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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数236件
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何やらシリーズの2作目のようです。短篇集です。
主人公の探偵役が、例えばエッシャーの絵画が現実化された世界といった異世界に迷い込んだり、或いは過去のある人物に憑依(?)したりして、そこで起こる事件を解決するといったかなり特殊な設定になっています。 シリーズ1作目を読んでいない私にとっては最初何が起こっているのか理解するのに苦労させられる事になりました。 一見西澤保彦氏的なノリなのですが、読みやすさという点では惨敗です。 絵画や特殊な構造をした建物を扱っている割に、その描写の殆どが文章のみなのではっきり言って解りにくいのです。 読み手にトリックを気付かれないようにするため意図的に解りにくくしているのではないかと勘ぐりたくなるほどに解りにくいです。 読み切るのに気合と時間を要する作品です。マニア向けと言えるかもしれません。 考えついたトリックを成立させるために何よりも先に物語の背景となる特殊な舞台を構築させる。それが最優先。 そしてその部分に傾倒しすぎるがために、肝心の物語の方に必然性というかドラマ性が欠けてしまっているように思えてなりません。 理詰めで堅苦しすぎるんですかね。 オチの方も、眉間にしわを寄せながら読んだ割にがっかりするものが多かったです。 こういう評価は多分に、この読みづらさ、どこかストレスを感じながら読んでいた事が影響しているように思います。 読了後改めて考えてみるとそこまでがっかりするような内容でもなかったですから。 |
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アイデアは面白いし、プロットも非常に練られているレベルの高い作品だと思います。
ただ評価が余り高くないですね。でもそれも何となく分かる、そんな作品です。 第一幕の殺人における動機云々を言う方が多いですが、私にはこのプロットを考えるならこの動機はすんなり受け入れられます。 ポアロが苦戦したこの動機ですが、今読めば推理できた人も多かったのではないかと思います。 そんな突飛な動機だとは思いません。 私にとって問題だったのはこの作品におけるポアロの立ち位置でした。 戯曲風にアレンジされた凝ったプロットで、ポアロを完全に脇役へと押しやる必要があるのはやむを得ません。 主要登場人物の一人である女性からは完全に邪魔者扱いされてましたしね。 ただそれによりポアロの登場頻度が極端に減っているのですよ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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16年前に起こった殺人事件をポアロが関係者の証言から推理する物語。
犯人として逮捕されたのは依頼者の母親で既に獄中死している。 関係者=容疑者は5人。その5人をマザーグースの「五匹の子豚」に例えているという事なのだろうが実際それ程関係なかったりする。 物語の大半が、5人の容疑者に対するポアロのインタビューと、その5人が事件当時を回顧して記した手記となっている。 真犯人である一名を除いて故意に嘘をついたりはしていない。 面白いのは、容疑者5名は何れも誤認逮捕された依頼者の母親に近しい関係であったにもかかわらず、その思い描く人物像がそれぞれ全く異なっているという事だろう。 しかし、描く人物像こそ違えど依頼者の母親が犯人である事に誰もが疑いを持っていないのである。 この5人の同じベクトルを示していそうな主観を、ポワロが客観的にぶった斬りその盲点を突くのである。 これは面白い。 誤認逮捕された母親の振る舞いなどを考えても、5人の中に真犯人がいるのならあの人しかいないと多くの読者が予想したはずだが・・・ さすがクリスティって感じですね。 |
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この作品はクリスティの2回目の結婚までの半生をわかった上で読む作品であると思います。
「無理ありすぎて」なのか「無理があるけど」かはそこで分かれる気がします。 クリスティが考古学者である再婚相手と初めて出逢ったのがメソポタミヤ地方の某遺跡発掘現場であり、出逢ってその年に結婚しています。 この作品にはヘイスティングズは登場せず、その代わりに物語の語り手として登場するのが元看護婦の女性なのですが、遺跡発掘調査隊という俗世間とはかけ離れた一風変わった集団を客観的に語ったりします。因みにクリスティは元看護婦ですね。 この作品が再婚半年後に描かれた事、と言うより、このような作品を描く事自体、相当浮かれた状態だったのかなと想像して笑えてしまいます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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性同一性障害をテーマにした物語・・・なのか?
私は性同一性障害については何も知らないし理解も出来ない。この作品を読了した後もそれは変わらなかった。 ウィキペディアより引用すると性同一性障害とは「何らかの原因で、生まれつき身体的性別と、性同一性に関わる脳の一部とが、それぞれ一致しない状態で出生したと考えられている」らしい。 だったら、この作品におけるキーパーソンと言える女性?は性同一性障害とは言えないのではないか? 性同一性障害やらトランスジェンダーやら難しい専門用語が数多く登場します。 似ているようで違うんでしょ?これ。 何となく意味は分かっていても、実際正確にどこまでの範囲が性同一性障害或いはトランスジェンダーとして定義されているのか境界線がどこなのか理解できないでいました。 興味のない私には難しすぎた。 東野さんのこの手の作品の場合、間違いなく「深い」のは分かっている。 ただ作品テーマの根幹となる部分に対してこんなあやふやな状態では「まともには読めんな」と感じながら読んでいました。 多分、その「深さ」に到達することは出来ないだろうな~と思いながら読んでいました。 予感は的中するのですが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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クイーンの国名シリーズ第一弾。
シルクハットのことをローマ帽子というのかと思っていたら違った。 舞台もローマじゃなくてアメリカだし・・・いきなり異議ありじゃないかこれは。 発生する事件はたった一つ。 そして推理展開の起点となるのは「何故帽子が消えたのか?」 前提から次の前提を導き・・・それの繰り返し、そして最終的に必然的な結論を導き出すという極めて論理的な展開を魅せます。 途中に納得出来ないような論理の飛躍もなく、非常に分かりやすいです。 これぞ「The推理小説」という感じで「序盤は」かなり楽しめました。 ただ全てを台無しにしてしまったのが、おなじみの「読者への挑戦」・・・というより「読者への挑戦」以降の種明かしなのです。 因みに私が手に取ったのは創元推理文庫旧訳版。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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まず刺客を外国人女性にしたのは、いくら超人とはいえ日本人女性ではあのような芸当を行わせるのに無理があるということでしょうか。
作中の彼女は日本語が話せないだけでなくまるで原始人、無知すぎるのだ。タランチュラという呼称こそあるものの何しろ彼女の名前すら出てこない。 おかげで彼女の心の内を読み取る事が出来ないどころかそのような描写すらない。 さすがに読中、彼女に感情移入できる人はいないだろう。 「(心のない)殺戮マシーン」として読ませるには効果的だったのかもしれないが、その割にスリルという点でもイマイチだったかな。 追われる側に肩入れする読者の方が多いかなとは思いますが、私の場合は過去の過ちを隠蔽しようとするアスリート達にも感情移入できませんでした。 結局どちらのサイドにも立てず、ただ事の成り行きを見守っているだけって感じでした。 ラストでタランチュラが抱えている思いのひとつが明らかにされます。 作者としては、ここで逆転という目論見だったのでしょうが、追われる側に嫌悪感を持っていた自分には効果なしでした。 追われる側に肩入れして読んでいたとしても弱いかな。 最後のどんでん返しが得意な作者であり、これまでに何作も驚かされてますからね。この程度では・・・という感じです。 もっと追われる側に肩入れできるような工夫が必要だった気がしますね。 |
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ヘイスティングズ曰く「ポアロの失敗談」のひとつらしい。
これまで読んだシリーズ作品では、「実は早い段階で分かっていたのですよ、モナミ」的な発言が必ずと言っていいほど見られました。 確かにこんな試行錯誤を繰り返すポワロは珍しいのかもしれませんね。 驚くことに、最後まで読むと、最初に真逆の推理を披露しているんですよね。 ただこれが強烈なミスリードになって最後まで立ちはだかるはずです。ポワロが排除した人物が犯人であるはずはないのですから。 ポワロの失敗は読み手にとって強烈なミスリードとなります。 このシリーズ、全て読んだ訳ではありませんが、この手法を使えるのは1回こっきりでしょう。 余り評価の高い作品ではないようですが、個人的にはシリーズにおいても貴重な作品ではないかと感じます。 また確か物語序盤で語り手であるヘイスティングズのさり気ない「この人に会うのはこれが最後だった」的なセリフがあったはずです。 ラストの大団円にもその人物は同席しないという事です。よもやそんな人物が犯人だとは思いませんからね。 ポワロとヘイスティングズがグルになって読み手を騙すという後にも先にもない作品ですよ。 面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルである「殺人の門」をくぐれた者だけが殺人を犯す事が出来る。
で、「殺人の門」をくぐるとはどういう事なのかという話である。 主人公は言ってみればお人好し。まさに坂道を転げ落ちるという表現がピッタリの人生を余儀なくされ、少し上向いたかと思えばまた転がり落ちるの繰り返し。 その裏には常に、主人公を「踏み台」として生きる事を選択した友人の存在があり、まさに運命の糸で結ばれた関係。 題材的にも作者にとって意欲作ともいえる作品と思えるのですが、正直楽しく読める作品ではありません。 どこか道尾秀介さんが得意とするテーマかと思うのですが、やはりこのテーマを描き切るという意味では道尾さんには及ばないという印象を持ちました。 やはり軽いのです。テーマこそ重いのですが東野さんの場合、それでもリーダビリティがいいのです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ポアロシリーズの2作目。
ポアロシリーズは知名度の高い作品を先に読んでいるため、評価がそれらに追い付く事はまぁないなと思いながら読んでます。 それにしてもかなり違和感の残る作品でしたね。これまで読んだ作品と比較してという意味ですが・・・ プロットは凝っているというかかなり複雑です。クリスティにしては珍しい?初期の作品の傾向なのかな? 最終的な真相から読者を欺くために色々小細工し過ぎに感じました。 特に2番目の事件の被害者の存在などはかなり都合が良すぎますかね。 また、ポアロに敵対心丸出しで挑んでくるジローという名の刑事が登場するのですが、ポアロに一泡吹かせそうな印象をまるで持てませんでした。 単なるポアロの引き立て役でしたね。 彼の導き出した推理は「猟犬」と評された彼の捜査スタイルからかけ離れたものでしたし、理論だった推理を展開する事もなしです。 またこの作品は、クリスティによくある最後関係者全員を集めての大団円がありません。 いつ始まるのかと思っていたら終わっていたという印象で、ジロー株暴落の描写がないのにもがっかり。 しかし、ポアロがジロー刑事に挑発されて、ヘイスティングズと二人きりの時に本音爆発、張り合う描写はあるという・・・ ポアロってこんな小さい奴だったのか?ポアロの株を落としてどうする。 まぁ何れにせよポワロとの対決として用意されたキャラクタだとしたなら、思い切り失敗ではないでしょうか。 そして、この作品のヘイスティングズはワトソン役という枠を大きくはみ出しており余計な事をし過ぎです。 ヘイスティングズの恋愛模様も見どころですといったレビューも見受けられますが、私はちょっと・・・ 殺害現場がたまたま建設中のゴルフ場であったというだけでゴルフ場である意味は全くありませんしね。 |
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「放課後」に続く東野圭吾の学園ミステリー第二弾で加賀恭一郎初登場の作品になる。
大学4年生なので阿部寛に置き換えて読むのはかなり困難ではある。 「放課後」といいこの作品と言い、作者はちょっと学生に何か偏見を持っているのだろうか。 いくら親友だろうと、その人の全てを知っている訳ではない。 確かにその通りなのだが、ほぼ知っているから親友なのだと思うのだ。 その親友を殺すに至る動機にしては余りにも弱過ぎないだろうか。 大学4年生といえば、子供から大人への・・・っていう段階でもないと思うのだが・・・ しかも学業もスポーツもトップクラスの面々なのだ。 その割に殺害に至るまでの思考が単純すぎる。 「頭にきたから殺す」的で、親友に手をかける事に対する本来そこにあるべき紆余曲折の苦悩・躊躇といったものを感じることが出来なかった。 学生=子供、青い 作者がそのように思っているような気がしてならない。 タイトルの「卒業」は、そういう「青さ」からの卒業、そんな風に読めてしまった。 主要登場人物が誰一人として幸せになれない卒業ってのもどこか無理矢理で「大人になる前の試練を与えてあげました」的な感じがして共感できなかった。 だから読後感はイマイチ。 一方ミステリーの方だが、これもイマイチ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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カーの短篇集。
他のレビューにも多く見られる通り私も表題作が一番良かったと思います。 衆人環視の中での人間消失。 大胆というか露骨というか、そんなヒント(伏線というよりヒント、しかも決定的ヒントと言った方がいいかも)が鼻先にぶら下げられていたにも関わらず、読後「何故気付かなかったんだろう」と自分自身に失笑してしまいました。 ただどうやら自分だけでは無かったみたいで・・・だったらやはりこれは作者のミスリードが如何に巧みかを証明している事になりますね。 しかもたかが50ページ程度の作品の中でそれをやってしまうのですから凄いですね。 知らず知らずの内というか無意識の内というか当たり前のように◯◯ダニットに誘導されていました。 しかしこの作品に「白眉」という表現を使ってまで絶賛する事に抵抗を感じてしまうのは、やはりそのトリックのせいですね。 まぁパズルなんですが、(上手く表現できないのですが)「血の通っていない」パズル。 まず不可能と思わせる謎が提示され、それに対して合理的解決をしているつもりなのでしょうが、ぎりぎり辻褄だけは合っているだけっていう感じ。わかりやすく言うと「無理がある」 残りの4作品はそれが顕著です。バカミスじゃねぇかってのもありました。 他の作品が表題作の星を2つ削ってこの評価。 「好きな人はたまらなく好き、好きじゃない人は最早嫌い」 よく見かけるカーに対する評価ですが、何となく分かってきた感じです。 |
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ヴァン・ダインのデビュー作
期待していたのですが正直いまいちでした。 主人公である探偵役のヴァンス、検事、警察、そして語り手であるヴァン・ダイン。 ヴァンス以外の人物が、事件の解決に向けて何かひとつでも有意義な発言や行動をしただろうか。 語り手であるヴァン・ダインが本来ワトソン役であるべきと思うのだが、この作品における彼の存在感のなさは半端ない。 ワトソン役を演じているのがどう見ても検事マーカムなのだから、当然警察はそれ以下の無能集団として描かれざるをえない。 哀れなりヒース。 まさにヴァンスの無双状態であり、しかも事件当日現場を見た時点で犯人が分かっていたというのだからなんともはや・・・ 拳銃の弾の入射角から犯人の身長を特定する事すらできない警察。何とバカにされたことか。 探偵役の常人離れした推理力を表現するのによくあるパターンとはいえここまできたらやり過ぎだろう。 しかもヴァンスの芸術に関する知識のひけらかしが相当に鬱陶しいのだ。 しかも推理と全く関係のない内容まで相当に含まれている。 おかげでリーダビリティまでが最悪なのである。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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交通事故をテーマにした短編集。
信号無視、車道横断、路上駐車、煽り運転、ポイ捨て、無免許運転。 無免許運転やポイ捨ては論外かと思いますが、他は結構やっていたりしませんか? 違反だとは知っているんですよね。でもそれ程悪質だと感じていなかったりしますね。 「みんなやってんじゃん」「大したことない」「誰も見てない」みたいな。 しかし当然というか、この作品ではそれがきっかけで事故が起こってしまいます。 間が悪けりゃとんでもない大惨事を招くんです、みんな交通ルールは守りましょう。 ・・・っていう話かと思いきや、それだけでは終わらせてないんですよねこの作者。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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