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はつえ さんのレビュー一覧
はつえさんのページへレビュー数73件
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「正義の反対はもうひとつの正義」なぜかそんな言葉を思い浮かべました。社会が概ね善であると仮定した場合、その人の心根が善か悪かで「その人の正義」が「その社会の正義」の一致するかどうかで異なるのですよね…。
こんな小難しいこと考た理由を分析したら、二人の警察関係者である人物が一人称で語る心境が、激しい自己主張の繰り返しで、時々ただの自己満足としかおもえずいらついたからかもしれません。語り手たちは普通の善悪の感覚を持った人間なので、自分の都合で善悪の判断を下すのは当たり前ですが、仲間や犯人への情や働きかけが、自らの正義の押し付けにしか感じられなかったのです。しつこすぎる独白に飽きていたからでしょう。 以上は私だけの感覚かもしれません。そうしないとタイトルが「鎖」の意味がなくなりますからね |
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全編通して語り手が財布たち…という設定が興味深い作品でした。しかもそれぞれの財布たちがちゃんと人格?物格?(適した言葉ありますか?)を持ち、持主への情を踏まえた第三者の視点を持って、その財布しか知り得ない事実を語っていくという流れです。派手などんでん返しはなくとも、財布たちが慮る持主たちの背景や心情の描写は小説として満足できるものでした。
殺人事件、しかも4人もが惨殺されているお話しなのに何故か読後にほっこり感が味わえました。同作者の「我らが隣人の殺人」に通じるものを感じます。 オススメの一冊です。 |
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東野圭吾氏の取り上げる題材の幅広さに驚きます。
医療の難解な専門用語もなく、臨場感のある医療現場の様子が身近に感じられ、登場人物の奥深い心理を描き方も相まって、親しみ易い医療ミステリーでした。余りに臨場感があり、まるで自分や身近な人が今、まさに治療を受けているような、妙な不安に襲われるほどでした。 難点をあげるとすれば、いい人だらけ…というところでしょうか。こんなにいい人ばかりの世の中だったらいい…ですね。 テーマとなっている、誰もが持っている「使命」を読者自身が探しながら、読み進むことができるでしょう。 私情ですが、最近イヤミスばかり読んで少々鬱気分だったのですが、そんな心が温まる作品でした。作者に感謝です。 |
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長いですね…でも完読する価値ある作品です。仕事をしながらでしたが、10日もの間「人死に」に浸っておりますと、何やら精神が揺らぎはじめてきて、読み終わった時には安堵しました。
前半は閉じた村=人間主体の社会の中で生きるの人々心理や行動、個と集団の葛藤等が描かれ、後半は創造主である神の創りし世界の一部でしかない世界て生きる人間を、その死生感を通じて人間が人間として生きるためには、何を信じてどう生きるか…が、問題提起されていたように思います。 人間の限界、神との境界は人に寄って異なります。自分が人間である以上、種としてよりよく生き、生き続けるためには、どこまで守るべき範囲を広げ、どこに境界線=妥協点を設ければいいのでしょうか。他者を尊重するということは自分の尊厳を守ることだとしたら、対象となると他者とは一体なんなのでしょうか。種を越え類を越え、神の領域さえ越えていったらその先には何があるのでしょうか。まるで宇宙の終わりを目指す旅のようでした。 私としては、結論が出るわけはない問いの中をグルグル巡る無限地獄に放り出され、じっくり深く思考する有意義な与えていただけき、素晴らしい作品に出会えたと思っています。ストーリーもプロットも飽きのこない展開もとても面白いですし。お時間のある方はぜひお読み下さい。オススメです。 ただ、評価をマイナス2ポイントの訳をですが…こんなに哲学的な思索に耽ることのできた作品だつたのに、ラストのまとめが少女漫画的な薄いものになっており…少し残念でした。 |
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流石芥川賞作家の作品でした。ある猟奇的事件を引きがねに、登場人物たちの心に生れた小さな疑惑が、情という養分を吸いながら、緩く深く根をはり巡らせていく様を夢中になって読み進めました。あるものは純粋で、あるものは無垢で、あるものは正直であるが故に、自らの心に芽生えた疑惑に破滅させられてしまいます。なんとも切なくやるせない思いに苛まれました。
憎むべきは彼らの心を壊したサイコパスの所業ですが、これについては理由は語られてはいません。作者は「怒り」が産み出す仕業として人間の脆さを描くことに集約し際立たすことで、「怒り」の本質を突きつけようとしたのでしょうか。私の勝手なる解釈です。 読みやすい文体、引き込まれるエピソード、形の異なる愛のすがた、丁寧に描かれた心の機微…。オススメできる一冊です。 |
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情緒的なラスト…犯人探しではなくあくまで登場人物の生き様を尊重する結末…はシリーズの真骨頂ですかね。但し、刀城言耶はほ謎解きだけの登場ですが。
推理小説というより、遊廓で生きる女たちの哀しき人生が作者の愛憐溢れる視点で描かれており、ひとつの人生記として読ませていただきました。また戦前から現代に至る性風俗の変遷も興味深く読みました。 第四部「怪奇」に逃げようとする曖昧さには思わず反則!と突っ込みたくなったものの、終盤で交わされる優子と刀城言耶の会話に感動させられ、これで良いといたしました。 女性にとっては刺激的で不快な描写もありご注意と言いたいところですが、こんな生き方をせざるを得なかった女性たちがいた…いることを知り、彼女たちの心情に触れることで感動とともに理解を深めることのできる作品として、読まれても良いかと思います。 |
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刀城言耶シリーズを読み繋いできましたが、今までになく読み易い文体でコミカルな場面も多々あり、エンターテイメント性の高い作品になっていると思います。担当編集者祖父江偲とのやり取りなど、微笑ましく読みました。どちらが良いかと問われると…。複雑怪奇で難解な作品…私は好きですが。
この作品でも刀城言耶は「私は探偵ではない…」を多言し、いつも以上に強調していたかもしれません。それがまた、真相は闇のなかの謎ときに繋がっていくわけです。この有耶無耶さがシリーズの醍醐味ですよね。消えてしまった犯人(と思われる人物)が、数奇な運命に翻弄され、とこかでまた何かの事件に巻き込まれ、刀城言耶の前に現れる…なんて想像してしまいました。前作もそうですが、起きるべくして起きてしまう悪意のなき犯罪をどう裁くのか、考えさせられる作品でした。 以外にも…すみません…大きな賞をとられた作品なのですね。気軽に読める刀城言耶ものとしてもオススメします。 |
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読み易いだけの作品に成り下がってしまったようで、読後に哀しさを感じました。ページ数制約の業でしょうか。残念でなりません。
ラストの駆け込み解決も皆さんの感想に同感ですがそれ以上に登場人物の心情をしっかりと描きこんでいただきたかったです。特に洋子の御子柴への感情、こんな単純なものにしてしまって…。 もう一点、過去作品の関係者これでもかと登場するのですが、いちいちの注釈とともに食傷気味でした。シリーズものであっても、単独で成立し愉しめる作品であって欲しいものです。知る人だけがクスッとできる仕掛けも、ファンにとっての醍醐味ではないでしょうか。 |
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満を持して三大奇書、私にとり最後の一冊を手に取りました。これらの作品が奇しいと謂われる所以は、読者をいつのまにかその作品の一部にとり込みんでしまうことで、読者が自らの存在を小説の終わりとともに虚構の世界に置き去りにしてしまうような錯覚に陥らせ、その存在が如何に脆く不確かなものであるかを実感させてしまうことにあるからでしょうか。
犯罪の理由は単純であれ複雑怪奇であれ、犯人にしか解らないものです、いえ犯人ですら解らないことであったりします。だから理由は何だっていいのです、人間の脳内世界では何でもありですから。なのでミステリ小説の中でどんな理由でどんな犯罪が起きても、そのまま受け入れることができるはずでした。 ところがこの作品、最後に犯行を行わなければならなかった人物と理由が特定されるとすぐさま「真犯人は…!」と人差し指を突き立てるのです。 これは現世で『御見物衆』と成り下がっていた読者への警告です。だからといって日々起こる事件や事故の当事者の苦悩を第三者がどう想像し感じればよいのでしょう。明日は我が身かと考えていても…です。60年も前の作品ですが、今こそ読んでいただきたいです。 若き日に「ドグラ・マグラ」と出会い、足下の地面がふっと消えてしまったような恐怖心に襲われ、自ら思考停止を決め込んで数日を過ごしたこと思い出しました。同じようにまたしばらく鬱々とした日々を過ごさなくてはならないかもしれません。 |
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竜崎伸也が少しずつ人間に見えてきました。「隠蔽捜査」では清廉潔白、真面目過ぎ、家族も妻も出来すぎで人間としての魅力が感じられずに少々うんざりしたのですが。
「果断」はシリーズ最高評価作品のようですね、納得です。愉しんで読むことができました。警察ものはあまりよみませんが、機会をつくってシリーズ読破を目指します。 |
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今まで手にとってこなかったのは読まず嫌いの最たるものと反省しかりです。
東野圭吾氏は善人悪人全ての人間を尊び愛している人なのだと思います。この作品にもナミヤ雑貨店と丸光園に繋がる、ただの人々、理想化も粉飾もされない人たちの運命と生き様がえがかれていました。考えてみると東野氏は作品の登場する人物の、例えサイコパスであっても、その生き方を否定することなく、受容する神の視点から描いているような気がします。 じわりじわりと感動がわいてくる、そんな気分を満喫しました。波矢氏からの白紙の手紙への返信は読者へのメッセージ。若者たちにはぜひとも読んでいただきたいものです。 |
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下世話なタイトルやフェイクドキュメンタリー形式の胡乱さに惑わされてはいけません。素晴らしい作品でした。「Why」探しに夢中になっていたら…。「虚実混交で逆転につぐ逆転」と紹介されていた通り翻弄されました。そして最後は魚質竜文…真実は意識して見ないと見えないということですね。
オススメします。 |
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麻耶雄嵩さんと言う作家さん、私は少々苦手なんです。何冊か読んでいますが、いつもその有耶無耶とした文体に翻弄されるからです。主語がわからない文章に語り手をハッキリさせない手法…内容は面白いのに読み心地、悪いです。
そして今回、ピンポイントでやられました。ましてや本格推理ものを読むとき、登場人物をじっくり頭に叩き込んて挑む私は格好のターゲットでありました。もやもや感が半端なくつきまとい、最後を迎えさせられたわけです。 勘違いを勘違いと思わせず勘違いさせらて…。?の応酬の中で「麻耶氏の作品だもの、この程度はあり!」と思った私が浅はかでした。しかし、今の時代の流れによってはこの手法、通用しなくなるかも知れないと思うのですが、いかがですか。 今のうちにお読みになることをオススメします。 |
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ミステリ度は低いですが、運命に逆らい生き抜こうとする青年の人生ドラマとして充分楽しむことができました。
境遇や環境はどんなに努力をしても抗うことはできないのでしょうか。頑張っても頑張っても報われない運命、切なさで胸が痛いほどでした。ラストはどう評価していいのか…。 将棋の知識が全くない私でも大丈夫でした。生きることの不条理を感じている方、ぜひお読み下さい。 |
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凄い❗です。初心者は手を出さない方が…。
まだ初心者の域を出ない私ですが、「あれ?」「もしかして?」「まさか?」愉悦のオンパレードでした。もっと読経験があれは、悔しいてす。修行してまた挑みます。 オマージュ?パロディ?そんなことどうでもよく、作家殊能氏の脳内世界に魅せられました。「ハサミ男」で満足していたことを後悔。これから石動戯作を追いかけます。 講談社文庫で読みました。同時収録の「櫁」「榁」で倍楽しめ、法月綸太郎氏の解説も魅力的。お読みいただきたい。 殊能氏は夭逝しなさったんですよね…黙祷 |
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臨床犯罪学者、火村英生の誕生作ということで読んでみました。やっぱり魅力ある探偵は何か暗い過去を背負い一癖も二癖もある大人がいいですよね。昨今の学園を舞台にした学生探偵に、何となく馴染めないのは歳のせいでしょうか。
いい意味でとても読みやすい作品でした。内容も表現もわかり易く、初心者向けかもしれません。火村英生と作家アリスの人となり、二人の関係性を確認して、次に進む…ためにぜひお読み下さい。 余談ですが、学生アリスシリーズは読破しています。このシリーズ、私が学生時代を過ごしたころの匂いが漂っていてとても好きです。作家アリスシリーズは数冊つまみ読みしましたが、また違ったテイストなんですね。少しずつ読んで行きます。 |
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こんなに人が殺されているのに笑って読めるミステリです。
頭の体操しているような記述が次々にテンポよくやって来て、アッと言う間に読んでしまいました。「へっ?」と思うような理由でも、トリックが面白いから「よしっ❗」ってなってしまうんですよね。 西澤作品が如何に可笑しく魅力的か、新書版の解説にしっかり書かれていて納得しました。 |
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正統派イヤミスです。イヤミス小説の中には気をてらった過激な表現で嫌悪感を煽るものがありますが、この作品は出来事のみが淡々と語られ、静謐な雰囲気すら醸し出しておりました。ラストの展開も予想できるものではあるのですが、底深い不安感がじわりじわりと沁み出して来る…そんな気持ちに包まれました。解説にもありましたように決して二番煎じではない作品です。
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ミステリーとしての出来ではなく、作者の人生感や人間の描写に惹かれました。社会は他人は決して人に対して優しいものではありません。そんな現実を見事に描き出しています。いちいち納得できる含蓄のある言葉に首肯きながら読みました。
オススメの一冊ですよ。 |
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とにかく切ないです。人間は性善、性悪、どちらもある…。そんな記述がありました。そうですね、性善人がその善ゆえに性悪人に振り回され、人生を破壊されてしまっている現実は、目に見えないだけで、社会に蔓延っているのだと、突きつけられた気がします。私たちは薄氷のような人生を「運」に左右されながら、歩み続けているのですね。
オススメの一冊です。 |
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