エレベーター
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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アメリカの現代詩人でヤングアダルト向け小説家の作品。エドガー賞を受賞したミステリーだが、現代詩の形態をとっている、不思議なエンターテイメント作品である。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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おととい兄のショーンが銃殺された。「掟」に従ってぼく(ウィル)は復讐する。ショーンの引き出しから銃を見つけ、ジーンズの腰に押し込む。殺したのはきっとリッグスだ。 アパートメントの8階からエレベーターに乗ると、7階から男が乗ってきた。それはショーンの兄貴分の亡パックだった。6階からは幼馴染の亡ダニが、5階からは亡マーク伯父さんが……。 各階で止まるエレベーターに乗り込んでくる身近な故人たちとの関わりを通して、短絡的な復讐の愚かさに気づいていく少年の物語。 *******ここからはネタバレ******* 横書きで、詩の形で綴られるこの物語は、情報が断片的でパズルを解くように真実が明かされていきます。 ショーンの兄貴分のパックは強盗で、ショーンに16発入った銃を渡した。 幼馴染のダニは、8歳の時ウィルとキスした日、撃たれて死んだ。 マーク伯父は、「結晶」の売人になって撃たれ、 父さんは、マーク伯父さんを殺した(と思った)やつを殺したせいで殺され、 フリックはパックを脅すつもりで殺してしまい、 ショーンは、パックの銃でフリックを撃った(これが減っていた1発分)。 いやもうここまで来ると、誰がどう読んでも、その虚しさに呆れることだと思います。 やっと1階に到着して皆が降りていく中、沈黙を通していたショーンの一言が効いていますね。 「おまえも 来るか?」 刺激的だけれども、復讐の愚かさや銃や短絡的思考の危険性を気づかせるには充分な内容です。 私としては、詩の形となっているところが読みにくく感じましたが、だからこその風情もあるので否定はしません。 生死を扱うので、しっかりした中学生以上におすすめします。 | ||||
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読み終えたすぐは本書が何を伝えたいのかが一瞬分かりませんでした。しかし、最後の一行を再度考え直してみることで、ストーリー全体で伝えようとした意味を読み取ることができました。 本書では、復讐からは何も生まれない。むしろ、さらなる悲劇、不幸を連鎖させるということを伝えたかったのではないでしょうか。銃社会における一定層は、本書のような復讐の連鎖的なことが実際に起こっているのかもしれません。 もう一つ、掟は絶対的なものではないことを意味しているのではないかと思いました。当たり前に理屈抜きで掟、つまりルールを守ることは良いことと同義ではない。意義や結果を考えようというメッセージもあるのかもしれません。 | ||||
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ウィルの兄であるショーンが殺された。アトピーで苦しむ母親のために特別な石鹸を買いに行ったためだ。店はショーンらが住む場所と異なるギャングが仕切っている地域。そこにショーンが足を踏み入れたので殺害された。ウィルが住む地域には掟がある。泣くな、密告するな、復讐せよ、だ。ウィルは兄が隠し持っていた銃を持ってエレベーターを降りる。Lobby階に降りるまでに、ウィルが経験する不思議な出来事が、詩という形態で緩やかに幻想的に描かれる。読み進めながら、怖くなったり笑えたり微笑ましくなったり背筋が凍ったりと意外と忙しい。不思議な体験をした。 | ||||
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主人公は15歳の少年ウィル。大好きだった兄ショーンをおととい何者かの銃撃によって失った彼は、泣き寝入っている母親を起こさないよう早朝そっと部屋を抜け出す。兄が箪笥に隠し持っていた拳銃と、そこに込められた彼自身の年齢と同じ15発の弾丸を携えて。その胸にあるのは「兄のために何かしたい」「一緒に行きたかった」という行き場のない思いと、「泣き叫ぶ声」と「サイレン」と「立ち入り禁止の黄色いテープ」が日常のこの街を支配する”掟”だけ。 #1 涙 泣くな。 何があろうと、 決して泣いてはならない。 #2 密告 密告はするな。 何があろうと、 けっして密告してはならない。 #3 復讐 愛する誰かが 殺されたなら、 殺したやつを 見つけ出し、 かならずそいつを 殺さなければならない。 これは彼が部屋のある7階からエレベーターに乗り込み、玄関ロビーのある1階に到達するまでのわずか1分少々の Long Way Down を描く物語だ。エレベーターはなぜか各階ごとに必ず止まり、その度に二度と会えないはずの人々が乗り込んでくる。引き返し不能地点の1階に至った時、ウィルの選んだ選択は? ストーリーもさることながら、本作の最大の特徴は全体がポエトリー、詩の形で構成されていることだ。 ところどころにアナグラムやタイポグラフィがちりばめられ、時には1ページに文章が1行だけ、という箇所さえある。 少年の千々に乱れる心理がストレートに伝わるすばらしい手法だと思う。 本の作り自体も凝っている。各ページは薄汚れたエレベーターの壁を思わせる透かし模様が入っており、各章の扉は階の操作盤、本の最初と最後には洋画でおなじみのケージエレベーターの扉の絵になっている。 一般的な小説本のフォーマットに収まらない技巧の凝らされた構成は好みの分かれるところかもしれないが、普段読書を楽しむ機会の多い方ほど新鮮で面白いと思う。 「おまえも、来るか?」 | ||||
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