東京島

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評判

東京島の評価:

2.99/5点 レビュー 188件。 D ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点2.99pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全126件 61〜80 4/7ページ
No.66
(4pt)

くだらなさがいい

元ネタのアナタハン事件に前から興味があったとか、こういう狭い世界に閉じ込められた状態の人間心理に興味があるとか、そういったものをすべて取っ払って、最初からくだらない小説だと思って読めば、けっこう面白いと思う。少なくとも、私はそうだった。
男大勢に女一人という、女性なら羨ましくなるような状況にもかかわらず、主人公の女性が羨ましくならない。その主人公の女性はどこまでも浅ましく、低俗で、それを隠そうともしないところが清々しくさえある。性がためらいもなく描写されるがそういった欲はかきたてず、その欲を持つ人間そのものがくだらないと思えてくる。途中に出てくる「犬だ、犬」という表現は、シンプルであっても、そのすべてを象徴していて、秀逸だと思った。
話の展開も、いかにも作り話という感じだが、そこがおもしろく、次々といろんなことが起きて飽きない。感動しまくったのに忘れてしまう小説もあるが、なぜかこの作品は時々、何か所かの場面を思い出してしまう。くだらないと思いながら読んでも、けっこうインパクトは強かったのだろう。そういった意味でも楽しめた。
性格の悪い奴がいっぱい出てきて、生活はどこか気だるく、苦笑いを浮かべながらも一気に読んでしまう。そういう小説を読んでみたいと思うなら、お勧めです。おもしろい。
東京島 Amazon書評・レビュー: 東京島より
4104667021
No.65
(4pt)

結末よりも人物描写

たしかに、かつての「ミロ」シリーズや「OUT」の時のような
ストーリーの面白さは、この作品にはないかもしれません。
ただ結末よりも、他の方も書かれているように
設定の面白さ、そしてその極限状態に置かれた
ひとりひとりの人物描写の深さが素晴らしかった。
非常に登場人物は多い作品ですが、きちんとその人の
過去や背景、そして島でのうつろいまで描かれています。
なによりやはり、桐野作品は女性の恐ろしさが天下一品。
ここでもそれは健在です。
力で勝てない女性が、なぜこんなにも恐ろしく描けるのか…。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.64
(4pt)

結末よりも人物描写

たしかに、かつての「ミロ」シリーズや「OUT」の時のような
ストーリーの面白さは、この作品にはないかもしれません。
ただ結末よりも、他の方も書かれているように
設定の面白さ、そしてその極限状態に置かれた
ひとりひとりの人物描写の深さが素晴らしかった。
非常に登場人物は多い作品ですが、きちんとその人の
過去や背景、そして島でのうつろいまで描かれています。
なによりやはり、桐野作品は女性の恐ろしさが天下一品。
ここでもそれは健在です。
力で勝てない女性が、なぜこんなにも恐ろしく描けるのか…。
東京島 Amazon書評・レビュー: 東京島より
4104667021
No.63
(4pt)

否定的なレビューが多いけど…

なぜか、否定的なレビューが多いようですが、私はとても面白く読むことができました。
ミステリーとか殺人がメインの小説が多い中、毛色の違った小説として興味深かかったです。
無人島で、男31人の中、女が1人という設定で多くの人が想像するであろう、レイプとか殺人ばかりの展開ではありません。
むしろそういう部分はさらっと描くのみで、それよりも人間の心情とか、狡猾さ、人間の心理が多く描かれています。
性描写も多少ありますが、特段グロい・生々しいものではありません。
そのたった一人の女性(清子)が、その中で一番年上で、一番太っているという設定も面白いと思います。
ただ、他のレビューにもあるように、地名や人物が多くてちょっとわかりづらい感はあります。
東京島の全体像があまり把握できないので、時々「?」となりながら読む部分もありました。
登場人物も広く浅く描かれた人が多いため、人間関係が把握しにくい点は否めません。
なので、私のように主人公の清子のみに軸を置いてほかはそこまで気にせずさらっと読めば、気にならないかと思います。
解説を読むと、もともと短編の読みきり予定だったもので、連作短編として15回にわたって雑誌「新潮」にて掲載されたものだそうです。
言われてみると、ひとつひとつの章は完全に独立していたし、それぞれ話し手が変わったり、時間軸も前後したり、展開がいっきに進んだりしていました。でも、全体としては一気に読むのにちょうどよいテンポでした。それぞれの章を簡潔させなければならないので、特化された登場人物以外の人間があまり深く描かれなかったのも仕方がないかもしれません。
この夏に映画化されるようですが、これをどう映像化するのか、是非見てみたいと思います。
個人的には、オススメの本です。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.62
(4pt)

綺麗事のない世界

実際にあった事件をモデルにしているというのは、読み終わった後で知りました。 ハッキリ言って、まともな人は一人も出てこない。 みんなちょっと頭がおかしいか、極端に性格が悪いか…。 しかし、こういう極限状態におかれたら、誰もがおかしくなるのかもしれない。 綺麗事を一切抜きに、本能と打算だけで生きる姿は、あまりに滑稽で憎めなかった。 所々、不意打ちのように笑える描写が散りばめられています。 後半はなんだか尻窄まりな感じだが、かなり読みやすいので、普段読書しない人にもオススメ。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.61
(5pt)

極限状況に置かれた人びとを描いた傑作

桐野夏生氏による谷崎潤一郎賞受賞作。
無人島に漂着した31人の男と、たった一人の女による異色の群像劇。2010年に映画化もされる。
清子は夫の隆との旅行中に海難事故に遭い、無人島に漂着する。
次いで23人もの日本人の若者が漂着。彼らは無人島を「トウキョウ」呼び、共同生活を始める。
そしてさらに、曰くありげな十数人の中国人が漂着。トウキョウの人びとは彼らとその集落を「ホンコン」と呼び、距離を置く。
島の住人は、清子を除くと、全て男である。
そして、唯一の女性である清子を巡って繰り広げられる争い。
清子は男達に欲せられることに陶酔し、自分が女王であることに悦びを覚える。
しかしそれもそう長くは続かない。
本作の読みどころは、刻々と状況が変化する無人島「トウキョウ」と、それに合わせて変化する清子の立場・行動である。
生存、脱出、文明への望郷が、清子をしたたかに駆り立てる。
そして、村八分、裏切りが暴力へと発展する様は読み応えがある。
中でも嫌われ者であるワタナベの存在が異色でインパクトがあった。
本作で決して欠くことができない、最優秀助演男優と言ってもいい。
たった一人の女性をめぐるというエロティックなエンターテイメントを期待した人には物足りなかったかも知れないが、極限状況に置かれた人びとを描く文学として傑作である。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.60
(4pt)

非日常的な欲望を描く巧さは相変わらずだが・・・

無人島に男31人、女がただ1人。
まず、この奇抜な設定だけでつい読んでみたくなるというもの。
しかも、この筆者であれば、非日常的な状況下において人々の欲望がうごめくさまを描いてくれるに違いない、という期待を持って読んでみた。
その期待を裏切ることなく、物語は進む。
とはいえ、この物語の面白さは、時間が経つにつれて、
(島での)社会の流れが変わっていき、それぞれの立場も変わっていくことにあるだろう。
どんどん関係性が変わっていく展開に、ついつい読み進めてしまう。
ただ、最後の予想外の展開に至って、ふと思った。
過去の島での出来事を踏まえて、もっと頭を使えば、
もう少々マシな島脱出計画が出来たのではないか?と。
特殊な設定だからしょうがないのかもしれないが、
その辺を含めて、最後は強引さを感じなくもない展開が残念だったため、
星4つの評価とした。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.59
(4pt)

非日常的な欲望を描く巧さは相変わらずだが・・・

無人島に男31人、女がただ1人。
まず、この奇抜な設定だけでつい読んでみたくなるというもの。
しかも、この筆者であれば、非日常的な状況下において人々の欲望がうごめくさまを描いてくれるに違いない、という期待を持って読んでみた。
その期待を裏切ることなく、物語は進む。
とはいえ、この物語の面白さは、時間が経つにつれて、
(島での)社会の流れが変わっていき、それぞれの立場も変わっていくことにあるだろう。
どんどん関係性が変わっていく展開に、ついつい読み進めてしまう。
ただ、最後の予想外の展開に至って、ふと思った。
過去の島での出来事を踏まえて、もっと頭を使えば、
もう少々マシな島脱出計画が出来たのではないか?と。
特殊な設定だからしょうがないのかもしれないが、
その辺を含めて、最後は強引さを感じなくもない展開が残念だったため、
星4つの評価とした。
東京島 Amazon書評・レビュー: 東京島より
4104667021
No.58
(5pt)

「生」への強さが命運を決める

無人島に漂着して暮らす32人の話です。
但し、その中で女性はただ一人です。
しかも40代半ばの女性です。
それでも、島唯一の女性として女王然とした暮らしをしているのですが、夫が死に、次の夫も死に、ついに籤引きで2年毎に夫が後退する事になります。
ところが、こうした中で島の住民の状況は次第に変わってきます。
それと同時に、彼女の位置も変わってきます。
そして、彼女の性格も。
この物語はサヴァイバルものであり、その究極の状態の中で人間がどう行動するかをテーマにしています。
そのため、人間の「暗部」が嫌と言うほど出てきます。
そして、集団があればリーダーが必要となりますが、これも集団の意思が変わることによって変動して行きます。
この本の中では、強いのは「もの」を持っている人間であり、強く「意見」を訴えかけられる人間であり、更にもっと強いのは「生」への執着の強い人間として登場します。
結局、集団は争いを起こし多くの血を流します。
島に残された人、島から抜け出せた人。
何か、それはその人の性格によって運命づけられていたようにも思えます。
重いテーマを抱えつつも、引き込まれて一気に読んでしまう魅力的な本でした。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.57
(5pt)

「生」への強さが命運を決める

無人島に漂着して暮らす32人の話です。
但し、その中で女性はただ一人です。
しかも40代半ばの女性です。
それでも、島唯一の女性として女王然とした暮らしをしているのですが、夫が死に、次の夫も死に、ついに籤引きで2年毎に夫が後退する事になります。
ところが、こうした中で島の住民の状況は次第に変わってきます。
それと同時に、彼女の位置も変わってきます。
そして、彼女の性格も。
この物語はサヴァイバルものであり、その究極の状態の中で人間がどう行動するかをテーマにしています。
そのため、人間の「暗部」が嫌と言うほど出てきます。
そして、集団があればリーダーが必要となりますが、これも集団の意思が変わることによって変動して行きます。
この本の中では、強いのは「もの」を持っている人間であり、強く「意見」を訴えかけられる人間であり、更にもっと強いのは「生」への執着の強い人間として登場します。
結局、集団は争いを起こし多くの血を流します。
島に残された人、島から抜け出せた人。
何か、それはその人の性格によって運命づけられていたようにも思えます。
重いテーマを抱えつつも、引き込まれて一気に読んでしまう魅力的な本でした。
東京島 Amazon書評・レビュー: 東京島より
4104667021
No.56
(4pt)

古代の卑弥呼

本書を読みながら、邪馬台国の女王「卑弥呼」とはその村での唯一の女性あるいは妊娠可能な女性だったのではないか?なんて考えてしまいました。無人島に漂流した31人の男性と1人の女性という設定は読む前から想像力を膨らませるのに十分でした。内容も悪くは無いのですが、やはり女性的視点であるため、本来ならもっともっと血なまぐさく、汚いであろう描写が少ないところがちょっと不満です。最後も大体想像通りの終わり方でした。もう少し清子に焦点を絞った小説にすればよかったのに、色々な人の視点から見せようとしているため焦点がぼやけてしまったのが残念です。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.55
(4pt)

古代の卑弥呼

本書を読みながら、邪馬台国の女王「卑弥呼」とはその村での唯一の女性あるいは妊娠可能な女性だったのではないか?なんて考えてしまいました。無人島に漂流した31人の男性と1人の女性という設定は読む前から想像力を膨らませるのに十分でした。内容も悪くは無いのですが、やはり女性的視点であるため、本来ならもっともっと血なまぐさく、汚いであろう描写が少ないところがちょっと不満です。最後も大体想像通りの終わり方でした。もう少し清子に焦点を絞った小説にすればよかったのに、色々な人の視点から見せようとしているため焦点がぼやけてしまったのが残念です。
東京島 Amazon書評・レビュー: 東京島より
4104667021
No.54
(4pt)

女剥き出し!

無人だった孤島に漂流した人々、しかしその中に女は一人。
彼女が、群がる男たちの中でその本能を呼び覚まし、生き抜いていく物語。
とはいえ、よくある漂流物ではなく、登場人物のほとんどがキレています(笑)。
米ドラマ“LOST”を見ていた為か、
序章からただ一人の女、清子が、女王様モード全開だったのに面食らいました。
この物語に登場する人物には、ドラマに出てくるようなヒーローはいません。
というか大多数が世間一般でも、日の目を見てこなかったような人間です。
あえてこのような人選をすることで、
作家の凶暴な妄想を、大暴れさせる事が出来たのかも。
清子自身も、彼女の夫の言葉を借りると、貞淑な妻だったそう。
しかし残念なのが、貞淑な妻から変身するエピソード、描写があまりない事です。
いつの間にか、男を使い倒すしたたかな女王となり、本能剥き出し状態。
しかし、あえてパーソナルなエピソードを省くことで、
“清子=女”と一般化しているのかもしれません。だからこそ、怖い!
女が男の中で独り。だからこそ、その意味・価値・機能が強調されていきます。
物語中盤で、清子が自身を社会全体の象徴“島”であり、“島母”であると、
錯覚して行く件は、女の持つ受容性が極まってのもので、
トランス感がたっぷりあり、読者に迫ってくるものがあります。
女の本質を考えさせられる一冊。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.53
(4pt)

女剥き出し!

無人だった孤島に漂流した人々、しかしその中に女は一人。
彼女が、群がる男たちの中でその本能を呼び覚まし、生き抜いていく物語。
とはいえ、よくある漂流物ではなく、登場人物のほとんどがキレています(笑)。
米ドラマ“LOST”を見ていた為か、
序章からただ一人の女、清子が、女王様モード全開だったのに面食らいました。
この物語に登場する人物には、ドラマに出てくるようなヒーローはいません。
というか大多数が世間一般でも、日の目を見てこなかったような人間です。
あえてこのような人選をすることで、
作家の凶暴な妄想を、大暴れさせる事が出来たのかも。
清子自身も、彼女の夫の言葉を借りると、貞淑な妻だったそう。
しかし残念なのが、貞淑な妻から変身するエピソード、描写があまりない事です。
いつの間にか、男を使い倒すしたたかな女王となり、本能剥き出し状態。
しかし、あえてパーソナルなエピソードを省くことで、
“清子=女”と一般化しているのかもしれません。だからこそ、怖い!
女が男の中で独り。だからこそ、その意味・価値・機能が強調されていきます。
物語中盤で、清子が自身を社会全体の象徴“島”であり、“島母”であると、
錯覚して行く件は、女の持つ受容性が極まってのもので、
トランス感がたっぷりあり、読者に迫ってくるものがあります。
女の本質を考えさせられる一冊。
東京島 Amazon書評・レビュー: 東京島より
4104667021
No.52
(4pt)

女で居続けたい女と草食系男子といつもの桐野的中国男&フィリピーナ

無人島に一人の女と三十一人の男。
「グロテスク」に匹敵するような、性を描いた壮絶な娯楽小説となるのかと思いきや、存外淡々と、観念小説あるいは思考実験のごとく話は進みます。無人島でのサバイバルとしてのリアリティには全くこだわっていないようですし、もちろんミステリー的な要素は皆無です。単行本版のほうのレビューの☆の少なさはそのあたりを反映しているのかなとも思いますが、孤島物という極めて古典的なテーマに現代的な登場人物を配して描いた純文学、という意味での面白さは充分なものです。
 古くはロビンソンクルーソーに始まる孤島小説の数々、大抵の場合その面白さの本質は、過酷な自然との生死を分ける戦いにではなく、あくせく働かずとも生きていける南の楽園でいかに故郷の退屈な日常に近いそれを再現するか、というところにあると思います。リゾート小説でありグルメ小説。我々はそんな彼らに同情するのではなく寧ろ羨むのです。
 この「東京島」はそういう意味で典型的な孤島小説とも言えます。登場人物たちは飢餓や熱病に脅かされることもなく、それぞれの方法論で自分たちの感情を状況に適応させていったり、適応に失敗して破綻を抱え続けたりしていきます。
物語としては寧ろ退屈です。シチュエーションから期待するような生死を分けたバイオレンスや性愛に絡む陰惨なエピソードは、全くないわけではありませんがさらりと記述されるだけで、ページの多くは、普通ではない状況下での案外普通な内面的心理描写に割かれています。
心理描写は別として物語自体に関してですが、筒井康孝の初期の短編で確か「心狸学社怪学」に収められた、全共闘の闘志達が閉鎖された東大構内で原始共産性的社会を数十年にわたって営み続ける話によく似ていると感じました。終章まで読み進めるとますます似ているどころではなくなります。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.51
(4pt)

女で居続けたい女と草食系男子といつもの桐野的中国男&フィリピーナ

無人島に一人の女と三十一人の男。
「グロテスク」に匹敵するような、性を描いた壮絶な娯楽小説となるのかと思いきや、存外淡々と、観念小説あるいは思考実験のごとく話は進みます。無人島でのサバイバルとしてのリアリティには全くこだわっていないようですし、もちろんミステリー的な要素は皆無です。単行本版のほうのレビューの☆の少なさはそのあたりを反映しているのかなとも思いますが、孤島物という極めて古典的なテーマに現代的な登場人物を配して描いた純文学、という意味での面白さは充分なものです。
 古くはロビンソンクルーソーに始まる孤島小説の数々、大抵の場合その面白さの本質は、過酷な自然との生死を分ける戦いにではなく、あくせく働かずとも生きていける南の楽園でいかに故郷の退屈な日常に近いそれを再現するか、というところにあると思います。リゾート小説でありグルメ小説。我々はそんな彼らに同情するのではなく寧ろ羨むのです。
 この「東京島」はそういう意味で典型的な孤島小説とも言えます。登場人物たちは飢餓や熱病に脅かされることもなく、それぞれの方法論で自分たちの感情を状況に適応させていったり、適応に失敗して破綻を抱え続けたりしていきます。
物語としては寧ろ退屈です。シチュエーションから期待するような生死を分けたバイオレンスや性愛に絡む陰惨なエピソードは、全くないわけではありませんがさらりと記述されるだけで、ページの多くは、普通ではない状況下での案外普通な内面的心理描写に割かれています。
心理描写は別として物語自体に関してですが、筒井康孝の初期の短編で確か「心狸学社怪学」に収められた、全共闘の闘志達が閉鎖された東大構内で原始共産性的社会を数十年にわたって営み続ける話によく似ていると感じました。終章まで読み進めるとますます似ているどころではなくなります。
東京島 Amazon書評・レビュー: 東京島より
4104667021
No.50
(5pt)

サバイバル・エンターテイメント

桐野さんの小説を読んだのはこれが初めてで、もともと彼女の小説のファンでもなんでもなく、何の思い入れもない読者です。
雑誌のはしっこに載っていた書評を読み、ひょんなことから、「かなりおもしろそうだ」と思い、手にとりました。
文章はスピード感があって平易で読みやすく、そしてかなりのアイロニーや毒があり、物語にぐいぐいと引きこまれていきました。
もともと、無人島モノが大好きで、『蝿の王』も『十五少年漂流記』も『ひかりごけ』もそれぞれに味があって好きですが、お互いに助け合う絵に描いた餅のような非現実的展開よりも、それぞれが疑心暗鬼になって狂人となり、悲惨な末路をたどる現実的展開の方が興味深く好みなので、この『東京島』はぴったりでした。
島のあらゆる部位に東京にちなんだ名前をつけたり、わざとらしく暗喩を入れて話を崇高なものにしようとしていたり、登場人物が多すぎて名前が覚えきれないところは、読むうえで少し苦痛でした。
けれど、この物語の主人公の一人ともいえる清子の、女性としての強さ、したたかさは、あまりにも醜く、目をふさぎたくなるようなものですが、同じ女性として心の奥底を揺さぶる、本能的な部分で感じる魅力があり、惹きつけられました。
無人島で、文明の中で無意識的にかぶっていた外面の皮を剥がされると、女も、男も、きっとこんな風に生物的本能に忠実になって、何が起こるかわからないようなあ、と思い、サバイバル小説を楽しむことができました。小説の魅力の大きな一つは、自分で普通の生活を営むだけでは到底体験できそうにもないことを疑似体験できることにありますが、この『東京島』は、まさにそんな小説の役割を十分に果たす、とても面白い小説でした。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.49
(5pt)

サバイバル・エンターテイメント

桐野さんの小説を読んだのはこれが初めてで、もともと彼女の小説のファンでもなんでもなく、何の思い入れもない読者です。
雑誌のはしっこに載っていた書評を読み、ひょんなことから、「かなりおもしろそうだ」と思い、手にとりました。
文章はスピード感があって平易で読みやすく、そしてかなりのアイロニーや毒があり、物語にぐいぐいと引きこまれていきました。
もともと、無人島モノが大好きで、『蝿の王』も『十五少年漂流記』も『ひかりごけ』もそれぞれに味があって好きですが、お互いに助け合う絵に描いた餅のような非現実的展開よりも、それぞれが疑心暗鬼になって狂人となり、悲惨な末路をたどる現実的展開の方が興味深く好みなので、この『東京島』はぴったりでした。
島のあらゆる部位に東京にちなんだ名前をつけたり、わざとらしく暗喩を入れて話を崇高なものにしようとしていたり、登場人物が多すぎて名前が覚えきれないところは、読むうえで少し苦痛でした。
けれど、この物語の主人公の一人ともいえる清子の、女性としての強さ、したたかさは、あまりにも醜く、目をふさぎたくなるようなものですが、同じ女性として心の奥底を揺さぶる、本能的な部分で感じる魅力があり、惹きつけられました。
無人島で、文明の中で無意識的にかぶっていた外面の皮を剥がされると、女も、男も、きっとこんな風に生物的本能に忠実になって、何が起こるかわからないようなあ、と思い、サバイバル小説を楽しむことができました。小説の魅力の大きな一つは、自分で普通の生活を営むだけでは到底体験できそうにもないことを疑似体験できることにありますが、この『東京島』は、まさにそんな小説の役割を十分に果たす、とても面白い小説でした。
東京島 Amazon書評・レビュー: 東京島より
4104667021
No.48
(5pt)

女性の本質ここにあり

余り評判の芳しくない1作。
この第1章を雑誌で読んだときには、こんな時空を生み出せる著者の
すごさに驚きました。
この第一章亜が素晴らしいだけに、編集者の要請に応えて、
続きを書かざるを得なかったではないでしょうか。
章ごとで少し濃度の違いがあるのは否めません。
しかし、
32人が流れ着いた太平洋の孤島に女一人。
どう女は生きるのか。
女はこう生きる、それが美しくもある。
女の強さ、怖さ、
それが、間違いなく魅力である。
幻想としての女性ではなく、
女の本質を深く知りたい人には、
危険を恐れず読むべきである。
桐野夏生の重要な作品であることは疑いようがない。
東京島 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 東京島 (新潮文庫)より
4101306362
No.47
(5pt)

女性の本質ここにあり

余り評判の芳しくない1作。
この第1章を雑誌で読んだときには、こんな時空を生み出せる著者の
すごさに驚きました。
この第一章亜が素晴らしいだけに、編集者の要請に応えて、
続きを書かざるを得なかったではないでしょうか。
章ごとで少し濃度の違いがあるのは否めません。
しかし、
32人が流れ着いた太平洋の孤島に女一人。
どう女は生きるのか。
女はこう生きる、それが美しくもある。
女の強さ、怖さ、
それが、間違いなく魅力である。
幻想としての女性ではなく、
女の本質を深く知りたい人には、
危険を恐れず読むべきである。
桐野夏生の重要な作品であることは疑いようがない。
東京島 Amazon書評・レビュー: 東京島より
4104667021