氷菓
評判
氷菓の評価:
5.40/10点 レビュー 20件。 B ランク
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全7件 1〜7 1/1ページ
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氷菓の評価:
5.40/10点 レビュー 20件。 B ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
2001年に角川スニーカー文庫で発刊され、現在では角川文庫で刊行されて今なお版を重ねている米澤穂信氏のデビュー作はその人気ぶりが頷けるほど読みやすく、またキャラが立っており、しかもミステリ興趣に満ちている。
主人公の折木奉太郎はやらなくていいことはやらない、やらなければいけないことは極力手短にがモットーの省エネ人間、つまり事なかれ主義者なのだが、海外を放浪する合気道と逮捕術を会得したスーパー女子大生の姉供恵の命により廃部寸前の古典部に入部する。
部員の千反田えるは神山の四名家の1つである千反田家の出で、お嬢様ながら好奇心旺盛。友人の福部里志は減らず口の似非粋人でいつも笑みを浮かべている。幼い顔と低めの背丈で男子の耳目を集める伊原摩耶花は七色の毒舌を誇る女子、と古典部の部員は実に個性豊かだ。
しかしそれだけならば単なる読んで楽しい学園生活を追体験できるラノベに過ぎないのだが、本書の素晴らしい所は本格ミステリとして非常にレベルが高く、そしていわば理想の本格ミステリとなっていることだ。
ジャンルとしては北村薫氏に代表される「日常の謎」系だ。物語のメインの謎は33年前に神山高校の古典部のOBだった千反田えるの伯父、関谷純に幼き頃千反田が尋ね、大泣きしてしまった古典部に纏わる話の謎だ。この謎を主軸に物語には様々な小さな謎が散りばめられている。
入部初日になぜ千反田えるは鍵を掛けられて部室に閉じ込められたのか?毎週金曜日に昼休みに借りて放課後の返される本の目的は?
神山高校の文化祭はなぜカンヤ祭と呼ばれているのか?
以前は古典部の部室であったが、今は壁新聞部の部室となっている生物講義室で部長の遠垣内はなぜ折木たちを歓迎しないのか?
たった210ページ前後の分量しかないのに、ほとんど全ての内容が謎に絡んでくる、実に濃厚な本格ミステリである。これが理想の本格ミステリだと前述した理由でもある。
デビュー作にしてミステリとしても実に高度なレベルに達した作品を放った米澤穂信氏が今なぜこれほどまでに評判が高いのかがこの1作で理解できる。
また技術だけでなく、物語としても心に響くものがある。特に物語最後に判明する本書の題名でもあり、古典部の文集の名前でもある『氷菓』に託した千反田えるの伯父で33年前に退学を余儀なくされた古典部OB、関谷純の思いは何とも云えないほど切ない響きを湛えていた。
幼き頃に関谷純にある質問をして号泣した千反田えるが長く抱えていた謎に十分応えるだけの重みがある。
さて本書ではまだまだ語られるべきエピソードが残っている。千反田家を除く神山の地の四名家、荒楠神社の十文字家、書肆百日紅家、山持ちの万人橋家とそれに続く地位を持つ病院長入須家はまだ名のみが出たばかりだし、さりげなく学校史『神山高校五十年の歩み』の1972年の出来事に書かれた古典部顧問の大出先生と同姓の人物の死などなど。
これらはおいおいシリーズの中で触れられていくことだろう。
とにかく何事もなく日常を過ごすことを至上としている省エネ高校生、主人公折木奉太郎が古典部の面々と彼らが持ってくる謎に関わることで彼の中で変化が起きてくる。何かに一生懸命になってエネルギーを費やすことに理解が出来なかった彼が千反田の旺盛な好奇心によって否応なく関わりを持たされることで彼もそんな仲間に加わりたくなる。
これは折木奉太郎が変わるための物語でもあるのだろう。
さてこれから古典部の面々がどんな事件に遭遇し、解決していくのか、最初からこのクオリティだと期待しないでおくなんて絶対できないではないか。
▼以下、ネタバレ感想