(短編集)
最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選
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最近翻訳物の怪奇幻想不条理小説ばかり読んでいるのだが、今回読んだのはアメリカ人作家ジェフリー・フォードの短編集『最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選』。ジェフリー・フォードは以前『言葉人形 ジェフリー・フォード傑作短編集』という短編集を読んだことがあり、これが非常にこってりとした濃厚な幻想文学集だったので今回も大いに楽しみにしていた。 とはいえ、実際読んでみると前回読んだ『言葉人形』とは趣の異なる作品が多く収録されていて若干驚いた。実はこの『最後の三角形』にしても『言葉人形』にしても、作者がこれまで本国で刊行した短編集を日本で独自編集したものとなるのだが、この編集の方向性がそれぞれに違っているということのようなのだ。『言葉人形』は幻想小説に特化したセレクトだったが、この『最後の三角形』ではもっとホラー寄りであったりガチにSFな作品まで登場する。もともとジェフリー・フォードはSF、ミステリー、ホラー、ファンタジーと多彩な作風を持つ作家なのらしく、逆に言うなら今回のセレクトはよりジェフリー・フォードの全体像に即したものという事ができるかもしれない。 収録作をザックリと紹介。まずネビュラ賞受賞作「アイスクリーム帝国」は”共感覚”をキーワードに奇妙で驚異的な物語が綴られる。「マルシュージアンのゾンビ」「トレンティーノさんの息子」「タイムマニア」はホラー作品となるが、独特のツイストがかけられていて展開の読めない楽しさがあった。「最後の三角形」「星椋鳥(ほしむくどり)の群翔」はホラー・幻想風味のミステリー、「ナイト・ウィスキー」もホラー風味の幻想譚。「恐怖譚」は実在の詩人エミリー・ディキンスンと死神の物語となるが、非常によく練られた作品で短編集中の白眉となるだろう。フェアリー・ファンタジー「本棚遠征隊」「イーリン=オク年代記」はジェフリー・フォードの多彩さがうかがわれる。 短編集後半「ダルサリー」「エクソスケルトン・タウン」「ロボット将軍の第七の表情」「ばらばらになった運命機械」はどれもSF作品。「ダルサリー」は若干平凡だが、それ以降の作品がどれもなかなかに読ませる。オレはどちらかというとSF読みの人間なのだが、そのオレをして「これは単純にSF短編の傑作と呼んでいいのではないか」と思わせるものがある。SFを専門として書いている作家のものよりも異界と異形の描き方が異様であり秀逸なのだ。これは多彩な作品を書き分けるジェフリー・フォードならではの持ち味なのだろう。このSF作品群を読めただけでも今回の短編集は収穫だった。 そういった訳で『最後の三角形』、ジェフリー・フォードの素晴らしいSFと多彩なジャンル作品を読みたければこちらの短編集を、ガチで濃厚な幻想小説集を読みたければ『言葉人形』をお勧めしたいと思う。そして両方読めばさらに吉であるといえよう。 | ||||
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男と女の愛の魔力。 悪夢のような物語。 悪夢のような人生。 フィクションです。 本書『最後の三角形』のタイトルとなった表題作「最後の三角形」(217頁)から読みました。 本書は、 「SF、ホラー、ミステリなどの各ジャンルの色の比較的濃い(しかしあくまでもフォードらしい)作品を多く含むセレクションになった」(435頁) 編訳者の谷垣 暁美さんは「編訳者あとがき」にそう書いていました。 ジェフリー・フォードの短篇傑作集は、不思議な世界です。 表題作となった作品「最後の三角形」(217頁)は、 どのジャンルが色濃い作品なのでしょう? ミステリ? ホラーかな? それとも、サスペンス? 「最後の三角形」とは? 「<最後の三角形>と呼ばれているもの」(225頁) 「<最後の三角形>は正三角形なの。三辺の長さがみんな同じ」(226頁) 「この<最後の三角形>騒ぎが幕を閉じたら、俺は何をするのかな」(235頁) 「ずっと変だと思っていたんだ、アブリエルと<最後の三角形>のことを知っている人間がひとつの町にふたりもいるというのが」(237頁) 「たぶん、やつはミズ・バークレーが<最後の三角形>のシンボルに気づくことを予期していて、彼女を間違った推理に導こうとしたんだ」(240頁) 「『彼が死んだ場合』ミズ・バークレーが言った。『<最後の三角形>の魔法をあなたが引き継ぐことになる』」(245頁) そして「<最後の三角形>はわたしのものになったわ」(246頁) 「その三角形の中心は彼女のキッチンだ」(247頁) 彼女はキッチンで自殺するつもりです! 「その三角形」は、引き継ぐもののいない<最後の三角形>になるでしょう。 短篇小説「最後の三角形」は、フォード最後の魔法物語です。 ジャンルなんかはどうでもいいです。おもしろければ。フィクションなんですもの。 「魔術はドラッグのようなものなのね。使えば使うほど、自分自身から自分が失われて、乗っ取られてしまう」(246頁) 「魔法は破られるようにできているの」(248頁) 謎はいつか解かれるべきもの。 「なされるべきことをなしているのさ」(245頁) 「でも、約束はそうじゃない」(248頁) 約束は破られるようにはできていません。 特に、男と女の永遠の愛の約束は。 二、三年で男に「棄てられたなんて言うのは、決まりが悪いもの」(237頁) ですよね。 | ||||
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