奇病庭園
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この作品の特徴として以下の3点が挙げられる。 ・作品世界とそこに登場する様々な意匠の精緻な設計 ・物語の進行・時系列の巧みな操作による構成 ・上記2点を可能にする高度な知性とはむしろ矛盾を感じさせるほどの、この世の現実の理不尽に対する、強く正しくそして幼い怒り 1点目に関して言えば、かつて澁澤が唱え山尾悠子が体現した、幻想こそがもつべき硬質性のさらなる進化がここにある。冒頭の「角」「写字生」の描写や叙述だけで、書き手が只者ではないことがわかる。こうした異世界のガジェット設計は、今の若い世代の方がジャンルを問わず上手いのだが、川野のそれは凡百のラノベレベルとは比較にならない。ただし、こうしたガジェットは、緻密に細部を完成させれば、書き手が実際に作り上げなかった(場合によっては作り上げられなかった)全体まで読み手の想像力に補われてしまう。これはいわゆる異世界を舞台とする小説の魅力でもあり危険でもある面だろう。 2点目に関しては、物語というものに創作と研究の両面から取り組めるという恵まれた環境と才能がなしえたものでもあろう。その結実をまずは祝福したい。 さて、幻想小説の書き手が、現実を生きる己れがどのような人物か、ということをむしろ匂わせずに作品を仕上げること。これは不文律に近いものになっていたのではないか ― それが川野の作品に出会ってネガのように私が感じたことだ。虚構によってこそ伝えられる、おそらくは彼女自身の生々しい痛みと叫びが胸を打つ。 彼女にとって血の滴るような苦しみを、けれど私は、幼い、と思う。その幼さとこれほどの知性や技巧が同居するこの作品は稀有である。そうした意味で、人という種において個体にただその個性が、その人だけの資質と思念が宿ることこそが、ひとつの奇しき病なのかもしれない。 | ||||
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奇想天外とはこういうものなのだろう。著者の頭の中がどうなっているのか知りたくなる人も多いのではないか。幻想とかファンタジーとかは苦手だ、という向きにもお勧めしたい。しかし、この本を読むときにやってはならないのは、ひたすら筋を追おうとすることだ。一つ一つの章をゆっくり時間をかけて読むべきだ。著書の言葉の選び方、漢字へのこだわりを意識しながら読んでいくなら、忘れていた読むことの純粋な喜びが蘇ってくるだろう。あたかも、誰もまだ読んだことのない別の言語で語られた物語を、著者が渾身の力で日本語に翻訳しているかのように感じられる(実際その通りだと著者自身が「好書好日」ウェブ版で語っていた!)。そしてそれは名訳なのだ。ときどき、その翻訳に漱石を参加させて、著者がニヤニヤしているような気もする。こうして、われわれは異世界に迷い込んでいくのだが、異世界だと思っていたのが、実はわれわれの世界の失われた過去か、まだ存在しない未来なのかもしれない、と感じさせるのがこの著者の凄いところだ。 | ||||
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