避雷針の夏
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避雷針の夏の総合評価:
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酷いお話しでした。けれどこういう村(場所)はまだ日本にあると思います。 黒い羊にされてしまった一家の悲惨さと、それによりムラ社会のガス抜きをする集落住民たちの汚らしさ。 その風習が厭らしくなりすぎず、ギリギリの匙加減で描かれているのはさすが!櫛木理宇さん! どこまでも自分勝手な父親も見事! 再販はされないのでしょうか?高値なので図書館で借りようか迷い、購入してしまいました。 結果、良かったです。 | ||||
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「軽い」と言っても、悪い意味ではありません。 村の因習、ドロドロ~ッ、という横溝正史的な感じではありません。 あ、こういうの、超閉鎖的な田舎じゃなくても、周辺によく「ある、ある」という感じです。 つまり、「身近」なラフな感じを、デフォルメしているような。 SNSの闇、引きこもり、井戸端会議に、嫁姑問題と介護、スケープゴート、動物虐待、逃避人間、テンパった奴ら、エトセトラ。 避雷針をものともせず、落とされる雷の有効範囲の点で、こういった閉鎖社会の舞台が必要だったと思います。 胸糞悪いほどの「悪」を期待すると、ちょっとバズレかも。 私はこの作者の著書で「うううっ、なんだか、とっても厭~っ」という作品を読んでいたので、この作品はむしろ爽やかでした。 夏、ヒトを不快にさせ、また、原始的な高揚を喚起する夏。 その描写が素晴らしい。 軽く、「ある、ある」で読めますよ。 | ||||
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【注意:多少ネタバレを含みます】 他の方のレビューにもある通り、 この作品に出てくる登場人物は基本誰一人として好感が持てない者の集まりである。 もちろん作者もそれを狙って書いているのだろうが、序盤はまだ主人公(?)である梅宮の 『紳士を装いながらも常に誰かのせいにして面倒から逃げ続ける姿勢』など、 いわゆる「あー、こんな人いるいる」や「あー、あるある」という 身近な例の共感からくる嫌悪感や恐怖を覚えることができるのだが、 それ以降――序盤終わり辺りから出てくる人物全員が人間の”負”と”悪”の側面『のみ』を抽出し強調したような 造形をしているため、「いや、さすがにこんな奴いねーよ」や「ないない。さすがに盛り過ぎ」といった 二、三歩引いた視点でその人物たちの言動を見るようになってしまうため、 現代日本を騙った別世界を見ているような気分になってしまった。 一部(本当に一部)例を挙げると、 『祭りの夜、町隅にある一軒家に押しかけて女性を暴行したあげく放置して帰る男衆』 『その出来事を無かったことにしようと↑の被害者の女性を脅迫する警察&町議』 『猫の生皮を飼い主である少女の前で剥ぎ取る親父』 『↑そのショックで失神する少女。恐慌状態に陥る現場で平然とその少女と猫の死体をスマホで撮り去る者ら』 『憂さ晴らしに町中の猫の手足を切断しダルマにして周る青年』 『とある家に押しかけてそこの娘を襲う計画を、↑の青年と共にノリノリで立てて実行する若者たち』 『とある女学生をイジめる過程でアレルギーがある食べ物(命に係わるレベル)を無理矢理口にさせようとする学生ら。それで不登校になっても助けるどころか「学校をさぼるとはなにごとだ」と激怒する両親』 等々。 こういった事象を平然と起こす者ら『しか』出てこないため、 途中から読んでいて「嫌な町だなぁ。こんなとこ住みたくないなぁ」とかそういったことではなく 「ここはどこでいつの時代なのよ? 本当に現代日本?」という感想しか覚えなかった。 いくら何でも『他所が介入しにくい田舎町だから』『村八分にされてる存在だから』で物事を片付けすぎである。 クライマックスに至る流れも、 この人間の”負”と”悪”の側面(あと酒と勢い)に頼り切った過程しか踏まないため無理筋にしか見えず、 なんの説得力も現実感もなかった(本来その無理筋に説得力を持たせる役割であるところの少女らについても、具体的にどんな計画を立ててどんな動きをしてきたのかという肝心な部分がほとんど描写されないため、「結局なんだったんだ」としか思えなかった)。 エピローグもほんの6ページ程で、しかも只の事後報告で終わってしまうため読後感も悪く、 総じてただただ不満とフラストレーションが溜まる作品だった、と残念ながら言わざる終えない。 | ||||
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初めにこの著者の「死刑に至る病」を読んだので、期待して本を開きました。 主人公にしてはちょっと矮小で醜悪なんだけど、この先何かあるんだろうなと読んでいくにつれ、それが町の醜悪さと相まってどんどん進んでいって、夏祭りとともにドカンと!……夏の蒸し暑さと祭りのにぎやかさとその熱気と人々の意識にあふれている、人への憎悪や嫉妬など人間の醜い部分が一気に爆発する描写はさすがだなと思いました。でも、ここまでくるのにだいぶ紙面が割かれてしまって、収束に向かうまであっという間で、ほかの方も書いておられましたが、えっこれで終わり?という物足りなさでした。ここまで引っ張っておいてこれだけなんですかというあっけなさがありました。 登場人物の誰にも感情移入ができず、自分が上から登場人物たちを傍観している感じでした。結局何を言いたいのか私にはわかりませんでした。人間のいろいろな醜さ、巨悪ではないけれども、おぞましい思いが残りました。後味が悪いというのではないけれども、救いがない気がしました。期待していたようなものではなくてちょっと残念でした。 | ||||
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安定した筆致で徹底した暗黒世界を描けるのは櫛木の強みである。 舞台は新潟県のとある田舎町である。元殺人犯が英雄として祭り上げられている忌々しい田舎町。町民は一人残らずクズである。だがどうしても、絵空事と笑えない異様な迫力がある。 登場人物がリアルなのだ。田舎暮らしの経験ある人間ならば、ここに描かれる隣近所との付き合いから生じる息苦しさや、監視とも言える近隣の耳目、排他的な雰囲気にゾッとさせられ、自分も同じ経験があると感じる事は間違いない。ここに描かれた町の惨劇は他人事ではないと震撼する事間違いなしだ。 「優しや」や「繋がり」、「絆」といった言葉を悪用し、一人の人間を追い込んでいく住民たちの憎たらしさと言ったら。歴史に残る様な「大悪党」ではない。どいつもこいつも救い難い「小悪党」だ。 物語が進行し、一人、また一人と破滅していく姿は小気味よいテンポで進んでいく。ヒーロー不在のノワール小説、といったところだろうか。 クライマックスにはテンションの山場が用意されているが、ここでの噴火、それの破壊力がもう少し大きなものにできなかったかと不満でならない。予定調和的で、呆気にとられる驚きが小さいのだ。もう少し、ページ数を割いて登場人物たちの闇を掘り起こし、徹底的に「痛めつける」。これがないせいでラストでの「贖罪」に宿るカタルシスが小さく収まってしまっている。 昭和初期で止まったかの様な価値観、閉塞感、その中に渦巻く暴力的な憎しみ、恨みつらみ。地方の抱えている問題をこんな風にエンターテインメントとして昇華するなど、一体誰が考えただろうか。実は退屈な人々の営みの中にこそ、こういった物語が宿るのだと肩を叩かれた気分だ。 着眼点の良さ、素晴らしいアイディアにリーダービリティ、それらに感嘆しながら、小さくまとまった完成品には歯がゆさを覚えずにはいられない。 | ||||
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