春にして君を離れ
評判
春にして君を離れの評価:
4.48/5点 レビュー 244件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全411件 221〜240 12/21ページ
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春にして君を離れの評価:
4.48/5点 レビュー 244件。 B ランク
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「もしも、あの時、こちらの道を選択していたら、どんな人生だっただろうか」 という、生きられなかったもうひとつの(あるいは別の)生き方を思うことがあるという。
主人公の主婦も、そんなひとり。子供たちが巣立ち、人生の残り時間を意識するお年頃・・・・というありふれた主題なのだが、ぐいぐいと引き込まれてしまった。推理小説のように、主人公の人物像が一点に集約されてゆく。
ミステリーの女王といわれたクリスティーがこんな小説を書いていたのは驚きだった。
もっとも、出版時は、ミステリーファンをがっかりさせないため、クリスティー自身により「メアリ・ウェストマコット」名義であった、ということも初めて知った。
七つの海を支配したといわれる大英帝国だが、この主婦の旅にもそんな残像が背景に描かれている。
イラク(バクダッド)からトルコ、ヨーロッパを横断して、故国イギリスまでの女のひとり旅。
だが、そんな広い土地がみんな小さくなってしまうほど、彼女の家族やその周辺の人々のことが語られる。
時代は作中の、「ヒトラーが戦争を始めるかもしれない」という話題からも、原作の初出が1944年(昭和19年)ということからも、時代背景のずいぶん違う作品のはずだが、親子、夫婦の普遍的なものがたくさん盛り込まれている。
さいごの栗本薫さんの解説も若々しく鋭いが、こういう事って往々にしてあるな、こういう人っているな、と思う。
他人に対して共感を欠く人、ということだが。
この主婦は、昔気質でいわゆる「良妻賢母」ともいえる、完璧な女性。
父が軍人だった、ということからも、義務や規律を重んじる家庭に育ったのだろう。
この主婦の「ちょっと変」というか、ある意味「暴力的」というか、そういうところが子供たちにとっては辛かったろうが、そこを夫君である父親が補ってきたらしい。
しかし、その夫君は決して優しいだけの男ではないが、どうやら「強い女性」が好きらしい。
この主婦を妻にしたのは、夫にとっても運命の出会いだったのだろうなと想像できる。
そして、この「母」と同性である娘たちは、いったいどんな家庭を築いてゆくのだろうか。
そういう意味ではたぶん、異性の「息子」よりも、同性の「娘たち」の方が、苦労が多そうな感じだ。
昔読んだ、曾野綾子の『善人はなぜまわりの人を不幸にするのか』という本も思い出した。
でも、善人って、どんなひとだろうか?
思い込みや信念の強い人で、周囲にはちょっと迷惑、往々にして迷惑、という人は、男でも女でも、世の中にたくさんいる。
家族にとっては迷惑でも、仕事では有能な人、とか、場所により、役割やそれぞれの立場によっても変わってくるだろう。
作品は、ハッピーエンドだろうな、というところまで話が行くけれど、どっこい現実は違った、という結末でした。