グランド・ミステリー
評判
グランド・ミステリーの評価:
4.38/5点 レビュー 24件。 D ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全34件 21〜34 2/2ページ
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グランド・ミステリーの評価:
4.38/5点 レビュー 24件。 D ランク
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1品めは。教授宅でのギリシャ古典サークル。漱石『吾輩は猫である』で苦沙弥先生宅に繰り広げられる高等遊民の集いの雰囲気が漂います。「二弦琴のお師匠さん」で『猫』ファンはドッと受ける。
2品め。金井美恵子か樋口一葉かというような「、」が続き、なかなか「。」にたどり着かない文体が一部に使われている。その風雅なリズム感は、言葉で綴られたフーガの楽章といえるでしょう。
3品めが、ミステリー味。伏線を律儀に回収する手際は気持ちいい。この部分は推理小説の文法をお行儀よく守っています。実際、クリスティの『○○で○○だ○』の中の短編に並ぶものがあるんですよ。(伏せ字にしてみました。戦時中の物語だけに!)
4品めはSFの味付け。作中の「1冊目の本」「2冊目の本」という言葉は、安部公房『第四間氷期』の「1次予言値」「2次予言値」を連想させる。しかし、「予言値」(値の1字が理系な雰囲気!)が電子計算機の出力で、あくまで人間の外側にあるのに対して、「本」は記憶という直接的な体験を指しているという違いがあります。
パジャマに着替えて、ベッドに入り、さあ寝るぞと思ったとたん、実はそれは夢で、実際はそこで目が覚めてしまい、何だか損をしたような気分になったなんていう体験はないですか? それと似た感覚だと思うのですが、身に覚えのない事柄を記憶しているという体験をする登場人物が出てきます。あたかも2つの世界が並列してあるような感覚らしい。
世界Aを「Aさんがαという事をし、かつBさんとCさんがβという事をした時空」と定義すると、「Aさんがαという事をし、かつBさんとCさんがΓという事をした時空」は、非Aの世界となります。
ある作中人物が、現実は1つではなくたくさんあるのかもしれん、みたいなセリフを言いますが、読者にとってはまさにパラレルワールドの断片を示されている印象があります。
すると、そんな多世界でミステリーの伏線の回収なんかできるのかと心配になります。実際、ある登場人物はその点を破綻させかねないセリフを言ったりもしています!
5品め…だっけ? 戦争の生理学。作者は子供時代に傷痍軍人を目にしたかもしれない最後の世代に属するようで、戦火に見舞われたことはないけれど、でも戦争の結果生まれた事物に直接触れることができる、そんな日常風景があったのではないでしょうか。
親戚の男性や、ギリシャ古典サークルのメンバーで記者志望の青年などの造形は、そうした戦争の余熱の中から生み出されたもののような気がします。
記者になった佐々木が言います。報道は事実だけではなく読者の心に働きかけるような言葉を伝えるべきだと。
ジャーナリズムがセンセーショナリズムにすり替わった瞬間です。
佐々木が言うのは戦意を高揚させる記事ということですが、現在よく見聞きする「元気をもらえる」というやつ、これも同じものじゃないでしょうか。
2011年3月11日の午後3時頃まで、日本は無縁社会でした。それが一夜にして、絆社会になりました。しかし現実の日本は何も変わっていません。市場をどこに求めるか、少子高齢化にどう対応するか、といった問題は解決されていません。
「無縁社会」から「絆社会」への、手のひらを返したような変わりようは大変に印象的でした。
世の中を一色に塗り込める言葉のいかがわしさを痛感した瞬間だったからです。
戦争の非倫理性を感じるのは平時だけです。戦争に巻き込まれた状態では、戦争はあって当たり前なものになるでしょう。
その当たり前という感覚は上から押し付けられるまでもなく、多くの人が日常として受け入れる。なぜなら現に自分が置かれている社会を否定し続けるより、追認し同化する方が安定感が得られ、社会人として当然と感じられるからです。そういう日常の心理を支えるのが、佐々木のいう、心に働きかける言葉です。
戦時中に限りません、スポーツニュースで「日本中が湧いた」的なフレーズはよく耳にします。
マスコミが人の心に働きかけようとする言葉をまき散らすようになったら要注意。
完食。ごちそうさま。満腹…ダイエットしなくちゃ。