ギフテッド
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ギフテッドの総合評価:
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読み終わった瞬間、 「この人凄い、この人凄い!天才だよ」と つぶやきながら著者略歴を凝視していました。 主人公は生きづらさを抱える超高学歴女性。 アスペ傾向の姪の中学受験に伴走することになった彼女が、 規格外の個性が世の求めに適応することの是非を問いながら、 自分らしくあるための答えを見つけていきます。 考えさせられる作品でした。 浮きこぼれの子の感性に寄り添える大人がいることが どれだけ救いになるか実感しましたね。 理解されにくかった姪と主人公の間に芽生える絆。 それが最後に活きてくる展開。 素晴らしかったです。 標準から外れた個性を特別扱いせず、 尊重する世の中にしないといけないと切に思いました。 特異な才の子の受験に寄り添うだけの話と誤認して、 今の今まで後回しにしていた自分が情けない・・・ 幅広い層に薦めたい逸品です。 (対象年齢は13歳半以上かな?) | ||||
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主人公の高学歴の伯母が中学受験に挑む姪の勉強を見ながら、生きづらい世の中ながらお互いに少しずつ成長していく物語です。ありがちな受験苦労話ではなく、家族の秘密や環境うちわけ話でもなく、「頭のいい」「悪い」による精神発達史でもなくさまざまなテーマが埋め込まれていて最後に収束される過程が見事です。 ほぼほぼ伯母と姪の会話なので前半は多少ペースが遅いのですが、「頭のいい子はマイノリティー」から生じる「(周囲には)わかってもらえない」感は大昔に読んだ「次郎物語」の令和版の趣きです。 そしてなんといってもラストでの姪と伯母の一歩を踏み出す勇気に感動させてもらいました。 | ||||
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タイトルのギフテッドとはネットで調べると、「生まれつき突出した才能を授かった人」のことを指すとのことで、本書ではそのような才能に恵まれたギフテッドをどのように描くのか興味を惹かれて手に取った。 主人公の凛子はT大卒(日本の最難関大学と思われる)だが、就職氷河期に入社した会社に馴染むことができず中途退社して、現在はフリーランスで生活している。凛子の妹には3人の子供がいてとても仲が良いが、凛子が長女の莉緒の中学受験の家庭教師を引き受けるところから物語は動き始める。 本書では、ギフテッドは知能指数が高く優秀な一方で、社会の既存の枠に収まらず、規範から外れる行動を取ることが多いので、型にはめようとする日本の社会構造や教育システムにはうまくはまらないことが描かれている。 なかなか面白いテーマで最後までそれなりに楽しく読むことができたが、一つ残念だったのは、ギフテッドとされる莉緒がそこまで突出した才能や特異なキャラクターを有しているとは思えなかった点で、読み終わると普通の家族小説であるような印象が残った。 | ||||
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この本では、「ギフテッド(Gifted)とは、生まれついての脳の機能として、深く学び、深く考えずには いられない子ども」であり、人口のおよそ2%がギフテッドに該当すると書かれています。 この分野の研究が一般的に注目され出したのはここ数年なので、学術的な才(勉強ができる)に限るのか、芸術的、あるいはスポーツなどの才能までカバーするのかによって、捉え方が変わってきます。 この小説は、生来の学術的な才能を持つ子どもとその伯母(こちらが語り部で、おそらく日本で最高峰の 大学卒)の目を通して、ギフテッドの苦悩と可能性を描いています。 もし自分の子がギフテッドだったら、身近にギフテッドがいたら、まず直観的にその子と親を羨ましい と思うのではないでしょうか。 だけどもギフテッドが天賦の才よりも努力によって学業成績優秀者になっている「秀才」ではなく、 好むと好まざるとに関わらず、「深く考えずには”いられない”」、「世の中の様々なことに疑問をもち その解を追求せずには”いられない”」特性を生まれながらに与えられているとしたら、果たしてその子 は幸せなのだろうか? その子もそうだし、その子の才能を理解できない親にとって、ギフテッドを育てることはどこまで困難 なことなのだろうか?と思わずにはいられません。 そんなことを考えさせられる小説です。この問題提起を学術書ではなく、小説として表現しているとこ ろが慧眼ですし、作者の意図は成功しています。 この本の問題提起はそこに留まることなく、学校教育のあり方にも矛先を向けています。 学校は、さまざまなものが「標準」に合わせて設定されている 平均値から遠くなるほど、「同じでない」という疎外感が強くなる ギフテッドだけでなく、正規分布にするならもう一方の標準外に位置する知的障害を持つ子どもにも 同じ苦悩があるでしょうし、難しいことに発達障害と「診断」される子の中には、知的機能が低い子 だけでなく、知的機能が「高すぎる」ゆえの異常で発達障害と診断されている子もいます。 著者の問題提起は、子どもと学校のあり方を問うていますが、日本社会に漂う閉塞感の一つの要因は 大人社会の縮図である「会社・組織」においても、出る杭は打たれるというメンタリティが蔓延り、 突き抜けた才能や異才が排除されていることにあります。 この小説でそれらを見事に言い表している文章を挙げます。 ・頭のいい子はマイノリティだからね ・理解の範疇を超える存在に対しては、不気味さを感じる 解なき時代に突入している現代においては、不気味さのためにマイノリティとして扱われてしまって いるギフテッド(子どもも大人も)の芽を摘んでしまわずに、私たちの貴重な財産として適切に対応 することが求められています。 この小説に出てくるギフテッドは、ギリギリのところで周りの環境の支えや変化によって明るい方向に 進む姿を見せてくれます。それが救いです。 ギフテッドでない「標準」の私たちにできることは、「標準から出ている人」への寛容だと気づかさ れる小説です。 | ||||
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つい先ごろ政府が「ギフテッド」と呼ばれる飛びぬけた才能を持つ子供への教育支援事業に8000万円を投じるというニュースが流れ、その額のショボさに唖然とさせられた所ではあるのだけど良いタイミングで目に付いたのがこの作品。 物語の方は主人公の独身アラフォー女性、凛子が甥・姪へのクリスマスプレゼントを用意している場面から始まる。妹の子供である彼らの個性に合わせて本を選び妹の暮らす家に向かうが大歓迎してくれた甥・姪たちとは対照的に妹の顔は浮かない様子。 医師である夫が中学受験で名門女子校へと進ませようと考えている長女の莉緒は成績は優秀なのだけれども「虫愛ずる姫」とちょっと変わった子で、筋道を立てて考えるのは得意だがそれ故に弁が立ち妹との間で諍いが絶えない。そして何より代々医師である家の跡継ぎにと夫が願っている長男・真之介は幼稚園児なのだけど、常に一人プラレールで遊んでおり、言葉の発達も明らかに遅いらしい。 通わせている塾でも人間関係に問題を抱え、父親が教えようとしても自分の意見を譲らない事から衝突ばかりの莉緒の扱いに困り果てた妹から「お姉ちゃんはT大を出ているし」と懇願された凛子は仕方なしに莉緒の家庭教師を引き受ける事にするが、妹の夫である岡田からは「自分の様な私立医大じゃなくT大出身の義姉さんの方が向いているのかもしれませんね」と嫌味臭い事を言われ前途多難な道程を予感する羽目に…… 読み終えてまず思ったのは政府が掲げたギフテッド支援に当初予算である8000万円の10倍、100倍の予算を投じても今の日本社会じゃ育てた「ギフテッド」たちはその才能を活かすどころか、メンタル的に追い込まれ、下手すると絶望のあまり自殺でもやらかしてしまうんじゃないかと……要するに受け容れる社会の側やその社会を構成する大多数の凡人の意識が変わらん事には彼らに待ってるのは狭い枠に閉じ込められる人生なんじゃ無いのかという危惧であった。 読み始めてニヤリとさせられたのが主人公である凛子の人物造形。作中では「T大」とぼかして書いてあるが、理Ⅰとか出てくるから間違いなく東大だろう。「東大出の女」……世の平凡な男性諸氏はそう聞かされると思わず身構えてしまうんでは無いだろうか?そして「東大出の女」が自分の平凡な意見を根本からひっくり返す様な鋭い発言で返した時に心がざわつくのを抑えられるだろうか? 実際に凛子は就職先のコンサル会社でそんな「東大卒の女」に対するコンプレックスを拗らせた上司にイビり続けられ、退職に追い込まれたという過去を持っているのだけれども、斯様に凡人たちの、そして大多数の凡人により構成される社会の器というのはまことに小さい。標準から外れた連中が劣っていようが、優れていようがマイノリティとして弾き出そうという圧力に満ちている。 そして凛子が家庭教師を引き受けた姪の莉緒はそんな社会の狭量さに小学生でありながら直面している事が次第に見えてくる。女性ですら思った事を言えば「生意気をぬかすな」と反発を食らい、その経験から次第に「女である自分は率直にモノを言ってはならないのか」という絶望に叩き落されるのだけれども、それが子供となれば尚酷い事になるのは本作を読まずともお分かり頂ける事かと。 学校でも塾でも教師や講師の間違いを指摘し、親にも納得できない事には反論する事で孤立しがちな莉緒に自分を重ねた凛子は自分の二の轍を踏ませまいと知人の精神科医や教育支援事業を行っているNPO法人の主催者に会いに行く事になるのだが、これが「ギフテッド」の生き辛さを分かりやすく解説してくれる便利キャラになっていた。 作中で精神科医が「ギフテッド」の特徴を列挙しているのだけれども 「好奇心が旺盛であらゆることを知りたがる」 「完璧主義で自分にも他人にも高い水準を求める」 「感受性が強く、不安や悲しみを人一倍強く感じる」 「繰り返しや暗唱を嫌う」 「やると決めたらやり抜く」 「人々やものごとを仕切りたがる」 「権威に批判的な態度を取る」 ……そりゃ、こんな性格では生き辛くもなるだろうな、とは思う。だが本作を手に取ろうかと迷っておられる方の中には「あ、これ自分のことでは?」と思い当たるフシがあるんじゃないだろうか?であればご注意を。後半に入ると更に強烈な形で「ギフテッド」の生き辛さが明確な形で描かれ、自分に重ね合わせると思わず鬱っぽくなりそうなくらいに精神をゴリゴリ削って来るのだから堪らない。 凛子はそんな「ギフテッド」たちの居場所の無さをサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の主人公であり行く先々で欺瞞や虚飾を指摘しては他人と衝突しまくるホールデン少年の姿に重ねるのだが、やがてその重ね合わせは凛子が幼い頃に出会った自分よりずっと頭が良く、天体観測を趣味としていながら虐待を受けていたと思しき少年の記憶を呼び覚ます事に……というのが主な筋書き。 特別な才能の持ち主と持て囃されるばかりで、その明晰さから世の矛盾や欺瞞に気付いてしまうが故に孤立してしまうというギフテッドの孤独や生き辛さをテーマとし、徹底して掘り下げるというという部分では大いに楽しませて頂けた……だが、一小説として観た場合はどうだろう? 上に紹介した凛子の記憶から蘇った「流れ星の君」と思しき少年の現状や、莉緒を巡る家庭内の問題が後半の軸となるのだけど上手い事展開できていたかと言えばこれがちょっと微妙としか。幼い日の記憶から突如姿を消した「流れ星の君」の辿った末路はともかく、それを知らされた凛子の反応がどうにも中途半端だし、終盤のちょっとした出会いも何だか「とって付けた感」が拭えない。 序盤から匂わせていた莉緒や発達障害が疑われる弟・真之介と権威主義的な父親の関係も「え?そんなに簡単に納得しちゃうの?それならここまで父親を憎まれ役っぽく描く必要とかあったの?」とポカンとさせられる形で幕を閉じてしまうので肩透かしを食らった様な気分が残る。 短編集である「淀川八景」ではブツ切りっぽいオチや必要最小限の人物描写が良い方向に働いていたのだが、長編になるとそれが「投げっ放し」という印象を与える方向に作用していた様に思われた。テーマもその掘り下げ方も申し分無いだけに長編小説としてのストーリー展開にもう少しメリハリを付けて読者がカタルシスを得られる様な形で仕上げられなかったのかと勿体なさを覚えたのは自分だけだろうか? 先に「淀川八景」を読んだ上で言わせて頂ければ作者の才能は短編の方に向いておられるのでは無いかと思われた。再度長編に挑まれるのであればストーリーの構成にもう一工夫が必要になるだろうな、とそんな事を思わされた一冊。 | ||||
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