照柿

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照柿の評価:

4.00/5点 レビュー 109件。 B ランク

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平均点4.00pt

Amazonレビュー一覧

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全96件 81〜96 5/5ページ
No.16
(4pt)

まさに真夏に読むべき本

単行本出版から12年もかけてようやく文庫化。
「マークスの山」の時もそうでしたが、大幅に加筆修正されてますので、既読の方もぜひ。(以下は未読の方向けのレビューです)

一言でいえば、非常に暑苦しい本です。
狂ったように暑い夏のある日、18年ぶりに再開した2人の男。
心と体をすり減らし、なお歯車にもなりきれない歪んだ刑事と、圧倒的な芸術への渇仰を持ちながら、熱処理工場で汗まみれになるその幼なじみ。一人の女を巡って二人の人生が再び交錯することに。
それそれの人間が背負った過去、家族という名の他人、他者の才能への嫉妬、繰り返される日常の疲労と夏の暑さ・・・そうしたドロドロした何かが重層的に積み重なっていき、ある意味唐突に悲劇が起きて、物語は幕を閉じます。

上巻からうねりのように繰り返される「照柿色」のイメージが、この下巻の終盤には、圧倒的な迫力、現実感をもって胸に迫ります。

現代の『罪と罰』などと評されていますが、文庫版解説にもあるように、ドストエフスキーでたとえるなら、「白痴」や「悪霊」の方が雰囲気が近いでしょう。
照柿〈下〉 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 照柿〈下〉 (新潮文庫)より
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No.15
(4pt)

まさに真夏に読むべき本

単行本出版から12年もかけてようやく文庫化。
「マークスの山」の時もそうでしたが、大幅に加筆修正されてますので、既読の方もぜひ。(以下は未読の方向けのレビューです)
一言でいえば、非常に暑苦しい本です。
狂ったように暑い夏のある日、18年ぶりに再開した2人の男。
心と体をすり減らし、なお歯車にもなりきれない歪んだ刑事と、圧倒的な芸術への渇仰を持ちながら、熱処理工場で汗まみれになるその幼なじみ。一人の女を巡って二人の人生が再び交錯することに。
それそれの人間が背負った過去、家族という名の他人、他者の才能への嫉妬、繰り返される日常の疲労と夏の暑さ・・・そうしたドロドロした何かが重層的に積み重なっていき、ある意味唐突に悲劇が起きて、物語は幕を閉じます。
上巻からうねりのように繰り返される「照柿色」のイメージが、この下巻の終盤には、圧倒的な迫力、現実感をもって胸に迫ります。
現代の『罪と罰』などと評されていますが、文庫版解説にもあるように、ドストエフスキーでたとえるなら、「白痴」や「悪霊」の方が雰囲気が近いでしょう。
照柿(下) (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 照柿(下) (講談社文庫)より
406275259X
No.14
(4pt)

高熱炉に投げ込まれる本

前回のマークスの山に引き続き、刑事 合田雄一郎が活躍する話…

なんですが、今回は、合田刑事の私情も色々入ってきて、面白いです。前作の、あくまでも刑事としての立場から、犯人を追い詰めていく感じとは違って、職務を離れた所での気持ちが、描かれています。

高村作品の、設定の細かさがまた良く分かりました。前回の山の描写に続き、今回は熱処理工場に関する膨大な説明描写。。。
読み飽きるほどに熱処理工場に付いての知識が得られたようにも思います。

でも、さすがに高村薫の本だな〜と言う感じ。読み応えがありました。
500ページもあるのですが、文字も細かくて、一気には読めませんでした。

テーマは照柿色の『熱』です。
実際の暑さの熱、夏の熱気、人間の熱、心の熱。。。

いわゆるミステリーを期待して読むと期待外れになるかもしれません。あくまでも小説(文学作品)として、また、マークスの山の後に読む事をお勧めします。

照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.13
(5pt)

心に突き刺さる魂の慟哭

物語全編を通して感じられるのはうだるように暑く、熱い「熱」である。熱処理工である野田の持つ炉の「熱」、合田雄一郎の持つ過去への後悔でも贖罪でもない精神の「熱」、美保子の持つ情念の「熱」。そして、照柿色に染まる空の炎のような「熱」。それぞれの熱病に魘され続けた三人が一人の女性の飛び込み自殺に関係したのを切欠に複雑に引き寄せられる事になる。この過程をある意味では淡々と、ある意味では嵐の前の静けさで書ききった中盤までの心理描写は秀逸で特別大事件が起こるわけでもないのにぐいぐいひきつけられるように読み進められる。
そして、殺人は起こった・・・。人を愛したいと願い欲する、人を排除し消しさりたいと思う、この二つの熱は相反するようで実は背中合わせの感情であろうか、ゾッとさえした。そして背中合わせであると同時に愛する事も罪、人を殺す事も罪・・・では罰は誰が与えるのか?宗教的世界観を得意とする高村氏ですが、罰を与えるのはいつも神ではない。人が自ら地獄の業火に飛び込んでいくのである。ラスト、等しく壮絶な罰を引き起こす(あえて受けると言わず。)三人の魂に再生はあるのか?ミステリーでは無く、人間と人間の魂の炎の壮絶な絡まり合いであり、切な過ぎ、哀し過ぎる慟哭の物語です。再生と鎮魂を祈る読者の心すら容赦無く打ち砕く静かなる文章は、一流の文学作品という勲章すら最早必要無い。秦野組長、森巡査部長、相変わらず脇役もよくたっている。軽い気持ちで読み始めると、濃密な心理描写に胸を抉られる事でしょう。読書馴れした方にも覚悟を決めてから読んで欲しい一冊。(「マークス」の後、読むことをお薦めします。)不幸にも私は、真冬にこの本を読んでしまった。次はうだるような暑い夏にじっとりと汗を浮かべながら読み終わりたいものだ。こんな本に出会いたくなかった、でもこの本に出会わない読書人生は考えられないのも事実である。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.12
(5pt)

暑くも、凄い本

従来のクールな高村ミステリーとは毛色が異なり、書き出しを読むだけでじりじりと「暑さ」が伝わってきた。
 それぞれ精神的に追い詰められた状態にある男女3人の、絡み合い、縺れ合う情念の克明な描写には、「これが高村か?」と驚きつつも、一人の人間が壊れていく過程の克明な描写は「やはり高村だ」と納得。いつものことながら彼女の圧倒的な筆力には素直に脱帽してしまう。
 告悔を連想する雄一郎の尋問を受けるシーン、達夫と美穂子の哀しい末路には、ただただ引きずり込まれてしまう。そして、物語は雄一郎が各方面に書いた手紙で締め括られるが、手紙の内容とそれを書くに至った雄一郎の心境を想像すると、胸が締め付けられる思いがする。
 また一見すれば義弟を思い遣る心優しい義兄だが、手紙の行間からも窺える、雄一郎への人には言えぬ思いを胸に秘める加納との関係を含め、雄一郎の葛藤は次作のレディ・ジョーカーへと受継がれる。雄一郎を軸に物語を捉えたら、本書が「罪と罰」、レディ・ジョーカーは「魂の救済」と喩えたら過言か。
 人は、他人を傷つけ、人に傷つけらずには生きられず、そして誰もがその罪を背負い、罰を恐れながら生きるものだという、キリスト教の原罪主義が物語の根底に流れているのを感じた。読み終わって数日たった今も、登場人物の心境や物語の各場面は脳裏から離れることなく、思い出すごとに物語へと引き戻される、「凄い本」である。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.11
(5pt)

情念に炙られる男女の物語・・。

損得ではない、本人にも説明し難い暗い情念を抱える男、というのは著者の作品に頻繁に登場する人物像だが、本作でも情念に捕われる男たちが描かれる。さらに本作は題名とおり火に炙られているような焦燥感が全編を包み、異様な雰囲気の中でストーリーが進行する。
前作、「マークスの山」の警視庁捜査一課刑事合田雄一郎。雄一郎の幼馴染の工員野田達夫、達夫の元恋人美穂子・・・。偶然、鉄道飛び込み自殺に居合わせた美穂子とそれを見た雄一郎・・・。
季節は署夏、工場の高炉の火、不眠症、人手不足、不良品の発生、生産管理、整備不良の設備、仕事に追われる達夫。一方の雄一郎も強盗殺人の捜査に肉体と精神をすり減らし、捜査のために暴力団の主催する賭博場に顔を出したことで身内から脅されながらも、情報を獲るというギリギリの生き方・・・。陰のあるヒロイン美穂子の描き方もまた印象的。濃密な描写の独特な文章魅力。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.10
(4pt)

うだるような・・・

うだるように暑い。爽やかさなど一片もなく、じくじくと苛むような暑さが本作品全体を包み込んでいる。
熱い情熱のほとばしりではなく、ほの暗く心の内で燃える炎。少しずつ狂い始めた歯車が、男の心をじりじりと追い込んでいく。読んでいてとにかく重たい。そして暑苦しく息苦しくなる。鈍い赤色が自分を包み込んでいくようだ。熱帯夜がつづく日の夕方に西日に焦がされながら読んでみてください。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.9
(4pt)

荒れ野

読み始めるなり,ネチネチした,『青年の環』の野間宏ばりの文章に,辟易しそうになった。登場人物たちそれぞれが生きる世界が,かれらの五感にからみついてくるものとして,執念深くやや偏執的なまでに詳細に描かれる。それは,ねっとりと暑苦しく,呼吸のしづらいような世界で,己と世界にたいする根深い不快感と愛憎が,とぐろを巻いている。 おそらく人並み以上に理性的な作者は,刻苦のうえに,こうした描写を成し遂げたのであろう。作者は,テーマを大上段に観念的な形で提出しない。厚塗りの点描画のように,具体的な情念描写,情景描写を積み重ねることによって,描き出していく。作中人物たちにおいて,知性の働きはごくまれにのみ,キラリとかいま見える。意識的に,情念に偏向しているようだ。
 
 読むのに抵抗感を覚えさせるこうした世界の提示に,あえて作者がこだわったのは,作者の資質によるものではなく,それをあえて選んで大切にしている証拠である。不快な情念にまとわりつかれた日々の些事にこそが,現実だからであり,またそれは,腰を据えて観想すべき「荒れ野」だからである。 人を愛せない,殻から抜け出すことができない,孤独に気づくとき,人は荒れ野にいる。あるいは,みずからの情念の暴走を知性が制御しえずに,苦しみのたうちながら流された果てに,呆然と荒れ野にたたずむ自分を見出す。そして,旧約聖書の昔から,人が神に出会うのは,荒れ野においてなのである。荒れ野にあってこそ,慈愛や善といった超越を,はるか彼方に求めることができる。それを,気晴らしや多忙でごまかしていては,人間の救済はありえない,というのが作者の思いなのではないだろうか。 作者の底力を見せつけられような,重厚で胸に残る作品であった。読後感は不思議にさわやかである。

照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.8
(5pt)

淡々と深い人間ドラマ

中盤からようやく深いドラマなのだなあ、と思わされた。ストーリー性はほとんどない気がした。でもここに小説として存在する。言えば異色かもしれない。 駅のホームで男と女が絡み合い、一人の女が線路に転落。それを見た合田雄一郎は逃げた男を追いかけた。もう一人いた女を見ていた野田達夫は、久しぶりに見る自分の昔の恋人佐野美保子だった。合田と達夫は20年ぶりの再会を果たし、ここから達夫と美保子を中心とした人間ドラマが始まる。そして、出くわせてしまった合田も。 もう大分メジャーになった合田雄一郎シリーズ第2弾。この読み物に筋はあるのだろうか。淡々と2人の男女に焦点を合わせるだけ。その日々を順を追って綴られている。日記とも言えなくない。合田は別の事件で2人の被疑者を見極めていた。そのときに遭遇した3人。相変わらずのディティールで乃南アサ以上に酷な心理描写。それに前半つまずいた。しかし中盤から面白さを知ってからは一気に読めた。浅いかと思っていたんだが深い人間ドラマなのだ、と。その面白さに作家はなかなか気付かせてくれないのが憎い。 美保子は美保子で、ホームにいた夫の敏明を女性関係で憎んでいた。達夫は仕方なく結婚した今の妻より確実に美保子を愛してしまった。そして6年前に離婚を経験した合田さえもが。愛することとは果たして罪なのだろうか。どこまでが罪なのだろうか。問いかけのように思えた。書きたかったのはその罪と、愛したことの罰なのだろうか。この罰はあまりに痛くないか。このテーマを出すために長々と読んできた。十分面白いと思った。前作と比較は出来ないがこれは面白い。 タイトルの照柿は、達夫が工場で熟処理をしているときの色である。子どもの頃の図工の時間に書きたくて書けなかった色。そして、壮絶なラストで垣間見た故郷大阪での色。切なすぎた。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.7
(5pt)

ベスト3

この冬「マークスの山」を文庫版、単行本の順に読み、合田刑事シリーズにはまってしまった私である。合田と森のコンビが、8月2日の電車で、偶然轢死事故を見るところからこの物語は始まる。女を弾みで電車の前に突き落としてしまった男。その男を亭主だという白いブラウスの女。合田は轢死した女を別れた妻貴代子ではないかと疑ったりしている。今回の合田は単行本版の合田の続きである。断じて文庫版の合田ではない。貴代子のことをこんなに女々しく思いつづけているのだから。この作品は表面は犯罪小説ではあるがそう思って読むと消化不良を起すこと必死である。「罪と罰」を探る暑い暑い夏の数日間であり、自分自身の「暗い森」の中で「呼び止めるべき人の影」を見出す物語なのだ。「罪」というは、法律の条文に現れた事象のみを意味するのではない。「罪」の自覚無しには「罰」は現れない。なんて自分かってな「恋」だったのだろう。自分を追い詰めるだけの「仕事」だったのだろう。いわばそういう私にもある自分自身の「罪」を自覚するまでの物語。実は私はこの作品をドフトエフスキーの「罪と罰」と並行して読み、読書ノートにまでとって読んだ。しかしそれてでもいまだにどう整理していいのか分からないでいる。今年100冊近く読んだ本の中でベスト3に残る作品になった。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.6
(4pt)

焼鈍

じっとりとした夏の暑さの描写と工場の炉の暑さが見事にミックスして犯罪を盛立てる。この物語の中心をなすのはやはり炉の中で焼かれ、油冷で仕上げられる金属のあの色だろう。まるで熟した柿のような赤は人を狂わせるには十分な色だ。狂赤は夕日の色でもある。カミュの異邦人のごとく、暑さと視界の悪さが人を犯罪に駆り立てるのであれば、人生のあい半ばにして絶望の淵に追いやられた男は皆犯罪者になるのであろうか。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.5
(4pt)

情念に気づかされる

人間のどろどろした情念をのぞかせられる作品。
 しかし、読んでいるうち、気が付くと、その情念は自分が日頃抱き、目をそむけているものだったりする。
 少しずつ、心に何かが侵入してくる、そんな本です。お勧め。

照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.4
(4pt)

マグマのような

まさしくマグマの如く、内より吹き上げてくる人間の性。
43時間の不眠の後に殺人を犯す主人公の一人。
たった3分の逢瀬をこの小説の中に凝縮してしまう著者のすごさ。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.3
(5pt)

人間を読む作品

「レディジョーカー」や「マークスの山」を読んで、筆者の人間を描く筆力に惚れた人には最高の作品!高村薫の凄さだけを煮出して結晶化させたような作品です。ミステリー(?)に「殺人」はいらない。人間を描ききっているだけでも充分、というよりそれが本質ではないか。刑事という世界の中で人を愛して苦悩する想い、工業地帯の街で暮らす中で自分を見つめる想い。暑さや寒さが文章から伝わってくるような文章力に、「合田雄一郎」の体臭があわさって圧倒的な迫力を持っている。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.2
(5pt)

日常から非日常に移るとき

前作「マークスの山」では、群像のなかの一人にすぎなかった合田刑事が単独で登場する。工場の職人であるもうひとりの主人公は、高炉の温度を火の色合いで判断できる熟練者であるが、仕事の積み重なりから焦りの感情が生まれる。公私ともに追いつめられていく主人公と、犯罪に絡んでいると思われる人妻に異常な関心を抱く刑事・合田という図式で動いていく。東京都下と言われてきた青梅線沿線新興都市、工場地帯の乾いた空気が行間から感じられ、暗い情念が読者に迫ってくる。本作で作者は合田刑事という特異な人物像を確立した。日常に潜む非日常への移行という恐怖も描ききっている。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024
No.1
(5pt)

冷めた大人の心の中の爆弾

高村薫作品全てに共通しているが、女性とはとても思えない程男臭い作風。 こちらまで、脇の下にじっとり汗をかいていそうである。 しかし、不思議な事に自称、男臭い不器用な男嫌いな私でもなぜか入り込める。登場人物は、工業地帯に住んでいて、決して楽しいとはいえないけれど、平凡な生活をしている。来る日も来る日も同じ事の繰り返し。そんなある日、元彼女を秘密のアトリエにかくまう事になるが、情熱的になるわけでもない。 心は冷めているが、何かが少しずつ変わっていく。 刑事と犯人というよりも、冷めた心の中に黒い塊のような爆弾を抱えている人間達が、淡々と描写される。シリーズの中で、照柿は合田刑事が最も人間くさい。一番好きな作品です。
照柿 Amazon書評・レビュー: 照柿より
4062069024