国宝
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あらすじ
俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ! 極道と梨園。生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、芸の道に青春を捧げていく。芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をW受賞、作家生活20周年の節目を飾る芸道小説の金字塔。1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」--侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか? 朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。(「BOOK」データベースより)
外部リンク
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評判
国宝の評価:
8.00/10点 レビュー 1件。 S ランク
国宝の総合評価:
9.22/10点 レビュー 684件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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ただ、どんどん周りから人がいなくなっていきます。もちろん大物役者になるにしたがって世話してくれる人、主役級の配役、観客、は増えていきますが、それと反対に心底、喜久雄へ心を開いてくれる人が離れていった気がします。
==ここからは「ネタバレ」になりますので、閲覧にはご注意下さい==
ライバルであった俊介とは一時期、溝が深まりますが、互いの人気が高まるにつれて双方が自然に歩みより、以前とは違う形で関係修復した印象です。ですが、大黒柱を俊介に譲る感じで、丹波屋とのやりとりはなくなりました。また、俊介出奔を機に取られた昔の恋人・春江はすっかり丹波屋の人間になってしまいました。
舞台と現実両方で喜久雄を、影に陽に支えてきた徳次も喜久雄の盤石の活躍を見て、中国へ行ってしまいます。さらに徳次には喜久雄の娘・綾乃へ父親的な役割も担ってもらっておりました。
その娘・綾乃は反抗期もありましたが、徳次や春江の助けもあり、喜久雄との親子関係も良好になったと思いきや、その娘・喜重(喜久雄の孫)のヤケドをきっかけに、本当は綾乃は喜久雄に対して、心の隔たりがあったことが明らかになります。
妻・彰子と世話役の蝶吉との男女の仲も、わずか1.2行ですが、その兆候が見られます。
周りの役者たちも喜久雄の技量についていけず、喜久雄もそれに合わせることなく、次第に一人で演舞する役柄が増えていきます・・・
俊介は病により身体的な両足を失いましたが、喜久雄は芸が秀でるほどに、精神的な不具者になっていったようで、俊介はいなくなり、彼を理解できる者が、誰一人いなくなったようでした。
末巻、瀧晴巳さんの解説にある通り、下巻中盤、『藤娘』を舞っているときに、観客の一人が舞台に上がり込みます。この事件のあたりから、喜久雄は狂気の淵へと入っていきます。
映画やテレビには、スクリーンや画面という「境界線」がしっかりありますが、舞台にはその境界線はありません。だからといって観客が勝手に舞台へ上がっていい訳はなく、双方暗黙の了解で、舞台と観客の間には、目に見えませんが明確な境界線があるのです。
「舞台:虚構」と「観客:現実」とは決して交わることはありませんが、芸を究めるほどに、喜久雄のなかで、その境界線が曖昧になっていった印象です。
振り返ってみれば、上巻序盤、高校の朝令で宮地の大親分に単身斬り込んだ際は、「舞台:宮地親分」「観客:喜久雄」という関係でした。それをきっかけに喜久雄は歌舞伎界(舞台側)へと人生が進み出します。そして、物語の後半には舞台側で香を放つ存在に上りつめますが、そんなときに観客が舞台へ上がってくるという事件を機に、今度は「現実」の方へ引き戻され始めたかのようでした。いや、それは「現実」でさえも「舞台化」してしまうような狂気の世界といいますか、「いつまでも舞台に立っていたい」という喜久雄の願いが叶っていくようでした。
そして、ラストシーンでは、ついに舞台から街中へ喜久雄は歩を進めていきます。が、誰も止めることができません!綾乃は拍手を送り、父親の芸を認めてはくれたのかもしれませんが、その孤高の世界へと分け入ってくことが出来ませんでした。春江、一豊も喜久雄を止められず、もはや観客でしかなかったようです。喜久雄は孤高の世界へとついに行ってしまった、という感じで物語は幕を閉じます。
願わくば、このあと歌舞伎座へと向かっていた徳次が喜久雄を見つけて「坊っちゃん!」と抱きとめて、喜久雄を現実世界へと引き戻してほしい、と思うばかりです。