霧の神話



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    初公開日(参考)1977年03月
    分類

    長編小説

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    霧の神話 (徳間文庫)

    2003年12月31日 霧の神話 (徳間文庫)

    妻は、あの幻の女ではないのか。立山の宿で一夜熱く貪り合った謎の女…おぼろな残像を見合い相手に重ねた魚住は結婚した。が、新婚旅行の先々で、魚住は隠見するヤクザに気づく。この妻は…怪しい。そして、ヤクザの惨殺体が発見された。 (「BOOK」データベースより)




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    No.6:
    (5pt)

    「霧の神話」「虹への旅券」の2話を収録!

    本書は、1977年4月に出版されました。2話の長編を収録しています。
    「霧の神話」
    1974年8月に祥伝社から出版されました。本作品は女性週刊誌「微笑」に1973年4月から連載された作品です。硬質派作家、森村氏は前作の長編「星のふる里」で初めて女性向けのサスペンス小説を執筆して作風の範囲を広めました。女性向け週刊誌の次作にあたるのが本作品です。

    今まで大企業のエゴイズムと利益優先主義を痛烈に批判して、その社会から惨めに散ってゆく若者たちの姿を多く書いてきました。「暗黒流砂」では、その対象の矛先を政治家や官僚に向け世間の耳目を集めました。

    本作品は女性向け週刊誌の連載ということで読者のターゲットは女性に絞っていると言っても良いと思います。勿論、男性が読んでも十分楽しめます。魚住晋一は化粧品販売会社「ルネ・クレール」のトップ社員でした。上司の小野崎から縁談を持ち掛けられ、初めて会った草薙夕紀子に一目惚れしてしまいます。

    しかし、魚住は縁談より少し前に北アルプスを登山した時、浄土山の山腹の下りで一人の若い女性と会っていました。草野夕子と名乗りはしたものの登山装備もなく死に場を求めての山行だったことは明らかでした。魚住は夕子を助けました。強い日差しを避けるためサングラスを夕子に譲った魚住は雪盲にやられ、夕子の顔を霞の中でしか見ることが出来ませんでした。二人は無事に宿へ着き、命の有り難さを感じると一夜限りの深い関係を持ってしまいました。

    魚住は新妻、夕紀子と一緒に暮らすようになってからも夕子のことが忘れられませんでした。魚住は夕紀子と初夜の晩を迎えた時、夕紀子の体から生硬なものを、はっきりとは感じられませんでした。魚住は自分のことは棚に上げて夕紀子の過去に何があったか知りたくなってしまうのです。

    森村氏は他の作品でもそうですが、女性の処女性について非常に拘った表現の作品が多くあります。運よく処女を射止めた男子は妻女の過去を詮索することなく安穏な生活を送れるのに対して、そうでなかった男は妻の過去を詮索せざるをえなくなってしまいます。

    魚住は雪山の山荘で初めてを捧げてくれた草野夕子のことが忘れられず、夕紀子と容姿や背格好も良く似ていることから夕紀子の現実から逃避するために、夕子が同一人物ではないかと思い込み始めてしまうのでした。

    魚住は夕紀子の過去を探ります。その方法、手段は本作を読むうえでの面白みの一つでもあるので控えます。調べれば調べるほど疑いは多くなり、夕紀子も自分の過去を夫が調べようとしていることに気が付き始め苦悶します。

    記憶喪失を扱った小説は数多くあります。そのほとんどは記憶を失った主人公に、なんとか記憶を取り戻させようと苦労する人間と、それとは反対に記憶を取り戻されては困る人間が徐々に記憶を戻し始めたことに右往左往するという話は意外と多いと思います。

    しかし本作品は、男の滑稽なほどのエゴイズムにより妻の過去を詮索し過ぎた為に妻の記憶は霧のなかに消えてしまうことになるのです。どういう過程で記憶を失ってしまうかは本書の読み処でもあるので控えます。

    男の処女に対する固執によって、美しい女性は、過去と将来を失ってしまうという悲しい話です。当時の女性読者はどういう思いで読んだのかは分かりません。「星のふる里」は残された妻子が悲しい思いをする話でしたが、本作は夫の固執によって悲劇がおきてしまう話でした。

    「虹への旅券」
    1975年3月講談社から初出版されました。本作品は1974年4月から1975年1月にかけて女性週刊誌「ヤングレディ」に連載されたものです。これまで森村氏は「高層の死角」に代表されるような推理小説を書き、「腐食の構造」では社会派的な内容の硬質的作家として広く読者を集めてきました。

    しかし「星のふる里」で初めて女性向けの作品を書き、続く「霧の神話」と続けて女性向けの作品を発表し、これまでの著作の範囲を広げたところでした。本作品も人気女性週刊誌への連載という事で、そのジャンル第三弾となります。

    森村氏の作品の舞台は、森村氏がサラリーマン生活を過ごしたホテルマンとしての経験を基に、内部に通暁した大都市の高級ホテルを舞台とし、趣味でもあった登山の経験から日本アルプスといったダイナミックな地を舞台にした作品が多くありました。

    しかし本作は、今までとは趣を変えて、その舞台をヨーロッパの地においています。名だたる景勝地を巡る話のトラベル・サスペンスロマン小説です。

    今日では、誰もが気軽に海外旅行に行けるのが当たり前の時代ですが、実は海外旅行が国民に自由化されたのは1964年のことでした。日本人にとって海外旅行の歴史は僅か半世紀ほどしか無いのです。

    もちろん当時でも、誰でもが海外旅行を楽しめるわけでは無く、経済的に恵まれた人だけの楽しみでした。本作品が書かれたのは、海外旅行自由化から10年ほど後の頃ですから海外旅行に憧れる人々が多くいたことと思います。そんな時でしたから海外旅行に憧憬を抱く若い女性読者に支持されただろうことは容易に想像できます。

    東京、大手町の商社に勤めるOLの穂積裕希子は、すべてを賭けた愛に破れ心身ともにずたずたになっていました。その傷ついた心を癒すため会社を退職して、異邦の地の旅に出ようと思いました。

    海外へ出ると言っても、見ず知らずの外国へ一人で行くのは躊躇われたため団体旅行「エッセンス・ヨーロッパツアー」に参加したのです。22名の参加者の職種は会社社長、会社員、医師、弁護士、不動産業、スナック経営などと様々で更に3組の新婚カップルが含まれていました。

    訪問地はアテネからイスタンブール、ローマ、ナポリ、ベニス、フィレンツェ、チューリッヒ、ロンドン、パリと名だたる有名地を巡る豪華な旅でした。その旅の途中、新婚カップルの一人矢村時彦の身に奇妙な事が起こります。飛行機の頭上の荷物棚からウィスキーのボトルが落下し、イスタンブールでは博物館を見学している時、人の頭ほどの岩が落下してくる。スペイン広場ではヒッピーに襲われ辛うじて逃げ帰るなどと、次々に身に危険が起こります。

    当然、ツアー参加者の何者かが矢村に危害を加えようとしていることが想像され、一行は皆、心の中で犯人探しをし、それぞれが疑心暗鬼になってゆきます。自分はやっていないと主張する者や、あからさまに他人を犯人扱いする者。この人間たちの疑い合う姿を実に巧妙に書いています。これと同様の話に、舞台を雪の山岳地帯においた「恐怖の骨格」という作品が有ります。

    本作品のなんと言っても秀逸に構成されているところは、参加者22人には日本で起こした様々な過去があり、それが旅行先での出来事と22通りにリンクさせているところです。日本国内では殺人事件が発生し、これを捜査するのが那須警部です。那須氏は青樹社の編集長、那須英三氏のことで森村氏の恩人でもあります。名前を拝借して度々登場します。

    本作の特色としては、ヨーロッパを巡る国々の景勝地の描写を実に巧みに書いているところです。森村氏は他作でも地方都市などを舞台にする時には、よく実際に現地を取材に行きます。本作執筆にあたってもヨーロッパのこれらに地を取材に行っただろうことが覗えます。

    またヨーロッパの景勝地だけではなく、中世の歴史や美術品、絵画に関する解説もふんだんに散りばめられ、読んでいきながら一緒に旅行に同伴しているような気分にさせてくれます。

    これだけの長い旅の最中に多くの事件が次々と起き、それだけでも読んでいて楽しいものです。ラストは思いもかけない展開になり切ない気分にさせられます。本書はトラベル・サスペンスロマンであり、更にミステリーの要素も加え、更に更に日本国内の話は那須警部が登場した推理小説と多彩になっています。

    森村誠一氏の幅の広さが覗え、その筆力が十分に発揮された素晴らしい作品でした!
    森村誠一長編推理選集〈第12巻〉霧の神話,虹への旅券 (1977年)Amazon書評・レビュー:森村誠一長編推理選集〈第12巻〉霧の神話,虹への旅券 (1977年)より
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    No.5:
    (5pt)

    新妻の過去に固執し詮索するあまり、妻は記憶を過去も未来も失ってしまうという夫婦の悲しい話です。

    1974年8月に祥伝社から出版されました。本作品は女性週刊誌「微笑」に1973年4月から連載された作品です。硬質派作家、森村氏は前作の長編「星のふる里」で初めて女性向けのサスペンス小説を執筆して作風の範囲を広めました。女性向け週刊誌の次作にあたるのが本作品です。

    今まで大企業のエゴイズムと利益優先主義を痛烈に批判して、その社会から惨めに散ってゆく若者たちの姿を多く書いてきました。「暗黒流砂」では、その対象の矛先を政治家や官僚に向け世間の耳目を集めました。

    本作品は女性向け週刊誌の連載ということで読者のターゲットは女性に絞っていると言っても良いと思います。勿論、男性が読んでも十分楽しめます。魚住晋一は化粧品販売会社「ルネ・クレール」のトップ社員でした。上司の小野崎から縁談を持ち掛けられ、初めて会った草薙夕紀子に一目惚れしてしまいます。

    しかし、魚住は縁談より少し前に北アルプスを登山した時、浄土山の山腹の下りで一人の若い女性と会っていました。草野夕子と名乗りはしたものの登山装備もなく死に場を求めての山行だったことは明らかでした。魚住は夕子を助けました。強い日差しを避けるためサングラスを夕子に譲った魚住は雪盲にやられ、夕子の顔を霞の中でしか見ることが出来ませんでした。二人は無事に宿へ着き、命の有り難さを感じると一夜限りの深い関係を持ってしまいました。

    魚住は新妻、夕紀子と一緒に暮らすようになってからも夕子のことが忘れられませんでした。魚住は夕紀子と初夜の晩を迎えた時、夕紀子の体から生硬なものを、はっきりとは感じられませんでした。魚住は自分のことは棚に上げて夕紀子の過去に何があったか知りたくなってしまうのです。

    森村氏は他の作品でもそうですが、女性の処女性について非常に拘った表現の作品が多くあります。運よく処女を射止めた男子は妻女の過去を詮索することなく安穏な生活を送れるのに対して、そうでなかった男は妻の過去を詮索せざるをえなくなってしまいます。

    魚住は雪山の山荘で初めてを捧げてくれた草野夕子のことが忘れられず、夕紀子と容姿や背格好も良く似ていることから夕紀子の現実から逃避するために、夕子が同一人物ではないかと思い込み始めてしまうのでした。

    魚住は夕紀子の過去を探ります。その方法、手段は本作を読むうえでの面白みの一つでもあるので控えます。調べれば調べるほど疑いは多くなり、夕紀子も自分の過去を夫が調べようとしていることに気が付き始め苦悶します。

    記憶喪失を扱った小説は数多くあります。そのほとんどは記憶を失った主人公に、なんとか記憶を取り戻させようと苦労する人間と、それとは反対に記憶を取り戻されては困る人間が徐々に記憶を戻し始めたことに右往左往するという話は意外と多いと思います。

    しかし本作品は、男の滑稽なほどのエゴイズムにより妻の過去を詮索し過ぎた為に妻の記憶は霧のなかに消えてしまうことになるのです。どういう過程で記憶を失ってしまうかは本書の読み処でもあるので控えます。

    男の処女に対する固執によって、美しい女性は、過去と将来を失ってしまうという悲しい話です。当時の女性読者はどういう思いで読んだのかは分かりません。「星のふる里」は残された妻子が悲しい思いをする話でしたが、本作は夫の固執によって悲劇がおきてしまう話でした。
    霧の神話 (角川文庫 緑 365-23)Amazon書評・レビュー:霧の神話 (角川文庫 緑 365-23)より
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    No.4:
    (5pt)

    新妻の過去に固執し詮索するあまり、妻は記憶を過去も未来も失ってしまうという夫婦の悲しい話です。

    1974年8月に祥伝社から出版されました。本作品は女性週刊誌「微笑」に1973年4月から連載された作品です。硬質派作家、森村氏は前作の長編「星のふる里」で初めて女性向けのサスペンス小説を執筆して作風の範囲を広めました。女性向け週刊誌の次作にあたるのが本作品です。

    今まで大企業のエゴイズムと利益優先主義を痛烈に批判して、その社会から惨めに散ってゆく若者たちの姿を多く書いてきました。「暗黒流砂」では、その対象の矛先を政治家や官僚に向け世間の耳目を集めました。

    本作品は女性向け週刊誌の連載ということで読者のターゲットは女性に絞っていると言っても良いと思います。勿論、男性が読んでも十分楽しめます。魚住晋一は化粧品販売会社「ルネ・クレール」のトップ社員でした。上司の小野崎から縁談を持ち掛けられ、初めて会った草薙夕紀子に一目惚れしてしまいます。

    しかし、魚住は縁談より少し前に北アルプスを登山した時、浄土山の山腹の下りで一人の若い女性と会っていました。草野夕子と名乗りはしたものの登山装備もなく死に場を求めての山行だったことは明らかでした。魚住は夕子を助けました。強い日差しを避けるためサングラスを夕子に譲った魚住は雪盲にやられ、夕子の顔を霞の中でしか見ることが出来ませんでした。二人は無事に宿へ着き、命の有り難さを感じると一夜限りの深い関係を持ってしまいました。

    魚住は新妻、夕紀子と一緒に暮らすようになってからも夕子のことが忘れられませんでした。魚住は夕紀子と初夜の晩を迎えた時、夕紀子の体から生硬なものを、はっきりとは感じられませんでした。魚住は自分のことは棚に上げて夕紀子の過去に何があったか知りたくなってしまうのです。

    森村氏は他の作品でもそうですが、女性の処女性について非常に拘った表現の作品が多くあります。運よく処女を射止めた男子は妻女の過去を詮索することなく安穏な生活を送れるのに対して、そうでなかった男は妻の過去を詮索せざるをえなくなってしまいます。

    魚住は雪山の山荘で初めてを捧げてくれた草野夕子のことが忘れられず、夕紀子と容姿や背格好も良く似ていることから夕紀子の現実から逃避するために、夕子が同一人物ではないかと思い込み始めてしまうのでした。

    魚住は夕紀子の過去を探ります。その方法、手段は本作を読むうえでの面白みの一つでもあるので控えます。調べれば調べるほど疑いは多くなり、夕紀子も自分の過去を夫が調べようとしていることに気が付き始め苦悶します。

    記憶喪失を扱った小説は数多くあります。そのほとんどは記憶を失った主人公に、なんとか記憶を取り戻させようと苦労する人間と、それとは反対に記憶を取り戻されては困る人間が徐々に記憶を戻し始めたことに右往左往するという話は意外と多いと思います。

    しかし本作品は、男の滑稽なほどのエゴイズムにより妻の過去を詮索し過ぎた為に妻の記憶は霧のなかに消えてしまうことになるのです。どういう過程で記憶を失ってしまうかは本書の読み処でもあるので控えます。

    男の処女に対する固執によって、美しい女性は、過去と将来を失ってしまうという悲しい話です。当時の女性読者はどういう思いで読んだのかは分かりません。「星のふる里」は残された妻子が悲しい思いをする話でしたが、本作は夫の固執によって悲劇がおきてしまう話でした。
    霧の神話 (徳間文庫)Amazon書評・レビュー:霧の神話 (徳間文庫)より
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    No.3:
    (5pt)

    新妻の過去に固執し詮索するあまり、妻は記憶を過去も未来も失ってしまうという夫婦の悲しい話です。

    1974年8月に祥伝社から出版されました。本作品は女性週刊誌「微笑」に1973年4月から連載された作品です。硬質派作家、森村氏は前作の長編「星のふる里」で初めて女性向けのサスペンス小説を執筆して作風の範囲を広めました。女性向け週刊誌の次作にあたるのが本作品です。

    今まで大企業のエゴイズムと利益優先主義を痛烈に批判して、その社会から惨めに散ってゆく若者たちの姿を多く書いてきました。「暗黒流砂」では、その対象の矛先を政治家や官僚に向け世間の耳目を集めました。

    本作品は女性向け週刊誌の連載ということで読者のターゲットは女性に絞っていると言っても良いと思います。勿論、男性が読んでも十分楽しめます。魚住晋一は化粧品販売会社「ルネ・クレール」のトップ社員でした。上司の小野崎から縁談を持ち掛けられ、初めて会った草薙夕紀子に一目惚れしてしまいます。

    しかし、魚住は縁談より少し前に北アルプスを登山した時、浄土山の山腹の下りで一人の若い女性と会っていました。草野夕子と名乗りはしたものの登山装備もなく死に場を求めての山行だったことは明らかでした。魚住は夕子を助けました。強い日差しを避けるためサングラスを夕子に譲った魚住は雪盲にやられ、夕子の顔を霞の中でしか見ることが出来ませんでした。二人は無事に宿へ着き、命の有り難さを感じると一夜限りの深い関係を持ってしまいました。

    魚住は新妻、夕紀子と一緒に暮らすようになってからも夕子のことが忘れられませんでした。魚住は夕紀子と初夜の晩を迎えた時、夕紀子の体から生硬なものを、はっきりとは感じられませんでした。魚住は自分のことは棚に上げて夕紀子の過去に何があったか知りたくなってしまうのです。

    森村氏は他の作品でもそうですが、女性の処女性について非常に拘った表現の作品が多くあります。運よく処女を射止めた男子は妻女の過去を詮索することなく安穏な生活を送れるのに対して、そうでなかった男は妻の過去を詮索せざるをえなくなってしまいます。

    魚住は雪山の山荘で初めてを捧げてくれた草野夕子のことが忘れられず、夕紀子と容姿や背格好も良く似ていることから夕紀子の現実から逃避するために、夕子が同一人物ではないかと思い込み始めてしまうのでした。

    魚住は夕紀子の過去を探ります。その方法、手段は本作を読むうえでの面白みの一つでもあるので控えます。調べれば調べるほど疑いは多くなり、夕紀子も自分の過去を夫が調べようとしていることに気が付き始め苦悶します。

    記憶喪失を扱った小説は数多くあります。そのほとんどは記憶を失った主人公に、なんとか記憶を取り戻させようと苦労する人間と、それとは反対に記憶を取り戻されては困る人間が徐々に記憶を戻し始めたことに右往左往するという話は意外と多いと思います。

    しかし本作品は、男の滑稽なほどのエゴイズムにより妻の過去を詮索し過ぎた為に妻の記憶は霧のなかに消えてしまうことになるのです。どういう過程で記憶を失ってしまうかは本書の読み処でもあるので控えます。

    男の処女に対する固執によって、美しい女性は、過去と将来を失ってしまうという悲しい話です。当時の女性読者はどういう思いで読んだのかは分かりません。「星のふる里」は残された妻子が悲しい思いをする話でしたが、本作は夫の固執によって悲劇がおきてしまう話でした。
    霧の神話―長編推理小説 (Non novel)Amazon書評・レビュー:霧の神話―長編推理小説 (Non novel)より
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    No.2:
    (5pt)

    新妻の過去に固執し詮索するあまり、妻は記憶を過去も未来も失ってしまうという夫婦の悲しい話です。

    1974年8月に祥伝社から出版されました。本作品は女性週刊誌「微笑」に1973年4月から連載された作品です。硬質派作家、森村氏は前作の長編「星のふる里」で初めて女性向けのサスペンス小説を執筆して作風の範囲を広めました。女性向け週刊誌の次作にあたるのが本作品です。

    今まで大企業のエゴイズムと利益優先主義を痛烈に批判して、その社会から惨めに散ってゆく若者たちの姿を多く書いてきました。「暗黒流砂」では、その対象の矛先を政治家や官僚に向け世間の耳目を集めました。

    本作品は女性向け週刊誌の連載ということで読者のターゲットは女性に絞っていると言っても良いと思います。勿論、男性が読んでも十分楽しめます。魚住晋一は化粧品販売会社「ルネ・クレール」のトップ社員でした。上司の小野崎から縁談を持ち掛けられ、初めて会った草薙夕紀子に一目惚れしてしまいます。

    しかし、魚住は縁談より少し前に北アルプスを登山した時、浄土山の山腹の下りで一人の若い女性と会っていました。草野夕子と名乗りはしたものの登山装備もなく死に場を求めての山行だったことは明らかでした。魚住は夕子を助けました。強い日差しを避けるためサングラスを夕子に譲った魚住は雪盲にやられ、夕子の顔を霞の中でしか見ることが出来ませんでした。二人は無事に宿へ着き、命の有り難さを感じると一夜限りの深い関係を持ってしまいました。

    魚住は新妻、夕紀子と一緒に暮らすようになってからも夕子のことが忘れられませんでした。魚住は夕紀子と初夜の晩を迎えた時、夕紀子の体から生硬なものを、はっきりとは感じられませんでした。魚住は自分のことは棚に上げて夕紀子の過去に何があったか知りたくなってしまうのです。

    森村氏は他の作品でもそうですが、女性の処女性について非常に拘った表現の作品が多くあります。運よく処女を射止めた男子は妻女の過去を詮索することなく安穏な生活を送れるのに対して、そうでなかった男は妻の過去を詮索せざるをえなくなってしまいます。

    魚住は雪山の山荘で初めてを捧げてくれた草野夕子のことが忘れられず、夕紀子と容姿や背格好も良く似ていることから夕紀子の現実から逃避するために、夕子が同一人物ではないかと思い込み始めてしまうのでした。

    魚住は夕紀子の過去を探ります。その方法、手段は本作を読むうえでの面白みの一つでもあるので控えます。調べれば調べるほど疑いは多くなり、夕紀子も自分の過去を夫が調べようとしていることに気が付き始め苦悶します。

    記憶喪失を扱った小説は数多くあります。そのほとんどは記憶を失った主人公に、なんとか記憶を取り戻させようと苦労する人間と、それとは反対に記憶を取り戻されては困る人間が徐々に記憶を戻し始めたことに右往左往するという話は意外と多いと思います。

    しかし本作品は、男の滑稽なほどのエゴイズムにより妻の過去を詮索し過ぎた為に妻の記憶は霧のなかに消えてしまうことになるのです。どういう過程で記憶を失ってしまうかは本書の読み処でもあるので控えます。

    男の処女に対する固執によって、美しい女性は、過去と将来を失ってしまうという悲しい話です。当時の女性読者はどういう思いで読んだのかは分かりません。「星のふる里」は残された妻子が悲しい思いをする話でしたが、本作は夫の固執によって悲劇がおきてしまう話でした。
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