エリコ
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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いやあ、いいね、この世界観。大友克洋氏の『アキラ』に通ずるものがある。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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日本SFの大傑作になりそうな展開だったのである。 もと男性の娼婦エリコが、自らのクローンに出会い…という舞台の22世紀の日本はまるで別世界で、現実の日本国の延長にあるとも思えない異国になっている。 現在ではいえばいくぶんか東南アジア的な猥雑さのある異質な硬さで、これは著者谷甲州の世界観の投影だろう。 サスペンスとして上手く運ぶのだが、(少しバレないようネタバレしますと)クローンの持つ「家系」的な要素が出て、「子孫」にあたる男の子のまっとうな成長物語、あるいはこれこそ谷甲州的な「男になる」話になっていく。 主人公エリコは30にもならないお年でこんなご立派なお孫さんが…というのは代理母だのが入り乱れれば、無理なく構築できるのであるが、ここに二つの欠陥があり ①主人公エリコが大活躍するサスペンスSFと思いきや、子孫クローンが存在を主張して、このクローンの性的成長をふくめた少年の物語が後半、膨張した ②サスペンスの要素から、ちょっと吉田秋生「BANANA FISH」が養父ディノ・ゴルツィネと養子アッシュ・リンクスの「父子の相克」でもあるように、ホームドラマというには深刻だし陰惨でもあるが、そうした物語全体の矮小化が見られる。 よく考えると、この「子孫とともに冒険」は、ハインラインのラザルス・ロングものの「落日の彼方に向けて」で、主人公ラザルスとその母として、また川原正敏「海皇紀」ファン・ガンマ・ビセンとその母マリシーユ・ビセンの関係(これらは主人公が子孫で、エリコは母サイドが主人公になるけれど)と類似の設定と構造になる。 このため、面白いし興味深い題材だが、物語としては失敗に終わったと思う。 もうちょっと設計によっては日本SFのベストテンに出てきてもおかしくない題材だと思うだけに、心から惜しい。 筒井康隆が大江健三郎「同時代ゲーム」について評したように「失敗作であることさえ無視すれば、傑作」が、あてはまる「影の傑作」。 でも、今もこの作品のファンですけれども。 | ||||
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