虐殺器官

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評判

虐殺器官の評価:

4.03/5点 レビュー 369件。 B ランク

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平均点4.03pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全557件 441〜460 23/28ページ
No.117
(4pt)

「ハーモニー」への導入として

私は超偏見で、SFは青背上等派、あまり国内物は読まなかったのです。

この作品自体には、多数のレビューがありますので、
それを参考にしてほしい。
確かに、「虐殺器官」のみをみてしまうと、アラもあるのだが、
(直接的な関係性は書かれていないが)続編となる「ハーモニー」を
読む為にも、是非読んでほしい。

私はこの二作を読んで、それこそ驚愕した。
日本にもこれほどの作家がうまれたことを。
そしてすでにその作家が失われてしまったことを。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.116
(5pt)

世界規模の美しいSF

SFの歴史の中でも海外SFの描いて来た多くの世界を継承した上で新しい次元に進めた作品だと思った。
中でも、主人公の未熟さそのものが「未熟でいなければならない日本人の若者」を描いている。主人公はアメリカ人だが、話を自由にはばたかせるためにはアメリカ人でなければならないし、実際、小説の持つテーマを先鋭化するためにはどうしてもアメリカ人に設定しなければならなかっただろう。しかし、主人公の虚無的な無神論、母親の死に関わる日本人的な拘りはこの青年の心の中は日本人の独身男性に重ねることができるのではないか。

読後感じたのはアーシェラ・ル・グインの「オメラスから歩み去る人びと」に対する伊藤計劃の回答ではないかということだった。作者は娯楽的な要素を描いてはいるが、作品世界は現実に進行している虐殺の連鎖に対する作者の止むに止まれぬ痛みや怒りが噴出している。SFは「こうであるかもしれない世界」を描く寓話的な要素を含む。

また、破滅型SFの傑作バラードの「結晶世界」に見られるように、主人公の個人的問題が最終的に重要になってくるのが、ニューウェーブSFが変奏曲として現代に蘇った感がある。虐殺の大きなからくりを探求する旅に否応無く巻き込まれた主人公が最終的にその世界に「適応」するのだ。

結末の主人公は完全に自らが不適応に陥っていた「虐殺」のありように完全に適応する。それは主人公がジョン・ポールの継承者となることを意味している。「愛のため」という美辞麗句で人はどこまで残酷になれるのかを考えさせられる。

伊藤計劃の才能は夭折によって過大評価されているのではないと感じた。まぎれもない世界規模の傑作であり、今現在の世界の禍々しい状態を娯楽というものの中に見事にちりばめて読者に提供している。

現実に某安売り洋服屋さんや某安売りショップは国外の奴隷的労働によって日本人に利益をもたらしており、安価なチョコレートは幼い少年少女の苛酷な労働条件の下に生産されている。ナイルバーチはコンビニの弁当に入っている。労働条件の改善を求めて訴えても雇用主やその国の為政者達は企業が契約を切ることを恐れて簡単に弾圧してしまう。日本人はそれを知っているが知らないように振る舞っている。
そして日本企業は安い労働力を海外に求め、自国の若者は雇わない。日本人の若者達は安い服や安い小物を身につけ、安い有害な食糧を食べて高価な携帯やコンピュータを買う。

伊藤計劃は多分こういうことも知っていただろう。
しかし、これを日本を舞台にして描くと今日の日本では売れないのだ。営業妨害になりかねない。
現実はSFよりも恐ろしい。
だが、伊藤計劃が描いたこの本は多くの人々の目を開かせる力を持っている。翻訳して海外の人々にも読んでもらいたい傑作である。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.115
(4pt)

「ハーモニー」への導入として

私は超偏見で、SFは青背上等派、あまり国内物は読まなかったのです。

この作品自体には、多数のレビューがありますので、
それを参考にしてほしい。
確かに、「虐殺器官」のみをみてしまうと、アラもあるのだが、
(直接的な関係性は書かれていないが)続編となる「ハーモニー」を
読む為にも、是非読んでほしい。

私はこの二作を読んで、それこそ驚愕した。
日本にもこれほどの作家がうまれたことを。
そしてすでにその作家が失われてしまったことを。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.114
(4pt)

SF小説の現況

近作では、話題と評判の高さに惹かれて読みました。
400ページ近い分量を10日ほどで書き上げたと言う小松左京賞の公募作品、
選には漏れたとのことですが、出版の機会を得た後、瞬く間にこの分野の新旗手として、
数多の評価を受けることとなった著者の長編デビュー作です。

SFと言えば回顧的にではありますが、全盛期(6,70年代)の洗礼を受けた者として、
隔世の感に打ちのめされつの読書になりましたが、ギブスン/ニューロマンサーで
そのSFを半ば捨てたことへの、これは仕打ちとばかりに受け留め、読了にしました。

辛抱の甲斐あってか、本作のエピローグへ読み進むに至り、著者の作意の些かを確かめることが出来ました。
内容については割愛しなければなりませんが、その構造としては、紡がれ描かれた世界(価値/感性/愛着)と、
主人公自身をも含めなして、その否定をより極め、遂には無化(放棄)してしまうことで、結ぶというものです。

ここには、ある種の快感があります。漱石の近代の超克説や大岡昇平などの意図する
「外からではなく、その内から超え、突き抜ける」という感覚に通じるものが、多少なりとここには実感されます。

小説表現とは、このように奇妙な仕方ではありますが、確かに進歩していると言うことには、
やはり無理があるのでしょうか。私には、こうした芸術分野がこの限りに終わってしまうとは、とても思えません。

例えば作中、ヴィクトリア湖のシーンに際し、その現況に言い及ぶところなどは、リアリズムもよく保たれており、
著者の世界状況に対する洞察力と含めるイロニーなどには、大いにそこへ才気も伺わせるもので、
今更ながらですが、その早世が惜しまれる作家であると思います。

ダーウィンの悪夢 デラックス版 [DVD]
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.113
(4pt)

SF小説の現況

近作では、話題と評判の高さに惹かれて読みました。
400ページ近い分量を10日ほどで書き上げたと言う小松左京賞の公募作品、
選には漏れたとのことですが、出版の機会を得た後、瞬く間にこの分野の新旗手として、
数多の評価を受けることとなった著者の長編デビュー作です。

SFと言えば回顧的にではありますが、全盛期(6,70年代)の洗礼を受けた者として、
隔世の感に打ちのめされつの読書になりましたが、ギブスン/ニューロマンサーで
そのSFを半ば捨てたことへの、これは仕打ちとばかりに受け留め、読了にしました。

辛抱の甲斐あってか、本作のエピローグへ読み進むに至り、著者の作意の些かを確かめることが出来ました。
内容については割愛しなければなりませんが、その構造としては、紡がれ描かれた世界(価値/感性/愛着)と、
主人公自身をも含めなして、その否定をより極め、遂には無化(放棄)してしまうことで、結ぶというものです。

ここには、ある種の快感があります。漱石の近代の超克説や大岡昇平などの意図する
「外からではなく、その内から超え、突き抜ける」という感覚に通じるものが、多少なりとここには実感されます。

小説表現とは、このように奇妙な仕方ではありますが、確かに進歩していると言うことには、
やはり無理があるのでしょうか。私には、こうした芸術分野がこの限りに終わってしまうとは、とても思えません。

例えば作中、ヴィクトリア湖のシーンに際し、その現況に言い及ぶところなどは、リアリズムもよく保たれており、
著者の世界状況に対する洞察力と含めるイロニーなどには、大いにそこへ才気も伺わせるもので、
今更ながらですが、その早世が惜しまれる作家であると思います。

ダーウィンの悪夢 デラックス版 [DVD]
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.112
(5pt)

罪と罰を古本屋に売ってきた

で、この本を何度も読み返した。

読んだ日は必ずカレーを食べることにした。

泣きながらだと味わかんねーな。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.111
(5pt)

罪と罰を古本屋に売ってきた

で、この本を何度も読み返した。

読んだ日は必ずカレーを食べることにした。

泣きながらだと味わかんねーな。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.110
(5pt)

何度も読み返せる小説だと思います

半年程前に、テレビ番組でMCが絶賛しているのを見て購入してみました。オビにある現代の「罪と罰」というくだりは、大げさなような気がします。感想としては、読み始めてみると多少読みずらい文章ですが、その世界観に引き込まれどんどんと読み進むことができました。読み終わった後に、作品の余韻に浸れいろいろと考えさせられます。ただ、世界観やSF小説ということもあって好き嫌いは分かれるかもしれません。それでも、購入して損はないと思います。私の中で、2010年で一番印象に残り、これから何度も読み返してみたい小説です。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.109
(5pt)

何度も読み返せる小説だと思います

半年程前に、テレビ番組でMCが絶賛しているのを見て購入してみました。オビにある現代の「罪と罰」というくだりは、大げさなような気がします。感想としては、読み始めてみると多少読みずらい文章ですが、その世界観に引き込まれどんどんと読み進むことができました。読み終わった後に、作品の余韻に浸れいろいろと考えさせられます。ただ、世界観やSF小説ということもあって好き嫌いは分かれるかもしれません。それでも、購入して損はないと思います。私の中で、2010年で一番印象に残り、これから何度も読み返してみたい小説です。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.108
(5pt)

「虐殺器官」をめぐる謎解きに新鮮な驚き

噂通りの作品。月並みだが、その世界観、「虐殺器官」をめぐる謎解き、戦闘や情報ガジェットのディテール描写に恐れ入った。
 主人公のモノローグで語られるところが魅力的だ。たとえそれが薬物による抑制の結果であるにせよ、冷静な戦況分析や戦闘行動の記述は、現代のゲリラ戦のやりきれなさをリアルに感じた。宿敵と対峙したときの饒舌なやりとりは、アメリカ人の特殊部隊隊員らしからぬインテリジェンスではあるが、物語の特性上、解説は避けられないのであまり気にならない。舞台も複数の戦地以外はプラハという異質な古都を持ってきたところがクールだ。これがニューヨークやロサンゼルスや東京という都会では陳腐だったろう。
 結びの場面は、皮肉な展開と既出のシーンとの対比で鮮やかな幕切れだ。もし映像化されるなら、このシーンは落とさないで欲しいところだ。
 この作品を十日程度でかき上げるなんて、命を燃やすようなことをする必要を感じていたのか、逆に創作が命を縮めたのか。いずれにしてもこの作品を知った時点ですでに著者はいない。新作に会えないのはあまりにも残念だ。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.107
(5pt)

「虐殺器官」をめぐる謎解きに新鮮な驚き

噂通りの作品。月並みだが、その世界観、「虐殺器官」をめぐる謎解き、戦闘や情報ガジェットのディテール描写に恐れ入った。
 主人公のモノローグで語られるところが魅力的だ。たとえそれが薬物による抑制の結果であるにせよ、冷静な戦況分析や戦闘行動の記述は、現代のゲリラ戦のやりきれなさをリアルに感じた。宿敵と対峙したときの饒舌なやりとりは、アメリカ人の特殊部隊隊員らしからぬインテリジェンスではあるが、物語の特性上、解説は避けられないのであまり気にならない。舞台も複数の戦地以外はプラハという異質な古都を持ってきたところがクールだ。これがニューヨークやロサンゼルスや東京という都会では陳腐だったろう。
 結びの場面は、皮肉な展開と既出のシーンとの対比で鮮やかな幕切れだ。もし映像化されるなら、このシーンは落とさないで欲しいところだ。
 この作品を十日程度でかき上げるなんて、命を燃やすようなことをする必要を感じていたのか、逆に創作が命を縮めたのか。いずれにしてもこの作品を知った時点ですでに著者はいない。新作に会えないのはあまりにも残念だ。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.106
(5pt)

たしかに「こんなすごいものは書けない」と思う。

文庫版の帯に、宮部みゆきが「私には、3回生まれ変わってもこんなにすごいものは書けない」と感想を寄せていた。宣伝のためのおべっかと思ってたけど、読むとその意味がよく分かった。全編緻密で、いろんな要素がぎっしりつまっていて、語彙も豊富でセンテンスも洒落てて巧い。どこを読んでも隙がない。筆力とか文章力とか知識量とか、どう表現したらいいのか、SF的ではない部分まで、いや、私にとってはそうでない部分のほうが綿密で、精巧で、圧倒された。翻訳調の小気味いいリズムに、何度か出てくる”抹香”がそこだけ妙に日本人臭かったり、とか、重箱の隅をつつけば違和感もあったけど、ごくごく些細なことだ。オマージュが多いせいもあって、いちいちこれはオリジナルなのか?と疑ってしまうくらい完成されている。もちろんオリジナルとはなにか? という根源的なことを考えるとキリがないし、作家は誰しも、膨大な過去の名作に触発されるのだろうけど、それだけ細部までぎっちり意味がつまっている。多くの人が絶賛するのが分かる。伊藤計劃という作家にしか書けなかったと思う。

文句なく楽しかった。興奮のあまり徹夜したあげく、いろんなレビューに「分かる分かる!」と票を投じてしまった。反対にがっかりした人がいるのも理解出来る。他の人が書いていたけど、後書きにあった小松左京の批評はもっともだ。でも虐殺の分法を具体的に書くのは不可能だろう。その部分はファンタジーと割り切れる。

ただ常人では書けない”すごいもの”であることは確かでも、自問自答したとき、圧倒的な技巧に対する感動ではないのか、と悩む。巧すぎて無邪気に感動できない自分は、飛び抜けた異能に嫉妬しているのかもしれない、とさらに悩んでしまう。この作品にダメ出しするのは勇気がいる。脳内のモジュールがずれ、小説のテーマである良心のバランスが狂っていると宣言するようで。

もっともっとこの才能を味わいたかった。いったい次回作はどうするのだろうと、追いかけたくなるタイプの作家であることは自信を持って断言できる。早すぎた死が残念でならない。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.105
(5pt)

たしかに「こんなすごいものは書けない」と思う。

文庫版の帯に、宮部みゆきが「私には、3回生まれ変わってもこんなにすごいものは書けない」と感想を寄せていた。宣伝のためのおべっかと思ってたけど、読むとその意味がよく分かった。全編緻密で、いろんな要素がぎっしりつまっていて、語彙も豊富でセンテンスも洒落てて巧い。どこを読んでも隙がない。筆力とか文章力とか知識量とか、どう表現したらいいのか、SF的ではない部分まで、いや、私にとってはそうでない部分のほうが綿密で、精巧で、圧倒された。翻訳調の小気味いいリズムに、何度か出てくる”抹香”がそこだけ妙に日本人臭かったり、とか、重箱の隅をつつけば違和感もあったけど、ごくごく些細なことだ。オマージュが多いせいもあって、いちいちこれはオリジナルなのか?と疑ってしまうくらい完成されている。もちろんオリジナルとはなにか? という根源的なことを考えるとキリがないし、作家は誰しも、膨大な過去の名作に触発されるのだろうけど、それだけ細部までぎっちり意味がつまっている。多くの人が絶賛するのが分かる。伊藤計劃という作家にしか書けなかったと思う。

文句なく楽しかった。興奮のあまり徹夜したあげく、いろんなレビューに「分かる分かる!」と票を投じてしまった。反対にがっかりした人がいるのも理解出来る。他の人が書いていたけど、後書きにあった小松左京の批評はもっともだ。でも虐殺の分法を具体的に書くのは不可能だろう。その部分はファンタジーと割り切れる。

ただ常人では書けない”すごいもの”であることは確かでも、自問自答したとき、圧倒的な技巧に対する感動ではないのか、と悩む。巧すぎて無邪気に感動できない自分は、飛び抜けた異能に嫉妬しているのかもしれない、とさらに悩んでしまう。この作品にダメ出しするのは勇気がいる。脳内のモジュールがずれ、小説のテーマである良心のバランスが狂っていると宣言するようで。

もっともっとこの才能を味わいたかった。いったい次回作はどうするのだろうと、追いかけたくなるタイプの作家であることは自信を持って断言できる。早すぎた死が残念でならない。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.104
(5pt)

驚くべき傑作!

タイトルから「ソウ」のような拷問ポルノかと思ったら、全然違った。
非常に真っ当なSF小説だった。
作者が若くして亡くなったのが悔やまれる。
主人公は米軍の暗殺チームの一員である。
世界中で紛争が起こっている時代、プロの暗殺集団である彼らは第一レイヤーと呼ぶ紛争の首謀者を暗殺する。
紛争地域に出没するあるアメリカ人が、暗殺チームのターゲットとなるが、決して捕まることがない。
そのアメリカ人の目的は、紛争を引き起こすことだと判明する。
彼の言うところの「虐殺の文法」を使って。

始めに惹かれるのは暗殺部隊の装備である。
地上へ降下するポットは、表面が人工筋肉で出来ており、凹凸を微妙に変化させることで空気抵抗をコントロールし、着地後は腐って土に還る。
なかなかサイバーで、カッコいいアイテムだと思う。
しかし、これがトラップで中盤から人工筋肉が大きな意味を持つことになる。

頭脳がモジュール毎に機能が特定された世界において、どのモジュールが機能していれば意識があることになるのか?
現在の脳死より難しい問題である。
薬品で脳の一部の機能を止めて、セラピーによって倫理観を抑制されて状態での殺人は、罪になるのか?
科学の進歩を見据えた社会的、倫理的問題を扱った、正当なSF小説である。
こんな小説を日本人が書いたとは驚きである。
作者名を見なければ、翻訳だと思うに違いない。

この物語のテーマは贖罪である。
謎のアメリカ人は、死んだ家族のために、どんな手段を使ってでもアメリカを守る選択をした。
「虐殺の文法」の謎を解いた後、主人公は別の選択をする。
救いはないが、気の利いた終わり方だと思う。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.103
(5pt)

驚くべき傑作!

タイトルから「ソウ」のような拷問ポルノかと思ったら、全然違った。
非常に真っ当なSF小説だった。
作者が若くして亡くなったのが悔やまれる。
主人公は米軍の暗殺チームの一員である。
世界中で紛争が起こっている時代、プロの暗殺集団である彼らは第一レイヤーと呼ぶ紛争の首謀者を暗殺する。
紛争地域に出没するあるアメリカ人が、暗殺チームのターゲットとなるが、決して捕まることがない。
そのアメリカ人の目的は、紛争を引き起こすことだと判明する。
彼の言うところの「虐殺の文法」を使って。

始めに惹かれるのは暗殺部隊の装備である。
地上へ降下するポットは、表面が人工筋肉で出来ており、凹凸を微妙に変化させることで空気抵抗をコントロールし、着地後は腐って土に還る。
なかなかサイバーで、カッコいいアイテムだと思う。
しかし、これがトラップで中盤から人工筋肉が大きな意味を持つことになる。

頭脳がモジュール毎に機能が特定された世界において、どのモジュールが機能していれば意識があることになるのか?
現在の脳死より難しい問題である。
薬品で脳の一部の機能を止めて、セラピーによって倫理観を抑制されて状態での殺人は、罪になるのか?
科学の進歩を見据えた社会的、倫理的問題を扱った、正当なSF小説である。
こんな小説を日本人が書いたとは驚きである。
作者名を見なければ、翻訳だと思うに違いない。

この物語のテーマは贖罪である。
謎のアメリカ人は、死んだ家族のために、どんな手段を使ってでもアメリカを守る選択をした。
「虐殺の文法」の謎を解いた後、主人公は別の選択をする。
救いはないが、気の利いた終わり方だと思う。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.102
(5pt)

日本人作家とは思えないクールでバイオレンスな傑作SF!

これがデビュー作とは思えないほど精密で繊細な文章。海外作品のようなクールでハードボイルドな語り口.よく勉強されたバックボーンによって、リアリティ十分な世界観。SFという体裁を取ることでマイルドな味付けになっているが、平和な国で富を享受し、貧しい国から多くの物資を巻き上げて生きているG9の国々の罪をあからさまに指摘した硬派社会派小説である。また「死」というものにこれほど真摯に向き合った作品を読んだことがない。海外の作家の作品と比べても見劣りしないすばらしい作品である.平和ボケした多くの日本人は本作を読み、世界の現状に目を向けなければならない.
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.101
(5pt)

日本人作家とは思えないクールでバイオレンスな傑作SF!

これがデビュー作とは思えないほど精密で繊細な文章。海外作品のようなクールでハードボイルドな語り口.よく勉強されたバックボーンによって、リアリティ十分な世界観。SFという体裁を取ることでマイルドな味付けになっているが、平和な国で富を享受し、貧しい国から多くの物資を巻き上げて生きているG9の国々の罪をあからさまに指摘した硬派社会派小説である。また「死」というものにこれほど真摯に向き合った作品を読んだことがない。海外の作家の作品と比べても見劣りしないすばらしい作品である.平和ボケした多くの日本人は本作を読み、世界の現状に目を向けなければならない.
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.100
(5pt)

今生きる世界の延長線上にある悪夢

読了してここまでもどかしい気分になった小説も久しぶりだった。今更ながら日本のSF史に残る傑作であることは言うまでもないし、それだけにもうほんの少しだけのリアリティと小説上の工夫があればと、処女作にこれを描き切った作者の夭折と合わせて残念でならない。小説内で用いられているエピソード、ガジェットやモチーフの引き出しの多さが世界観の構築に寄与しているのは認めるものの、それらの使い方の詰めの甘さ(もう一捻り欲しいというか)を感じるのだ。

なぜピザハットとFOXじゃなくて、ドミノ・ピザとCNNなのか。なぜもう一回NYでもなくテルアビブでもなくマーレーアドミームでもなくドバイでもモスクワでもなく、サラエボなのか。そもそも最初の引き金がなぜムスリム原理主義なのか。なぜジョン・ポール(ヨハネ・パウロ)という命名なのか。だったらなぜLTI、ルワンダの煽動ラジオなど近現代の文献だけが対象なのか。有史以来宗教の名のもとに行われてきた虐殺行為の数々は?等々の疑問がどうしても現在の延長線上にあるこの小説世界のリアリティを私的には損なってしまっていた。それがもどかしかったのだ。

多分、ものすごく贅沢な注文で、凡百の日本の国際謀略小説の多くが全共闘くずれの妄想かリアリティのないゲーム的小説に終始してることを考えれば、これ以上ないくらい贅沢な注文であることもわかっているので、とても星5つ以下にはできない。
虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311
No.99
(5pt)

今生きる世界の延長線上にある悪夢

読了してここまでもどかしい気分になった小説も久しぶりだった。今更ながら日本のSF史に残る傑作であることは言うまでもないし、それだけにもうほんの少しだけのリアリティと小説上の工夫があればと、処女作にこれを描き切った作者の夭折と合わせて残念でならない。小説内で用いられているエピソード、ガジェットやモチーフの引き出しの多さが世界観の構築に寄与しているのは認めるものの、それらの使い方の詰めの甘さ(もう一捻り欲しいというか)を感じるのだ。

なぜピザハットとFOXじゃなくて、ドミノ・ピザとCNNなのか。なぜもう一回NYでもなくテルアビブでもなくマーレーアドミームでもなくドバイでもモスクワでもなく、サラエボなのか。そもそも最初の引き金がなぜムスリム原理主義なのか。なぜジョン・ポール(ヨハネ・パウロ)という命名なのか。だったらなぜLTI、ルワンダの煽動ラジオなど近現代の文献だけが対象なのか。有史以来宗教の名のもとに行われてきた虐殺行為の数々は?等々の疑問がどうしても現在の延長線上にあるこの小説世界のリアリティを私的には損なってしまっていた。それがもどかしかったのだ。

多分、ものすごく贅沢な注文で、凡百の日本の国際謀略小説の多くが全共闘くずれの妄想かリアリティのないゲーム的小説に終始してることを考えれば、これ以上ないくらい贅沢な注文であることもわかっているので、とても星5つ以下にはできない。
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)より
4150309841
No.98
(5pt)

人間の複雑な感情・感覚の描き方が秀逸な一冊

SF作品としての世界観・設定の細かさは当然の評価対象として、
単純な反応で片付けることのできない、
人間の複雑な感情・感覚の描き方が秀逸な一冊。

ホラー、戦争小説などのジャンルにおいては
ゾンビ→怖い、弾に当たる→痛い、戦友が死亡→哀しい
と人間の感情・感覚の反応が、単純な図式で定式化されていた方が
読者は感情移入しやすいし、第一、話を進めやすいだろう。

しかし本書では敢えてそこを切り離し、目の前の凄惨な現実と、
それにビビットに反応しないよう統御された感情感覚を並列し
外部環境と人間内部、また現実とデジタル虚構、
平和な先進国と内戦の続く混乱地域という
テレビやネットの中の報道だけで理解している気になっている
二項対立の拠って立つ基盤に鋭い疑問を投げかけている。

そういう意味で押井守作品との親和性や、
佐藤亜紀が評価するのも肯ける意欲作だろう。
この難易度は高いが、すばらしい探索の進化を
もうこれ以上見られないのは、まこと哀しい現実である。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) Amazon書評・レビュー: 虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)より
4152088311