタイプ

30代後半の男性を主人公に据えた短編集。「自分の人生はこんなものなのか」と思い悩んで妻に辛く当たる夫や、息子との距離の取り方がわからず、「もっと強い息子が良かった」と考える父親などが出てくる。

 少なくとも、30代中盤〜後半の僕の友人たちは、こんなにつまらない人物ではない。30代後半の男性にありそうな要素をかき集めて、結局、どこにもいないうすっぺらな人物を作り上げてしまった印象だ。こういうのを、ステレオタイプというのだろう。 なぜこの作品が直木賞を獲ったのか謎である。
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035
No.139
(2pt)

うすっぺらなステレオタイプ

30代後半の男性を主人公に据えた短編集。「自分の人生はこんなものなのか」と思い悩んで妻に辛く当たる夫や、息子との距離の取り方がわからず、「もっと強い息子が良かった」と考える父親などが出てくる。

 少なくとも、30代中盤〜後半の僕の友人たちは、こんなにつまらない人物ではない。30代後半の男性にありそうな要素をかき集めて、結局、どこにもいないうすっぺらな人物を作り上げてしまった印象だ。こういうのを、ステレオタイプというのだろう。 なぜこの作品が直木賞を獲ったのか謎である。
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.138
(3pt)

通り過ぎていく日常

平穏な日常におきた事件を
もとに家族や日常を見直すような
視点で書かれています。

気にしなければ、通り過ぎていく
日常に焦点を当てています。

私には残念ながら、
どれもしっくり来ませんでしたが、
表現力のある文章だと思いました。
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035
No.137
(3pt)

通り過ぎていく日常

平穏な日常におきた事件を
もとに家族や日常を見直すような
視点で書かれています。

気にしなければ、通り過ぎていく
日常に焦点を当てています。

私には残念ながら、
どれもしっくり来ませんでしたが、
表現力のある文章だと思いました。
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.136
(5pt)

こころのビタミン

重松さんの作品を読んで感じるのは「慈悲の文学」ということである。

「慈悲」なんて書くと大仰なようだけど、漢文読みで「悲しみを慈しむ」と言うこと。
重松さんの作品には、悲しみを慈しむ気持ちが常に感じられます。

悲しみに浸ると言うことではなく、悲しみを慈しむことは哀れな自分であってもその姿そのままに愛することであり、それはつまり「生」を大切にすることである。

「母帰る」という作品は、まさに身近に起こった実話にそっくりで驚きを禁じ得なかった。
全く納得できない現実だった。
「理由」がわからなかった。
でも「理由」とか「意味」とかで表すことのできない何かが存在する。

今回のことで、いろんな角度から現実を見直して、理屈ではとうてい結論づけることのできない感情におぼろげながら思いをはせることができた。

今の時代に最大に欠落している他者への「想像力」。
多くの人が重松作品に触れていけば、きっと世の中に暖かみが生まれてくると確信する。

そういう意味で重松作品は心のビタミン剤である。
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035
No.135
(5pt)

こころのビタミン

重松さんの作品を読んで感じるのは「慈悲の文学」ということである。

「慈悲」なんて書くと大仰なようだけど、漢文読みで「悲しみを慈しむ」と言うこと。
重松さんの作品には、悲しみを慈しむ気持ちが常に感じられます。

悲しみに浸ると言うことではなく、悲しみを慈しむことは哀れな自分であってもその姿そのままに愛することであり、それはつまり「生」を大切にすることである。

「母帰る」という作品は、まさに身近に起こった実話にそっくりで驚きを禁じ得なかった。
全く納得できない現実だった。
「理由」がわからなかった。
でも「理由」とか「意味」とかで表すことのできない何かが存在する。

今回のことで、いろんな角度から現実を見直して、理屈ではとうてい結論づけることのできない感情におぼろげながら思いをはせることができた。

今の時代に最大に欠落している他者への「想像力」。
多くの人が重松作品に触れていけば、きっと世の中に暖かみが生まれてくると確信する。

そういう意味で重松作品は心のビタミン剤である。
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.134
(2pt)

ありきたりな風景

ごく普通の人の、ありがちな風景を切り取った日常・・・
そんな感じの短編集でした。
それほど、ドキドキ感もなく
何かに感動する・・・・といった作品ではありませんでした。
一つ一つが、自分人も共感するような部分は、沢山ありましたが。
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035
No.133
(2pt)

ありきたりな風景

ごく普通の人の、ありがちな風景を切り取った日常・・・
そんな感じの短編集でした。
それほど、ドキドキ感もなく
何かに感動する・・・・といった作品ではありませんでした。
一つ一つが、自分人も共感するような部分は、沢山ありましたが。
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.132
(5pt)

重松清が作った現代を生きる人たちへの心の栄養剤。名作。

family,father,friend,fight,fragile,fortune...
それらのキーワードを埋め込んだ短編小説を重なり合わせて、結晶化して、
重松清が作った現代を生きる人たちへの心の栄養剤、ビタミンF。
読んだ後、あったかい気持ちにさせられる。

重松清は本当に物語を書くのが「上手い」。「巧い」のではなく、「上手い」。技巧的にすぐれているだけでなく、人の心を掴むことが出来る作家だな、と思う。中年具合を見せるために「仮面ライダー」をカラオケで歌わせたり、中学生に「ちょーむかつく」など、少し間違えたら寒い小道具を絶妙なバランスで書く。要所要所の表現、伏線のようにある言葉を置いて、大事なシーンでもう一度使って読者を感動させる構成。

そして、現代を生きるひとりひとりの辛さに対して、物語で安っぽい問題解決をしめさない。問題(いじめ、不登校、家族崩壊)は最後になっても解決しない。ほんの少しだけ、でもそれが一番大切な、スイッチが変わることだけが用意されている。それが読者の共感と感動を呼んでいるんだと思う。

この作品は短編集でハズレがないんだけど、僕の特にお気に入りは「ゲンコツ」「セッちゃん」「母、帰る」。

・「ゲンコツ」
「ゲンコツ」では、中年サラリーマンの気持ちを書く。主人公が歳を取ってきた自分にシラけだし、若者との差を感じ、「愛」「夢」「希望」という歌詞が出てくる歌を歌うのが気恥ずかしくてたまらなくなっている。

そんな主人公の家のマンションに中学生たちの「ガキたち」がたむろし出す。妻に話をもちかけられ、強がるが、関わりたくない本音がある。子供のころは正義、というほど大げさではなかったかもしれないけど、弱い者いじめや理不尽にも立ち向かおうとする自分がいた。そんな主人公は自分の「ゲンコツ」が、あの頃よりもたよりなくなったと思う。

そんな主人公が、ガキどもがいない遅い時間帯に帰宅するために友人と飲んだ帰り道で、自分の仕事である自動販売機にイタズラするガキどもを発見する。こちらに気付いていながら「かんけーねーよ」とほざくガキたちに、「なめるなよ。」とうめき声をざらつかせる。

ゲンコツを、握り締める。

・「セッちゃん」
「セッちゃん」は両親の自慢の娘の話。気立てが良くて、学校であったことを楽しそうに話してくれる娘がある日、クラスで嫌われている「セッちゃん」のことを話し出す。セッちゃんはクラスでイジメられていて、みんなから嫌われている。両親も耳障りが良い話ではない。

気の良い娘がセッちゃんが嫌われるのはしょうがない、と言う。「好き嫌いは個人の自由」と耳にざらつく言葉を吐き出す。何かに意地をはっているかのように。

ある日、そのセッちゃんの正体を両親は気付く。

父親は駅前の商店街を歩いているときに「身代わり雛」を見つける。子供の不幸、たとえば病気の部分などに傷をつけて、川に流すそうだ。それを一体買う。そして思う。

<セッちゃんは、加奈子の中のどこにいるんだろう・・・。>

この作品が良いのは、娘の本音を言いたいけれど、それを言ったら自分自身が崩壊してしまう、でも何かのかたちにして言わなければ自分自身がおかしくなってしまうという気持ちを書いている部分。そしてそれ以上に、親の助けてあげたいけれど、娘の気持ちを考えて動けない親のやりきれない気持ちが切ない。

日曜日に家族でドライブに行く。お弁当は娘の好物だけをつめて。

身代わり雛を流すときの娘の「でも、なんかもったいなくない?けっこうかわいいじゃん、この人形」「マジもったいないよ」という言葉に父親は「だから身代わりになってくれるんだよ。捨てたいような人形に身代わりになってもらうのって、なんか悔しいもんな」と返す。

この言葉が、娘を思う親の気持ちそのものだと思う。

物語の最後になっても、問題は解決しない。娘は「そんなに現実、甘くないもん」と言う。父親は<ゲンジツを、やわらかい響きで言えるようになった。それでいい>と思う。

娘と、両親の何かのスイッチが変わったことを思わせるラストシーンは本当に感動的。

・「母、帰る」
「母、帰る」は三十七歳の主人公の話。故郷を出て、東京で家庭を持っている。故郷の父親が子育てを終えてから男を作って家を出た妻におたがいひとり身になったんなら、もう一度戻ってきてくれ、と持ちかけたという。

母親は自分たちを捨てたわけじゃない。だが、長いあいだ一人で暮らしてきた父親のことを思うと、主人公は煮え切れない、わりきれない気持ちになる。姉はもう一度父親が母親と暮らすことに断固反対する。

主人公は故郷に帰って、東京に出て家庭を作った自分を確認する。離婚して子供を育てながら自分の生きがいに生きる姉を見る。姉と別れた男と話す。

そして、父親と話し、父親の母親への気持ちを聞く。そして「お父さん」でも「おじいちゃん」でもなく、大人になった自分を見つめる「年老いた父親」のまなざしに気付き、胸があつくなる。

僕が37歳になったときに、父親は70歳。そのとき僕は年老いた父を見て、どんなことを思うのだろうか。誰しも「会社での自分」「友達から友人としてみられた自分」「妻から見た夫としての自分」「子供からみた父親としての自分」が出来ていくんだろう。それでも、変わらない部分として「あの両親に育てられた息子としての自分」はこれからもずっとずっと変わらない事実なんだろうと思う。

そのことを思うと、たまにかかってきて鬱陶しいと思う故郷からの電話に、
両親に、少しだけ優しくなれそうな自分がいる。
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035
No.131
(5pt)

重松清が作った現代を生きる人たちへの心の栄養剤。名作。

family,father,friend,fight,fragile,fortune...
それらのキーワードを埋め込んだ短編小説を重なり合わせて、結晶化して、
重松清が作った現代を生きる人たちへの心の栄養剤、ビタミンF。
読んだ後、あったかい気持ちにさせられる。

重松清は本当に物語を書くのが「上手い」。「巧い」のではなく、「上手い」。技巧的にすぐれているだけでなく、人の心を掴むことが出来る作家だな、と思う。中年具合を見せるために「仮面ライダー」をカラオケで歌わせたり、中学生に「ちょーむかつく」など、少し間違えたら寒い小道具を絶妙なバランスで書く。要所要所の表現、伏線のようにある言葉を置いて、大事なシーンでもう一度使って読者を感動させる構成。

そして、現代を生きるひとりひとりの辛さに対して、物語で安っぽい問題解決をしめさない。問題(いじめ、不登校、家族崩壊)は最後になっても解決しない。ほんの少しだけ、でもそれが一番大切な、スイッチが変わることだけが用意されている。それが読者の共感と感動を呼んでいるんだと思う。

この作品は短編集でハズレがないんだけど、僕の特にお気に入りは「ゲンコツ」「セッちゃん」「母、帰る」。

・「ゲンコツ」
「ゲンコツ」では、中年サラリーマンの気持ちを書く。主人公が歳を取ってきた自分にシラけだし、若者との差を感じ、「愛」「夢」「希望」という歌詞が出てくる歌を歌うのが気恥ずかしくてたまらなくなっている。

そんな主人公の家のマンションに中学生たちの「ガキたち」がたむろし出す。妻に話をもちかけられ、強がるが、関わりたくない本音がある。子供のころは正義、というほど大げさではなかったかもしれないけど、弱い者いじめや理不尽にも立ち向かおうとする自分がいた。そんな主人公は自分の「ゲンコツ」が、あの頃よりもたよりなくなったと思う。

そんな主人公が、ガキどもがいない遅い時間帯に帰宅するために友人と飲んだ帰り道で、自分の仕事である自動販売機にイタズラするガキどもを発見する。こちらに気付いていながら「かんけーねーよ」とほざくガキたちに、「なめるなよ。」とうめき声をざらつかせる。

ゲンコツを、握り締める。

・「セッちゃん」
「セッちゃん」は両親の自慢の娘の話。気立てが良くて、学校であったことを楽しそうに話してくれる娘がある日、クラスで嫌われている「セッちゃん」のことを話し出す。セッちゃんはクラスでイジメられていて、みんなから嫌われている。両親も耳障りが良い話ではない。

気の良い娘がセッちゃんが嫌われるのはしょうがない、と言う。「好き嫌いは個人の自由」と耳にざらつく言葉を吐き出す。何かに意地をはっているかのように。

ある日、そのセッちゃんの正体を両親は気付く。

父親は駅前の商店街を歩いているときに「身代わり雛」を見つける。子供の不幸、たとえば病気の部分などに傷をつけて、川に流すそうだ。それを一体買う。そして思う。

<セッちゃんは、加奈子の中のどこにいるんだろう・・・。>

この作品が良いのは、娘の本音を言いたいけれど、それを言ったら自分自身が崩壊してしまう、でも何かのかたちにして言わなければ自分自身がおかしくなってしまうという気持ちを書いている部分。そしてそれ以上に、親の助けてあげたいけれど、娘の気持ちを考えて動けない親のやりきれない気持ちが切ない。

日曜日に家族でドライブに行く。お弁当は娘の好物だけをつめて。

身代わり雛を流すときの娘の「でも、なんかもったいなくない?けっこうかわいいじゃん、この人形」「マジもったいないよ」という言葉に父親は「だから身代わりになってくれるんだよ。捨てたいような人形に身代わりになってもらうのって、なんか悔しいもんな」と返す。

この言葉が、娘を思う親の気持ちそのものだと思う。

物語の最後になっても、問題は解決しない。娘は「そんなに現実、甘くないもん」と言う。父親は<ゲンジツを、やわらかい響きで言えるようになった。それでいい>と思う。

娘と、両親の何かのスイッチが変わったことを思わせるラストシーンは本当に感動的。

・「母、帰る」
「母、帰る」は三十七歳の主人公の話。故郷を出て、東京で家庭を持っている。故郷の父親が子育てを終えてから男を作って家を出た妻におたがいひとり身になったんなら、もう一度戻ってきてくれ、と持ちかけたという。

母親は自分たちを捨てたわけじゃない。だが、長いあいだ一人で暮らしてきた父親のことを思うと、主人公は煮え切れない、わりきれない気持ちになる。姉はもう一度父親が母親と暮らすことに断固反対する。

主人公は故郷に帰って、東京に出て家庭を作った自分を確認する。離婚して子供を育てながら自分の生きがいに生きる姉を見る。姉と別れた男と話す。

そして、父親と話し、父親の母親への気持ちを聞く。そして「お父さん」でも「おじいちゃん」でもなく、大人になった自分を見つめる「年老いた父親」のまなざしに気付き、胸があつくなる。

僕が37歳になったときに、父親は70歳。そのとき僕は年老いた父を見て、どんなことを思うのだろうか。誰しも「会社での自分」「友達から友人としてみられた自分」「妻から見た夫としての自分」「子供からみた父親としての自分」が出来ていくんだろう。それでも、変わらない部分として「あの両親に育てられた息子としての自分」はこれからもずっとずっと変わらない事実なんだろうと思う。

そのことを思うと、たまにかかってきて鬱陶しいと思う故郷からの電話に、
両親に、少しだけ優しくなれそうな自分がいる。
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.130
(5pt)

何度も読み返すことになりそうです(^0^)

7作の短編。

いじめ、男女関係などなど、
ありふれた、一見するとジメっとしそうな日常が描かれている。
それなのに、後味は爽やかで、時には感動のあまり目を潤ませてしまう。

読み終わったあと、すごく、
気分が軽く、晴れやかになりますから、
何度も、何度も、読み返すことになりそうです。
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035
No.129
(5pt)

何度も読み返すことになりそうです(^0^)

7作の短編。

いじめ、男女関係などなど、
ありふれた、一見するとジメっとしそうな日常が描かれている。
それなのに、後味は爽やかで、時には感動のあまり目を潤ませてしまう。

読み終わったあと、すごく、
気分が軽く、晴れやかになりますから、
何度も、何度も、読み返すことになりそうです。
ビタミンF (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ビタミンF (新潮文庫)より
4101349150
No.128
(2pt)

嫌い・・・

これまた・・・焚書したいくらい嫌いな本でした

ビタミンになるどころか、悪い酒に酔ったよな気分。

飲んでいて、たまーにいくら飲んでも酔えなくて、反対に暗く気分が沈むことあるんですが、

そんな感じ。

なんていうんでしょうか。

ご都合主義?

7つの短編なんですが、それぞれに、「ちょっとした問題」か゜起きて、

40歳近くの主人公たちが、それなりに前向きに対応したら、

なんとなくうまい方向に流れが変わりましたみたいな。

世の中そんなに甘くねえよ。

というか、こいつらの悩み自体が、恵まれた小市民の、ほんのちょっとした事件でさー

小説としては、うまいのでしょうけど。

どうも私には「東京タワー」と同じくらい合わないストーリーでした。
ビタミンF Amazon書評・レビュー: ビタミンFより
4104075035