最後の物たちの国で

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種別
長編
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あらすじ

1999年06月30日 最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

人々が住む場所を失い、食物を求めて街をさまよう国、盗みや殺人がもはや犯罪ですらなくなった国、死以外にそこから逃れるすべのない国。アンナが行方不明の兄を捜して乗りこんだのは、そんな悪夢のような国だった。極限状況における愛と死を描く二十世紀の寓話。(「BOOK」データベースより)

評判

最後の物たちの国での評価:

0.00/10点 レビュー 0件。 A ランク

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最後の物たちの国での総合評価:

8.41/10点 レビュー 29件。

感想一覧

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Amazonレビュー

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No.29
(5pt)

鈍重な美しさを持つ生き残り物語

一見、軽いノリのSFっぽい小説に思えた。世紀末の荒廃した世界。"限りなくゼロに近づく、欠乏と崩壊に覆い尽くされた世界の飢え、疲れ、寒さ、それに恐怖"。流行りの近未来系サバイバルゲームと錯覚しそうになるが、読み進むうち、私達が身近に或いは過去に知ってる世界である事に気付かされる。昔の農村で見かけた"糞尿処理システム"、第二次大戦中レニングラードに実在した"人肉工場"、そして、急速に"第3世界化"するNYシティー。これはオースターが感じ取る、もう一つの危うくも脆い暗黒の現実なのだ。
 暫くすると、等身大の恐怖に背筋が凍りそうな展開になるが、中盤から後半にかけ、追い詰められた人間が狂気に駆り立てられる生々しい描写は、実に見応えがある。最後の2チャプターでは圧巻のオースター劇場と化し、たっぷりと時間を掛けて読みほぐした。これは、ホラーでもサスペンスでもサバイバルでもSFでもない。"今そこにある恐怖"そのものにすっかりと魅入ってしまう。
 絶望に貼り付けになった大衆の思考が狂気へと変貌し、その狂気が全てを支配するが故に、ある者は極限の無垢な境地に行き着いてしまう。自暴自棄になる感情をも捨て去り、無になる事で、自己の内面世界がより大きくなり、より堅固になり、狂気に陥るはずの自分を1つの物語として、客観的に眺めていられるのだ。"自分がもはや自分ではなくなる"事で絶望の淵から自らを開放する。
 また、ある者は、自分以外の何者かに成り済まし、多種多様な人物を演じる事で狂気をコントロールする。極限の状態で生き延びる為に、他人を出し抜くのではなく、幻想と妄想で創り上げた雑多な自分を欺く術を身につける。つまり、多種多様に思考を広げる事で絶望を回避するのだ。
 また、ある者は目を閉じ、闇に浸る事で洞察力を養い、強い意志と信念の元に思考を先に押し進め、絶望の波をかき分けていく。またある者は、絶望を達観する勇気を持つ為、自らの狂気をノートに記しながら、自らに与えられた過酷な運命を真正面から見据えようとする。
 『最後の物たちの国』では、この"ある者"であるサム、ポリス、ヴィクトリア、アンナの4人が中核をなすが、彼らが生き残るか死ぬかは問題ではなく、この追い詰められ荒廃した無の世界で、彼ら彼女らに纏わる様々な物語が様々に入れ替わり、一つ一つがごく些細な状況に応じて、鈍重なある種の優美さを持って変貌していく様は、実に読みごたえがある。まさに、オースター・マジックの決定版である。
最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑) Amazon書評・レビュー: 最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑)より
4560071314
No.28
(5pt)

鈍重な美しさを持つ生き残り物語

一見、軽いノリのSFっぽい小説に思えた。世紀末の荒廃した世界。"限りなくゼロに近づく、欠乏と崩壊に覆い尽くされた世界の飢え、疲れ、寒さ、それに恐怖"。流行りの近未来系サバイバルゲームと錯覚しそうになるが、読み進むうち、私達が身近に或いは過去に知ってる世界である事に気付かされる。昔の農村で見かけた"糞尿処理システム"、第二次大戦中レニングラードに実在した"人肉工場"、そして、急速に"第3世界化"するNYシティー。これはオースターが感じ取る、もう一つの危うくも脆い暗黒の現実なのだ。
 暫くすると、等身大の恐怖に背筋が凍りそうな展開になるが、中盤から後半にかけ、追い詰められた人間が狂気に駆り立てられる生々しい描写は、実に見応えがある。最後の2チャプターでは圧巻のオースター劇場と化し、たっぷりと時間を掛けて読みほぐした。これは、ホラーでもサスペンスでもサバイバルでもSFでもない。"今そこにある恐怖"そのものにすっかりと魅入ってしまう。
 絶望に貼り付けになった大衆の思考が狂気へと変貌し、その狂気が全てを支配するが故に、ある者は極限の無垢な境地に行き着いてしまう。自暴自棄になる感情をも捨て去り、無になる事で、自己の内面世界がより大きくなり、より堅固になり、狂気に陥るはずの自分を1つの物語として、客観的に眺めていられるのだ。"自分がもはや自分ではなくなる"事で絶望の淵から自らを開放する。
 また、ある者は、自分以外の何者かに成り済まし、多種多様な人物を演じる事で狂気をコントロールする。極限の状態で生き延びる為に、他人を出し抜くのではなく、幻想と妄想で創り上げた雑多な自分を欺く術を身につける。つまり、多種多様に思考を広げる事で絶望を回避するのだ。
 また、ある者は目を閉じ、闇に浸る事で洞察力を養い、強い意志と信念の元に思考を先に押し進め、絶望の波をかき分けていく。またある者は、絶望を達観する勇気を持つ為、自らの狂気をノートに記しながら、自らに与えられた過酷な運命を真正面から見据えようとする。
 『最後の物たちの国』では、この"ある者"であるサム、ポリス、ヴィクトリア、アンナの4人が中核をなすが、彼らが生き残るか死ぬかは問題ではなく、この追い詰められ荒廃した無の世界で、彼ら彼女らに纏わる様々な物語が様々に入れ替わり、一つ一つがごく些細な状況に応じて、鈍重なある種の優美さを持って変貌していく様は、実に読みごたえがある。まさに、オースター・マジックの決定版である。
最後の物たちの国で Amazon書評・レビュー: 最後の物たちの国でより
4560045747
No.27
(3pt)

ディストピア小説としてはいまいち。

本作の内容はいたってシンプルなので、中身にはあまり触れないほうがいいだろう。〜ディストピア小説の成功するキーは、危機的状況の中での緊張感をいかに文体で演出できるかにかかっている。レビューのタイトルに記したように「いまいち」というのは、本作が物語の中心に入っていくにしたがって前述した緊張感がいくつかの場面を除いて、保たれていないところがあるためだ。〜書き出しはいい。しかし、物語に入っていくまでの前段がやや冗漫。かつ、物語にはいっていくにつれ--いくつかの場面を除き--「どうも引き付けられないな」という印象がぬぐえなかった。ポール・オースターの他の作品同様、文章は巧い。ディテールもしっかり書き込まれていて、稚拙なところもほとんどない。それなのになぜ面白くないのか。この原因は前述した、文体に危機的な状況を演出する筆力がかけているためと、主人公アンナの生活がディストピアの中において危機感を欠く、すこし強い言い方をすれば大部分が牧歌的なモチーフでストーリーが展開しているためだ。その点でいうと、コーマック・マッカーシーのディストピア小説の名作『ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)』の足元にも及んでいない。文体に緊張が演出されていないのは英語ができない僕にとって、原書の要因なのか翻訳が要因なのかは判別がつかない。〜著者の大部分の作品を読んで思うのだが、オースターの才能はやはり奔放な展開をみせるリアリズムに準じたところにあるのではないか。そういう印象を持ったのが読後の感想だ。
最後の物たちの国で Amazon書評・レビュー: 最後の物たちの国でより
4560045747
No.26
(3pt)

ディストピア小説としてはいまいち。

本作の内容はいたってシンプルなので、中身にはあまり触れないほうがいいだろう。〜ディストピア小説の成功するキーは、危機的状況の中での緊張感をいかに文体で演出できるかにかかっている。レビューのタイトルに記したように「いまいち」というのは、本作が物語の中心に入っていくにしたがって前述した緊張感がいくつかの場面を除いて、保たれていないところがあるためだ。〜書き出しはいい。しかし、物語に入っていくまでの前段がやや冗漫。かつ、物語にはいっていくにつれ--いくつかの場面を除き--「どうも引き付けられないな」という印象がぬぐえなかった。ポール・オースターの他の作品同様、文章は巧い。ディテールもしっかり書き込まれていて、稚拙なところもほとんどない。それなのになぜ面白くないのか。この原因は前述した、文体に危機的な状況を演出する筆力がかけているためと、主人公アンナの生活がディストピアの中において危機感を欠く、すこし強い言い方をすれば大部分が牧歌的なモチーフでストーリーが展開しているためだ。その点でいうと、コーマック・マッカーシーのディストピア小説の名作『ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)』の足元にも及んでいない。文体に緊張が演出されていないのは英語ができない僕にとって、原書の要因なのか翻訳が要因なのかは判別がつかない。〜著者の大部分の作品を読んで思うのだが、オースターの才能はやはり奔放な展開をみせるリアリズムに準じたところにあるのではないか。そういう印象を持ったのが読後の感想だ。
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4560045747
No.25
(3pt)

ディストピア小説としてはいまいち。

本作の内容はいたってシンプルなので、中身にはあまり触れないほうがいいだろう。〜ディストピア小説の成功するキーは、危機的状況の中での緊張感をいかに文体で演出できるかにかかっている。レビューのタイトルに記したように「いまいち」というのは、本作が物語の中心に入っていくにしたがって前述した緊張感がいくつかの場面を除いて、保たれていないところがあるためだ。〜書き出しはいい。しかし、物語に入っていくまでの前段がやや冗漫。かつ、物語にはいっていくにつれ--いくつかの場面を除き--「どうも引き付けられないな」という印象がぬぐえなかった。ポール・オースターの他の作品同様、文章は巧い。ディテールもしっかり書き込まれていて、稚拙なところもほとんどない。それなのになぜ面白くないのか。この原因は前述した、文体に危機的な状況を演出する筆力がかけているためと、主人公アンナの生活がディストピアの中において危機感を欠く、すこし強い言い方をすれば大部分が牧歌的なモチーフでストーリーが展開しているためだ。その点でいうと、コーマック・マッカーシーのディストピア小説の名作『ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)』の足元にも及んでいない。文体に緊張が演出されていないのは英語ができない僕にとって、原書の要因なのか翻訳が要因なのかは判別がつかない。〜著者の大部分の作品を読んで思うのだが、オースターの才能はやはり奔放な展開をみせるリアリズムに準じたところにあるのではないか。そういう印象を持ったのが読後の感想だ。
最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑) Amazon書評・レビュー: 最後の物たちの国で (白水Uブックス―海外小説の誘惑)より
4560071314

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