(短編集)
伊藤くん A to E
- 連作短編集 (229)
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最後まで読んでもらうための工夫なんでしょうか。伊藤くんA~伊藤くんDは、ポップな内容でドラマ化されています。本作でいう「テレビドラマの薄っぺらさ」をポップにかるーい感じにして、うまくまとめています。 私はドラマから見てみて、なんか一番大事な話が抜けているような感じがしたので、小説の方を読んでみました。そうすると、伊藤くんEに恐るべき内容が書かれており、ああ、文学的だよなあ、と思いました。 確かに、伊藤くんEは映像化するのが難しい話なのかもしれません。でも、伊藤くんEを読まないと、一番おいしいところはわかんないだろうなあ、と思いました。 そして、伊藤くんA~Eに登場する女性たちは、かなりの転機を迎えたところで、話が終わっています。この後の彼女たちをどう想像するかは読者次第と思うわけですが、伊藤くん以前、以後で分けてみると、明確なテーマが見えてくるような書き方になっています。 伊藤くんとの時間が無駄だったのか、人生の悪い意味で忘れたい、忘れられない出来事になるのかは、読み手の読み方次第でしょうね。 人と人、男女関係の面白さが、凝縮された一冊です! | ||||
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初めてこの作家の作品を読みました。 いろんな女性出てきますが、生きる上での哲学みたいなのが軽薄なのが共通点で、まるでテレビドラマみたいだと思いました。 伊藤くんは確かにクズだし、クズケンはこの中ではマシだったけど、やっぱりみんな同じくらい軽薄で、ドングリの背比べをして、怒ったり自信を保ったり許したりして。 読み終わった後、汚いもの見たときみたいに凹みましたが、もしかして著者はこれが意図だったのかなと。一見ちゃんと社会人として生きてるからって、人として充実しているわけではないよ、といった、社会の固定化された価値観を壊したいのかなと思いました。 他の作品も読んでみたいです。 | ||||
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この本を読み終えて、怖気が走りながらも、こう呟いてしまった。 美形、家が金持ち、博識、しかし、自意識は腐臭を放つくらい充満し、自分にベタ甘で他罰的なクリエーターワナビー(でも、何もしない)。そんな男、伊藤誠二郎と彼に振り回される女五人の話。 ランチのアッコちゃんのようにほっこりくる話も悪くないが、けむたい後輩でガツンときたものとしては「違う、違うだろ。柚木。毒気を抜いた群ようこにでもなるつもりか?違うだろ」とイライラしていたので、この新刊にはにんまりしてしまった。 Aの主人公、智美のスペックの高さに反比例した自信の無さに憤りつつも、伊藤のずるさを察知できた冷静な視点に希望を感じ、終盤、彼女に降った小さな奇跡に安堵した。 Bの主人公である修子の現状を打破したいと思いながらも先延ばしにしている状態と気持ちが身につまされ痛みを感じ、終盤の彼女の思い切りとそれが図らずとも、Aの智美の救いにも繋がったことに微笑ましくなる。 Cの主人公、聡子の男を切らしたことがないということの矜持と紙一重の愛されないことへの寄る辺のなさは、全作中一番心が寒くなる上にひりひりする回だったと同時に、生臭ささえ体感できそうな文体で綴られる伊藤の童貞強奪シーンとそれに伴う伊藤の脆弱さとチンケさが露わになった件は、聡子GJと親指を立てたくなる。 Dの主人公であり、聡子の親友だった実希の伊藤を振り向かせたいがためにとった行動の浅はかさは、あまりにも相手の男に失礼だろとタコ殴りにしたくなると同時に、どうしても小さなことで優劣をつけ、その崩れ落ちそうなバランスの中で保たれる女の友情の醜さを思い知る。 この回では、軽い男を演じながらも恋した女に最大の気遣いをするいじらしいクズケンという放送作家が登場。このクズケンという魅力的な男性キャラクターを生み出せた柚木麻子の文章力と描写力の飛躍に大きな拍手を送りたくなった。 最後のEは一転してある種のサイコホラーのような佇まいの作風である。 主人公である落ち目の脚本家、莉桜の荒れた部屋の描写、腐っていく頂き物の蟹の腐臭、30近くなったのに未だに「才能のある僕ちゃんを誰かが拾い上げてくれる」と信じ続ける伊藤の哀れすら覚える姿勢もだが、莉桜が自爆覚悟で伊藤に突きつけたカタルシスとその後の伊藤の言動と行動の狂気と激しさに戦慄が走った。 「やばい。なんてクリーチャー生み出したんだよ、どうするんだよ。莉桜」と背中に冷たいものが伝い、それとともに、自尊心を砕かれたウィンプスターって犯罪者一歩手前だよなあと遠い目をしたくなった。 嵐のあとの静けさの如きEの結末はA~Dの結末に比べて救いは少ないし、莉桜の伊藤への攻撃は諸刃の剣のように伊藤と魂の双子の如きメンタルを持つ彼女自身もズタズタに傷つけた後味の悪いものである。 が、女の友情ばかりが尊ばれる柚木作品の中では異色の、女として最も恥ずかしい自分を図らずしも見せてしまったことで莉桜が男との友情を得るこの結末に、女の友情のウェット感が苦手なものとしては最も救いを感じた。 これから伊藤はどうなるのだろう。膨れ上がったプライドと恥をひたすら避ける心で鎧を作り、いけ好かないどころか、リアルにいたら恐怖で逃げたくなる男になってしまった彼だが、その後が気になってしまい、恐れおののきながらも続編を切に願ってしまうのである。 | ||||
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話は全て伊藤くん、つながりで5話ありますが……。本編の前に 読み終わった後の解説部の感性、女性神話、という概念が女性蔑視的で現在の女性の在り方にまったくそぐわなくて古臭い視線・視点でしかないことにがっかりです。 本編で、経験の豊かな人間はやさしく、浅いとキツイ、と言っているキャラがいますが、それは別にそれぞれでは? みんな勝手に色んな価値観を決めつけて人に押し付け過ぎだと思います。 伊藤くんの強さはそれこそ生まれた時から自分中心の恵まれた世界が用意されているためで、甘えと増長の結果の大人像でしょうね。いまいち面白さを感じませんでした。どうせならバスタブから死体でも発見されればよかったのに。 | ||||
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性格に難あり過ぎるイケメン伊藤くんを中心に語られる五人の女子の物語。 劣悪ともいえる伊藤くんだが、美人さんにはモテモテで、男性読者はイライラを感じること間違いなし。ところがけっして美人さんではない本命には、けんもほろろの残念な男に成り下がる。 読み進めるほどに、この伊藤くん、ピュア極まりない人物に見えてくるから不思議だ。恋愛ものかと思ったら、まったく違ったね。伊藤くんを通して女性が気づきを得るという展開である。 ラストの一話で、伊藤くんの魂の叫びを目にしたとき、若干テツガクの香りがするのだった。 | ||||
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