(短編集)

ある晴れたXデイに カシュニッツ短編傑作選



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初公開日(参考)2024年04月
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ある晴れたXデイに: カシュニッツ短編傑作選

2024年04月30日 ある晴れたXデイに: カシュニッツ短編傑作選

死んだはずの養子に見張られていると主張し、戸締まりを厳重にする妻。夫との会話から見えてくる真実は……(「雪解け」)。手脚に痣や傷がついていくのに痛みを感じない女性の日記。内容はどんどん異様になり……(「火中の足」)。ある母親は、世界が滅亡する日が気がかりで詳細な手記を執筆するが……(「ある晴れたXデイに」)。戦後ドイツを代表する女性作家が描く日常に忍び込む幻想と戦慄の人間心理。『その昔、N市では』に続く、全15編の傑作短編集!(「BOOK」データベースより)




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No.3:
(4pt)

(2024-75冊目)カシュニッツによる幻想譚15編、第2弾

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 ドイツの作家マリー・ルイーゼ・カシュニッツ(1901-1974)の15の短編を集めた一冊です。一昨年(2022)の邦訳『 その昔、N市では 』に続く同作家の短編集です。
 前回同様、15編は幻想と怪奇の物語群です。ドイツ語圏で言えばカフカ風、英語圏の作家で言うとサキやマシスン、マキャモンやビアス、ブロックやサーリングといった作家のテイストに近いものであり、私の最も好みとするジャンルです。

 私が今回ことのほか興味深く読んだ5編について思うところを記します。

◇『太った子』
:〈時空を越えた自己との対話〉といった印象を与える物語です。自我が未発達の幼少期の自分について、長じた今や、「もっと胸を張り、時に賢しらに生きることを覚えよ」と自ら教え諭す機会を夢見たくなる。そんな思いを叶えるかのような幻視のストーリーが心に添いました。

◇『いつかあるとき』
:亡くなった女性画家が遺した大量の自画像作品にのめり込んでいく男の話です。平面作品が醸す幻惑世界に取り込まれていく物語は、ロバート・ネイサン『 ジェニーの肖像 』、リチャード・マシスン『 ある日どこかで 』、あるいはオスカー・ワイルド『 ドリアン・グレイの肖像 』に通じるものがあり、その幻想譚に酔いました。
「悲劇的な生きざまというのは、唯一人間らしい生き方、それゆえに唯一幸福な人生なのです」(143頁)との言葉に虚を衝かれました。

◇『トロワ・サパンへの執着』
:愛着ある領主館トロワ・サパンに放火した廉で起訴された男の心の内奥を描く作品です。「昔の姿そのままに行きつづけられるはずだから」と火を放った主人公を、三島由紀夫『 金閣寺 』の主人公・溝口に照らして読みました。

◇『チューリップ男』
:移動サーカス団のチューリップ男から稽古をつけてもらう地元の小学生の話です。カシュニッツの物語にはどれも不穏なディストピア的味付けがされているのですが、この小品は珍しく明日へのささやかな希望を垣間見せる好編となっています。この短編集の中ではほっと一息つける物語でした。

◇『ある晴れたXデイに』です。
:政治が危機的状況に達して、「わたしたちの町が消え、家も、学校も、図書館も、なにもかもがなくなる」Xデイ目前の様子が描かれます。といっても、そのXデイの到来を確信しているのは語り手である女性ただひとり。家族も友人もこの主人公をカッサンドラ扱いするばかりです。
 戦争の足音がしているはずなのに、多くが正常性バイアス(多少の異常事態が起こっても、それを正常の範囲内として捉え、心を平静に保とうとする働き)に寄りかかり、昨日と同じはずの今日を生きようとしています。ビアフラ戦争を描いたチママンダ・ンゴズィ・アディーチェの小説『 半分のぼった黄色い太陽 』の主人公たちを思い出しました。
 Xデイを迎えた人々が、火山噴火によって時と共に閉じ込められたポンペイの人々に重なる――そんな予感を与える幕切れが見事な物語です。

 さて、翻訳は前作に続いて和光大学教授でドイツ文学者の酒寄進一先生です。その練達の翻訳手腕はまさにこうした幻想と怪奇の物語にはうってつけと言えます。
 巻末の「訳者あとがき」によれば、カシュニッツは100編近い短編を遺していて、『その昔、N市では』と今回の『ある晴れたXデイに』の計30編でようやく約3分の1が翻訳されたとのことです。今後カシュニッツの短編集の第3弾、第4弾の翻訳が酒寄先生の手によって進められるのかは、ここまでの2編の日本での売れ行き次第というところのようです。続けて読んでみたいという思いが半分、酒寄先生が多忙になってネレ・ノイハウスの〈刑事オリヴァー&ピア・シリーズ〉の邦訳出版が滞ることを恐れる思いが半分あります。

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4488011365
No.2:
(5pt)

待ってました

カシュニッツ短編集の第二巻を、首を長くしてお待ちしておりました。
ワクワクしたり、シュールな情景に巻き込まれたり、一文一文に心をえぐられたり、今回もとても面白かったです。
本編、あとがきを読み、また第一巻からを読み返したくなったのと同時に、また次巻の出版を楽しみになりました。まだ3分の2もあること、3分の1は新たに訳して出版してくださったこと、とてもありがたいです。
関わられた皆様、本当にありがとうございます。
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4488011365
No.1:
(5pt)

日常性の裂け目にあらわれる非日常と狂気

『その昔、N市では』(レビュー済み)に続く酒寄氏訳カシュニッツ短編集である。
前著ではオカルト的あるいはSF的な作品もあったが、本書の短編はそうした超常的要素はほとんどなく、いわば日常性の中にあらわれる非日常、さらには狂気を描く心理劇的作品が多い。

私が印象に残ったものを挙げる。
『作家』 有名作家が創作意欲をなくして転職を考える。その意図を妻に隠して転職活動をするのだが、著者自身が作家であるためか、ユーモアの中にも鬼気迫るリアルさがある。
『いつかあるとき』 本書随一の傑作ではないか。孤独死した女性画家の遺産目録づくりに訪れた主人公が膨大な自画像を整理しているうちに亡くなった画家に魅入られてしまう。平凡な生活を打ち破る「ティンパニの一撃」が主人公の運命をどう変えるのか・・・。
『結婚式の客』 1946年ころの作とされるが、敗戦直後のドイツの混乱した状況を背景に、ドイツ東部に戻れなくなった男がアメリカに渡航しようとして苦難の旅を続ける。いわば非日常が日常となった逆転した世界の中で、旅先の人とのふれあいの中で人間的な日常性が顔を出す。

なお、近代人の日常生活の中の非日常への憧れ、あるいは狂気の発現を描いた作品として、私はボードレールの散文詩『パリの憂鬱』を連想した。
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