文章魔界道



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初公開日(参考)2002年05月
分類

長編小説

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文章魔界道 (祥伝社文庫)

2002年05月31日 文章魔界道 (祥伝社文庫)

あらゆる小説を読んではいるが作品を書いたことがない大作家・大文豪と、小説を読んだことはないが無限に文章が浮かぶ弟子のミユキ。彼らに試練が訪れた。霊界の“文章魔界道”に棲む文章魔王が、この世のすべての小説を消滅させようとしているのだ。ミユキは魔界道に飛び込み、大作家たちを倒した魔王に立ち向かう!気鋭が挑むパラレル日本語ミステリー。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.00pt

文章魔界道の総合評価:4.00/10点レビュー 3件。Dランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

意外と考えさせられる内容

2000年代初期に祥伝社から400円文庫として250~300ページ前後の作家書下ろしの文庫がいくつか刊行された。これはそのうちの1編で、ものの1時間で読めた。

本書は戯曲の体裁で書かれており、文章魔王というこの世から小説を無くしてしまおうと企んでいる電脳世界に住む魔王を小説家志望の女性がノートパソコン片手に戦いを挑むというストーリーである。

とにかく全編鯨氏独特のユーモア、そしてちょっぴりエロに満ちている。

まず主人公2人の設定が人を食っている。小説家デビューを目指し、日々創作しては新人賞に応募するミユキはそれまで1冊も本を読んだことがない。しかし文章が無尽蔵に湧き出る才能の持ち主。

一方彼女が師事する小説家大文豪は物語が無尽蔵に浮かぶのだが、文章を書くのが苦手でこれまで1編も小説を書いたことのない自称小説家。

この実に胡散臭い小説家とミユキのやり取りが実に面白く、さらに明らかにミユキに欲情している中年のいやらしさがにじみ出ており、まさに鯨印といったところ。

そして大文のケータイ小説と世の小説家たちをスランプに陥れている文章魔王が住む電脳世界へアクセスする文章魔界道への行き方も数々のエロサイトを潜り抜けなけれならないというバカバカしさ。当時はまだ電話回線によるインターネット通信で、携帯電話を介しての接続と時代を感じさせる場面もあり、懐かしさを覚える。

ミユキが文章魔界道に入りこんで、旅のお供となるのが漫才師の青空球児・好児の2人。実名で登場する2人はお馴染みのギャグを披露しながらミユキと行動を共にする。
なぜこの実在の漫才コンビが登場するのかは不明。鯨氏と親交があるのだろうか?

ミユキが文章魔王とその部下である第一の番人と第二の番人と対決するのは文章による対決だ。

この対決の数々はまさに鯨氏の文章遊びをふんだんに盛り込んだ内容となっている。前の400円文庫で刊行された『CANDY』でも当て字やダジャレが横溢しており、文章遊びの嗜好の強さを感じたが、本書では更に拍車がかかり、存分にアイデアを、いや趣味の世界を繰り広げている。

例えば第一の番人との戦いは同音異義語を使って彼が繰り出す問題に回答する戦い。つまり「たいせい」という言葉ならば、「体制」、「耐性」、「大成」といった具合に、同じ音で意味の異なる単語を使って文章を作成して回答する、因みに第一の番人は『古事記』の編纂者である太安万侶。鯨氏はどうもこの太安万侶が好きらしい。これで何度この人物と鯨作品で出逢ったことだろうか。

そしてさらに最後に蒟蒻問答での戦いもある。これは作中の例を挙げれば、「パンを食べてても米国とはこれ如何に」という問いに対して同様に「米を食べててもジャパンというが如し」と同種の洒落を切り返すもの。

次の第二の番人は井原西鶴。彼との戦いは回文で問題に答えるという物。古今東西の作家をテーマに回文で切り返す。

そして最後の文章魔王との戦いは彼が書いたミステリを読んで、その内容の質問に同音異義文で応えるという物。例えば<今日は基地に帰る>に対して、<凶は吉に返る>と同じ発音でありながら意味の異なる文章で回答するゲームである。

驚くべきはこれらの戦いの分量の多さである。

第一の番人との戦いである同音異義語はさすがに4問程度だが、それ以降はとにかくすごい数だ。

蒟蒻問答では9つの問答が、回文ではなんと45個の回文が登場し、そして最後の魔王との戦いでは21の同音異義語文が応酬される。もはやこれは趣味の世界だろう。

最も面白かったのは回文対決。作家をモチーフにした問いの内容が非常に面白い。特に現代ミステリ作家では作家間で知られている内輪ネタを存分に披露しており、かなり笑わせてもらった。中には無理矢理回文にしたものもいくつかあるが、何よりもこれだけの物を作り出した鯨氏の執念に敬意を表しよう。

ジャンルを問わず書下ろしで中編程度の分量で400円文庫として刊行するこのシリーズでは『CANDY』の時もそうだったが、鯨氏は敢えて実験的な小説を意図的に書いているように感じる。こういう企画でしか刊行されないであろう小説を、昔からある日本語を使ったゲームを自ら創作して愉しんで書いているようだ。

しかし内容はふざけていながらも案外書かれている内容は深いものを読み取ることが出来る。

例えば本書で数々の敵を討ち斃す作家志望のミユキが武器にしているのはノートパソコンで、つまりパソコンの文章ソフトとインターネットがあれば色んな問題も回答し、さらに文章も作ることができる、つまりパソコンこそが文章作成の最良の便利ツールであることを暗に示している。
作中、大文豪が人間には三大欲の他にストーリィ欲というのがある。インターネットが普及して無限の小説が書けることになった。人々はストーリィを欲し、またストーリィを書くことを欲している。

かつて森村誠一氏も同様のことを云っていたことを記憶している。人々には表現欲という物があり、みな何かを表現したがっている。簡単にケータイやパソコンで文章が作れる現在はその欲望が一気に爆発している、と。

だが一方でその安直さこそが文章の乱立を助長しているとも云える。ミユキはまさにそんな現代の作家志望者のステレオタイプとして描かれた人物だろう。

また作中作として盛り込まれている大文豪の『小説とは何か』の内容も意味深い。
200年に小説が無くなり、ストーリィを作れなくなった人たちの社会で夢を売り物にしている会社を経営する2人の男女の会話で展開する物語だが、どんな物語も自分の想像で登場人物を設定できる夢があれば十分であり、ストーリィは小説でなく、これからは夢が代行すると書かれている。

これは恐らく当時問題になっていた活字離れに対する作者の考えを語った物だろうと思える。夢を見ることでストーリィ欲を満足させる社会は将来来ないと思うが、この2020年の現代で小説が無くなるという表現で思い至るのは昨今の電子書籍の普及である。
「小説」が無くなるのではなく、「紙媒体としての本」が無くなることを予見した内容とも取れる。厚みを手で感じ、ページを指で捲り、そして紙の匂いを感じ、目で文章を追い、読み終わった後も本棚でその書影を眺めるという五感で味わう読書をデータでしか行わなくなった味気なさを夢に置き換えると、まさにこの内容の未来が来ているように感じる。

流石に以前ほど全ての書物が電子書籍に取って代わられるという危機感は薄らいだものの、毎年減っていく全国の書店の数の恐ろしいまでのスピードを考えると果たして出版界の未来は?と不安に駆られてならない。

戯曲というスタイルもあって文章量も少なく、小一時間で読める内容と電脳世界での文章対決というあらゆる意味で軽い内容の本書だが、作中に収められたそれまで一編も小説を書いたことのない男が書いた小説を内容に照らし合わせれば、文章の持つ面白さ、そして小説が読まれることの意義などが暗に含まれており、なかなか考えさせられる内容である。単純に読み飛ばすだけに留まらない作品であると云っておこう。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

文章魔界道の感想

一応、作品としての仕掛けはありますがミステリーとは言えないので、特に本格物を読みたい人は読まない方がいいです。

ある意味、実験的な作品で作者の作品中のネタ作りの努力には賞賛を惜しみませんが、人によっては「だから何?」と言われてしまいそうです。

個人的にはこの手の「おバカなことを真剣にやる」鯨作品は結構好きです、ミステリーのジャンルにこだわらなければ6・7点入れていました(8は無理かな)。

▼以下、ネタバレ感想

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mkaw11
HAAP6CBX
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未読の方はご注意ください

No.1:
(1pt)

これはミステリーか?

『邪馬台国はどこですか』で衝撃を受け、『九つの殺人メルヘン』でも満足し、『タイムスリップ森鴎外』では少々がっかりした、鯨統一郎の最新作。この本、帯に「日本語ミステリー」とあるが、これはミステリーといえるだろうか。はっきりいってダジャレの本である。ギャグ本と知っていて読めばそれなりに面白いかもしれないが、ミステリーだと思うと、だまされたという気がする。
文章魔界道 (祥伝社文庫)Amazon書評・レビュー:文章魔界道 (祥伝社文庫)より
4396330502



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