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赤き死の炎馬



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赤き死の炎馬の評価: 4.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt

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(4pt)

バカミス黎明期の作品

今やバカミスの第一人者として名高い霞流一氏。
彼は動物を作品のモチーフにしているのが特徴だが、本書はその題名が示すように全編に馬に纏わるものが散りばめられている。

まず物語の舞台となるのが岡山県の羅馬田町。勿論これは架空の町である。
そこに纏わる平家の落ち武者伝説に端を発した馬の頭をした馬頭観音に、一瞬にして馬を巻き上げ、落命させる堤場風の伝説から派生したダイバ神。さらに第2の死体はユニコーン像によって撲殺されている、などなど。

そしてそんなガジェットに包まれた事件は死体の周囲に足跡のない不可能犯罪、密室殺人に、袋小路で消え失せた犯人と、本格ミステリの王道を行くものばかり。

それらは実に明確に解き明かされる。その真相は島田氏の豪腕ぶりを彷彿させるような離れ技が多い。
しかし霞氏のコメディに徹した文体が不可能犯罪の謎を薄味に変えているように感じてしまった。

本格ミステリの不可能趣味とはその謎が不可解であればあるほど、魅力的に読者の目には映るわけだが、霞氏の軽い文体はその不可能趣味を茶化しているように感じて、謎の求心力を薄めてしまっているように思えてならない。
従って、私に限って云えば、いつもならば謎解きを考えながら読むのに、今回は物語が流れるままにしてしまった。謎解きを主題とした本格ミステリのフックを感じなかったのだ。

また読者の心に残す物語の主要素の1つ、キャラクターだが、これも設定がマンガ的に留まっており、個性的であるものの、読者の共感や憧れを抱くような血が通った者は皆無である。これは探偵役天倉とそのパートナーで語り手を務める魚間もそうで、非常に記号化された駒のような扱いである。
そのため、最後天倉が謎解きを魚間の前で開陳した後の事件関係者の成行きは後日端的エピソードの域を出ず、そこに関係者の台詞は全く挟まれていない。従っていわゆる一昔前のノベルス版で数多書かれたような本格ミステリという風に私は感じた。

しかし改めて振り返ると本書に挙げられた謎とその真相はなかなか面白いものである。

本書は1999年の書でようやく世間にバカミスなるジャンルを声高にアピールした頃に書かれたものだ。その時期に敢えて馬鹿の字の「馬」を選び、作中人物に事件の状況を指して「バカミステリー」と云わせているところが霞氏の歩む道を謳っているようで興味深い。

初めて彼の作品を読んだ印象としては、彼の言葉遊びの要素、コメディタッチのストーリー運びと戯画化されすぎたキャラクターが逆に損をしていると感じた。
しかし昨今の作者の評判は年々高くなっている。ここはしばらく彼の作品を追ってその真価を確認していこう。


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Tetchy
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