鏡の迷宮
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鏡の迷宮の総合評価:
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全1件 1~1 1/1ページ
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ミステリーとしても、登場人物にしても、及第点ではあるのですが | ||||
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海外ミステリーとしては非常に珍しい東ヨーロッパの国ルーマニアのベテラン作家キロヴィッツ氏の本邦初紹介作です。ルーマニアと言えばきっと誰もが有名なあの「吸血鬼ドラキュラ」を思い浮かべる事と思いますが、本書はアメリカを舞台にしたごく普通の殺人ミステリーですので、著者ならではのお国柄が全く味わえないのは少し残念ではありましたが、まあそこはどうにも仕方ありませんね。 文芸エージェントのピーターは迷宮入りした殺人事件を題材にした原稿「鏡の書」を一読して興味を覚えるが後半部分が欠落しており彼は更に著者との接触を図ろうとするのだが、その試みも不運にも不幸な結末を迎える事となるのだった。 結論から先に言いますと私は本書のミステリーとしての出来は可もなく不可もなくで、まずまずの水準作だと思います。私が少し引っ掛かったのは著者紹介欄に書かれた「本書が刊行前から異例の話題を集めた」という記述で、それは幸運であると同時にやや不運かも知れないなとも思いましたね。もしかすると期待した程には面白くなかったなと思われる場合も有り得ますからね。最近の海外ミステリーを読んでいて感じるのは全体的に昔と比べて随分と水準が低下している傾向にあるなという印象で、きっと読者(世界中の)もあまり多くを望まなくなったのだろうなと思えるのが少し寂しいですね。容疑者が限られる中でのこの真相は「あり得ない真実」とは思えませんでしたし、この程度の事件が迷宮入りして数十年も埋もれたままなのは真犯人にとってもの凄く幸運だったなとも思いますし、テーマの記憶に関する記述も「あっ!」と目を見開かされる程の新しいずば抜けた考え方でもなかったのですが、でも私としてはミステリーの醍醐味よりも主人公を除く3人の男達の恋愛ドラマを楽しむのが本書の正しい味わい方だろうと思いますね。「鏡の書」の著者リチャード・フリンの女子大生ローラとの甘酸っぱくほろ苦い青春小説の趣のドラマ(彼は最後まで偶々自分の名前と同じ「彼女の不倫」疑惑に悩まされたのですね)、次にフリーの記者ジョン・ケラーの青天の霹靂と言っていい突然に降って沸いた彼女との別れ話、そして最後に元警察官ロイ・フリーマンの別れた妻ダイアナと再会してよりを戻す心温まる人間ドラマで幕を閉じる演出は、それまでのもやもやがいっぺんに吹っ飛んでパッと心が晴れやかになる素晴らしい読み心地でしたね。 | ||||
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一部で高い評価があると聞きましたが、状況設定に面白味のある謎があるわけでなし、論理的な謎解きを楽しめるわけでもなし、残念ですが、ミステリーとしては低い評価にならざるを得ません。何より一人称での複数の証言・状況説明に「嘘」が幾つもあり、これってどうなの?的な読後感でした。さらに、解決は、話の本筋とはまったく別の所から唐突にもたらされるのですから、真面目に(謎解き主眼で)読んでいた読者にとっては、「肩すかし」もいいところ・・・。 心理小説としては悪くないと思いますが、宣伝文句の「ミステリー」としては、あまり。。。;; 期待が高過ぎたのかも知れませんが、少々残念な評価となりました。 | ||||
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アメリカの文芸エージェントであるピーター・カッツは40代の男リチャード・フリンから原稿を送りつけられる。1987年に殺害された心理学教授ジョーゼフ・ウィーダーと当時学生だったフリン自身との交流を描いた回想録のようだ。学生時代つきあっていた年上の女性ローラや彼女につきまとっていた元カレ、ティモシーのことなど興味深い内容であるものの、殺人事件に至る肝腎の後半原稿が欠けていた。興味を持ったカッツは残りの原稿を求めてフリンと連絡を取ろうとするのだが…。 ------------------------------ 著者のキロヴィッツは本国ルーマニアではベストセラー作家であり、これはその彼が初めて英語で執筆したミステリーとのことです。 ミステリーを読みなれた読者にしてみれば、回想録を綴ったフリンは歴然たる<信用できない語り手>です。彼が数十年もの歳月を経てから突然ペンを執ったのはなぜなのか。そしてまた彼が記す内容は果たしてどこまで真実なのか。 その謎を追って、ピーター・カッツ、フリーのジャーナリストであるジョン・ケラー、そして元警察官のロイ・フリーマンへと真相究明のバトンがリレーされていきます。 この小説は最後に真犯人へとたどり着き、一応の決着は見ます。ですが、<藪の中>へと呑み込まれてしまった謎もわずかに残るのです。浄化されぬままで終わる部分があることに、読者の気が完全に晴れることはないかもしれません。 ですがこの小説の妙々たるところは、事実は人の数だけ存在するというこの世のわびしくも確かな現実です。フリンもローラもティモシーも、そして彼らの周囲の人々のいずれもが、銘々の真実を抱えて生きていたことが描かれます。それは事件発生から30年という気の遠くなる時間によって各人の心に別々に篆刻された記憶であり、ボブ・ディランの歌曲『いつもの朝に』にあるように「きみの立場からすればきみは正しく/僕の立場からすれば僕は正しい」といえる複数の実相でしょう。かつて愛し合った(はずだと信じる)人との間で共有されることがなかった記憶がある。そんな体験が私にもあります。そのことの物悲しさを描いたミステリー小説として私は大いに楽しみました。 そして、この謎めいた小説を見事な日本語に移し替えてくれた越前敏弥氏の訳業についてぜひとも付記しておきたいと思います。 私は越前氏の著作をその翻訳術を指南する『』(2009年)、『』(2011年)、『』(2014年)、そして『』(2016年)と読み継いできましたが、いわゆる海外小説の翻訳作品には実は一度も触れたことがありませんでした。今回その訳業に初めて接して、その和文が流れるように読みやすいことを発見し、リーダビリティの各段の高さに心が躍りました。 今後は越前氏の訳書であることだけを理由に、手に取る海外小説が増えそうです。 ------------------------- 人の数だけ真実があることを教えてくれるノンフィクションをひとつご紹介しておきます。 ◆米原万里『』(角川文庫) :米原万里氏は在プラハソヴィエト学校で幼少期を過ごします。後年、かつての同級生を、共産主義政権崩壊後に訪ね歩いて綴ったのがこの『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』です。 アーニャの一家のその後の経緯をどう見るか、真実はひとつであるはずなのに、兄のミルチャの言い分、アーニャの母の言い分、そしてまたアーニャ自身の言い分はまるで違います。過去において共産主義とどう向き合ったのか、その度合いによって生まれた心の亀裂は、共産主義が終焉した後も決して埋まりません。 家族を引き裂いたまま共産主義は去っていったということを、痛ましくも感じさせる少女たちの物語です。 | ||||
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28年昔の殺人事件の真相に関して、真相が二転三転するのを、文芸ジャーナリスト、フリーのライター、元担当警官の 視点から真犯人と真相を炙り出して行く、なかなか締まったサスペンス、ミステリー。 3日ほどで読了してしまうほど面白かった事は、間違いない。 ただ、ラストのラスト、真犯人と真相に期待したほどの衝撃、カタストロフィーを私は受けなかったので ☆は4.25 くらい.... 読んで損はしない。 | ||||
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