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りーり さんのレビュー一覧
りーりさんのページへレビュー数121件
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1913年、イギリスからオーストラリア帰着した船内に取り残されていた少女。身元不明の少女はネルと名付けられ家族に恵まれ大切に育てられたが、21歳の誕生日に遂に自分の出生を知る事になる。希望に満ちた眼は孤独に塗られ、彼女は一人自分を知るための旅に出る・・・。 時は変わって2005年、ネルの孫娘のカサンドラはネルが残したコーンウォールのお屋敷の存在を告げられる。1975年、ネルは何を知り、何を以てその屋敷を購入したのか、孫娘に託した謎解きの鍵はネルとともに船内に残されていた一冊の御伽噺集に・・。 第三回翻訳ミステリー大賞に恥じない濃密な物語でしたね。元が古い作品ではないし、翻訳も現代的な表現寄りで海外古典にありがちな読み難さは少ない。勿論西洋を舞台にしたお洒落な情景は損なわれてはいない。章立ては1900年から2005年の時代を細かく行き来し、各章で人物の視点も変わるので人物の年齢や関係性の把握には時間がかかってくる。流石に登場人物欄か相関図は欲しかった。 |
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最愛の妻に先立たれ、娘とも離れ離れで暮らす大学講師・松嶋。 冴えない日々の中で訪れた逆転の転機、とある物故作家の未発表原稿譲りたいと持ち掛けられる。 しかしその条件は50年前に自殺した彼の死の真相を暴けというものだった・・・。 600頁の内200頁ほどが自殺した作家・佐脇の手記になっている。これがかなり古い文体で書かれている為に慣れていないと中々飲み込めないと思う。 そしていざ調査に乗り出した主人公の前には見えざる悪意が・・・、正体の掴めぬ文献の提供者の前に物語はミステリアスさを増していく。 あまり家族愛とかをテーマをにした作品は好みませんがこれは主人公の成長譚として非常に気持ちいものがあった。 たまには殺人が起きないのも宜しい。 |
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故・小林泰三氏の未収録短編集。短編としてはベリーショートで330頁で10個も収められている。SF、ホラーに収まりきらない作者の魅力がつまっている。 「玩具」 えらいことになった。目の前に瀕死の友人がいる。望みを叶えるあの存在、てぃーきーらいらい。 「侵略の時」 朝何気なく始まった日常の崩壊、妻が朝食に出してきたのは生の豚肉だった。見た目は変わらずとも常識のなくなった周りの人々。人類の侵略を「酔歩する男」を彷彿とさせるような独特の価値観で描いたSF。 「食用人」 なんで食用じゃないものをわざわざ食べるのか。食用ではないカエルやイノシシを食べたがる人の神経が信じられない。こんなに美味しい食用の人間がいるのに。食用の人間が認められた世界で初めて訪れた人間の活け造り専門店、生きながら解体されてくその肉片に私は何を想う。 「サロゲート・マザー」 遺伝的に繋がりのない子を産む。産みの親と育ての親、どちらが本当の親で愛情や責任は何処へ行くのか。お金の為の代理出産に悩む夫婦のお話は終盤とんでもない様相を・・・。論理の前に価値観がある。 |
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「いやしの村」 奈良県某所山奥、傷ついた人々が集い再起を願う共同生活。 しかしネットに広がる怪しい噂、呪いで人を殺すカルト宗教。 真偽を探るために村に潜入したルポライター佐竹の残した記録、出版禁止となり封印されていた"いやしの村滞在記" 。 雰囲気は放送禁止の"しじんの村"にかなり近い。 村に潜入し、交流を通して得られる情報から村の秘密を解き明かそう。 ただそのまま正面から読んでも真実には辿り着けないかもしれない・・・。 |
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痣。 顔の右側に青白くあるそれのせいで僕の人生は醜く歪んでいた。 「賭けをしませんか?」 公衆電話の向こう側からの提案、それは自身の醜さのせいで諦めた初恋を叶えるというもの。 斯くして僕の痣は消えた。 1994年夏、三年ぶりに出会った彼女は自殺を図り、その顔には僕と同じ痣があった。 粗筋だけで面白い。 もちろん本編も面白い。 「痣」という大きなコンプレックスによって諦めた過去の恋を謎の電話主からの提案で取り戻しに行くというストーリー。 しかし初恋の彼女には自身と同じような痣が出来ていて、この提案が酷く残酷なものだと気付かされる。 痣を含め自分を素直に受け入れてくれた彼女、立場が逆になった今、彼女が自分にしてくれたことをそのまま返すだけではどうにも同情らしい感情が見えてしまう。 そしてこうも思う、「痣」という悲観的な特徴が無くなった僕は彼女にとってもう一介の男子にすぎないのではないかと。 そんな葛藤の中でも皮肉なことにコンプレックスの無い僕の人生は前とは見違えるほどに他人との交流に輝いている。 賭けをしているのも忘れるほどに。 少年がこの賭けにどう打ち勝っていくのか、非常に読み応えのある青春小説でした。 |
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「ウラシマトンネルって、知ってる?そこに入れば欲しいものがなんでも手に入るんだけど、その代わりに年を取っちゃうの―」 高校生・塔野カオルはそんな噂を聞き、偶然にもそのトンネルを発見する。 欲しいもの――、5年前に事故で死んだ妹を取り戻せば、失われた家族関係、自身の未来を取り戻せる気がした。 トンネルの効力を実感したカオルは更なる調査を重ねるが、転校生の花城あんずに見つかってしまって・・・。 未来を捨てて、過去を取り戻そうとする。少年たちの夏。 未来の時間を失う代わりに、欲しいものが手に入るウラシマトンネルをきっかけに少年少女二人が自身の失ったものを取り戻そうとするストーリー。 20歳にも満たない彼らが学生生活を捨ててもなお、取り戻したいものがあるという事実で彼らが複雑な境遇を持っていることは分かるだろう。 彼らの決意がどう転んでいくのか是非見届けて欲しい。 |
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忌名で呼ばれても決して振り向いてはならん。 目ぇが潰れるからな。 生名鳴地方虫絰村に伝わる忌名の儀礼、自身の代わりに災厄を引き込んでもらう忌名を授かるその儀式の最中に土砂崩れに巻き込まれた少女・李千子。 一度は死出の旅に出向いた彼女は忌名に名前を呼ばれ復活したという・・・。 そんな村に婚前の挨拶の付き添いという場違いな形で訪れた刀城言耶。 儀礼の最中に眼を刳り貫かれた死体があがり、否応なしに事件に巻き込まれていく。 シリーズ11作目。 まず前長編の碆霊の如き祀るものは読んでおいた方がいい。 前作並のスローペースで物語の大半が土地に伝わる怪異譚に終始する。 このホラー部分を楽しめるかどうかがこのシリーズの肝だが、今作まで読み進めている人なら大丈夫であろう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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目が覚めるとそこは孤島。 何者かに襲われた十津川警部は絶海の孤島に連れてこられていた。 そこには一年前の事件現場を忠実に再現した建物の数々、そしてその事件の法廷証人7人。 何者かが仕掛けた「私設法廷」、事件の再検証をしているうちに見えてくる証人たちの嘘と秘密。 あの事件はもしかして冤罪だったのではないか? 十津川の疑念を裏付けるように新たな殺人が始まった・・・。 面白いね。 40年前の作品ともなると古い表現や時代錯誤な描写も懐かしいを超えて興味深いになるんだなと。 序盤から主人公警視庁の十津川警部が何者かに誘拐され孤島に幽閉されてしまう。 そこには事件のセットと事件の証人が集められ、事件の再考証を求められるのだがこの流れが非常にスピーディである。 証言の矛盾を突き止めるどっしりとした法廷場面が始まったかと思えば、新たな殺人が同時に発生する緊迫した展開に移り変わっていく。 大々的な仕掛けや登場人物の言動や心情はリアリティをかなり犠牲にしているが、それを引き換えに最後まで先を読ませない壮大なサスペンスに仕上がっている。 |
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「警視庁いきもの係」シリーズ第5弾。 「タカを愛した容疑者」「アロワナを愛した容疑者」「ランを愛した容疑者」の3篇。 哺乳類から魚類、鳥類、昆虫ときて今回は初めての植物。 そして何より「福家警部補シリーズ」から福家警部補のクロスオーバー、須藤さんと知り合いだったんですね! 今回の話の後日談が福家警部補の新作に入るらしいし楽しみだー! |
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本庁キャリアの捜査一課長として世間を賑わす幼女連続誘拐事件に挑む佐伯。 事件解決への糸口は遠く世間に走る動揺、そして警察内に蟠る焦燥。 事件の停滞は確実に佐伯を追い込んでいく、冷徹ながら慧眼を持ち合わせた佐伯課長の行末は・・・。 事件を仕掛ける松本なる人物。 男はある願いをかなえるために新興宗教に落ちてゆく、願いへの渇望はやがて実現への道を切り開くがそれは余りにも狂気的で・・・。 二つのパートで構成され時間と共に奈落に落ちてゆくような、タイトルの「慟哭」へひたすら向かって行くようなストーリー展開。 二つの物語の驚愕の結末、代表作であり衝撃のデビュー作だ。 |
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引っ越し先のお隣さんは殺し屋!? 進学を機に田舎から上京した美菜のお隣さんは高身長の雄也さん。 あわただしい学園生活の中、殺し屋の手は確実に学園内のターゲットに迫っていく・・・。 「神様の裏の顔」の著者が放つユーモラスミステリ!! とぼけた女子学生とそのお隣さんが交互に織りなすテンポのいいユーモア、そしてその裏で確実に進行する作者の大仕掛け。 帯文通り302ページから始まりまっせ。 |
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ホラー小説大賞短編部門を受賞した「玩具修理者」と独特の視点からタイムトラベラーを描いたSF「酔歩する男」の二編。 ・玩具修理者 ある夏、喫茶店にて、男女の会話は幼いころに出遭った「玩具修理者」の思い出に移る。 なんでも直してくれるという事で近所で評判だったその人物にあの夏転落死してしまった弟を預けたというのだが・・・。 ・酔歩する男 飲み屋で出会った男は、大学の同窓生であり、昔は親友であり、今は無関係だという。 私は目の前の男に何の覚えもない。 それでいて相手は私のことをよく知っている。 大学時代の過去の話とその顛末を聞くうちに私の意識は揺らぎ始める・・・。 独特なSFじみた非現実的設定と小林氏のどろっとした描写で狂気的なホラーとして仕上がっている。 特に酔歩する男での時間遡行の斬新な捉え方には感嘆。 |
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神様の様に皆に慕われた坪井先生の葬儀には親族は勿論、教え子や元同僚、近所の人からアパートの店子までたくさんの人が集い涙を流していた。 ご焼香から通夜ぶるまいと進行していく葬儀の中、先生との思い出を回想していくと何か引っかかる点が・・・。 集まっていく先生への疑念の数々に裏の顔は犯罪者だったのではと話が持ち上がる。
葬儀に集まった複数人の視点で描かれ、どのキャラも個性的に仕上がっている。 そして元お笑い芸人だけあって小気味よいユーモアセンスも光る。 最後の展開もさすが受賞作といえる出来。 |
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物語冒頭に入る作者からの挑戦。 幕間に入る殺人者の独白。 あなたは4人の容疑者から真実を見抜けるか。 デビュー作から続きまして速水兄妹シリーズの2作目。 読者への挑戦ものだが一筋縄ではいかない感じがにじみ出ている。 200Pほどの短めの構成、分かりやすい章立て、幕間の遊び心、兄妹ならではの軽い掛け合いで非常に読みやすい作品になっている。 初心者におススメも納得の整った作品である。 ★は7つ。 |
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さああああああああああああああ 頭を流れる砂の感覚、幽霊屋敷と呼ばれた邸宅には何が潜んでいたのか、、、小学生時代、琴子たちが出遭った「ししりば」なる怪異は今も尚その屋敷で、、、 琴子の霊能者への始まりの物語。 まぎれもなくホラーとして書かれているのだけれど所々にドキッとするような仕掛けが見える。 シリーズ通して4文字の怪異が登場するわけだがどれも設定が非常に面白い。 ただ存在するのではなく何故、何の為に存在するのがあり、当然対処法もそこから見えてくる。 その部分は推理するために提供されているわけではないのだが物語の重要な謎として私たちの前に立ちはだかるのだ。 そして解説の三津田氏のコメントも必見。 |
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あるライターの死、傍らにあった原稿、それを読んだものもまた死に至り、読んだものだけ見える人形、迫る人形、残された時間は4日。 原稿に書かれた「ずうのめ人形」なる都市伝説を巡り、新人ライターの藤間と前作で結ばれた野﨑と真琴が奮闘していく。 物語の大部分が「ずうのめ人形」の書かれた過去の時間軸とそれを読み対策を練る現在の時間軸を交互に展開するという手法を取り、幕間的に挟まる謎の記述など随所にミステリ的な技巧が見て取れる。 呪いの源を叩くために人を殺すまでに膨張した悪意の出どころを探す彼ら、それは殺人事件の捜査のような論理性は無いにしろ一種の謎解きであることに変わりはない。 そして少なくとも読者に対しては数多の伏線が見え隠れしている。 終盤の展開に驚かされ途中に挟まった意味深な記述の意味を知る時の歓びはミステリそのもの、前作の「ぼぎわん」からホラー色を一切薄めることなくミステリ調の作品に昇華された一作。 |
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