本日、サービスデー
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短編
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評判
本日、サービスデーの評価:
7.00/10点 レビュー 1件。 B ランク
本日、サービスデーの総合評価:
7.61/10点 レビュー 18件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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各作品ごとにレビューする。
『本日、サービスデー』
鶴ヶ崎雄一郎は小さな商社の文房具を扱う部門の課長で、毎朝朝食も摂らずに
少し無理して購入した家を出て、途中の立ち食い蕎麦屋で蕎麦をすすり、
会社まで片道二時間半かけて通勤する日々を送っていた。
それだけではなく、会社では競合にお得意先を奪われそうになったり、
年下の上司である岡島によって早期退職勧告を受けたり、家では家族に
ぞんざいに扱われ、気が滅入ったときにレンタル落ちのビデオテープの
古い映画を観ながら呑む発泡酒も一本に制限される始末だった。
ところがある日の朝。家族全員に見送られただけでなく、妻から五千円を
持たされ、電車の座席に座ることができ、しかもその両隣が美女で、
毎朝行く立ち食い蕎麦屋の店員も愛想良く接客するという幸運が連続する。
すると、鶴ヶ崎の目の前に自らを悪魔と名乗るビッチ系ファッションに
身を纏った女が現れ、『すべての人類には生涯にただ一日だけサービスデーが訪れ、
今日一日は鶴ヶ崎の番であり、人生で唯一幸運に恵まれる日である』と
告げられるとともに、神はサービスデーの存在やいつがサービスデーなのかを
告げることはないため、悪魔である自分が鶴ヶ崎に告げに来たのだという。
一方、悪魔の女と入れ替わりに二級天使ガブリエルと名乗る背広の男が現れ、
サービスデーがあることを知られてしまったことを詫びるとともに、
この幸運を変なことに行使しないよう一日中ついて回らせて欲しいと
依頼してくる――が前半のあらすじ。
九州へ向かう岡島を乗せた飛行機が墜落するという描写を通じ、
一見すると理不尽に見えることの裏にはそこに行き着くまでに何らかの
理由が存在するという教訓を描きたかったのだろうかと推察すると同時に、
本作執筆時においてこのエンディングはハッピーエンドだったのかも
知れないが、レビュー日現在において環境が変わり、必ずしもそうでは
なくなっていることに時の流れの儚さを覚える。
『東京しあわせクラブ』
元家電量販店の店員で、現在は新人ながらもいくつかの締め切りを抱える
作家となった主人公は、担当編集者から銀座のバーに勤める飛鳥という
女の子が主人公に会いたがっているという話を聞き、編集者とともに店を訪れる。
飛鳥と顔を合わせた主人公は、彼女から、以前主人公が文芸誌にエッセイで書いた、
強盗殺人事件の犠牲者となったスーパーの女性店員にとって最後の客となった
主人公が今でも保管している当時のレシートを譲って欲しいと依頼されるが、
珍奇な依頼の理由を質した主人公は、飛鳥から定期的に開催される
『東京しあわせクラブ』で披露したいからだと聞き、譲ることはできないが、
その集まりに同席することを条件にレシートを貸し出すことを承諾する。
後日、主人公と飛鳥こと佐藤英子は公民館で行われた『東京しあわせクラブ』の
会合に顔を出すが、そこで行われていたのは、子どもの虐待が行われた家の
表札や自殺した主婦が死の直前まで履いていたサンダル、太宰治が玉川上水に
入水自殺する際に使われていた紐、中堅女優の首つり写真といった、事件や
犯罪の痕跡を語る小道具を披露しあい、自分自身にそのような不幸が起きて
いない幸福をかみしめることだった――が序盤のあらすじ。
他人の不幸を見て自分でなくて良かったと安堵するさまは、気持ちは
分からなくもないが、それを差し引いても悪趣味であり、また、
他の参加者たちがこれらの物品をどうやって手に入れたのかを考えると
ある意味ホラーだったりする。
『あおぞら怪談』
語り手の大学時代、バイト先のお茶屋でともに働いていた日下部という男が
住む墨東の旧赤線地帯にある娼館を改装したアパートに、自らを『るり子』と
名乗る女性の右手首から先の幽霊が居着いており、日下部の留守中にるり子が
家事全般を担ったり、日下部が彼女のために買ってきたオロナインH軟膏が
いつの間にか使われていたりと、いつの間にか日下部とるり子は奇妙な同居生活を
送っていた。良好な関係を築いているとはいえ、このままでは日下部が生涯に
わたり呪われた一生を送るのではないかと懸念した語り手は、同じ大学で
女子大生霊能力者としてメディアに登場していた白瀬薫に相談を持ちかける
のだが――が本章のあらすじ。
タイトルのとおり、『怪談』ではあるものの、ストーリーの種類としては
コメディに近い。
『気合入門』
団地に住む少年を主人公とし、真夏であるにもかかわらずエアコンではなく
扇風機が使われている描写があることからおそらく舞台となっているのは次々と
団地が建設された高度経済成長期で、アメリカザリガニを意味するマッカチンを
特別な存在として描いていることから、まだこの頃は外来種である
アメリカザリガニよりも在来種であるニホンザリガニのほうが多かったという
ことを窺い知ることができる。
また、時代背景ならではの理不尽と、理不尽ゆえに早く大きくなりたいという
少年の姿が巧みに描かれている。
『蒼い岸辺にて』
気がつけばすべてが青みかかった世界にいた早織は、船頭によって自身が
自殺したことを知らされるとともに、もし自分が死ななかったらどうなって
いたかを知った彼女は――というストーリー。
ご都合主義的な話とも取れるが、自殺をするというのはある意味において
当たるかも知れない宝くじを買うことを放棄するようなものだということを
思い出させてくれる。