ブライトン・ロック
評判
ブライトン・ロックの評価:
3.40/5点 レビュー 5件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1〜4 1/1ページ
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ブライトン・ロックの評価:
3.40/5点 レビュー 5件。 C ランク
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評者が先に読んだ『ヒューマン・ファクター』(1978年) は、このころの体験を色濃く取り入れて書かれているように思いながら読んだ記憶である。
この事件の後、MI6のなかの権力闘争に嫌気がさしたグリーンは、1943年にMI6を辞任している。
本書は、グレアム・グリーンが、作家としての地位を確立していた1938年(グレアム・グリーン34歳)の作品である。
タイトルのブライトン・ロックという意味は、本書で丸谷才一氏がブライトン糖菓と訳していたが、日本で似たものとしてある金太郎飴のような棒菓子だと知ることができた。
ブライトンというロンドンから程遠からぬ海浜行楽地で裏稼業で稼いでいたピンキーという17歳の少年が主人公である。
本書を読み進みながら評者は戸惑う。
なぜなら生まれたときからキリスト教の世界で育っていないからである。
巻末の解説で三浦雅士氏が書いていたことが本書を的確に捉えていたので、手抜きのレビューになるが、下の・・・・・・内に引用したい。
・・・・・・
グリーンは神を無罪放免しようとなしない。この作家は、あくまでも神に責任を取らせようとするのである。この世の広大な無意味の責任を取らせようとするのである。しかもその神の位置に、強引に、読者を座らせようとするのだ。あたかも、これでもかというように強引に――それこそグリーンにおけるサスペンスの意味にほかならない。読者は作者によって、強引に神の困惑を味あわされるのである。『ブライトン・ロック』でいえば、悪の化身ともいうべきピンキーに限りなく恋着させられる。事実、殉教者のように光り輝いているのは疑いもなく悪の化身のほう――「なにか飢えの状態を思わせる激しい顔つき、一種不自然ないやらしい傲慢さ」――なのだ。むろん、逃げ道は用意されているように見える。ピンキーはローズと同じほどに貧しかった。愛に飢えていた、同情すべき余地は大いにある。というように。だが、その同情を拒絶するのだ。ピンキーの死後、ローズは告解場に入って司祭にいう、神を裏切ることこそが神に従うことだったのではないか、と。(P489)
<中略>
神の不在をなじることによって神の存在を確証するという逆説、すなわち反カトリックであることによってカトリックであるという逆説が、グリーンの人と作品を貫徹している。(P491)
・・・・・・
虚無を標榜するようなピンキーが、たびたび聖書から引用して話す場面もグリーンの隠し味だと知ることができる。
本書では、「善と悪」が物語のなかで欠かせないテーマとなっているが、キリスト教徒でないわれら日本の読者でも、グリーンが「サスペンス」とは何かを思い知らせてくれる作品に仕上げている。
正義を振り回し、ピンキーとローズの前に立ちはだかるアイダ・アーノルドの存在が、この物語の影の主役なのだろうと多くの読者は思わされます。
読者にとって、間違いなくこのアイダという女の正義なるものが疎ましくなってきます。
が、小説には、このようなエンターテイメント性が不可欠なものなのです。
サスペンスとエンターテイメント性を兼ね備えた本書『ブライトン・ロック』は、グレアム・グリーンの傑作であり、気取って「人間」を語る日本のベストセラー作家たちに「グリーンの爪の垢でも煎じて飲めよ!」と、言いたくなりながら、この本を読み終えたのです。