エリコ



    ※タグの編集はログイン後行えます

    【この小説が収録されている参考書籍】
    オスダメ平均点

    7.00pt (10max) / 1件

    7.00pt (10max) / 1件

    Amazon平均点

    3.00pt ( 5max) / 1件

    みんなの オススメpt
      自由に投票してください!!
    0pt
    サイト内ランク []C
    ミステリ成分 []
      この作品はミステリ?
      自由に投票してください!!

    0.00pt

    38.00pt

    0.00pt

    62.00pt

    ←非ミステリ

    ミステリ→

    ↑現実的

    ↓幻想的

    初公開日(参考)1999年04月
    分類

    長編小説

    閲覧回数1,056回
    お気に入りにされた回数0
    読書済みに登録された回数1

    ■このページのURL

    ■報告関係
    ※気になる点がありましたらお知らせください。

    エリコ (上) (ハヤカワ文庫 JA (686))

    2002年01月01日 エリコ (上) (ハヤカワ文庫 JA (686))

    22世紀。無国籍都市・大阪。美貌の高級娼婦、北沢エリコの身辺にせまる奇怪な陰謀の影に潜むものは? 生物工学の先端技術による改造人間やクローンや疑似人格までが入り乱れ、謎が謎を呼び、猥雑と戦慄がからみあう、嗜虐と倒錯の近未来バイオサスペンス。(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

    エリコの総合評価:6.50/10点レビュー 2件。Cランク


    ■スポンサードリンク


    サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

    新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    アニメ化に相応しい世界観とキャラ

    いやあ、いいね、この世界観。大友克洋氏の『アキラ』に通ずるものがある。
    谷氏のSF小説は初めて読んだが、実に躍動感があり、物語世界の構築がしっかりしている。山岳冒険小説よりもこちらの方が好みだ。映像化するなら押尾学、マンガ化するなら、士郎政宗氏か先に挙げた大友克洋氏あたりだろう。

    何よりも登場人物が非常に魅力的だ。
    男から性転換したエリコを筆頭に、類い稀なる怪力を誇るエリコの幼馴染みでルームメイトの女、胡蝶蘭(カチョーラス)。20世紀から生きているという噂のある情報屋、源爺。姑との軋轢であえて老婆に変る手術を受けた30歳の“老婆”、咲夜姫。長髪で中性的な容貌を持ちながらも、強引な捜査で危険の香りを漂わせる刑事、愛甲ヨハネ(これはいささか少女マンガ趣味ともいえるが)。エリコのクローンでありながら、残虐な貌とかつての弱かった男性時代の性格を併せ持った慧人ことワイレン。倒錯性交ショーの司会者でありながら、エリコを支援しつつ、寺尾医師との愛に身を投じるミズ・ヤンことシャオチン。風体の上がらぬ風貌で、ぼやきを呟きながらも警察たちを出し抜く探偵、棚橋。
    彼らに加え、動物の組織を埋め込む違法な手術を受けた改造人間(フリークス)が横行する。サイの角と怪力を移植された一角獣。犬の鼻と脳を移植された殺し屋、などなど。
    そして舞台は大阪、上海、東京から月面研究都市クラヴィウスと移っていく。

    谷氏の描く未来像は派手派手しくなく、淡々と描写するからすっと頭に入っていくように感じた。月面へ降り立つシーンからクラヴィウスの景観など、よくある作者独自の逞しい想像力で構築した未来テクノロジー理論を熱く語り、どうだ、すごいだろうといわんばかりに読者をその世界観に引き入れようといった肩肘張った印象がなく、そこにあるかの如く語る筆致には好感が持てた。これは数多存在する少し先の未来を描いた映像が横行しているおかげなのか、それとももはやここに書かれていることが絵空事でなく、そう遠くない未来であるように認識できているからかもしれないが。

    この物語において一番意表を突かれたのは主人公エリコ、その人だ。男から性転換した娼婦という設定ならば、通常は美人でありながら腕っぷしも立つ、そう田中芳樹氏のシリーズキャラクター、薬師寺涼子のようなイメージを抱いていたが、谷氏はあえて逆を行った。北沢慧人という男でありながら女性として生きる道を選んだエリコは、虐げられていたひ弱な過去と、どこか自分が普通とは違う違和感に対して正直に向き合った結果であり、女性となり、類い稀なる美貌と絶妙なプロポーションを持ちながらも、逆に元男ということで美女に対して引け目を感じるようになっているのだった。

    なるほど、そういえばそうなのかも知れない。男として劣っている事を認め、女性になる事を決意したエリコはいわば、逃避者なのだ。
    そして見た目も心も女でありながらも、やはり女ではないことに時折気付かされ、心を痛める。その痛めた心を癒す拠り所は男勝りの腕力を誇る女性、胡蝶蘭の豊満な胸の中に抱かれるその時なのだ。これこそエリコの不完全さを表している。女性でありながらも女性の母性を求める、このアンバランスさはどうだろうか。

    谷氏はあえてエリコを強いキャラクターとして描いていない。元男でありながらも華奢なその体はあらゆる敵から自分の身を守る術を知らない。胡蝶蘭、愛甲ヨハネ、シャオチン、棚橋らの助けがなければ全然苦難を乗越えられないのだ。
    しかし、物語の終盤、エリコは自分が完全に女性になった事に気づく事で強さを得る。それは正に「母は強し」ともいうべき、精神的強さだ。男が完全に男を捨て去った時に強くなる。本書はエリコにこういう設定を持ってきたことが非常に特徴的なのである。

    そして物語の後半に現れる巨敵、弘田という政治家。極端な選民主義者であり、他者を自分の野望を達成するための道具としてしか見ない男―家族までもだ!―。その男が唱えるスローガンに美しい日本人を目指すというのがあり、非常によく似た人がいることに気付き、苦笑した。1999年に書かれた本書において谷氏はこういう政治家が数年後に出てくることを予想していたかのようだ。

    最後に、本書に出てくる「クラヴィウス事例」なる設定について。
    端的に述べれば、月面都市に移住した各国の子供たちの中で突出した才能を発揮し、リーダーシップと執るのが日本人だというのがこの事例の内容だが、これはなかなかに面白い。過去の歴史と現在の世界を振り返れば、世界に散らばり、成功しているのはユダヤ人と華僑と云われる中国人であるのだが、ここで敢えて谷氏は月面で力を発揮するのは日本人とした。
    私はこの設定を読んだ時に、ある話を思い出した。日本人というのは西から流れて最後に極東の地に辿り着く事が出来た民族だから強いのだという説があるそうだ。山岳登山家でもある谷氏がたびたび極限状態に陥ったときに垣間見た日本人の粘りとか強さなどもこの設定には反映されているのかもしれない。

    Tetchy
    WHOKS60S
    新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
    未読の方はご注意ください

    No.1:
    (3pt)

    もと男性の娼婦、子孫とともに大冒険!

    日本SFの大傑作になりそうな展開だったのである。
     もと男性の娼婦エリコが、自らのクローンに出会い…という舞台の22世紀の日本はまるで別世界で、現実の日本国の延長にあるとも思えない異国になっている。
     現在ではいえばいくぶんか東南アジア的な猥雑さのある異質な硬さで、これは著者谷甲州の世界観の投影だろう。
     サスペンスとして上手く運ぶのだが、(少しバレないようネタバレしますと)クローンの持つ「家系」的な要素が出て、「子孫」にあたる男の子のまっとうな成長物語、あるいはこれこそ谷甲州的な「男になる」話になっていく。
     主人公エリコは30にもならないお年でこんなご立派なお孫さんが…というのは代理母だのが入り乱れれば、無理なく構築できるのであるが、ここに二つの欠陥があり
     ①主人公エリコが大活躍するサスペンスSFと思いきや、子孫クローンが存在を主張して、このクローンの性的成長をふくめた少年の物語が後半、膨張した
     ②サスペンスの要素から、ちょっと吉田秋生「BANANA FISH」が養父ディノ・ゴルツィネと養子アッシュ・リンクスの「父子の相克」でもあるように、ホームドラマというには深刻だし陰惨でもあるが、そうした物語全体の矮小化が見られる。
     よく考えると、この「子孫とともに冒険」は、ハインラインのラザルス・ロングものの「落日の彼方に向けて」で、主人公ラザルスとその母として、また川原正敏「海皇紀」ファン・ガンマ・ビセンとその母マリシーユ・ビセンの関係(これらは主人公が子孫で、エリコは母サイドが主人公になるけれど)と類似の設定と構造になる。
     このため、面白いし興味深い題材だが、物語としては失敗に終わったと思う。
     もうちょっと設計によっては日本SFのベストテンに出てきてもおかしくない題材だと思うだけに、心から惜しい。
     筒井康隆が大江健三郎「同時代ゲーム」について評したように「失敗作であることさえ無視すれば、傑作」が、あてはまる「影の傑作」。
     でも、今もこの作品のファンですけれども。
    エリコ (下) (ハヤカワ文庫 JA (687))Amazon書評・レビュー:エリコ (下) (ハヤカワ文庫 JA (687))より
    4150306877



    その他、Amazon書評・レビューが 1件あります。
    Amazon書評・レビューを見る     


    スポンサードリンク