ストロボ

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評判

ストロボの評価:

4.00/5点 レビュー 22件。 B ランク

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平均点4.00pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全34件 21〜34 2/2ページ
No.14
(5pt)

しーんみりと

 小役人ものを書いたスピーディーなミステリとはまた趣向が違う。トライアルとも違う短編集。やけにしんみりさせられるのは気のせいではないだろう。 本作は五章構成になっている。連作集というのは現在から見たものを集めて書くものだと思っていたが本作は違う。あとがきによるとそうとも言えないのだが、本作は第五章で50歳、そこから22歳まで遡るという異色の形式をとっている。力作だと、まず言っていいか。 主人公はフリーカメラマン喜多川光司第五章遺影はラストシャッター。最後の最後に見せる顔は。第四章暗室は昔喜多川に憧れていたハルミの話。彼女が山で撮った写真は、壮絶すぎるもの。第三章ストロボは友人の黒部と。第二章一瞬は昔の恋人美佐子と。ラストを飾るのは卒業写真。喜多川いとって、本作にとって重要シナリオとなっている。ベストかもしれないな。 写真に打ち込むのは何故だろう。何故そこまで写真が好きなのか。喜多川にとってそれをとくためのストーリーがこれ。特に暗室や一瞬、卒業写真と言った酷く思い入れの残るシナリオは欠かせない。 ただのサクセスストーリーというのは惜しすぎる。これは喜多川光司という存在のヒストリーだと思う。何故美佐子と別れたのか。彼女の存在の意味は。ハルミは何故そこまで写真にこだわったのか。全てのストーリーには刻まれた喜多川の歴史がある。 一作読むごとに手を休めた原因はなんだっただろう。しーんみりとして落ち着きたかったのかな。基本的に一気に読める真保らしいところはここでも十分に発揮されていると思う。ミステリーじゃないが個人的にお薦めできる。
ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS)より
4106026473
No.13
(5pt)

しーんみりと

 小役人ものを書いたスピーディーなミステリとはまた趣向が違う。トライアルとも違う短編集。やけにしんみりさせられるのは気のせいではないだろう。 本作は五章構成になっている。連作集というのは現在から見たものを集めて書くものだと思っていたが本作は違う。あとがきによるとそうとも言えないのだが、本作は第五章で50歳、そこから22歳まで遡るという異色の形式をとっている。力作だと、まず言っていいか。 主人公はフリーカメラマン喜多川光司第五章遺影はラストシャッター。最後の最後に見せる顔は。第四章暗室は昔喜多川に憧れていたハルミの話。彼女が山で撮った写真は、壮絶すぎるもの。第三章ストロボは友人の黒部と。第二章一瞬は昔の恋人美佐子と。ラストを飾るのは卒業写真。喜多川いとって、本作にとって重要シナリオとなっている。ベストかもしれないな。 写真に打ち込むのは何故だろう。何故そこまで写真が好きなのか。喜多川にとってそれをとくためのストーリーがこれ。特に暗室や一瞬、卒業写真と言った酷く思い入れの残るシナリオは欠かせない。 ただのサクセスストーリーというのは惜しすぎる。これは喜多川光司という存在のヒストリーだと思う。何故美佐子と別れたのか。彼女の存在の意味は。ハルミは何故そこまで写真にこだわったのか。全てのストーリーには刻まれた喜多川の歴史がある。 一作読むごとに手を休めた原因はなんだっただろう。しーんみりとして落ち着きたかったのかな。基本的に一気に読める真保らしいところはここでも十分に発揮されていると思う。ミステリーじゃないが個人的にお薦めできる。
ストロボ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮文庫)より
4101270236
No.12
(5pt)

もっと早く手に取るべきだったと後悔

新保裕一氏の小説の主人公は地味な職業、設定の人物が多い。いわゆる「小役人シリーズ」と呼ばれるくらい定着している。その中でカメラマンを題材にした本書は、何をする職業か明確でありながらも興味がわかずに手に取らなかった一冊でありました。(ちなみにその他のものはほぼすべて読んでいます)加えて50代から20代まで主人公の過去を遡る手法にいまいちピンと来なかったのです。出張先での雪害のため列車のダイヤが乱れたために時間つぶしにと思いやっと手に取った本書。第五章から始まり、第一章で完結する作り。第五章・・・「ふ~ん」第四章・・・「ほほう」第三章・・・「ううっ」第二章・・・「ぐぐっ」第一章・・・「ふ~っ」よくわからない擬音ばかりでスミマセン。何が言いたいかというと、読み進めるに連れてのめり込みと心への訴えかけが凄いのです。もちろん現在の自分と主人公のジェネレーションには違いがあります。しかし、ひとつの仕事を巡る自分の情熱、取り組み方など、もしかしたら忘れかけていたり、妥協したりしていたかも・・・と初心を思い起こさせてくれました。そして何より、「妻」の存在。その時々の「女性」の存在。男というのはつくづく女に翻弄されつつも守られていく生き物なのだな、と思いました。読後、何とも言えない暖かい気持ちになります。
ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS)より
4106026473
No.11
(5pt)

もっと早く手に取るべきだったと後悔

新保裕一氏の小説の主人公は地味な職業、設定の人物が多い。いわゆる「小役人シリーズ」と呼ばれるくらい定着している。その中でカメラマンを題材にした本書は、何をする職業か明確でありながらも興味がわかずに手に取らなかった一冊でありました。(ちなみにその他のものはほぼすべて読んでいます)加えて50代から20代まで主人公の過去を遡る手法にいまいちピンと来なかったのです。出張先での雪害のため列車のダイヤが乱れたために時間つぶしにと思いやっと手に取った本書。第五章から始まり、第一章で完結する作り。第五章・・・「ふ~ん」第四章・・・「ほほう」第三章・・・「ううっ」第二章・・・「ぐぐっ」第一章・・・「ふ~っ」よくわからない擬音ばかりでスミマセン。何が言いたいかというと、読み進めるに連れてのめり込みと心への訴えかけが凄いのです。もちろん現在の自分と主人公のジェネレーションには違いがあります。しかし、ひとつの仕事を巡る自分の情熱、取り組み方など、もしかしたら忘れかけていたり、妥協したりしていたかも・・・と初心を思い起こさせてくれました。そして何より、「妻」の存在。その時々の「女性」の存在。男というのはつくづく女に翻弄されつつも守られていく生き物なのだな、と思いました。読後、何とも言えない暖かい気持ちになります。
ストロボ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮文庫)より
4101270236
No.10
(4pt)

考えさせられます・・・

50代から始まって40代・30代・20代とさかのぼっていく構成。50代でどうなっているか読んでいる状態で年代を遡っていくというのは面白いと同時に自分にも重なってくるようで考えさせられます。理想に燃えていた若い時の考えもいつしか妥協や安定に取って代わる。一気に読めます。各時代での恋愛や死。妻との関係。さかのぼって読む事でこの面白さがでるんでしょうね。でも、妻が少しかわいそうな気がするのと男ってやっぱり身勝手でわがままなもんですね。
ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS)より
4106026473
No.9
(4pt)

考えさせられます・・・

50代から始まって40代・30代・20代とさかのぼっていく構成。50代でどうなっているか読んでいる状態で年代を遡っていくというのは面白いと同時に自分にも重なってくるようで考えさせられます。理想に燃えていた若い時の考えもいつしか妥協や安定に取って代わる。一気に読めます。各時代での恋愛や死。妻との関係。さかのぼって読む事でこの面白さがでるんでしょうね。でも、妻が少しかわいそうな気がするのと男ってやっぱり身勝手でわがままなもんですね。
ストロボ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮文庫)より
4101270236
No.8
(5pt)

作者の技量の結実した作品集

作者の技量の結実した作品集真保裕一の作品は大別して二種類に分けることができる。「ホワイトアウト」「奪取」「小役人シリーズ」に代表される、ミステリー性の高い作品、そして「奇跡の人」「発火点」に代表される、ベースにミステリー性はありながら、主人公の成長を描いた作品である。エラリー・クイーン藤子不二雄や岡嶋二人のように二人の作家がいるのではないか?などとくだらないことを考えたくなるくらい、はっきりと色分けされている。本作品は、後者に属する短編集であり、既にカメラマンとしての地位を得た喜多川の人生を50歳・42歳・37歳・31歳・22歳という順で振り返る作品である。なぜ、22歳から成長を追うのではなく、50歳からはじまるのか。この答えは作者自身による「あとがき」!に記載されている。決して先には読まないようにご注意いただきたい。この作品は、評価が分かれると思う。おそらく女性にとってはつまらない小説なのではないだろうか。しかし、30~50代の男性にとってはたまらない作品集である。この条件に該当する方にとっては、514円は安い!おすすめである。
ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS)より
4106026473
No.7
(5pt)

作者の技量の結実した作品集

作者の技量の結実した作品集真保裕一の作品は大別して二種類に分けることができる。「ホワイトアウト」「奪取」「小役人シリーズ」に代表される、ミステリー性の高い作品、そして「奇跡の人」「発火点」に代表される、ベースにミステリー性はありながら、主人公の成長を描いた作品である。エラリー・クイーン藤子不二雄や岡嶋二人のように二人の作家がいるのではないか?などとくだらないことを考えたくなるくらい、はっきりと色分けされている。本作品は、後者に属する短編集であり、既にカメラマンとしての地位を得た喜多川の人生を50歳・42歳・37歳・31歳・22歳という順で振り返る作品である。なぜ、22歳から成長を追うのではなく、50歳からはじまるのか。この答えは作者自身による「あとがき」!に記載されている。決して先には読まないようにご注意いただきたい。この作品は、評価が分かれると思う。おそらく女性にとってはつまらない小説なのではないだろうか。しかし、30~50代の男性にとってはたまらない作品集である。この条件に該当する方にとっては、514円は安い!おすすめである。
ストロボ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮文庫)より
4101270236
No.6
(4pt)

さすが!

真保さんの真骨頂とも言える様々なプロットがやがて一つの形をなしていくストーリー立てが『ストロボ』でもいかんなく発揮されています。50歳代・40歳代・30歳代・20歳代と主人公喜多川のカメラマンとしての人生の軌跡が時間の巻き戻しという手法で各プロットを成しており、それぞれの中に真保さんらしい謎ときミステリー仕立てになっている。読み方によっては恋愛小説とも言えるのですが全章を通して読んだ後に全体に流れるテーマが謎解きのように現れてきます。そうした意味から読後にじわぁ~っといろんな想いが頭をよぎる、そんな小説と感じました。大好きな真保ワールドとして〝さすが!〟と唸らせてくれる作品です。
ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS)より
4106026473
No.5
(4pt)

さすが!

真保さんの真骨頂とも言える様々なプロットがやがて一つの形をなしていくストーリー立てが『ストロボ』でもいかんなく発揮されています。50歳代・40歳代・30歳代・20歳代と主人公喜多川のカメラマンとしての人生の軌跡が時間の巻き戻しという手法で各プロットを成しており、それぞれの中に真保さんらしい謎ときミステリー仕立てになっている。読み方によっては恋愛小説とも言えるのですが全章を通して読んだ後に全体に流れるテーマが謎解きのように現れてきます。そうした意味から読後にじわぁ~っといろんな想いが頭をよぎる、そんな小説と感じました。大好きな真保ワールドとして〝さすが!〟と唸らせてくれる作品です。
ストロボ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮文庫)より
4101270236
No.4
(5pt)

芸術だけではなく人生について考えるには絶好の一冊

芸術家とは如何にあるべきかを、読者に構えさせずにさりげなく問う作品。遺影」「暗室」「ストロボ」「一瞬」「卒業写真」の五編からなる連作小説集。カメラマン喜多川の人生を22歳、31歳、37歳、42歳、50歳という年齢で区切り、各時期で流されていく人間の弱さ、そしてそれに棹差す人間の気高さを描いている。人の死を前にして、芸術家は単に芸術家に過ぎないのか、それ以上の人間としてあるのか。 ともかく、構成が上手く、メモを取ろうと目次をみて愕然。そうか、こういう仕組みかと納得。本を片手に何度も肯いてしまう。「慣れと計算と年期で仕事をした10年、代わりに失っていくもの」「昔と変わらぬ情熱」などという文字に、自分の仕事への姿勢を思い、省みざるを得なくなる。単に、人間の感情だけはなく、社会人としての仕事や芸術家としての誇りを描いたために、物理的なボリューム以上に重厚な作品になっている。 江戸川乱歩賞作「連鎖」など社会派の作家として出て来た時は、どちらかと言うと理知的な作風という印象だったが、「トライアル」で小説作りの腕をあげた。今回は、泣かせるだけでなく、さらに人間のあり方を深く考えさせる作家になってきた。「奇跡の人」や「ホワイトアウト」で評価を固めた人だが、僕はそれらを評価しない。人間の掘り下げが甘いし、本当の罪とはという問いかけの部分で安易な部分があるからだ。しかし今回の「ストロボ」には文句の付けようが無い。芸術だけではなく人生について考えるには絶好の一冊だ。
ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS)より
4106026473
No.3
(5pt)

芸術だけではなく人生について考えるには絶好の一冊

芸術家とは如何にあるべきかを、読者に構えさせずにさりげなく問う作品。遺影」「暗室」「ストロボ」「一瞬」「卒業写真」の五編からなる連作小説集。カメラマン喜多川の人生を22歳、31歳、37歳、42歳、50歳という年齢で区切り、各時期で流されていく人間の弱さ、そしてそれに棹差す人間の気高さを描いている。人の死を前にして、芸術家は単に芸術家に過ぎないのか、それ以上の人間としてあるのか。 ともかく、構成が上手く、メモを取ろうと目次をみて愕然。そうか、こういう仕組みかと納得。本を片手に何度も肯いてしまう。「慣れと計算と年期で仕事をした10年、代わりに失っていくもの」「昔と変わらぬ情熱」などという文字に、自分の仕事への姿勢を思い、省みざるを得なくなる。単に、人間の感情だけはなく、社会人としての仕事や芸術家としての誇りを描いたために、物理的なボリューム以上に重厚な作品になっている。 江戸川乱歩賞作「連鎖」など社会派の作家として出て来た時は、どちらかと言うと理知的な作風という印象だったが、「トライアル」で小説作りの腕をあげた。今回は、泣かせるだけでなく、さらに人間のあり方を深く考えさせる作家になってきた。「奇跡の人」や「ホワイトアウト」で評価を固めた人だが、僕はそれらを評価しない。人間の掘り下げが甘いし、本当の罪とはという問いかけの部分で安易な部分があるからだ。しかし今回の「ストロボ」には文句の付けようが無い。芸術だけではなく人生について考えるには絶好の一冊だ。
ストロボ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮文庫)より
4101270236
No.2
(4pt)

円熟期を迎えたか

 作者4冊目の短編集で、第123回直木賞(なかにし礼が受賞)にノミネートされた連作短編集である。主人公は、富と名声を得たカメラマン、喜多川光司である。彼の半生をフィルムを巻き戻すがごとく現在から過去へ遡り、主人公に訪れた人生の転機を鮮やかな写真とともに描き出す。栄光と挫折、苦悩。並べられた5つの短編は、収録順だけでなく「小説新潮」への発表年を見ると執筆順も年代を遡ってのようだ。50歳(現在)の「遺影」(1998年7月号)から始まり、42歳の「暗室」(1999年1月号)、37歳の「ストロボ」(1999年7月号)、31歳の「一瞬」(1999年10月号)、22歳の「卒業写真」(2000年2月号)である。 1998年といえば、作者にとってはそれぞれ10冊、11冊目の単行本『密告』『トライアル』と二冊上梓された年だ。1995年の『ホワイトアウト』で注目され、1996年の『奪取』で評価は確定的なものとなり、その後『ボーダーライン』で直木賞にまでノミネートされる。年齢は違うものの、この作品集の主人公、喜多川光司と似たような状況下にあったのでは、と容易に推測できる。そう考えると、ミステリとはかけ離れたこの内省的な作品集にも違った意味が見えてくる。邪推といえば邪推なんだけど、作者真保裕一自身を喜多川光司に重ね合わせているのは否定できないでしょう。そういった意味では、作者がもう一度原点に帰ろう、というか、表現者としてのストレートな気概というか意気込みが見えて、とても気持ちの良い作品集だった。 そんな邪推は置いておいても、実に見事な作品が並んでいる。一番出来が良いのは『一瞬』だろうか。一面しか見ていなかった先輩カメラマン、揺れる女心、これらに一大転機となった写真を撮るまでの、表現者としての気持ちが重なり合って見事なドラマを生んでいる。次いで『ストロボ』『遺影』あたりだろうか。表現者としての苦悩に、夫婦愛や友情を絡めて、作者以前に作品には見えなかった深みが備わったように思える。言い方を帰れば作家的な円熟期を迎えつつあるような印象。浪花節が露骨過ぎたり、相変わらず女性を描くのが下手だったりするのはご愛嬌としても、もしかしたら、作者はホントに大きな転機を迎えているのかもしれない。作品に対する姿勢というか取り組み方というか作風というか。 すでに2年ご無沙汰の長編はどうなったのだろう。アナウンスされて久しいあの長編は? きっと改稿に改稿を重ねているのでしょう。もし、ぼくの推測が当たっていれば、次回の長編は、『ホワイトアウト』や『奪取』とは趣向の異なる、真保裕一の最高傑作になるような気がするのだが。期待しちゃいますね。
ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮エンターテインメント倶楽部SS)より
4106026473
No.1
(4pt)

円熟期を迎えたか

 作者4冊目の短編集で、第123回直木賞(なかにし礼が受賞)にノミネートされた連作短編集である。主人公は、富と名声を得たカメラマン、喜多川光司である。彼の半生をフィルムを巻き戻すがごとく現在から過去へ遡り、主人公に訪れた人生の転機を鮮やかな写真とともに描き出す。栄光と挫折、苦悩。並べられた5つの短編は、収録順だけでなく「小説新潮」への発表年を見ると執筆順も年代を遡ってのようだ。50歳(現在)の「遺影」(1998年7月号)から始まり、42歳の「暗室」(1999年1月号)、37歳の「ストロボ」(1999年7月号)、31歳の「一瞬」(1999年10月号)、22歳の「卒業写真」(2000年2月号)である。 1998年といえば、作者にとってはそれぞれ10冊、11冊目の単行本『密告』『トライアル』と二冊上梓された年だ。1995年の『ホワイトアウト』で注目され、1996年の『奪取』で評価は確定的なものとなり、その後『ボーダーライン』で直木賞にまでノミネートされる。年齢は違うものの、この作品集の主人公、喜多川光司と似たような状況下にあったのでは、と容易に推測できる。そう考えると、ミステリとはかけ離れたこの内省的な作品集にも違った意味が見えてくる。邪推といえば邪推なんだけど、作者真保裕一自身を喜多川光司に重ね合わせているのは否定できないでしょう。そういった意味では、作者がもう一度原点に帰ろう、というか、表現者としてのストレートな気概というか意気込みが見えて、とても気持ちの良い作品集だった。 そんな邪推は置いておいても、実に見事な作品が並んでいる。一番出来が良いのは『一瞬』だろうか。一面しか見ていなかった先輩カメラマン、揺れる女心、これらに一大転機となった写真を撮るまでの、表現者としての気持ちが重なり合って見事なドラマを生んでいる。次いで『ストロボ』『遺影』あたりだろうか。表現者としての苦悩に、夫婦愛や友情を絡めて、作者以前に作品には見えなかった深みが備わったように思える。言い方を帰れば作家的な円熟期を迎えつつあるような印象。浪花節が露骨過ぎたり、相変わらず女性を描くのが下手だったりするのはご愛嬌としても、もしかしたら、作者はホントに大きな転機を迎えているのかもしれない。作品に対する姿勢というか取り組み方というか作風というか。 すでに2年ご無沙汰の長編はどうなったのだろう。アナウンスされて久しいあの長編は? きっと改稿に改稿を重ねているのでしょう。もし、ぼくの推測が当たっていれば、次回の長編は、『ホワイトアウト』や『奪取』とは趣向の異なる、真保裕一の最高傑作になるような気がするのだが。期待しちゃいますね。
ストロボ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ストロボ (新潮文庫)より
4101270236