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最後の願い
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最後の願いの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.89pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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劇団を立ち上げたい、というふたりの青年、度会と風見が、脚本家、女優、稽古場を借りたい相手などに出会ってゆきながら、彼らの抱えていたトラウマにまつわる謎を、こうではないか、と、やさしく解き明かしてゆきます。 それほど複雑な謎はなく、またどぎつい妄念的な犯罪もありません。画家にまつわる「最後の言葉は・・・」はやや非日常でドラマティックですが、戯曲のような芳醇なロマンを感じました。 日常の謎解きものとして、この連作集がユニークなのは、やはり探偵役が役者である、ということでしょう。役者は、キャラクターを完全に把握して演じなければならないので、人間心理の一貫性や機微に敏感という設定で、ほとんどの謎が、アリバイや物証とかではなく、人間心理の深みという観点から解きほぐされていきます。それが優しい後味になり、また解き明かされた当事者も心が癒やされて、劇団に協力してゆく。これは演劇という芸術ならではの力をえがいた小説ともいえるのではないでしょうか。 そして謎は輪舞のごとく最後に結びあい、初日の幕があがることになります。 最後の幕の主人公は意外ですが、オペラ座の怪人のごとく、この幕開きにふさわしいともいえ、みごとにしめくくられました。 なんでもないような青年が、推理を開陳しはじめると、その事件の当事者になりきって、別人のごときオーラを発しながら語る、というシーンが何カ所か印象的でした。探偵とは、天才的な戯曲家であり役柄の洞察力を持ち合わせていなければならないのでは(またその逆も真)という発見をしたような気がします。そして、いままでこうと思いこんでいた物語に、別の解釈が与えられた相手は、カウンセリングを受けたように癒やされるのですから、演劇はセラピーでもあるのですね。 本書が品切れであるのは惜しく、光原百合さんのこうした作風をもっと読みたいです。 | ||||
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探偵役は、自分が理想とする劇団を立ち上げようと奔走している若者2人。 劇団の立ち上げに協力を依頼しようとする人物や、その周辺の人物の身の上に起こった「事件」の話を聞くうちに、隠された真相を「推論」する。 具体的な証拠に基づいた「推理」ではない。 「事件」の語り手の側が、探偵役の側の表情の変化に気付く描写はあるが、探偵役が語り手の表情の変化を読んでいる描写は無い。 また語り手は、話の内容に沿って自分の表情が変化している事までは自覚していないようだ。 こうした書き方は、ミステリとしては微妙にアンフェアなのではないだろうか? 探偵役は、明らかに語り手の表情や口調の変化を読んでいる。しかし、視点人物が語り手の側に固定されているがゆえに、読者は、語り手の表情までは知りえない。 探偵役の語る「真相」もまた、一つの推論に過ぎないから、この微妙にアンフェアな感じは減殺され、読んでいるうちは余り気にならないのだが、後になってみると、単に作者の語り口に乗せられただけ、という気もしてくる。 それにしても、登場人物が皆揃って良い人ばかりだ。 作者の人間観がそうなのだろう。 しかし、それゆえに「いささか出来すぎ」「少し偶然に頼りすぎ」といった感も否めない。 その点でも、微妙な出来だ。 | ||||
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劇団φのメンバーを集めながら、そのメンバーにまつわる事件の謎を解いていく珍しいスタイルのミステリ小説。度会と風見が、主な探偵役。この二人にかかれば、解けない謎はない。その謎のとき方も、役者として謎を解くところが面白い。 各話がオムニバス形式で読みやすく、最終的なまとめの伏線ともなっているため、テンポよく最後まで読むことができた。それぞれの登場人物の「最後の願い」は、かなえられるのか。。 なんだか、読みながら、北村薫っぽいなーと思いました。光原百合、注目してみます。 | ||||
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ミステリです。連作短編です。メインキャラは劇団を立ち上げようとしている二人の男性です。基本的に登場人物は皆いい人です。犯人にもそこまでの悪人はいません。なので扱う事件もどこか優しいです。優しい人達ばかりの優しい世界。この世界や人物が嘘臭いという人もいるでしょうが、私は好きでした。楽しく読めました。そしてまた読み返すと思います。 | ||||
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2005年に出た単行本の文庫化。 7篇を収めた短編集。しかし、全体で一つの物語になっている。 光原氏は、たまに傑作を書く。本書はまさにそれ。実に面白いし、心を打つ物語であった。 内容は、ある青年が仲間を集め、劇団をつくって旗揚げ公演を行うというもの。その、仲間を集める過程で奇妙な事件に巻き込まれ、謎を解きほぐしていくことになる。いずれも奥深いけれど人間的な謎であり、また謎が解けることで登場人物が救われるようになっている。そして、謎から解放された人間は、劇団の仲間に加わっていくことになる。 こうした流れが、現代的な装いとなってはいるものの、冒険物語の王道を行くプロットであり、わくわくしながら読まされた。 しかも、主人公の二人が、「役者としてのものの見方」を通して謎を解き明かす点が面白い。説得力がある。 また、芝居の世界が魅力的に描かれているのも良い。ラストは思わず泣いてしまった。 感動的な物語であった。 | ||||
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新しい劇団が出来上がっていくまでの物語です。 中心メンバーとなるのは演技力はもちろんのこと頭もキレる2人の男。 彼らは一緒にやって行きたいと思う人たちを訪ねていく。 しかし、その人たちはそれぞれに見過ごしてしまいそうな小さな、 でも「納得のできない不思議」を抱えていて、 2人はその謎を解決しつつ、仲間を増やしていきます。 全体を通して、面白さの元となる謎そのものには ハッとするほどの意外性やわかった時の爽快感はあまりない。 でも、ミステリーを読んだ後に残る強烈な悪意による不快感は感じず、 むしろやわらかいまなざしを受けたような心地でした。 後半に進むにつれて全編がつながっていくのがわかるのだけど、 それと並行して一人づつ劇団のメンバーが集まり、 すべてがスルスルと着実に完成していく過程を味わうのは気持ちの良いものでした。 | ||||
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さだまさしの『もう愛の歌なんて唄えない』の歌詞で始まる本書は、恋愛小説かと思いきや、立派なミステリーである。 光原百合は、北村薫をその嚆矢とすると言われる、倉知淳、加納朋子、若竹七海らと並ぶ“日常の謎”派のミステリー作家である。 本書は、7つの連作短編からなっており、それぞれが完結した物語になっていると共に、あとの物語で、先の物語中に積み残した謎が解明されて、最後の一編ですべての謎が収斂する、典型的な“日常の謎”ミステリーのスタイルをとっている。 ’05年、「このミステリーがすごい!」国内編第10位にランクインしている。 全体のストーリーは、劇団を旗揚げしようとするふたりの青年が、役者やスタッフをスカウトする過程で出会う“日常の謎”を解き明かしてゆく形で進む。 「引きちぎられて、床にばら撒かれていたバラの花」、「ケータイにかかってきた不審な間違い電話」、「盗まれるが、中身は何も盗られずに戻ってきたバッグ」などなど・・・。 同時にこれら“謎”の奥には、日常の生活に潜む人間心理がからんでいて、それらも優しい目で解いてゆく青年たちの姿を瑞々しく描いており、そういう意味では青春ミステリーの色合いも濃い。 そして、旗揚げ公演の劇場に‘居つく者’の「最後の願い」が明かされたとき、この新劇団の創設公演の幕が上がるのだ。 | ||||
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何気ない出来事だと思っていたことが、実は思いもよらぬことだった。ただ人の話を聞いただけで、度会や風見はその謎を解いていく。隠されていたものは人のねたみや、悲しい思い出、切ない友情・・・。どの話もそれぞれにしっとりとした味わいを持っていて、心にしみる。個性豊かな人たちが集まる劇団Φ(ファイ)。こんな劇団が実際にあったならどんなに素敵だろう。そんなことも考えてしまった。 | ||||
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人間は欲張りな生き物である。著者の前作「十八の夏」は第55回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞する秀作であった。そうなると次回作にはそれ以上の期待がかかり、周りはさらなる秀作を待ち望む。ひとつ目のハードルが高ければ高いほど、次のハードルがものすごく高く見えてしまうのだ。以上のことを踏まえた上での星3つの評価である。決して本作品が駄作なわけではない。 いわゆる安楽椅子探偵ものである。本書では、探偵ではなく劇団員がその役目を果たす。例えば、誰かの思い出話や居酒屋で隣り合わせた人の話を聞いただけで、本人も気付かなかったような謎をお節介にも解いてしまうのだ。 その謎は、可憐なお嬢様の隠れた本質や携帯電話にかかってきた不審者の身元、不仲を装った親友関係、小学生の頃の不可思議な出来事、使われていない洋館の本当の理由、劇団の隠された解散理由などである。まるで昔に失ったものがひょっこり出てきた感じで解かれるのだが、その謎にかかわる人たちにとっては黒と思っていたものが、実は白だったというくらいの衝撃である。 何気なく読んだ前作の衝撃から、今作への期待が大きくなってしまうのは仕方のないことだが、「あとからジーンとくる、あの切ない感じ」はそこはかとなく感じられた。読了後は何となく物足りない感じがするのだが、やっぱり読んで良かったと思わせる作品であった。 | ||||
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