偽りの空白



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    初公開日(参考)2024年06月
    分類

    長編小説

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    偽りの空白

    2024年06月18日 偽りの空白

    高校生の弟の不審な死を知らされ、数年ぶりに実家に帰った女性キー。ベトナム系の一家のなかでも、オーストラリアに馴染んだ優等生である弟。だが、それは本当の顔だったのか。謎を追ううち、キーは、自らを取り巻く社会と、弟の命を奪ったものの正体を知る。(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

    偽りの空白の総合評価:9.33/10点レビュー 3件。Bランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
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    (8pt)

    移民として女性として、タブルのマイノリティを生きることからの脱出

    ベトナム戦後にオーストラリアに移住し、現在はL.A.在住のベトナム系女性作家のデビュー作。シドニーのベトナム人街から抜け出しジャーナリストとして活躍する女性が弟が殺されたために帰省し、事件の真相を探るうちに自分の過去やオーストラリア社会の人種差別に向き合っていく、文芸色の濃いエンターテイメント作品である。
    メルボルンで記者として活躍するキーが久しぶりに帰郷したのは、5歳下の弟・デニーが殺されたからだった。生まれた時からオーストラリア育ちで家族の希望の星でもあった優等生のデニーが友人たちと高校卒業を祝っていたレストランで殴り殺されたという。大きなショックを受けた両親は茫然自失状態だし、警察は若者同士の違法薬物がらみのトラブルだとして軽視しているようだった。しかも、現場にいた同級生、他の客、店のスタッフたちは全員が「何も見ていない」と言っているという。納得できないキーは真相を探るために、現場に居合わせた人々を一人ひとり訪ね歩くことにした…。
    誰も何も喋ってくれない。その背景には開かれた国・オーストラリアに潜在する人種差別のみならず、移民家族の世代間のギャップが広がっている。現在、世界中で起きているマイノリティ差別とそれに対する怒り、絶望的なまでに細い融和への道を著者は信念を持って歩んでいるように見えた。非常に重苦しいテーマだが、殺人事件の動機探しというミステリー仕立ての部分もよくできているのでエンターテイメント作品としても一級品である。
    ミステリーというよりも、マイノリティ文学、シスターフッド文学として読むことをオススメする。

    iisan
    927253Y1
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    No.2:
    (5pt)

    難民家族の生きづらさを描く

    主人公のキーはメルボルンで働くジャーナリストだが、親たちとともにベトナムからの逃れてきた難民としてシドニー郊外のカブラマッタで育った。
    ベトナム戦争の終結は1975年。その後、社会主義政権を逃れて「ボートピープル」となった難民たちが日本でも問題となったが、この小説の舞台は1996年ころで、カブラマッタはベトナム難民が多数暮らし、ドラッグ売買で治安の悪い街だった。
    物語は主人公の弟デニーがレストランで殺された事件をめぐって展開するが、居合わせた関係者が口をつぐみ、両親までが真相解明に消極的な中で主人公が苦労しながら真相に迫っていく。
    ただ、ミステリーの謎解きというよりも、難民家族の境遇に著者の視点は据えられている。意に反して故郷を捨て、文化も言語も慣習も異なる異国で暮らす人々の苦悩が様々な角度から繰り返し描かれる。逃げてきた親世代の不適応と無気力。子供時代に難民生活を送り、虐待され傷つけられた世代の反抗。そして、幼くて難民生活の記憶がほとんどないが、差別と不公平に抗って生きようとする主人公の世代と、難民の生き様が描き分けられている。

    小説の技法としては、話者が次々に代わるポリフォニックな構造と、話者の意識の流れを時空を自由に移動させるプルーストやフォークナーのような饒舌な語りが注目される。
    主人公と元親友ミニーとの互いに惹かれつつ反発し合う葛藤と対決は読み応えがあった。
    偽りの空白Amazon書評・レビュー:偽りの空白より
    4152103388
    No.1:
    (5pt)

    読んで本当によかったな、と思える本

    メインストーリーは主人公キーの弟が殺されて、現場に他の人がいたにも関わらず「誰も何が起こったか見ていなかった」で終わろうとしていた事件を主人公が犯人を探し出すというものです。
    でも、私にはそれをとりまく人々、特に家族や親友という身近であるからゆえ否応なしにでてくる喜怒哀楽すべてをひっくるめた激しい感情の衝突や葛藤のほうが身に染みて感じられた本でした。オーストラリアに逃げてきたベトナム難民のコミュニティーの話にも関わらず、主人公と自分が同一化し続けて、主人公の感情の動きを痛感しました。
    男が優位、盲目的ともいえないことはない宗教への固執、よそ様の目を病的なまでに気にする習慣、など古風な考えをかたくなに持ち続けて、オーストラリア人のようになろうという気はまったくないベトナムで大人になった親たち。そして子供達にオーストラリア人であると同時に由緒正しいベトナム人でもあるように望んでいる。
    一方で子供たちは様々。オーストラリア人にはなれない、と絶望感から反社会的な行動に走る子供たちもいる一方で、新しい土地に馴染もう、白人の同級生に好かれよう、「オーストラリア人」になろうと必死になってもがいて自分を失っているキー。そんなキーとは正反対の態度を白人の同級生にもつ親友ミニー。
    もちろん、まったく違う異国へ移民したコミュニティー全体としての葛藤を感じ、それで得た知恵を自分がそのような人と接する時の対応に有効に生かすことは可能です。でも、もっと身近な問題、つまり世代の違う親の理解、親友とはなにか、そのような本当に身近な人とどのように接するのが自他ともにとって最善なのか、周りに振り回されないとはどういうことなのか、自分の考えや行動はどこか偏っていないか、別な考え方や行動は可能だろうか、などを読みながら考えることで、苦労をせずに育った私のような者の心理的成長をサポートしてくれるような本だと思います。
    読んで良かったなと思っています。海外の本なのでそれを翻訳・出版してくださってありがとうございました。
    偽りの空白Amazon書評・レビュー:偽りの空白より
    4152103388



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