灰色の魂
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フィリップ・クローデル(1962- )のこの小説『灰色の魂』はフランスで2003年に刊行され、当時いくつかの賞をとっています。 第一次大戦のさなか、ドイツとの戦線に近いフランス北西部の小さな村が物語の舞台になっています。戦線に赴く兵士たちの隊列が通るいっぽうで、戦線から傷病兵たちが送り返されてくるという状況が村にあります。 そんな村のある厳しい冬のこと、町の食堂で親の手伝いをしていて皆によく知られた少女の絞殺死体が小川のそばの草むらで発見されます。いったいだれが殺したのか――小説の発端にあるその謎を謎のままにして「私」の語りのもと物語が時系列を行きつ戻りつしながら進行していきます。 検察官、判事、村長、反戦教師、女教師、語り手の妻、語り手の女友だち、憲兵大佐、脱走兵など――語り手の目に映じる数多くの人間たちが物語に登場してきます。そしてそのなかのほとんどの者が死んでゆきます。 この語り手はいったい何者なのか(小説なかばを過ぎたあたりでようやくだれであるかが明らかにされます)。 あるいは、それにしてもいったいだれが少女を殺したのか…(最初こうして一見ミステリーふうの小説のようにみえますが…) 物語のなかに次のような語り手による述懐が読まれます: 「人生とはおもしろいものだ(La vie est curieuse)。予告はない。選り分けることもできずにすべてが混じりあい、流血の時のすぐあとに恩寵の時が続く、そんな具合だ。まるで人間は道に落ちているあの小石のように、来る日も来る日も同じ場所にあったのに、放浪する男のひと蹴りで転がされ、理由もなく、空に向かって投げ飛ばされてしまうこともある。そして、小石に何ができようか?」(本書第XVI章より) 上に引用したのはこの小説に読まれるある一節ですが、最初の文を「人生とは怖ろしいものだ」という文に置き換えることもできるでしょう。そしてそのように置き換えれば、上の一節は、読者にとってこの小説の内容により符合するように思えます。 いっぽうでしかし、あまりに多くの目を覆うばかりの出来事が起こって自分もふくむ人間の人生というものを呆れたように突きはなしてながめざるをえなくなった小説の語り手にとっては原文どおり「人生とはおもしろいものだ」(「人生とはおかしなものだ」とも訳せます)というつぶやきのほうがふさわしいかもしれません。 なお、上の一節について本書訳文では「流血の時のすぐあとに恩寵の時が続く」とありますが、フランス語原文(Les moments de sang succèdent aux moments de grâce)どおりに訳せば「恩寵の時のすぐあとに流血の時が続く」です。究極はどちらも、「禍福は糾える縄の如し」みたいな、同じような意味に収斂するかもしれませんが、この節全体にあって、その文のもつ効果や印象はしかし微妙に異なるのではないでしょうか。つまり、ここはフランス語原文どおりに訳すべきではなかったかということです。 | ||||
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登場人物は年齢性別職業体格性格みんな異なるけれど どの人物も作者の一部を反映しているのだろうなあと思った。 だからといって、この物語全体を包む閉塞感が作者のなかに ある、というわけではないとも思う。 作者は、自分のもつ「灰色の魂」とうまくつきあい、 現実世界ではなく小説の世界に「灰色の魂」を解き放している ような気がする。 もしかしたらだれもが心の一部として持っているのかもしれない 「灰色の魂」。 作者は、それとうまく付き合っている感じがした。 | ||||
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こういう作品がイイ! って言うとカッコいいんだろうけど、正直そんなに心動かされなかった。 高尚で深いミステリーという範疇なんだろうが、テンポと明快さをミステリーの優先順位にあげる自分としては受け付けられなかった。 無駄に思われるエピソード、いかにも翻訳調のだらだらした文章、読者の判断に任せたようなはっきりしないエンディング。 と、感じてしまいました。 ま、どんな作品でも好き嫌いはあるということです。 | ||||
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独善的な言い方になりますが、21世紀の最高傑作としか言いようがありません。 人間の心理をこれほどまでに深く洞察した小説があったでしょうか。 生きるとはどういうことか。 よりよく生きるとはどういうことか。 私のベスト1が、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」なら、ベスト2は、このフィリップ・クローデルの「灰色の魂」です。 ミステリーのような体裁を取りながら、人間に肉薄していく、迫力ある心理劇。 ピエール・アンジュ・デスティナというひとりの男に、人のすべてを見てしまう思いです。 2004年に『エル』の女性読者賞を獲得したことも言い添えておきます。 | ||||
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この作品がどのくらい長く人に読みつがれるのか、 また読みつがれるべき作品なのか、私には分かりません。 心を添わせることのできる登場人物を見出すことなく、 作品を読み進めることは、あるにしても、 私にはちょっと不安でした。 題名が示すように、ここに書かれる人の魂の色は灰色です。 語り手たる主人公も含めて。 冒頭に書かれる少女の死をめぐって、犯人が誰なのかという謎が、 最後まで読み手を引っ張り、その糸のまわりに他のいくつもの死が纏わりつく。 詳しくは書けませんが、なかでは、逃亡兵の死が重く心に残りました。 また、第一次大戦時、戦地に送られ、あるいは棺となって、あるいは心身に重い傷を 追って戻ってくる兵士たちの無残な姿を描くことで、 作者はおそらく、戦争が、その状況を生きるすべての人の魂を、 多少の差はあれ灰色に覆いつくし、癒されることのない穴に追い込んでいく事実を示したかったのだろうかと想像します。 それ自体大きなテーマであり、心に深く沈んでいくものを感じます。 ただ、正直にいえば、翻訳のスタイルにはなかなかなじめませんでした。 解説を読むと、原文は俗語なども混じったむずかしい文体であったようですが、 読む間も、翻訳のスタイルが気になって、作品に没頭できないことが多かったと思います。 | ||||
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