見知らぬ顔
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本書はウィリアム・モンク警部シリーズの第1作である。1850年代、クリミヤ戦争が終わった時代のロンドンで起きた事件の物語。 モンク警部が目が覚めたとき、彼は病院のベッドで横たわっており、すべての記憶を失っていた。自分の顔も名前もわからない。病院の看護人は一昨日おまわりが来てあんたのことをモンクといってたぜ。なにかしでかしたのかと聞いた。 そのあと上司のランコーンがやってきて三週間も経ったと告げ、仕事ができそうになったら署にもどるようにいう。仕事中に乗っていた馬車が事故を起こしたそうだ。 晴れた午後モンクは退院する。病院から返してもらった衣類は上等で持ち物の封筒には住所が書いてあった。下宿に入ると女主人が出てきて、帰ってきたことを喜んでくれ、温かい食べ物を出してくれた。見覚えが全然ない部屋の中を探して自分がなにものか考える。机の引き出しに妹からの手紙があったが、彼の手紙への返信でない。きっと高慢な自分は妹を無視していたのに違いない。住所を地図帳で調べて翌日モンクは妹の家に旅立った。妹夫妻のところで温かく迎えられて体力を回復する。 ロンドンに戻って警察に復職するとランコーンに未解決の難事件を担当するようにいわれ、部下のエヴァン刑事とともにグレイ少佐殺人事件を追うことになる。少佐は自室でひどい暴行を受けて死んでいた。 グレイ少佐は悪くいう者がいない明るい人柄だった。モンクは彼の生家を訪ねて母親や兄夫妻から話を聞く。 新しく出た創元推理文庫の「護りと裏切り 上下」で活躍するヘスター・ラターリィが関係者として登場し、モンクの捜査を助ける。 ヘスターは上流階級出身だが、父がグレイ少佐と関わる投資で財産を無くしたので、自分で働かねばならない。その事情も聞きモンクの捜査は進んでいく。 | ||||
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上流階級の女性に対する意識や、当時の階級社会が詳しく描かれており、興味深いです。ミステリとして入り組んだストーリーではありませんが、一つ一つの時事とを丹念に検証していく捜査にはリアリティがありました。ただ、決定的場面の記憶が蘇るのはいささか唐突な感がぬぐえませんが…….総じてじっくりと読書を楽しめる作品になっていると思います。 | ||||
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本書はヴィクトリア朝時代の、何とも歴史的味わい豊かな傑作であるだけではなく、思想的な深読みする楽しみもとても大きい。ウィリアム・モンクというこの男性主人公、記憶喪失である。もし、モンク警部が記憶を失っていなかったら、おそらくは自信過剰で嫌味なおじさんにすぎなかったのだろう・・・これはモンク本人が感じていることだ。実際、直属の上司がこうまでも彼を憎むのは、実は彼自身が傲慢な人間であったためだと認識せざるをえないのである。一から自分を作り上げ、自らを語りなおして、自分を生き直していく主人公の手探りの日々は、揺るぎない自我をもった近代的個人という概念が神話にすぎないことを明らかにする。かすかな記憶の断片をたよりに、彼は家族(妹)の存在にたどりつく。!!モンクにとってみれば、通常、自らの出自やアイデンティティに関わるとされる「家族」さえ自明の概念ではなく、偶然か幸運によって手に入るものとなった。本書は、男性の成長物語(ビルドゥングス・ロマン)のポストモダン的な書き換えかもしれない。「家族」、「近代的自我」は「自然」なもの、疑いようもなくすでにそこにあるものとして語られるけれども、実は、権力の磁場のなかで日々構築され、生成されるものであるというメッセージが、主人公の不安を通じて暴露されている。 | ||||
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