イオニアの風
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ギリシャの神々が人間世界とこれからもかかわり続けるか、あるいは、人間との関係を一切断つかを選択する際、人間の男女三例を選んで「賭け」をする。ネタバレなので詳しくは書かないけど、第一回はトロイア戦争を引き起こしたパリスとヘレン、第二部では戦後のヘレンとメネラオス。この二例は、だいぶアレンジはしてあるけど一応ギリシャ神話の枠組みだけは守っているが、第三部の、オデユッセウスの息子テレマコスと吟遊詩人ナウシカアの男女は、二人が結婚したという伝承以外は完全に作者のオリジナル。 ファンタジー好きなら絶対おすすめで、トロイア戦争におけるパリスとヘクトルの描き方の面白さは、この第一部だけで長編一策書いてくれてもよかったんじゃないかと思ったくらい。まあ、「イリアス」の中でも最も人間的魅力にあふれて書かれているのはヘクトルなんだが、ここではまさに理想の男性像として描かれている。そしてまたパリスが、どうにもこれほど「無責任」な人間はこの世にいないだろうという描かれ方をしているのに、ヘクトルの死を受けて、ついに自分の運命と責任を引き受ける、というより、死を自ら選ぶかのような行動に移るのも、さらりと描かれているので、逆に残されたヘレネの悲しさが伝わる。 メネラオスとヘレネの物語も人間ドラマ、夫婦のドラマとしてとても素晴らしいが、やはり本書の白眉は第三部。ここはやはり作者の趣味と本質が見事に出ていて、いい意味でよくできた漫画作品を読んでいるように、各場面が画面で浮かぶような生き生きとした描写が続く。第一部、第二部よりも年齢が下がったこともあり、逆に成長のドラマとして描きやすい面もあり、どんどん読み進めていける。そして、プロメテウスが人間に与えたものが、単なる「火」ではなかったことを示すラストで、この長編のテーマが示され、全体がまとまるのは作者の構成力。 一つ星を減らしたのは、これは好き嫌いの問題で、ちょっと会話が現代的すぎるというか、もう少し古代ギリシャが舞台なんだから言葉も重くしてほしかったかなと。ただ、このような文体によって日本でファンタジーが広く広がったことを思うと、やはり現代のスタイルとしていいのかなとも思う。ギリシャ神話好きなら読んで損はない | ||||
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ちょっと覚えられないレベルです、数が多すぎる。20~30人くらいいますかね?あれ、この人は何だっけ?って何度も何度も前の方に書いてある一覧表に戻っては読み進めて…を繰り返しました。良い物語ですけどね、ちょっと多いです。 | ||||
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ギリシア神話では、人は神々に翻弄されることが多いです。 しかし、本作では、自らの意志で運命を切り開いていきます。 神々から見れば、人は愚かで儚く弱い存在かもしれません。 けれども、強い意志と困難な問題に立ち向かう勇気を持っています。 話として面白いのはもちろんのこと、テレマコスとナウシカアが、最後に、神々が倒すことのできなかった魔物、エンケラドスを倒す場面には心を打たれます。 神話の世界と人間の世界を見事に描き切っています。 | ||||
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この作品の特徴をひと言でいえば、神々と人間との間に断絶が起きるという意味で、ある種の「ギリシア神話的神々の黄昏」の物語と読める。作者は「あとがき」で「ギリシア神話をベースに作者が勝手に展開させた物語」であると述べているが、「勝手」とはいえきちんと抑制が機能し暴走することなどない。 ギリシア神話本編では、事実としてのみあっさり語られる、トロイ戦争後のアガメムノンのエピソードやそのほかもろもろの出来事やエピソードに、作者の想像力で肉づけがされ膨らみ、齟齬をきたすことのない説得力を持った作品になっている。もちろんこれは、近代小説が人間の内面を描く技巧を習得したからこそ可能になったといえるだろうけれど。 例えば、アガメムノンとメネラオスの関係をその子ども時代にまで遡り描写する事で、「暗殺」の根っこを暗示したり、いったんはパリスにトロイに連れ去られたヘレネの結末などの解釈を物語化することで、ギリシア神話に独特の色合いが加えられ、心に響くものとなった。また、作品の中心であるテレマコスとナウシカアの冒険の旅は、神話的世界観の上に展開されたからこそ、その気品や高潔さにリアリティが感じられるのである。日本語も美しい。 | ||||
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ケルト民話に想を得た'銀の犬'が暗い北欧の色彩を帯びていたのに対し,これはまさに南欧,それも地中海的な明るさを持った世界を提示する.ギリシャ神話からホメロスの叙事詩までに現れる神々人々は,その性格をあるいは少し,あるいはまるっきり変えられ,その上で大活躍する.2段組の長い物語は三部から成り,まずヘレネをめぐるトロイアの戦が第一部.但しこれは簡潔.ついで幕間という短い,オデュッセウスの帰国と死の話.その後に第二部新たな旅立ち(これがお目当て)が来る.ここではオデュッセウスとペネロペイアとの息子テレマコスが主役で,人間にとっての決定的な意味を持つ冒険が敢行され,テレマコスとナウシカアは神々との賭けに勝つ,と言う物語.ほぼ3世代にまたがる大河小説で,それが本格ミステリー作家一流の油断のなさで描き切られているのは,実に爽快である.読んでいる時は夢中だが,あとから見ると純粋ギリシャほどの残酷味は思い出せず,もう少しローマ的,あるいはキリスト教的時代のような感覚.この作品は多分この作者の最大規模の物語で,これが何の破綻も見せず堂々完結するのは,作者の実力の証明と思われる.面白いことを保障して,強く推薦.カバーが何ともダサいが,引くことはない. | ||||
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