白き嶺の男
- 山岳冒険小説 (42)
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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20代後半の若き登山家、加藤武郎とそのパートナー久住浩志2人の登攀を綴った連作短編集。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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寡黙で純粋な青年。だが誰よりも山を知り天候を読むに長けていて、底知れぬ体力の持ち主。 私がこうあって欲しいと思う山男そのもので嬉しかった。 パートナーの久住との関係性もグッとくるものがあった。 が、ストーリーとしては山岳小説ではよくある内容。山岳小説を読み漁ってる者には「ふ~ん」という程度だと思う。 | ||||
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加藤武郎を主人公とした5つの物語と山岳ホラー「七ツ針」の6編の短編集。 我流で単独登山を続けていた加藤が、単独登山に限界を感じて、山岳会に入会。先輩に対して横柄な態度を取るようでいながらも、気遣っているようでもあり、掴みどころがなく、それでいて憎めない「新人類」。登攀技術はそれ程でもないが、体力は抜群で粘り強く、窮地にあっても飄々としている。 登山経験の豊富な作者ならではの山の情景描写や状況描写がすばらしい。 「白き嶺の男」 加藤が山岳会に入会してすぐの新人訓練山行での八ヶ岳雪山縦走の様子が、指導する田嶋の視点で描かれている。加藤の言動に苛立つ田嶋。二人パーティーで不仲になるという最悪の状況。田嶋にアクシデントが起こるが、その時、加藤が取った行動が面白い。 「沢の音」 これ以降に山行を伴にする加藤と久住浩志の出会いを描いた話。南アルプス西面の沢を研究フィールドとしている久住。目的の沢に入ると、誰もいないと思っていたのに人の姿を目撃する。それが加藤。同じ場所に幕営する羽目に。翌日、窮地に陥るが、加藤の用心深さに救われる。自然現象の説明が面白い。 「ラッセル」 山岳会の合宿で行われたヒマラヤのタクティクスによる厳冬期滝谷完全遡行。部員の西城の「あのような登り方で滝谷のグレードを落としてはいけない」との発言。その後、滝谷に向かった西城の死。久住と加藤は、二人だけで支援に頼らずに再挑戦する。ラッセルに苦しみ、雪崩に巻き込まれ、悪天候で待機を余儀なくされる。停滞中に書いた天気図から西城の意図を知る。天気が回復すると、加藤は久住に思わぬ提案をする。 「アタック」 東部ネパール7300m峰での遠征登山での出来事。遠征隊に参加しながらも、自分の求めている登山との違いを感じ、登頂へのこだわりを失う加藤の心情が描かれている。 「頂稜」 美しいスカイラインを持つ7800m無名峰での出来事。一次アタックに失敗し、ABCに戻った久住・加藤のもとに、別ルートで本峰の登頂を狙うアメリカ隊のスヴィエクという隊員が訪問し、ルートの情報提供を求められ、真意をはかりかねる二人。二人が再アタックの途中にもたらされたスヴィエクに関する情報。二人が登頂後に見たものは何であったか。 加藤の語る「何も残置したくない」という意味が奥深い。 「七ツ針」 厳冬期の七ツ針(架空の山と推定される)を縦走中に遭難し、雪洞の中で書かれた記録形式の文章。幻覚なのか、夜になると別の存在が現れて話しかけ、「忘れ物」をしていることを告げる。一緒に縦走し、別れた加瀬との関係が綴られていく。最後に思いがけない事実が判明する。 | ||||
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先輩登山家が若い登山家を鍛えるつもりが、若い登山家に逆に助けられてしまう最初のストーリーからグイグイと引き込まれた。 読見続けるにつけだんだんとその若い登山家が加藤文太郎と重なってきた。 谷甲州氏が思う加藤文太郎ではないだろうか? 中高年になってから山行を始めた私にとっては新鮮そのものである。 面白い!お勧めの本です。 | ||||
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本書は’96年の「新田次郎文学賞」受賞作である。本書は宝探しやテロリストとの戦いや、囚われの身からの脱出行や、山中に逃げた敵の追跡行の物語ではない。純粋に「山登り」そのものを題材として、限界の中で死と向かい合い、山に人生を賭ける男たちの熱い想いを描いた数少ない本格的な「山岳小説」である。本書は6つの短編のうち5つまでが、類稀なる体力と判断力、そして登攀の技術をもつ加藤武郎を主人公にした連作短編集である。彼は作品を追うごとに伝説のクライマーとなる。活動のフィールドも、日本の山々からヒマラヤへと広がっていく。著者自身登山家であり、7077メートルのヒマラヤのピークに立った体験があるという。豊富な山岳経験に裏打ちされた雪山のシーンなど細かい書き込みも真に迫っていて臨場感があった。ワクワク・ドキドキといったストーリー展開の妙やサスペンスといったものは無いが、そこには自分自身や仲間たちに対する様々な試練や葛藤を経て、雪山にかける、静謐でありまた壮絶な男のロマンが溢れていた。 | ||||
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「山に登る」こと自体を目的として知力と体力を振り絞って登山に挑む男たちの物語だ。膨大な時間と金を費やすこの趣味を「趣味」と言っていいのかどうか躊躇してしまう。気楽に楽しめるようなものでは決してない。生命の危険すら常にある★細かいディテールの書き込みがうれしい。ツェルトでビバークしたときに食うのは餅入りのラーメンだとか、雪を溶かして水を作るがなかなか溶けないとか、鉈で薪を集めて燃やすのは登山家のマナーに反するんだとか★単に登頂するのではなく、わざわざ登りにくいルートと季節を選んで登りたがる登山家という人種にまったく共感はできないが、自分の知らない世界を疑似体験した気がして、非常に楽しめた。 | ||||
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