虐殺器官

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評判

虐殺器官の評価:

4.03/5点 レビュー 369件。 B ランク

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平均点4.03pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全557件 481〜500 25/28ページ
No.77
(5pt)

傑作

SF初心者の私ですが、この書には震えました。圧倒的な筆力と現実感のある非現実。細部まで書き込まれた物語は。仮想現実を越えて、読者である私達に迫ってくる。その圧迫感が読者を物語の中に誘い、そして吸い込んでいく。まるで映画を観ているような読書感。名作中の名作です。
9・11以降の世界観の総括的な書である。その中では仮想現実と現実との対比(本作にはボードリャールの記載あり)や生物と感覚、言語という現代の課題が複層的に絡み合って、進んでいく。

こんな作品どうやったら書けるの?どんな思考回路なの?っていう驚愕の作品。でも作者はもうこの世にいない。この作品が作者の墓碑銘になっている。この世界にこれだけのものを残したのだから。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.76
(5pt)

まだ読んでないなんて…うらやましいです

正直これはびっくりするくらいおもしろかったです。
大層なネーミング。筆者の夭折。読む前からこんだけ
ハードルあげといて面白いのはすごい!!

すごい、すごいと印象論になってしまうけど、内容は
メタルギアソリッドみたいで、藤原豆腐店の車が出てくるし、
「1984」みたいだし。世界観はネットみたい。

っとまったくまとまらないレビューですが
筆者はこれらのものを巧みにまとめあげています。

「スラムダンク」以来ある意味忘れたい作品ですw
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.75
(5pt)

まだ読んでないなんて…うらやましいです

正直これはびっくりするくらいおもしろかったです。
大層なネーミング。筆者の夭折。読む前からこんだけ
ハードルあげといて面白いのはすごい!!

すごい、すごいと印象論になってしまうけど、内容は
メタルギアソリッドみたいで、藤原豆腐店の車が出てくるし、
「1984」みたいだし。世界観はネットみたい。

っとまったくまとまらないレビューですが
筆者はこれらのものを巧みにまとめあげています。

「スラムダンク」以来ある意味忘れたい作品ですw
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.74
(5pt)

『神は妄想である』

このSFに☆を五つあげなかったら,他の何に今☆があげられるというのだろう。

主人公はクラヴィス・シェパード。アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊の大尉。
ときはおそらく2020年代。シェパードは,アメリカの特殊な上層部の命を受けて
第三世界で内戦と虐殺を起こしている男を暗殺する使命を帯びている。

その男がどうやって内戦を起こすかが、この小説の第一アイデアなのだが、
書評でその内容が少しでもわかるように触れるのは重大なルール違反である。

ただし、なぜそれで虐殺が起こせるかの書き込みは確かに足りないし,動機も弱い。
が、それを補って余りある疾走感。

まるで翻訳物のような文体,だが翻訳ではないので読みやすい。アメリカ人の作家が、
読者サービスで出すように日本の名を出すこころにくさ。

ぼくは、この作品の中で侵入鞘(イントルード・ポッド)が射出される瞬間の描写が好きである。
ぼくは、この作品の中で,母の延命装置を外す承諾をしそれを原罪のように悔いる主人公の心理描写が嫌いである。

ちなみに、ぼくが、たまたまそうなっただけだがイーグルトンの『宗教とは何か』と、ドーキンスの『神は妄想である』
を読んでから『虐殺器官』を読んだ。そうすると、と飛びます。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.73
(5pt)

『神は妄想である』

このSFに☆を五つあげなかったら,他の何に今☆があげられるというのだろう。

主人公はクラヴィス・シェパード。アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊の大尉。
ときはおそらく2020年代。シェパードは,アメリカの特殊な上層部の命を受けて
第三世界で内戦と虐殺を起こしている男を暗殺する使命を帯びている。

その男がどうやって内戦を起こすかが、この小説の第一アイデアなのだが、
書評でその内容が少しでもわかるように触れるのは重大なルール違反である。

ただし、なぜそれで虐殺が起こせるかの書き込みは確かに足りないし,動機も弱い。
が、それを補って余りある疾走感。

まるで翻訳物のような文体,だが翻訳ではないので読みやすい。アメリカ人の作家が、
読者サービスで出すように日本の名を出すこころにくさ。

ぼくは、この作品の中で侵入鞘(イントルード・ポッド)が射出される瞬間の描写が好きである。
ぼくは、この作品の中で,母の延命装置を外す承諾をしそれを原罪のように悔いる主人公の心理描写が嫌いである。

ちなみに、ぼくが、たまたまそうなっただけだがイーグルトンの『宗教とは何か』と、ドーキンスの『神は妄想である』
を読んでから『虐殺器官』を読んだ。そうすると、と飛びます。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.72
(5pt)

奇跡のような一冊

SFは普段読まないのですが、最近話題の本ということで、読んでみました。
まずは、文体に引きつけられました。読みやすい文章、比喩の斬新さ、洒落た会話、非常にセンスがよい文体で、グロテスクな場面もすんなりと入っていきました。しかし、そのグロテスクな場面がきれいに滅菌されてしまっているのかというと、そうではなくて、どこか悲しみを帯びたような静かな文体で、胸に響きます。
次にディテールを支える知識の量・深さに圧倒されました。哲学・経済・政治・宗教・歴史……それら一つ一つに対する筆者の造詣の深さに驚かされます。そしてそれらが、衒学的ではなく、非常に分かりやすく語られています。
もちろん、ストーリーも素晴らしい。張り巡らされた伏線は、それぞれがドラマを持っているので、伏線伏線していません。登場人物の心理変化や他者との葛藤も、ディテールやドラマにしっかり支えられているので、非常に説得力がありました。
そして、何よりも素晴らしいのは、この作品が現代社会の矛盾に対して、するどい視線を持っているということ。SFでありながら、現代社会に対する、そして現代社会に生きる人間に対する警告の書になっていると感じました。
読んでよかったです。今までの人生の読書体験の中でも指折りの一冊でした。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.71
(5pt)

奇跡のような一冊

SFは普段読まないのですが、最近話題の本ということで、読んでみました。
まずは、文体に引きつけられました。読みやすい文章、比喩の斬新さ、洒落た会話、非常にセンスがよい文体で、グロテスクな場面もすんなりと入っていきました。しかし、そのグロテスクな場面がきれいに滅菌されてしまっているのかというと、そうではなくて、どこか悲しみを帯びたような静かな文体で、胸に響きます。
次にディテールを支える知識の量・深さに圧倒されました。哲学・経済・政治・宗教・歴史……それら一つ一つに対する筆者の造詣の深さに驚かされます。そしてそれらが、衒学的ではなく、非常に分かりやすく語られています。
もちろん、ストーリーも素晴らしい。張り巡らされた伏線は、それぞれがドラマを持っているので、伏線伏線していません。登場人物の心理変化や他者との葛藤も、ディテールやドラマにしっかり支えられているので、非常に説得力がありました。
そして、何よりも素晴らしいのは、この作品が現代社会の矛盾に対して、するどい視線を持っているということ。SFでありながら、現代社会に対する、そして現代社会に生きる人間に対する警告の書になっていると感じました。
読んでよかったです。今までの人生の読書体験の中でも指折りの一冊でした。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.70
(5pt)

知識に裏付けられた圧倒的なディテール

読み始め、文章の軽さとこなれなさに違和感を覚えましたが、
著者の綿密な取材と教養に裏付けられたディテールの積み重ね、
いい意味で日本人離れした厳としたストーリーテーリングの前には
些事になります。
(あとがきによると、文章の軽さは著者が意図したものだそうです。スミマセン)

詰め込まれた情報量は、ある意味、士郎正宗の欄外注の系譜を踏襲する
SFへのアプローチ方法かとも思えますが、
このような先人の成果を十二分に消化し積み重ねる手法の中に、
(日本の)SFやその周辺がたどってきた行程が見え隠れし、
感慨深く感じる方も多いのではないでしょうか。

兎にも角にも、従来の日本SFのレベルを飛び越えた傑作であり、
一つの金字塔であることは間違いなく、
なおさら、このような才能の夭折に、哀悼の念を禁じえません。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.69
(5pt)

知識に裏付けられた圧倒的なディテール

読み始め、文章の軽さとこなれなさに違和感を覚えましたが、
著者の綿密な取材と教養に裏付けられたディテールの積み重ね、
いい意味で日本人離れした厳としたストーリーテーリングの前には
些事になります。
(あとがきによると、文章の軽さは著者が意図したものだそうです。スミマセン)

詰め込まれた情報量は、ある意味、士郎正宗の欄外注の系譜を踏襲する
SFへのアプローチ方法かとも思えますが、
このような先人の成果を十二分に消化し積み重ねる手法の中に、
(日本の)SFやその周辺がたどってきた行程が見え隠れし、
感慨深く感じる方も多いのではないでしょうか。

兎にも角にも、従来の日本SFのレベルを飛び越えた傑作であり、
一つの金字塔であることは間違いなく、
なおさら、このような才能の夭折に、哀悼の念を禁じえません。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.68
(5pt)

21世紀の人類に向けて

ネビル・シュートの『渚にて』は前世紀の核の恐怖に怯えた人類に読まれるべき小説であったのなら、『虐殺器官』は今世紀最初に起こったテロの恐怖を身近に感じた人類に読まれるべきそれだと思う。
 しかしこれは何も反戦を謳っているわけではない。我々が「今、ここに」生きていくための小説なのだ。
 近い将来この小説は必ずや全世界に向けて発信されるだろうと確信している。作者が夭折なされたことが本当に悔しい。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.67
(5pt)

21世紀の人類に向けて

ネビル・シュートの『渚にて』は前世紀の核の恐怖に怯えた人類に読まれるべき小説であったのなら、『虐殺器官』は今世紀最初に起こったテロの恐怖を身近に感じた人類に読まれるべきそれだと思う。
 しかしこれは何も反戦を謳っているわけではない。我々が「今、ここに」生きていくための小説なのだ。
 近い将来この小説は必ずや全世界に向けて発信されるだろうと確信している。作者が夭折なされたことが本当に悔しい。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.66
(5pt)

SFという枠に押し込めるべきではない作品

小松左京賞落選作(笑)。

 ここまでの作品が落ちた理由について考えてみたいと思います。

 まず、左京賞に応募した段階より相当書き込んだと言われている現在のバージョンにさえ、
「ここまで文章の上手い人が、なぜこんな不用意な書き方をするのだろう?」
 と疑問を抱くような、明確に推敲不足と思われる記載が数カ所あります。
 これが応募段階では、ずっと多かったのでしょう。
 そういった記載が発生した理由は、巻末の大森望による解説で判明しました。ものすごい速書きの人だったらしいです。また、病気の治療の関係で体力がなく、じっくりひつっこく推敲することもできなかったのでしょう。

 それから。
 SFの賞に応募されたことから推測できるように、本作には魅力的なSFガジェットがいくつか登場しますが、それが社会状況として極めて今のテーマを描きたいという要求とぶつかりあって、相互に矛盾した時間になっています。つまり、テーマから言ってごく最近の話を書きたいが、SFとして魅力的であるためにはかなり未来的な技術を必要とした。そのアンバランスが気になるのです。
 また、それらのガジェットは魅力的ではありますが、画期的に目新しくはありません。
 一部のSF愛好家は、SFの価値を、目新しさ(だけ)に置いていますから、この作品がその面では評価されなかったのもうなずけます。
 作者の発明と思われるガジェットはただ一つ、「虐殺言語」ですから、選評でその虐殺言語だけにこだわったコメントが出されたことにもうなずけます。

 しかしここで描かれているのは、SF的なアイデアではありません。
 全員を救えない時、あなたはエゴをむき出しに身内を救うのか? それとも、身内を犠牲にしてわがままを押しつけるべきではない他人の方をこそ救うのか? という、極めて倫理学的、哲学的問いなのです。
 その問いが、現代の政治状況を背景に、今ここにいる自分の問題として、ぎりぎりと突きつけられる、そのすさまじさをこそ鑑賞するべき作品なのです。

 本作は、旧来型のSFの価値基準にとらわれた審査員が、文学的価値を見落としたという、典型的な失敗例として語り継がれるべきであり、なぜ今SFがダメになったのかの答えとして長く提示される証拠物件となるでしょう。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.65
(5pt)

虐殺の王(ロード・オブ・ジョノサイド)の苦悩

アメリカ情報軍特殊検軍i分遺隊、空飛ぶ海苔(フライング・ウィード)、侵入鞘(イントルードポッド)、などの近未来兵器、ドーピングによって身体的、精神的痛みをコントロールされた少数精鋭のコマンドが主役になっている近未来の戦争の姿は、ゲーム、アニメの世界ではそう珍しいアイテムではないのかもしれません。ですので、バリバリのゲームマニアがそれを目的に読むだけであるならばそう衝撃はないでしょう。

 作中の背景として登場するゲーム理論、進化論などもけしてアクセサリーとしてでなく本題の中に組み込まれている筆力は現在の邦書では群を抜いています。翻訳化を前提に書かれているのかと思ってしまうほど国際標準に準拠した形(なんのこっちゃ)で書かれていました。とても短期間で書き上げられた作品とは思えません。しかし、本書の核はそのようなガジェットではなく、人間の遺伝子に予めプログラミングされている残虐性を知っていながら、それに罪の痛みを感じる主観的な罪悪感(良心)との矛盾に苦しむ登場人物の描写にあるではないでしょうか。

 戦争の姿は兵士である人間をたんぱく質でできている唯物的な存在として活用している現実がこれでもかと描写されています。一方、登場人物たちは、言語化されない思考の範囲が暗黙知として存在し、脳(こころ)に痛みを感じ罪の意識にさいなまれた人間はどう行動するのか?伊藤劃画氏の才能に圧倒される1冊です。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.64
(5pt)

SFという枠に押し込めるべきではない作品

小松左京賞落選作(笑)。

 ここまでの作品が落ちた理由について考えてみたいと思います。

 まず、左京賞に応募した段階より相当書き込んだと言われている現在のバージョンにさえ、
「ここまで文章の上手い人が、なぜこんな不用意な書き方をするのだろう?」
 と疑問を抱くような、明確に推敲不足と思われる記載が数カ所あります。
 これが応募段階では、ずっと多かったのでしょう。
 そういった記載が発生した理由は、巻末の大森望による解説で判明しました。ものすごい速書きの人だったらしいです。また、病気の治療の関係で体力がなく、じっくりひつっこく推敲することもできなかったのでしょう。

 それから。
 SFの賞に応募されたことから推測できるように、本作には魅力的なSFガジェットがいくつか登場しますが、それが社会状況として極めて今のテーマを描きたいという要求とぶつかりあって、相互に矛盾した時間になっています。つまり、テーマから言ってごく最近の話を書きたいが、SFとして魅力的であるためにはかなり未来的な技術を必要とした。そのアンバランスが気になるのです。
 また、それらのガジェットは魅力的ではありますが、画期的に目新しくはありません。
 一部のSF愛好家は、SFの価値を、目新しさ(だけ)に置いていますから、この作品がその面では評価されなかったのもうなずけます。
 作者の発明と思われるガジェットはただ一つ、「虐殺言語」ですから、選評でその虐殺言語だけにこだわったコメントが出されたことにもうなずけます。

 しかしここで描かれているのは、SF的なアイデアではありません。
 全員を救えない時、あなたはエゴをむき出しに身内を救うのか? それとも、身内を犠牲にしてわがままを押しつけるべきではない他人の方をこそ救うのか? という、極めて倫理学的、哲学的問いなのです。
 その問いが、現代の政治状況を背景に、今ここにいる自分の問題として、ぎりぎりと突きつけられる、そのすさまじさをこそ鑑賞するべき作品なのです。

 本作は、旧来型のSFの価値基準にとらわれた審査員が、文学的価値を見落としたという、典型的な失敗例として語り継がれるべきであり、なぜ今SFがダメになったのかの答えとして長く提示される証拠物件となるでしょう。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.63
(5pt)

虐殺の王(ロード・オブ・ジョノサイド)の苦悩

アメリカ情報軍特殊検軍i分遺隊、空飛ぶ海苔(フライング・ウィード)、侵入鞘(イントルードポッド)、などの近未来兵器、ドーピングによって身体的、精神的痛みをコントロールされた少数精鋭のコマンドが主役になっている近未来の戦争の姿は、ゲーム、アニメの世界ではそう珍しいアイテムではないのかもしれません。ですので、バリバリのゲームマニアがそれを目的に読むだけであるならばそう衝撃はないでしょう。

 作中の背景として登場するゲーム理論、進化論などもけしてアクセサリーとしてでなく本題の中に組み込まれている筆力は現在の邦書では群を抜いています。翻訳化を前提に書かれているのかと思ってしまうほど国際標準に準拠した形(なんのこっちゃ)で書かれていました。とても短期間で書き上げられた作品とは思えません。しかし、本書の核はそのようなガジェットではなく、人間の遺伝子に予めプログラミングされている残虐性を知っていながら、それに罪の痛みを感じる主観的な罪悪感(良心)との矛盾に苦しむ登場人物の描写にあるではないでしょうか。

 戦争の姿は兵士である人間をたんぱく質でできている唯物的な存在として活用している現実がこれでもかと描写されています。一方、登場人物たちは、言語化されない思考の範囲が暗黙知として存在し、脳(こころ)に痛みを感じ罪の意識にさいなまれた人間はどう行動するのか?伊藤劃画氏の才能に圧倒される1冊です。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.62
(4pt)

思索に富む近未来社会派SF

10年後には早くも伝説になるであろう、30代半ばで夭折した天才的作家の数少ない長編の中の1作です。
 主な舞台は内戦状態にあるいくつかの途上国。そこで暗躍する謎のアメリカ人ジョン・ポールを抹殺する使命を帯びた合衆国特殊部隊の指揮官シェパード大尉を主人公に据えて、これまでの日本のSF作品では描かれたことのないような世界を展開してくれます。

 後半の読者の興味は「ジョン・ポールの真の目的は何か」の一点に向かいます。その一方で、彼が発見(?)した「虐殺の文法」の具体的内容は説明されません。その辺が小松左京賞に選考されなかった理由とも説明されています。
 随所で繊細な主人公の脳裏を借りて、さまざまな倫理学的・哲学的思索を展開し、作品に深みを与えていますが、若干先走りすぎて、「後は読者が考えて」というような余地を遺してほしいと思う私などは、やや違和感を覚えます。

 とはいえ、この作者が世の読書人たちに与えた影響は計り知れません。そして、人間というものは、限られた短い日々の中で、ここまで大きな仕事ができるのかという感慨に震えました。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.61
(4pt)

思索に富む近未来社会派SF

10年後には早くも伝説になるであろう、30代半ばで夭折した天才的作家の数少ない長編の中の1作です。
 主な舞台は内戦状態にあるいくつかの途上国。そこで暗躍する謎のアメリカ人ジョン・ポールを抹殺する使命を帯びた合衆国特殊部隊の指揮官シェパード大尉を主人公に据えて、これまでの日本のSF作品では描かれたことのないような世界を展開してくれます。

 後半の読者の興味は「ジョン・ポールの真の目的は何か」の一点に向かいます。その一方で、彼が発見(?)した「虐殺の文法」の具体的内容は説明されません。その辺が小松左京賞に選考されなかった理由とも説明されています。
 随所で繊細な主人公の脳裏を借りて、さまざまな倫理学的・哲学的思索を展開し、作品に深みを与えていますが、若干先走りすぎて、「後は読者が考えて」というような余地を遺してほしいと思う私などは、やや違和感を覚えます。

 とはいえ、この作者が世の読書人たちに与えた影響は計り知れません。そして、人間というものは、限られた短い日々の中で、ここまで大きな仕事ができるのかという感慨に震えました。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.60
(4pt)

やはりちょっと尻すぼみ

私も普段SFはあまり読まないのだが,日経の書評で褒めちぎっていたので読んだクチだ。
確かにディテイルはすごく,軍事やテクノロジーに関する知識の豊富さ・正確さと細かい描写には感心した。
けれども,何というのか,大きなストーリーを感ずる上では,やはりちょっと尻すぼみな印象を受けた。

様々な技術や医療的処置によって,心の細部に至るまである意味「管理」を受け,多数の人間を殺しながらも自分が行為主体であったとは受け入れられず,従って罪の意識を持つこともできない主人公。その人間疎外の状況を描き出した筆者の筆力はまさに素晴らしく,我々も今後時代が進むにつれてこういう世界で生きてゆくことになるのか,と我々自身の問題として迫ってくる。

それだから,この後の大きなストーリーはこの人間疎外状況がテーマになり,主人公が思い人のルツィアと会って自分の罪と罰を定めてもらうのが大きな山場になるのだろうと想像しながら読み進める。あるいはジョン・ポールとの対決でもこの問題が一番のテーマになるのではと想像する。

しかし,この二人との再会はかなりあっけないものだ。詳述はしないが,主人公の罪と罰を定めてくれるはずのルツィアはあっさりと死んでしまう。メインテーマは主人公の(従って現代人全員の)心の問題から,発展途上国での虐殺によって先進国でのテロが防がれている,というマクロな問題へと変わってきてしまう。

まあ,これはこれで良いのかも知れないが,私としては主人公の繊細微妙な罪の,あるいは疎外状況の問題が,かなりおおざっぱな国家レベルの利害のような問題にすげ替えられてしまったようで残念である。

作者が50歳くらいになり,円熟の味が出てくると一層良い作品が生み出されるのではと期待したい所だが,それも叶わぬ夢になってしまった。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.59
(4pt)

やはりちょっと尻すぼみ

私も普段SFはあまり読まないのだが,日経の書評で褒めちぎっていたので読んだクチだ。
確かにディテイルはすごく,軍事やテクノロジーに関する知識の豊富さ・正確さと細かい描写には感心した。
けれども,何というのか,大きなストーリーを感ずる上では,やはりちょっと尻すぼみな印象を受けた。

様々な技術や医療的処置によって,心の細部に至るまである意味「管理」を受け,多数の人間を殺しながらも自分が行為主体であったとは受け入れられず,従って罪の意識を持つこともできない主人公。その人間疎外の状況を描き出した筆者の筆力はまさに素晴らしく,我々も今後時代が進むにつれてこういう世界で生きてゆくことになるのか,と我々自身の問題として迫ってくる。

それだから,この後の大きなストーリーはこの人間疎外状況がテーマになり,主人公が思い人のルツィアと会って自分の罪と罰を定めてもらうのが大きな山場になるのだろうと想像しながら読み進める。あるいはジョン・ポールとの対決でもこの問題が一番のテーマになるのではと想像する。

しかし,この二人との再会はかなりあっけないものだ。詳述はしないが,主人公の罪と罰を定めてくれるはずのルツィアはあっさりと死んでしまう。メインテーマは主人公の(従って現代人全員の)心の問題から,発展途上国での虐殺によって先進国でのテロが防がれている,というマクロな問題へと変わってきてしまう。

まあ,これはこれで良いのかも知れないが,私としては主人公の繊細微妙な罪の,あるいは疎外状況の問題が,かなりおおざっぱな国家レベルの利害のような問題にすげ替えられてしまったようで残念である。

作者が50歳くらいになり,円熟の味が出てくると一層良い作品が生み出されるのではと期待したい所だが,それも叶わぬ夢になってしまった。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.58
(5pt)

ゼロ年代SFの最高峰の一つ。

9・11事件以降、世界の先進諸国は個人情報認証による厳格な管理体制を整え、
後進諸国にはテロの更なる泥沼化を引き起こし、巨大な溝を生み出した。
米国情報軍、特殊検索群i分遣隊に所属するクラヴィス・シェパード大尉は
他国の戦争を介しながら「虐殺を引き起こす文法」という禁断の技術を目の辺りにする。

2001年9月11日に事実として起こった米国同時多発テロ事件後の、国家の在り様とテロとの戦い。
それに伴う国軍の変質と傭兵派遣会社のPMFの台頭、経済成長。
未だ続く宗教対立による内戦の裏に絡む先進国の利他行為。
近未来の世界をリアルに描いた作品です。

SFでありながらミステリ要素と、人間が放つ言葉に脳が齎す「感情」という物への探求が書かれている。
政治や戦争、脳医学や精神学等、広い視野と知識が無ければ書けない一冊。

伊藤 計劃氏の筆力に敬意を抱くと共に、氏の早世を惜しまずにはいられない。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311