このやさしき大地



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    初公開日(参考)2022年10月
    分類

    長編小説

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    このやさしき大地

    2022年10月04日 このやさしき大地

    1932年、ミネソタ。教護院に暮らすオディは、ある日、暴力を振るう職員を殺してしまう。彼はおばに会うため、兄や親友、竜巻で母親を失ったばかりのエミーと施設から逃げ出し、一路カヌーでミシシッピ川を目指すが――。少年たちのひと夏の冒険と成長の物語。(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

    このやさしき大地の総合評価:9.33/10点レビュー 3件。Cランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (8pt)

    川の向きが変わるたびに世界は広くなる・・情感豊かなロードノベル

    エドガー賞をはじめ数々の賞に輝いた「ありふれた祈り」の姉妹篇。大恐慌時代の中西部を舞台に、過酷な環境の寄宿学校を逃げ出した孤児の少年が擬似家族である三人の仲間と共に探し求める家(ホーム)がある信じるセントルイスまで川を下って行くロードノベルであり、成長物語である。
    大恐慌時代のミネソタ州で孤児となった12歳のオディが兄のアルバートと一緒に預けられたのは、インディアンのための寄宿学校だった。「黒い魔女」と呼ばれる冷酷な女性院長が支配する施設は児童虐待も日常で、我慢できなくなったオディはある事件をきっかけにアルバート、インディアンの少年モーズ、竜巻で母親を亡くしたばかりの6歳の少女エミーと共に施設を逃げ出した。4人が目指したのは叔母の住むセントルイスで、唯一の交通手段であるカヌーでミシシッピ川まで下ろうという冒険旅行だった。まだ少年の4人が大恐慌で荒れた世の中を巡る旅で出会ったのは善良な人々も悪人もさまざまで、想像以上に波瀾万丈な出来事の連続にオディは社会に対する目を開かされるのだった。
    仲間の3人をはじめ関係者が個性的で、冒険に満ちたロードノベルが楽しめる。大恐慌時代という舞台設定も興味深い。しかし、何よりも施設育ちで世の中を分かっていなかったオディが迷いながらも理想の家族を信じて進む姿が清々しい。ロードノベル、成長物語のファンには絶対のオススメ作である。
    なお、著者は別項となっている「ウィリアム・K・クルーガー」と同一人物であることにご注意を。

    iisan
    927253Y1
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    No.2:
    (5pt)

    主人公の吹くハーモニカの響きが耳に残る

    本書『このやさしき大地』は、さすらい人たちの物語。
    ホメロスの『オデュッセイア』からのエピグラフで始まります。
    この物語は、460ページあまり語られた後、エピローグで終わります。
    「オデュッセイに出航した四人の孤児」(465頁)の物語です。
    神話『オデュッセイア』になぞらえた物語。
    旅の末にやっと会えたジュリアおばさんは
    ぼくを「オデュッセウス」(426頁)と呼ぶ。
    ジュリアおばさんはぼくの「母親」(452頁)だった。「母さん」(457頁)
    そして母親は今、ゆるしを求めている。

    この物語のテーマは、ゆるし。
    「すべてのさすらい人」(465頁)たちのお話です。

    巻末の「著者の覚書」によると、
    「『ハックルベリー・フィンの冒険』のアップデート版を想像していた」(473頁)
    『ハックルベリー・フィンの冒険』は、イギリス版1884年、アメリカ版1885年の刊行。
    『ハックルベリー・フィンの冒険』のカバー・ストーリーとも言えそうです。

    本書の原書は2019年の刊行。125年以上前の古典文学のアップデート版となります。
    本書の時代背景は、主人公が生まれた1920年代から、主人公が80歳になった2000年代。

    著者のウィリアム・ケント・クルーガーさんは、
    「チャールズ・ディケンズの愛読者」(474頁)を自任しています。

    チャールズ・ディケンズは、1812年に生まれ、1870年に没した古い時代の作家。
    孤児『オリヴァー・ツイスト』の物語や、
    現状を逃げ出してドーヴァに住む大伯母の家をめざして旅をする少年
    『デイヴィッド・コパーフィールド』の物語で有名です。

    本書は、これらディケンズ作品のカバー・ストーリーとも言えます。

    読者は、「母をたずねて三千里」のお話を思い出しました。

    本書のタイトルの『このやさしき大地』とは、
    米国ミネソタ州フリモント郡に流れるギレアド川沿いの大地。
    そこが、この物語の舞台です。
    わたしは今「ギレアド川の土手に立つスズカケノキの木陰の家に暮らしている」(9頁)
    「この美しく、やさしい土地」(162頁)
    「ぼくはこの土地に親しみを感じていたし、ジャックが会話のなかで土地をやさしいと表現したことを思い出した」(171頁)

    時は、「一九三二年の夏に起きたこと」(9頁)
    「一九三二年のこと」(25頁)
    「一九三二年のあの夏の日」(325頁)
    「十三歳の誕生日を目前にひかえた一九三二年の夏」(413頁)
    「一九三二年の夏をふりかえるとき」(465頁)
    「一九三二年の夏に出発した川の旅」(473頁)

    語り手は、ぼく(わたし)オディ・オバニオン。
    ぼくは、1932年には12歳。
    リンカーン救護院に新入したときは「八歳」(12頁)だった。
    「ぼくはというと、自分で物語をつくるのが好きだった」(12頁)
    「わたしは物語作家だ」(9頁)
    この物語を執筆した時の語り手の「わたし」は、80歳。
    ぼく(わたし)は「そのとき見た美しい光景は、八十年生きてきた今でも忘れられない」(188頁)
    「七十年前のあの遠い夏」(469頁)、12歳だったぼく。

    この物語の最初から最後まで、いつも響いているのは、ぼくのハーモニカの音。
    ぼく(わたし)の人生をいつも伴奏してきた通奏低音です。
    ブーカブーカブー。

    《備考》
    表紙カバーの装画は、草野 碧(みどり)さんによる。
    茶色に濁ったギレアド川岸に座って、沈む夕陽を見ながら考えこんでいる「ぼく」。
    その後ろに立って同じく夕陽を見ている四歳年上の兄の「アルバート」。
    カヌーから降りて走り出している「モーズ」。
    待ってえ、と言いながら彼を追いかける幼い「エミー」。
    旅に出た、この四人のさすらい人たちが美しく描かれています。
    このやさしき大地Amazon書評・レビュー:このやさしき大地より
    4152101741
    No.1:
    (5pt)

    この美しく、やさしき大地。魂のオデッセイ

    「ありふれた祈り」は勿論秀作でしたが、私は「月下の狙撃者」(2005年)が好きでした。
     「このやさしき大地 "This Tender Land"」(ウィリアム・ケント・クルーガー 早川書房)を読み終えました。読み始めてしまえば、長さを感じることはありません。

     1932年の夏。主人公、オディ・オバニオンはさすらい人たち、兄のアルバート、スー族の口がきけない少年・モーズ、そして幼いエミーと共にミネソタからセントルイスへ向かいます。その川の旅がこの物語の骨子です。川の旅は、心の旅。
     背景には大恐慌があって、飢えと戦い、ホーボーと呼ばれる季節労働者の姿がフラッシュし、現実にもまたその時代を生きる少年少女たちが数多くいたことでしょう。
     著者が覚書で述べているように「ハックルベリー・フィンの冒険」のアップデート版として構想された物語は、リンカーン・インディアン教護院という施設で幕を開け、そこに<入れられてしまった>兄弟が悪しきものに抵抗するように脱出し、旅を続けます。そして、彼らはアルコール依存症者のジャック、フォレストと呼ばれるスー族の男、<神癒伝道団ギデオンの剣>の伝道者・シスター・イヴ、貧民窟フーヴァーヴィルに住む家族たちに出会い、一方、リンカーン・インディアン教護院の追跡をかわしながら、過酷で悲しみの涙に満ちた<魂のオデッセイ>を続けることになります。
     純粋スリラーとは言えませんが、そのストーリーを語ることはできません。
     米国に於けるネイティブ・アメリカンへの迫害、二十世紀初頭の信仰復興運動という名の真実、中西部の例えようもなく清冽な自然を描きながら、悪しきものと戦おうとする心の善きものを与え続けてくれる物語だと思います。
     「労働」はこの土地へとつながるもの。この美しく、「やさしき大地」。その尊さ。

     私たちは常に「献金」を拠出する機会を与えられていますが、ある人から「献金」について貴方がもし本当にお金に困っているなら、それを奪い取ってしまってもいいものだと教わりました。まずは生き永らえることを前提に。生き永らえさえすれば、与えられることから与えることができるようになるかもしれません。
    このやさしき大地Amazon書評・レビュー:このやさしき大地より
    4152101741



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