グランド・ミステリー

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グランド・ミステリーの評価:

4.38/5点 レビュー 24件。 D ランク

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平均点4.38pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全29件 21〜29 2/2ページ
No.9
(5pt)

非Aの世界、もしくは・・・

いろいろな美味しさが詰め合わせになっています。

1品めは。教授宅でのギリシャ古典サークル。漱石『吾輩は猫である』で苦沙弥先生宅に繰り広げられる高等遊民の集いの雰囲気が漂います。「二弦琴のお師匠さん」で『猫』ファンはドッと受ける。

2品め。金井美恵子か樋口一葉かというような「、」が続き、なかなか「。」にたどり着かない文体が一部に使われている。その風雅なリズム感は、言葉で綴られたフーガの楽章といえるでしょう。

3品めが、ミステリー味。伏線を律儀に回収する手際は気持ちいい。この部分は推理小説の文法をお行儀よく守っています。実際、クリスティの『○○で○○だ○』の中の短編に並ぶものがあるんですよ。(伏せ字にしてみました。戦時中の物語だけに!)

4品めはSFの味付け。作中の「1冊目の本」「2冊目の本」という言葉は、安部公房『第四間氷期』の「1次予言値」「2次予言値」を連想させる。しかし、「予言値」(値の1字が理系な雰囲気!)が電子計算機の出力で、あくまで人間の外側にあるのに対して、「本」は記憶という直接的な体験を指しているという違いがあります。
パジャマに着替えて、ベッドに入り、さあ寝るぞと思ったとたん、実はそれは夢で、実際はそこで目が覚めてしまい、何だか損をしたような気分になったなんていう体験はないですか? それと似た感覚だと思うのですが、身に覚えのない事柄を記憶しているという体験をする登場人物が出てきます。あたかも2つの世界が並列してあるような感覚らしい。

世界Aを「Aさんがαという事をし、かつBさんとCさんがβという事をした時空」と定義すると、「Aさんがαという事をし、かつBさんとCさんがΓという事をした時空」は、非Aの世界となります。
ある作中人物が、現実は1つではなくたくさんあるのかもしれん、みたいなセリフを言いますが、読者にとってはまさにパラレルワールドの断片を示されている印象があります。

すると、そんな多世界でミステリーの伏線の回収なんかできるのかと心配になります。実際、ある登場人物はその点を破綻させかねないセリフを言ったりもしています!

5品め…だっけ? 戦争の生理学。作者は子供時代に傷痍軍人を目にしたかもしれない最後の世代に属するようで、戦火に見舞われたことはないけれど、でも戦争の結果生まれた事物に直接触れることができる、そんな日常風景があったのではないでしょうか。
親戚の男性や、ギリシャ古典サークルのメンバーで記者志望の青年などの造形は、そうした戦争の余熱の中から生み出されたもののような気がします。

記者になった佐々木が言います。報道は事実だけではなく読者の心に働きかけるような言葉を伝えるべきだと。
ジャーナリズムがセンセーショナリズムにすり替わった瞬間です。

佐々木が言うのは戦意を高揚させる記事ということですが、現在よく見聞きする「元気をもらえる」というやつ、これも同じものじゃないでしょうか。
2011年3月11日の午後3時頃まで、日本は無縁社会でした。それが一夜にして、絆社会になりました。しかし現実の日本は何も変わっていません。市場をどこに求めるか、少子高齢化にどう対応するか、といった問題は解決されていません。

「無縁社会」から「絆社会」への、手のひらを返したような変わりようは大変に印象的でした。
世の中を一色に塗り込める言葉のいかがわしさを痛感した瞬間だったからです。

戦争の非倫理性を感じるのは平時だけです。戦争に巻き込まれた状態では、戦争はあって当たり前なものになるでしょう。
その当たり前という感覚は上から押し付けられるまでもなく、多くの人が日常として受け入れる。なぜなら現に自分が置かれている社会を否定し続けるより、追認し同化する方が安定感が得られ、社会人として当然と感じられるからです。そういう日常の心理を支えるのが、佐々木のいう、心に働きかける言葉です。
戦時中に限りません、スポーツニュースで「日本中が湧いた」的なフレーズはよく耳にします。

マスコミが人の心に働きかけようとする言葉をまき散らすようになったら要注意。

完食。ごちそうさま。満腹…ダイエットしなくちゃ。
グランド・ミステリー (角川文庫) Amazon書評・レビュー: グランド・ミステリー (角川文庫)より
4041008255
No.8
(5pt)

太平洋戦争を通じて日本とは、日本人とは何かを追及したメタ・ミステリの極北大作

太平洋戦争中、日本の軍隊で不可解な事件が頻発し・・・というお話。
ここでテーマにになっいる日本のダークサイドは学校等では習わない日本史最大の恥部だと思いますが、それを真っ向から捉えて900ページを超える超大作ミステリに仕上げて著者の膂力に脱帽です。かなりの長さにも関わらす、一瞬もつまらないところがなく最後まで一気読みできるところも驚嘆に値します。しかもただ、長いだけではなくこのテーマを扱うにはこの情報量、情緒量が必要だったという必然性があり圧巻です。
この手の日本乃至日本人を追及した作品では中井英夫の「虚無への供物」が今まで最高峰だと思ってましたが、この小説は「虚無への供物」も越えていると思いました。
ここで上に挙げた日本のダークサイドはあまりにも醜悪なので歴史や社会科の授業で教えないようですが、個人的にはこのことこそ教えるべきだと思いましたがどうでしょうか。そのほかにも最近の日本でよく問題になる日本男子の恥部にも若干ふれられておりそこら辺も含めてかなりの示唆に富む作品だと思いました。
警句や箴言に出てくるようなこ言葉も嫌味にならない感じで色々でてきて為になります。個人的には「生きようとすると殺される、死のうと思うと邪魔される」というのが可笑しかったです。
題名の由来になったと思われる絵画「グランド・オダリスク」について、何故この絵画を表紙にしたり、作中に登場したかを類推すると、日本の汚辱の歴史より私の裸体の方が美しいと嘲笑されているためではいかと考えましたが間違っているでしょうか。文章も読みやすいですが、通俗に流れず品格があり素晴らしいと思います。
一人の作家が一生かかって書けるか書けないかというぐらいの巨編。日本人、あるいは自分が日本人と思っている人は必読の戦史小説、推理小説史に残る大傑作。五段階評価なので★5つですが、十段階でも★10こ献呈したい作品。必読。
グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸) Amazon書評・レビュー: グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸)より
4048730894
No.7
(5pt)

太平洋戦争を通じて日本とは、日本人とは何かを追及したメタ・ミステリの極北大作

太平洋戦争中、日本の軍隊で不可解な事件が頻発し・・・というお話。
ここでテーマにになっいる日本のダークサイドは学校等では習わない日本史最大の恥部だと思いますが、それを真っ向から捉えて900ページを超える超大作ミステリに仕上げて著者の膂力に脱帽です。かなりの長さにも関わらす、一瞬もつまらないところがなく最後まで一気読みできるところも驚嘆に値します。しかもただ、長いだけではなくこのテーマを扱うにはこの情報量、情緒量が必要だったという必然性があり圧巻です。
この手の日本乃至日本人を追及した作品では中井英夫の「虚無への供物」が今まで最高峰だと思ってましたが、この小説は「虚無への供物」も越えていると思いました。
ここで上に挙げた日本のダークサイドはあまりにも醜悪なので歴史や社会科の授業で教えないようですが、個人的にはこのことこそ教えるべきだと思いましたがどうでしょうか。そのほかにも最近の日本でよく問題になる日本男子の恥部にも若干ふれられておりそこら辺も含めてかなりの示唆に富む作品だと思いました。
警句や箴言に出てくるようなこ言葉も嫌味にならない感じで色々でてきて為になります。個人的には「生きようとすると殺される、死のうと思うと邪魔される」というのが可笑しかったです。
題名の由来になったと思われる絵画「グランド・オダリスク」について、何故この絵画を表紙にしたり、作中に登場したかを類推すると、日本の汚辱の歴史より私の裸体の方が美しいと嘲笑されているためではいかと考えましたが間違っているでしょうか。文章も読みやすいですが、通俗に流れず品格があり素晴らしいと思います。
一人の作家が一生かかって書けるか書けないかというぐらいの巨編。日本人、あるいは自分が日本人と思っている人は必読の戦史小説、推理小説史に残る大傑作。五段階評価なので★5つですが、十段階でも★10こ献呈したい作品。必読。
グランド・ミステリー (角川文庫) Amazon書評・レビュー: グランド・ミステリー (角川文庫)より
4041008255
No.6
(5pt)

奥泉さんにしては合理的

日本海軍の潜水艦と空母を舞台にした歴史ミステリー
1個人の視点から太平洋戦争を活写する戦記文学
戦争論と日本論を突き詰めた思想小説
さらに恋愛ありピカレスクあり

時代は太平洋戦争真っ只中
1/3くらいまではごくごく普通に展開するストーリーです(奥泉さんらしくない)が
鎌倉にある「国際問題研究所」が何をし研究しているところなのか
『未来を完璧に予想するんだそうだ』
から俄然面白くなります

小説の鍵は
同じ人生を二度繰り返す人々
登場人物たちの最初の人生を「第一の書物」とする
二度目の人生を「第二の書物」とする
タイムトラベルするのではないものの第一の書物で得た未来の知識を生かして歴史の流れを変えようとする人物が登場する

第一の書物の物語と第二の書物の物語が時と場所を選ばず入れ替わる仕掛けはまさに奥泉マジック
複雑ではありますが他の作品と比べれば容易に合理的解釈が可能なものとなっています

奥泉入門書としてお薦めしたい作品です
グランド・ミステリー (角川文庫) Amazon書評・レビュー: グランド・ミステリー (角川文庫)より
4041008255
No.5
(5pt)

奥泉さんにしては合理的

日本海軍の潜水艦と空母を舞台にした歴史ミステリー1個人の視点から太平洋戦争を活写する戦記文学戦争論と日本論を突き詰めた思想小説さらに恋愛ありピカレスクあり時代は太平洋戦争真っ只中1/3くらいまではごくごく普通に展開するストーリーです(奥泉さんらしくない)が鎌倉にある「国際問題研究所」が何をし研究しているところなのか『未来を完璧に予想するんだそうだ』から俄然面白くなります小説の鍵は同じ人生を二度繰り返す人々登場人物たちの最初の人生を「第一の書物」とする二度目の人生を「第二の書物」とするタイムトラベルするのではないものの第一の書物で得た未来の知識を生かして歴史の流れを変えようとする人物が登場する第一の書物の物語と第二の書物の物語が時と場所を選ばず入れ替わる仕掛けはまさに奥泉マジック複雑ではありますが他の作品と比べれば容易に合理的解釈が可能なものとなっています奥泉入門書としてお薦めしたい作品です
グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸) Amazon書評・レビュー: グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸)より
4048730894
No.4
(5pt)

私はこれで奥泉光にはまった

海軍が舞台と聞いて、大した期待もなく暇つぶし感覚で読み始めたが、一気に読破してしまった。登場人物が魅力的なこと、いろいろな謎に満ちていること、そして何より文章力。ただ、すべての謎が解明されるわけではなく、エンディングは読み手の理解に任されている。読書に知識を求めるのではなく、現実を忘れさせる雰囲気を求めて読む方には、ぜひお勧め。
グランド・ミステリー (角川文庫) Amazon書評・レビュー: グランド・ミステリー (角川文庫)より
4041008255
No.3
(5pt)

私はこれで奥泉光にはまった

海軍が舞台と聞いて、大した期待もなく暇つぶし感覚で読み始めたが、一気に読破してしまった。登場人物が魅力的なこと、いろいろな謎に満ちていること、そして何より文章力。ただ、すべての謎が解明されるわけではなく、エンディングは読み手の理解に任されている。読書に知識を求めるのではなく、現実を忘れさせる雰囲気を求めて読む方には、ぜひお勧め。
グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸) Amazon書評・レビュー: グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸)より
4048730894
No.2
(5pt)

響いてくる声

同作者の『葦と百合』に並ぶ大作であり、傑作でもある。それらはともに、現代からは全く省みられることのなくなってしまった社会的理念が中心となっている。片方は左翼的理念であり、片方は汎アジア主義(というか戦前戦中のイデオロギー)である。そして、それらを過去の遺物と見なしてる我々にたいして、冗談じゃねえぞ、と。何軽々しく超えたつもりになってるんだよ、忘れてんなよ、そんなに過去のことじゃないだろ?と。直接こう描かれているわけではないが、これらの小説を読みながら響いてくるのは、そんな声なのである。なんて書くと、カシコまって読まれてしまいそうで、とにかく先ずは読まれることを目指す作者の意図に反するかも。だから言っておくと、そんな重いメッセージなど気にせずとも充分楽しめます。ストーリーの運び方には定評のある作者だし、たんに恋愛小説としてこの小説を非常に楽しんだ友人もいるし。何よりストーリーの面白さがあるからこそ、メッセージも入ってくるわけであって。けれどもやはり、この小説のもつ、われわれへの批判、現代日本への違和・異議、そういう部分こそが、この小説を一歩抜きん出たものにしている事だけは最後に言っておきたい。
グランド・ミステリー〈下〉 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: グランド・ミステリー〈下〉 (角川文庫)より
4043578024
No.1
(5pt)

重厚な物語世界

この物語は、最近のジェットコースター・ミステリに慣れた読者には少々重荷かも知れない。しかし、筆者の饒舌なレトリックが醸し出す、呪術的なムードに囚われ、それらが描き出す重層的な物語のラビリンスに一旦足を踏み入れたならば、もう下巻まで、正にジェットコースター、息つく暇もない豪華絢爛たる物語世界を、あなたは体験することになる。奥泉光が純文学とエンターテイメントを正にアウフヘーベンした大傑作と、私は思う。
グランド・ミステリー〈上〉 (角川文庫) Amazon書評・レビュー: グランド・ミステリー〈上〉 (角川文庫)より
4043578016