天を越える旅人



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初公開日(参考)1994年07月
分類

長編小説

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天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)

1997年04月01日 天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)

チベットの少年僧ミグマは、くりかえし不思議な夢を見た。雪山の頂で死を待つ夢だ。それが自分の前世の姿かもしれないと高僧から告げられ、ミグマは遙かな過去をさぐる旅に出る。やがて、前世がシェルパであったことを知った彼は、この世界の秘密が隠された曼陀羅へと導かれていくが―輪廻とは?情報とは?宇宙とは?壮大な物語のなかを主人公とともに彷徨う間に、新しい世界観が目の前にひらけていく山岳幻想巨篇。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

天を越える旅人の総合評価:8.17/10点レビュー 6件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

最も神の高みに近づく場所は神秘に満ちている

登山家でもある作者が、登山の時にどうしても感じてしまう神々の存在について著したかったと思われるのが本書。人の生死を左右する極限状態の中、昨日まで、いやつい10分前まで冗談を云い合っていた仲間がクレパスに落ち、ザイルが切れて落下し、物云わぬ屍と化す。かと思えば、絶対助からないだろうと思われる強烈な雪崩の中に巻き込まれながらも、九死に一生を得て生還するようなこの世界、明らかに神の配剤なるものを感じずにいられないのだろう。
ミグマというラマの修行僧を通してまずは曼荼羅に記されたこの世の真理を説き、生死の境で相見える山に住まう神々の存在を知った者たちを通して登山と神との関わりを幻想文学の形で描く。

読中、頭をしきりに過ぎったのは坂東眞砂子氏の『山妣』だ。『山妣』で語られる山神の厳しさは山に敬意を払わない者には鉄槌を下すが、山と共存する者には糧を供給し、異形の者でさえ受け入れる懐の深さが感じられたものだが、谷氏が本作で描く山ヤシュティ・ヒマールは、異世界への通廊を守るために何人(なんぴと)たりとも受け入れない冷徹さがあり、登頂を目指すミグマをあらゆる手法で追い詰める。
もちろん『山妣』とこの作品では日本の山とヒマラヤの山という高さ、急峻さ、自然状況の過酷さの違いはあるだろうが、同じ雪山を舞台にして、これほどまでに違いがあるのかという思いがあった。

しかし、その違いも確かに解る。前者はその雪山を生活の場にしている者達の物語であるのに対し、後者は雪山を登山の対象にしている、つまりそこに住まう期間が非常に短いのだという所にある。
登頂という目的―本作では単純に登頂のみを目的とはしていないが―を達成するために山の気候、形状はその目的を阻害する敵以外何物でもなく、打ち克つべき存在であるのに対し、生活の空間としている者にとってはその過酷さまでも運命として受け入れ、共存していかなければならない存在であるからだ。
しかし、やはり両者に共通するのは、山には神がいるという感覚だ。前にも書いたが、それぞれ人間の死を左右するのに神の悪戯としか思えない不思議な偶然を感じ、またそれを否定しない。根底に流れるのは同じなのである。

本作は同じヒマラヤの登山を舞台にした『遥かなり神々の座』とはガラリと違い、チベットの修行僧を主人公にしたヒマラヤの登山を通して世界の真理を知るという物語であり、主人公ミグマは幽体離脱と、前世回帰を繰り返し、魂の旅路を繰り返す。彼の前世であるナムギャルが果たせなかった世界の中心を司るメール山(須弥山)の登頂を目指し、そこにあるという世界の真理を知る扉を目指すのだ。
その目的を果たすため、ミグマは曼荼羅の謎を解き、更には転生を繰り返す自らの魂の原初となる詩人ミクラパまで魂を遡る。もはや物語において時間や空間といった概念は無意味である。更にミグマは登山家としての経験を物質世界でも積む。

何ともまあ、壮大な物語だ。
物語は更に思弁哲学の様相が濃くなりやがて相対性理論に行き着く。それも西洋数学の知識に基づくのではなく、仏教的世界観を以って、そこにアプローチしていくのが面白い。

そしてミグマが垣間見る異世界への通廊には、世界を統べる法則が全く異なった世界だ。それは私達の世界で理論として確立している万有引力の法則や量子力学なる物がそれぞれの宇宙では全く異なった理論で形成されていると述べているのだ。
これは作者の意見なのか、どこかの学者が述べた理論なのか、寡聞にして知らないが、この箇所を読むに当たり、我々の論理では宇宙の謎は解けないのではないかという思いを強くした。この考えに同調する自分がある。我々人間の描く尺度を全く越えたところに宇宙は存在し、かつ機能している。

作中、山の神としてミグマが乗越えるべき存在として立ちはだかる大いなる存在ヤクティは、それ相応の知識・経験を備えていない者に対して非常に排他的に振舞う。
これはこの非常に思弁性に富んだこの作品を書いた作者の、解る人だけに解ってもらえればいいという態度そのものなのかもしれない。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.5:
(5pt)

迅速でした。

綺麗な古書でした
天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)Amazon書評・レビュー:天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)より
4150305781
No.4:
(4pt)

死者の書は実用書、ではこれは?

チベット死者の書を下敷きに、と単行本の帯に描かれてたんですねえ。知りませんでした。
 死者の書(訳書)は、用語こそ仏教的な概念に基づく理解力を要しましたが、書いてあることは全く仏教的ではなく、いかに上手に成仏、または望む世界に転生するかを説いたハウツー本でした。最低、輪廻転生を是とする死生観が共有されていなくてはいけないものの、読み手としては成仏転生これ一冊!な内容(笑。

 さて、本書ですが、仏は偉大、信じるものは救われるといったような描写は全く無し、無縁です。
 死を語る道具として仏教感覚的理解を用いる死者の書同様、宗教的観念は、本作でも共通して説明に便利な道具たちに過ぎず、面白い共通項かなと思います。
 読者は主人公と共に、幾度もの肉体的な死を超え、瞑想における演算器としての曼陀羅を体感し、禁地である高々所での魂の束縛(登山家ならではの恐怖感なのかな)を解放し、ようやく辿り着くゲートの先に見える何かを見聞します。

 後半に向けて迫力とスピードを増し、読者を引き込むこの物語。ぜひお試しください。
天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)Amazon書評・レビュー:天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)より
4150305781
No.3:
(5pt)

一人の少年僧の転生の物語から宇宙の成り立ちへと。

チベット仏教をベースにして、一人の少年僧が繰り返し見る夢の秘密をたどる内に、壮大なスケールとなっていくこの物語、以前一度読んで手放したが、また読みたくて手に入れた。

山岳雑誌に連載された関係で、高山の登山についての描写が多く、全く知識のない私にはなじめない部分もあったが、その中で進んでいく物語には大いに惹かれた。チベット仏教の転生が関わる長い長い過去からの物語。そしてラストは宇宙の成り立ちにまで話が広がっていく。
天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)Amazon書評・レビュー:天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)より
4150305781
No.2:
(2pt)

山岳小説のようなSFのような宗教小説?

一言で言えば山岳小説、SF、宗教小説(?)の融合でしょう。
非常に意欲作だし、前半部分の登山描写はさすがだと思いますが、後半部分は宗教色が強くていまいちなじめなかった。
天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)Amazon書評・レビュー:天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)より
4150305781
No.1:
(5pt)

せんすおぶわんだー

SFを知る諸氏には、陳腐なタイトルを付けてしまった事をお詫びする。
山岳と宗教と科学とSF、如何にもありそうな組み合わせでありながら
作者の直向きな生真面目さが、自身の言葉だけで一つ世界を構築して
みせたこの作品は秀逸である。
飛翔という言葉がこれほど相応しい本書と作者に、惜しみない賛辞を
捧げる。
天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)Amazon書評・レビュー:天を越える旅人 (ハヤカワ文庫JA)より
4150305781



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