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梁山泊 さんのレビュー一覧

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レビュー数236

全236件 101~120 6/12ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.136: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

ゴーレムの檻の感想

何やらシリーズの2作目のようです。短篇集です。
主人公の探偵役が、例えばエッシャーの絵画が現実化された世界といった異世界に迷い込んだり、或いは過去のある人物に憑依(?)したりして、そこで起こる事件を解決するといったかなり特殊な設定になっています。
シリーズ1作目を読んでいない私にとっては最初何が起こっているのか理解するのに苦労させられる事になりました。

一見西澤保彦氏的なノリなのですが、読みやすさという点では惨敗です。
絵画や特殊な構造をした建物を扱っている割に、その描写の殆どが文章のみなのではっきり言って解りにくいのです。
読み手にトリックを気付かれないようにするため意図的に解りにくくしているのではないかと勘ぐりたくなるほどに解りにくいです。
読み切るのに気合と時間を要する作品です。マニア向けと言えるかもしれません。

考えついたトリックを成立させるために何よりも先に物語の背景となる特殊な舞台を構築させる。それが最優先。
そしてその部分に傾倒しすぎるがために、肝心の物語の方に必然性というかドラマ性が欠けてしまっているように思えてなりません。
理詰めで堅苦しすぎるんですかね。
オチの方も、眉間にしわを寄せながら読んだ割にがっかりするものが多かったです。
こういう評価は多分に、この読みづらさ、どこかストレスを感じながら読んでいた事が影響しているように思います。
読了後改めて考えてみるとそこまでがっかりするような内容でもなかったですから。

ゴーレムの檻―三月宇佐見のお茶の会 (光文社文庫)
柄刀一ゴーレムの檻 についてのレビュー
No.135:
(6pt)

杉の柩の感想

誰が見ても犯人は彼女しか有り得ない。
見つかる証拠はすべて彼女を差している。そして彼女もあえてそれを否定しようとはしない。
そんな状況下から逆転の真相を暴き出す。
同じクリスティの「五匹の子豚」に似ているなという印象を受けました。
彼女以外にこれといった容疑者も浮上していないまま、それがラストの法廷の場においての大逆転劇。
この作品の方が、カタルシスを感じうる派手なラストが用意されていると言えますね。


▼以下、ネタバレ感想
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杉の柩 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティ杉の柩 についてのレビュー
No.134:
(5pt)

ひらいたトランプの感想

容疑者は4人、過去に殺人を犯しながらも捕まること無く逃げおおせている経験を持っています。
そんな4人がブリッジを楽しんでいる間にゲームを見学していたパーティの主催者が殺害されます。
別室には同じくパーティに参加していたポアロ含む探偵、警視、小説家、情報部員の4人。
容疑者4人vsそれを推理する側4人の構図はなかなか面白い。

読了後は、ブリッジのルールを知らなくても関係ないですよと言えるのですが、やはりあれだけ頻繁に登場しますから、読中気にせずに読めるかと言ったら無理だと思いますね。


▼以下、ネタバレ感想
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ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティひらいたトランプ についてのレビュー
No.133: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

三幕の殺人の感想

アイデアは面白いし、プロットも非常に練られているレベルの高い作品だと思います。
ただ評価が余り高くないですね。でもそれも何となく分かる、そんな作品です。
第一幕の殺人における動機云々を言う方が多いですが、私にはこのプロットを考えるならこの動機はすんなり受け入れられます。
ポアロが苦戦したこの動機ですが、今読めば推理できた人も多かったのではないかと思います。
そんな突飛な動機だとは思いません。

私にとって問題だったのはこの作品におけるポアロの立ち位置でした。
戯曲風にアレンジされた凝ったプロットで、ポアロを完全に脇役へと押しやる必要があるのはやむを得ません。
主要登場人物の一人である女性からは完全に邪魔者扱いされてましたしね。
ただそれによりポアロの登場頻度が極端に減っているのですよ。


▼以下、ネタバレ感想
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三幕の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
No.132: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

五匹の子豚の感想

16年前に起こった殺人事件をポアロが関係者の証言から推理する物語。
犯人として逮捕されたのは依頼者の母親で既に獄中死している。
関係者=容疑者は5人。その5人をマザーグースの「五匹の子豚」に例えているという事なのだろうが実際それ程関係なかったりする。
物語の大半が、5人の容疑者に対するポアロのインタビューと、その5人が事件当時を回顧して記した手記となっている。
真犯人である一名を除いて故意に嘘をついたりはしていない。
面白いのは、容疑者5名は何れも誤認逮捕された依頼者の母親に近しい関係であったにもかかわらず、その思い描く人物像がそれぞれ全く異なっているという事だろう。
しかし、描く人物像こそ違えど依頼者の母親が犯人である事に誰もが疑いを持っていないのである。
この5人の同じベクトルを示していそうな主観を、ポワロが客観的にぶった斬りその盲点を突くのである。
これは面白い。
誤認逮捕された母親の振る舞いなどを考えても、5人の中に真犯人がいるのならあの人しかいないと多くの読者が予想したはずだが・・・
さすがクリスティって感じですね。

五匹の子豚 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティ五匹の子豚 についてのレビュー
No.131:
(6pt)

樽の感想

かなり評価の高い作品なので期待していましたが、正直想像していたものとはかなり違っていました。

▼以下、ネタバレ感想
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樽【新訳版】 (創元推理文庫)
F.W.クロフツ についてのレビュー
No.130:
(6pt)

メソポタミヤの殺人の感想

この作品はクリスティの2回目の結婚までの半生をわかった上で読む作品であると思います。
「無理ありすぎて」なのか「無理があるけど」かはそこで分かれる気がします。

クリスティが考古学者である再婚相手と初めて出逢ったのがメソポタミヤ地方の某遺跡発掘現場であり、出逢ってその年に結婚しています。
この作品にはヘイスティングズは登場せず、その代わりに物語の語り手として登場するのが元看護婦の女性なのですが、遺跡発掘調査隊という俗世間とはかけ離れた一風変わった集団を客観的に語ったりします。因みにクリスティは元看護婦ですね。
この作品が再婚半年後に描かれた事、と言うより、このような作品を描く事自体、相当浮かれた状態だったのかなと想像して笑えてしまいます。


▼以下、ネタバレ感想
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メソポタミヤの殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティメソポタミヤの殺人 についてのレビュー
No.129:
(5pt)

片想いの感想

性同一性障害をテーマにした物語・・・なのか?
私は性同一性障害については何も知らないし理解も出来ない。この作品を読了した後もそれは変わらなかった。
ウィキペディアより引用すると性同一性障害とは「何らかの原因で、生まれつき身体的性別と、性同一性に関わる脳の一部とが、それぞれ一致しない状態で出生したと考えられている」らしい。
だったら、この作品におけるキーパーソンと言える女性?は性同一性障害とは言えないのではないか?

性同一性障害やらトランスジェンダーやら難しい専門用語が数多く登場します。
似ているようで違うんでしょ?これ。
何となく意味は分かっていても、実際正確にどこまでの範囲が性同一性障害或いはトランスジェンダーとして定義されているのか境界線がどこなのか理解できないでいました。
興味のない私には難しすぎた。
東野さんのこの手の作品の場合、間違いなく「深い」のは分かっている。
ただ作品テーマの根幹となる部分に対してこんなあやふやな状態では「まともには読めんな」と感じながら読んでいました。
多分、その「深さ」に到達することは出来ないだろうな~と思いながら読んでいました。
予感は的中するのですが・・・

▼以下、ネタバレ感想
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片想い (文春文庫)
東野圭吾片想い についてのレビュー
No.128: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

ローマ帽子の謎の感想

クイーンの国名シリーズ第一弾。
シルクハットのことをローマ帽子というのかと思っていたら違った。
舞台もローマじゃなくてアメリカだし・・・いきなり異議ありじゃないかこれは。

発生する事件はたった一つ。
そして推理展開の起点となるのは「何故帽子が消えたのか?」
前提から次の前提を導き・・・それの繰り返し、そして最終的に必然的な結論を導き出すという極めて論理的な展開を魅せます。
途中に納得出来ないような論理の飛躍もなく、非常に分かりやすいです。
これぞ「The推理小説」という感じで「序盤は」かなり楽しめました。
ただ全てを台無しにしてしまったのが、おなじみの「読者への挑戦」・・・というより「読者への挑戦」以降の種明かしなのです。

因みに私が手に取ったのは創元推理文庫旧訳版。

▼以下、ネタバレ感想
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ローマ帽子の謎【新訳版】 (創元推理文庫)
エラリー・クイーンローマ帽子の謎 についてのレビュー
No.127:
(6pt)

美しき凶器の感想

まず刺客を外国人女性にしたのは、いくら超人とはいえ日本人女性ではあのような芸当を行わせるのに無理があるということでしょうか。
作中の彼女は日本語が話せないだけでなくまるで原始人、無知すぎるのだ。タランチュラという呼称こそあるものの何しろ彼女の名前すら出てこない。
おかげで彼女の心の内を読み取る事が出来ないどころかそのような描写すらない。
さすがに読中、彼女に感情移入できる人はいないだろう。
「(心のない)殺戮マシーン」として読ませるには効果的だったのかもしれないが、その割にスリルという点でもイマイチだったかな。
追われる側に肩入れする読者の方が多いかなとは思いますが、私の場合は過去の過ちを隠蔽しようとするアスリート達にも感情移入できませんでした。
結局どちらのサイドにも立てず、ただ事の成り行きを見守っているだけって感じでした。
ラストでタランチュラが抱えている思いのひとつが明らかにされます。
作者としては、ここで逆転という目論見だったのでしょうが、追われる側に嫌悪感を持っていた自分には効果なしでした。
追われる側に肩入れして読んでいたとしても弱いかな。
最後のどんでん返しが得意な作者であり、これまでに何作も驚かされてますからね。この程度では・・・という感じです。
もっと追われる側に肩入れできるような工夫が必要だった気がしますね。

美しき凶器 新装版 (光文社文庫)
東野圭吾美しき凶器 についてのレビュー
No.126:
(6pt)

エッジウェア卿の死の感想

ヘイスティングズ曰く「ポアロの失敗談」のひとつらしい。
これまで読んだシリーズ作品では、「実は早い段階で分かっていたのですよ、モナミ」的な発言が必ずと言っていいほど見られました。
確かにこんな試行錯誤を繰り返すポワロは珍しいのかもしれませんね。
驚くことに、最後まで読むと、最初に真逆の推理を披露しているんですよね。
ただこれが強烈なミスリードになって最後まで立ちはだかるはずです。ポワロが排除した人物が犯人であるはずはないのですから。
ポワロの失敗は読み手にとって強烈なミスリードとなります。
このシリーズ、全て読んだ訳ではありませんが、この手法を使えるのは1回こっきりでしょう。
余り評価の高い作品ではないようですが、個人的にはシリーズにおいても貴重な作品ではないかと感じます。

また確か物語序盤で語り手であるヘイスティングズのさり気ない「この人に会うのはこれが最後だった」的なセリフがあったはずです。
ラストの大団円にもその人物は同席しないという事です。よもやそんな人物が犯人だとは思いませんからね。
ポワロとヘイスティングズがグルになって読み手を騙すという後にも先にもない作品ですよ。
面白かったです。


▼以下、ネタバレ感想
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エッジウェア卿の死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティエッジウェア卿の死 についてのレビュー
No.125: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

鳥人計画の感想

解説にもあるように、物語が始まって数ページで殺されてしまう被害者を除くとキャラの立った登場人物がいない。
序盤で犯人が明らかにされる倒叙型の様相を呈するも、その犯人にしても目立ったキャラでもないわけで、やはりというか中盤にあっさり逮捕されてしまう。
密告者は誰だとか動機は何だという問題は残るものの、作者を考えるとそれで残りを費やして終わるわけないはずで、まだ何かがあるはずと容易に想像できる。


▼以下、ネタバレ感想
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鳥人計画 (角川文庫)
東野圭吾鳥人計画 についてのレビュー
No.124: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

殺人の門の感想

タイトルである「殺人の門」をくぐれた者だけが殺人を犯す事が出来る。
で、「殺人の門」をくぐるとはどういう事なのかという話である。
主人公は言ってみればお人好し。まさに坂道を転げ落ちるという表現がピッタリの人生を余儀なくされ、少し上向いたかと思えばまた転がり落ちるの繰り返し。
その裏には常に、主人公を「踏み台」として生きる事を選択した友人の存在があり、まさに運命の糸で結ばれた関係。
題材的にも作者にとって意欲作ともいえる作品と思えるのですが、正直楽しく読める作品ではありません。
どこか道尾秀介さんが得意とするテーマかと思うのですが、やはりこのテーマを描き切るという意味では道尾さんには及ばないという印象を持ちました。
やはり軽いのです。テーマこそ重いのですが東野さんの場合、それでもリーダビリティがいいのです。


▼以下、ネタバレ感想
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殺人の門 (角川文庫)
東野圭吾殺人の門 についてのレビュー
No.123:
(5pt)

ゴルフ場殺人事件の感想

ポアロシリーズの2作目。
ポアロシリーズは知名度の高い作品を先に読んでいるため、評価がそれらに追い付く事はまぁないなと思いながら読んでます。
それにしてもかなり違和感の残る作品でしたね。これまで読んだ作品と比較してという意味ですが・・・

プロットは凝っているというかかなり複雑です。クリスティにしては珍しい?初期の作品の傾向なのかな?
最終的な真相から読者を欺くために色々小細工し過ぎに感じました。
特に2番目の事件の被害者の存在などはかなり都合が良すぎますかね。

また、ポアロに敵対心丸出しで挑んでくるジローという名の刑事が登場するのですが、ポアロに一泡吹かせそうな印象をまるで持てませんでした。
単なるポアロの引き立て役でしたね。
彼の導き出した推理は「猟犬」と評された彼の捜査スタイルからかけ離れたものでしたし、理論だった推理を展開する事もなしです。
またこの作品は、クリスティによくある最後関係者全員を集めての大団円がありません。
いつ始まるのかと思っていたら終わっていたという印象で、ジロー株暴落の描写がないのにもがっかり。
しかし、ポアロがジロー刑事に挑発されて、ヘイスティングズと二人きりの時に本音爆発、張り合う描写はあるという・・・
ポアロってこんな小さい奴だったのか?ポアロの株を落としてどうする。
まぁ何れにせよポワロとの対決として用意されたキャラクタだとしたなら、思い切り失敗ではないでしょうか。

そして、この作品のヘイスティングズはワトソン役という枠を大きくはみ出しており余計な事をし過ぎです。
ヘイスティングズの恋愛模様も見どころですといったレビューも見受けられますが、私はちょっと・・・
殺害現場がたまたま建設中のゴルフ場であったというだけでゴルフ場である意味は全くありませんしね。

ゴルフ場殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティゴルフ場殺人事件 についてのレビュー
No.122: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

卒業―雪月花殺人ゲームの感想

「放課後」に続く東野圭吾の学園ミステリー第二弾で加賀恭一郎初登場の作品になる。
大学4年生なので阿部寛に置き換えて読むのはかなり困難ではある。

「放課後」といいこの作品と言い、作者はちょっと学生に何か偏見を持っているのだろうか。
いくら親友だろうと、その人の全てを知っている訳ではない。
確かにその通りなのだが、ほぼ知っているから親友なのだと思うのだ。
その親友を殺すに至る動機にしては余りにも弱過ぎないだろうか。
大学4年生といえば、子供から大人への・・・っていう段階でもないと思うのだが・・・
しかも学業もスポーツもトップクラスの面々なのだ。
その割に殺害に至るまでの思考が単純すぎる。
「頭にきたから殺す」的で、親友に手をかける事に対する本来そこにあるべき紆余曲折の苦悩・躊躇といったものを感じることが出来なかった。
学生=子供、青い 作者がそのように思っているような気がしてならない。
タイトルの「卒業」は、そういう「青さ」からの卒業、そんな風に読めてしまった。
主要登場人物が誰一人として幸せになれない卒業ってのもどこか無理矢理で「大人になる前の試練を与えてあげました」的な感じがして共感できなかった。
だから読後感はイマイチ。

一方ミステリーの方だが、これもイマイチ。


▼以下、ネタバレ感想
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卒業 (講談社文庫)
東野圭吾卒業―雪月花殺人ゲーム についてのレビュー
No.121: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

妖魔の森の家の感想

カーの短篇集。
他のレビューにも多く見られる通り私も表題作が一番良かったと思います。
衆人環視の中での人間消失。
大胆というか露骨というか、そんなヒント(伏線というよりヒント、しかも決定的ヒントと言った方がいいかも)が鼻先にぶら下げられていたにも関わらず、読後「何故気付かなかったんだろう」と自分自身に失笑してしまいました。
ただどうやら自分だけでは無かったみたいで・・・だったらやはりこれは作者のミスリードが如何に巧みかを証明している事になりますね。
しかもたかが50ページ程度の作品の中でそれをやってしまうのですから凄いですね。
知らず知らずの内というか無意識の内というか当たり前のように◯◯ダニットに誘導されていました。

しかしこの作品に「白眉」という表現を使ってまで絶賛する事に抵抗を感じてしまうのは、やはりそのトリックのせいですね。
まぁパズルなんですが、(上手く表現できないのですが)「血の通っていない」パズル。
まず不可能と思わせる謎が提示され、それに対して合理的解決をしているつもりなのでしょうが、ぎりぎり辻褄だけは合っているだけっていう感じ。わかりやすく言うと「無理がある」
残りの4作品はそれが顕著です。バカミスじゃねぇかってのもありました。
他の作品が表題作の星を2つ削ってこの評価。

「好きな人はたまらなく好き、好きじゃない人は最早嫌い」
よく見かけるカーに対する評価ですが、何となく分かってきた感じです。

妖魔の森の家 (創元推理文庫―カー短編全集 (118‐2))
ジョン・ディクスン・カー妖魔の森の家 についてのレビュー
No.120: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

眠りの森の感想

警視庁捜査一課加賀恭一郎。加賀シリーズ2作目。
「新参者」等、後々の作品で描かれる加賀恭一郎の冷静で鋭い洞察力は微塵も垣間見る事が出来ませんね。少々残念でした。
シリーズ初期作品という事で仕方ないのかなと思いますが、加賀恭一郎の人物像が出来上がってから読んでしまったのは間違いだったかな。
特に加賀の恋愛模様などは違和感アリアリでした。


▼以下、ネタバレ感想
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眠りの森 (講談社文庫)
東野圭吾眠りの森 についてのレビュー
No.119: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

放課後の感想

東野圭吾さんのデビュー作。
デビュー作にしてらしさは健在という部分と、らしくないなぁというデビュー作ならではの青い部分が混在しており、現在の作品を何作か読んだ後に手にしたことは正解だったのではないかと思っていたりします。

らしいなと思ったのは殺害トリックで、練りに練ったという感じはデビュー作にして健在。
ただ練りすぎで「こんなに上手く行くかい」と思えてしまうところも相変わらずである。

らしくないなと思った箇所についてはネタバレに記載。


▼以下、ネタバレ感想
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放課後 (講談社文庫)
東野圭吾放課後 についてのレビュー
No.118: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

ベンスン殺人事件の感想

ヴァン・ダインのデビュー作
期待していたのですが正直いまいちでした。

主人公である探偵役のヴァンス、検事、警察、そして語り手であるヴァン・ダイン。
ヴァンス以外の人物が、事件の解決に向けて何かひとつでも有意義な発言や行動をしただろうか。
語り手であるヴァン・ダインが本来ワトソン役であるべきと思うのだが、この作品における彼の存在感のなさは半端ない。
ワトソン役を演じているのがどう見ても検事マーカムなのだから、当然警察はそれ以下の無能集団として描かれざるをえない。
哀れなりヒース。
まさにヴァンスの無双状態であり、しかも事件当日現場を見た時点で犯人が分かっていたというのだからなんともはや・・・
拳銃の弾の入射角から犯人の身長を特定する事すらできない警察。何とバカにされたことか。
探偵役の常人離れした推理力を表現するのによくあるパターンとはいえここまできたらやり過ぎだろう。
しかもヴァンスの芸術に関する知識のひけらかしが相当に鬱陶しいのだ。
しかも推理と全く関係のない内容まで相当に含まれている。
おかげでリーダビリティまでが最悪なのである。


▼以下、ネタバレ感想
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ベンスン殺人事件 (創元推理文庫 103-1)
ヴァン・ダインベンスン殺人事件 についてのレビュー
No.117: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

天使の耳の感想

交通事故をテーマにした短編集。
信号無視、車道横断、路上駐車、煽り運転、ポイ捨て、無免許運転。
無免許運転やポイ捨ては論外かと思いますが、他は結構やっていたりしませんか?
違反だとは知っているんですよね。でもそれ程悪質だと感じていなかったりしますね。
「みんなやってんじゃん」「大したことない」「誰も見てない」みたいな。
しかし当然というか、この作品ではそれがきっかけで事故が起こってしまいます。
間が悪けりゃとんでもない大惨事を招くんです、みんな交通ルールは守りましょう。
・・・っていう話かと思いきや、それだけでは終わらせてないんですよねこの作者。


▼以下、ネタバレ感想
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天使の耳 (講談社文庫)
東野圭吾天使の耳 についてのレビュー