地上の楽園

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地上の楽園の評価:

4.92/5点 レビュー 12件。 A ランク

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平均点4.92pt

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全12件 1〜12 1/1ページ
No.12
(5pt)

歴史を知る

戦後政府小泉純也主導で在日朝鮮人帰還事業が「38度線の北」などを材料に朝鮮総聯、日赤、共産党、社会党、新聞社などが総力を挙げて日本人妻を含めて日本国内で差別に喘ぐ10万人近い在日朝鮮人を「地上の楽園」へ新潟港から金日成のもとに送り込みました。この事は梁石日の「骨と血」やそれを北野武主演での映画で知っていましたが、本書では第一部では「38度線の北」で描かれた「地上の楽園」を信じて疑わない在日朝鮮人の高校生仁学が帰還事業を推進する姿、第二部では北朝鮮の地上の楽園が実は地上の地獄であり次々と帰還者が死んでいく姿、第三部では辛くも逃げ延びた仁学の幼馴染の勇太と、脱北して韓国で事業を成功させた仁学の知人の娘美花と勇太と仁学が日本でこの事実を後世に伝えようと決意するまでを描いています。
私は著者を全く知らないが30冊の関連書籍を紡ぎ小説を書き上げたようです。
北朝鮮を素材とした小説は姜英淑の「リナ」しか読んだことがありませんが、それと同じぐらい鮮烈な内容です。寺尾五郎が北朝鮮は地上の楽園だと記した「38度線の北」は1958年に出版されましたが、その29年後に出版された「白頭山登頂記」今井道子は登山版地上の楽園と言ったところでしょうか。
文体は読みやすく構成も優れていて最近読むのが苦痛になってきた私でも読み通せました。お勧めですが小泉純一郎の父親を正面から批判しているので賞は取れないのではないかと思います。そいえばだから小泉純一郎は北朝鮮に渡れたのだなと納得しました。
地上の楽園 (単行本) Amazon書評・レビュー: 地上の楽園 (単行本)より
4120059596
No.11
(5pt)

今も昔も、北朝鮮でいかに悲惨な差別が横行しているのかが想像できます。

1人でも多くの日本人が読むべき傑作だと思います。
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4120059596
No.10
(5pt)

北朝鮮帰還事業の内実をフィクションを通して浮かび上がらせる

1959年、日本から北朝鮮に向けて船が出港しました。

そこには、北朝鮮を「地上の楽園」と信じ込まされた在日朝鮮人が乗っていました。

この本は、実際に行われた北朝鮮帰還事業の内実を、事実をもとにフィクションの形で浮かび上がらせた小説です。

前半の主人公は、大阪府の鶴橋近辺に住む帰還事業に協力した高校生の青年です。青年は、ある本をきっかけに北朝鮮が「地上の楽園」であるという虚偽を信じるに至り、朝鮮総連の指示のもと、自分の近くにいる同胞たちに帰還事業の意義や北朝鮮がいかに素晴らしいかを喧伝し、帰還事業で重要な役割を果たします。そこには、日本国内の労働災害で利き手の指を失った自身の兄や美容師を目指す妹、その荒い気性から愚連隊に入りそうになっていた友人も含まれていました。主人公自身も北朝鮮のプロパガンダに騙されていたのです。帰還事業が進む中で彼は変な手紙を受け取るようになります。それは、手紙の前半では何不自由ない生活をしているという紋切型の文言が書かれており、後半には大量の物品や少なくない現金を送るように切実に願うものでした。北朝鮮は国内で彼らがしていた生活と比すべくもない「この世の地獄」だったのです。このことに気づいた主人公は帰還事業に協力した自身を激しく責めさいなむことになります。

後半では、前半の主人公の青年の紹介で北朝鮮に帰った愚連隊に入りかけた青年が主人公となります。ここでは、当時の北朝鮮の苦しい状況(貧しい食事、厳しい労働、帰国者であることに対する差別、拷問と同胞の度重なる死去等々)がこれでもかと描かれます。特に後半の主人公が現地で結婚した妻と子どもと死別してしまう場面に心が締め付けられました。多くの悲しみを味わった主人公は脱北を決意し、ついにそれを果たします。脱北後主人公は韓国に渡り、裏の人脈で事業を成功させ、日韓ワールドカップにも関与します。その中で、かつて一緒に北朝鮮に渡った人物の娘と再会します。そして、前半の主人公の場所を突き止め、自分の行いを償いたいと思うなら、生きて帰還事業の全容を帰還事業に送り出す側の視点で描くように強く依頼します…

おおよそ上記の内容が500ページを超える本文の概要です。ここで述べておくべき重要な歴史的事実として、この帰還事業の中心にいたのが、小泉純也(小泉純一郎の父・小泉進次郎の祖父)であり、北朝鮮拉致被害者帰国に関わる日朝首脳会談の際の日本の首相が小泉純一郎であったということです。また、他の政党の政治家やマスコミ(主に新聞)や知識人の一部も帰還事業を肯定的に捉え、共犯関係にあったことは記憶すべき事実です。

帰還事業で北朝鮮に渡った人の総数は9万3千人を超えるそうです。当時は情報が少なく、多くの人が虚偽の情報を信じ、苦しみの中で人生を過ごし、人生を終えることになってしまいました。お恥ずかしい話ですが、私自身この事業に関してはほぼ全く知識がなく、驚きの連続でした。このような巨大な社会的問題を素晴らしい小説の形で私に示してくださった作者に深い感謝の念を持つとともに、帰還事業に関わったために不本意な形で命を落とすに至った方たちに心から哀悼の意を示したいです。
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4120059596
No.9
(5pt)

地上の楽園は死への船出

当時の在日の人々への差別、また日本政府や朝鮮総連が行った地上の楽園という名の地獄への出航計画。北朝鮮での苛烈な生活。そしてそこからの脱出…
「万景峰号マンギョンボン号」という変わった響きだけは当時の私の記憶に残っていたが、それらの背景にある恐ろしい真実を今改めて知ることが出来た。
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4120059596
No.8
(5pt)

読み応えあり

在日の人たちが地上の楽園を信じ北に旅立つ。そこには地獄のくらしが待っていた。子どものころ近所にも在日の人が住んでいた。差別を受けていたのは知っている。今のように情報が入ってくるわけでなくそれでも本を読んだり講演を聞いたり調べに調べて故国に帰って行った。あとは今はみんな知っているような世界だ。送り出したほうもひどい後悔にさいなまれる。漠然と知っていたことがはっきりとした。
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4120059596
No.7
(5pt)

圧倒的な筆致で読むのが止まらない。

座学で知ってはいても向き合ったことのなかった朝鮮「帰国運動」を描く大河物語。読めば読むほど胸が苦しくなるのに、圧倒的な筆致がページをめくる手を止めてくれない。
場面が目に浮かぶが、安易な映像化は不可能なので、これは本=小説として読むべきだろう。

願わくば多くの人たちに本作が届きますように。
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4120059596
No.6
(4pt)

良い本でした。

内容が充実していました。
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4120059596
No.5
(5pt)

国家ぐるみのペテンを始めたのは誰なのか

参考文献の連なりからもわかるようにかなりの大作。
差別、貧困、憎悪が「希望」へと変わり、新潟港での歓声が頂点に達した時に、それはまさしく崖の上の頂点であった(あとは突き落とされるのみ)。
政治家、ジャーナリスト、活動家の大罪。楽園を讃える手紙に仕込まれた暗号。命の軽さ。
なぜ彼らは半島の国に帰されたのか。再び差別の気配が漂う今、私たちはどうすればよいのか。
北の国に関する資料や書籍は多いが、怒涛の内容を読みやすく伝えてくれた作者の力量に感謝したい。
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4120059596
No.4
(5pt)

地上に「楽園」は存在しない。そして「地獄」はあってはならない。

映画「キューポラのある街」(昭和37年)のテレビ放映を何度か見たことがあります。放映の時代によって台詞にやたらピーが入っていたり、「お断り」が冒頭に写っていました。川口陸橋から帰還事業で新潟に向かう特別列車と乗り込んだ友人一家の希望にみちた明るい様子が印象に残っています。最近の映画では「外事警察」で核開発を中心としたスパイものが描かれました。またこの著者は「脱北航路」も書いています。

帰還事業を熱心に推進した高校生の仁学が第一部の主人公。そして実際に家族で帰還した勇太が聞かされていたユートピアとは真逆の生きながら拷問されている地獄図鑑が第二部。いわゆるかつての「船戸与一」的展開で登場人物のほぼ全員が悲しくて無残な亡くなりかたをしてゆくなかではたしてこのふたりの幼なじみがふたたび交わることができるのか、が第三部となります。そして登場した政治家の孫は『防衛』大臣に就任した、という運命の皮肉にも気づかされました。

骨太で重厚な「小説」いや「大説」ですので覚悟を持ってお読みください。個人的には直木賞ノミネート、受賞にふさわしい作品だと思います。
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4120059596
No.3
(5pt)

壮大な近代歴史小説

衝撃作ですね。ぜんぶ詰め込まれているような、この量でもとても処理しきれないような不思議な感覚の本で感服しました。帰還事業は小さい頃に聞いたことはありましたが、拉致時間につながり、今なお悲惨な影を引きずっていることを理解しました。今だから出せる本なのかもしれません。ネットの社会になっても北朝鮮やウイグルの実態はなかなか伝わっては来ません。自分とは距離があることでも、不都合な現実に目を向けて理解していくことが一つの方法ではないでしょうか。
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4120059596
No.2
(5pt)

難しいテーマを著した著者の矜持を感じた良書

日本にも人種問題は昔から根強くある。在日と部落問題。どちらも社会的、政治的に極めてセンシティブな問題。その中で本件を取り上げた筆者には当然さまざまな意見があり圧力もあったのかもしれないだろうと推察する。
単に在日の皆さんへの差別とか北での悲惨な生活の描写もさることながら、一時期は英雄扱いされた主人公がある時期から楽園に送られた人々や周囲の人達から怨嗟の的となり心を病み普通の生活が送れなくなる点などは、現在の日本の社会状況でも当たり前のようにあること。そういうこと含めて読者の学びになればよいと感じた。
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4120059596
No.1
(5pt)

在日朝鮮人帰還事業をめぐる人権侵害にまつわる壮絶な内容だった

在日朝鮮人帰還事業をめぐる人権侵害について、分かりやすく描かれていた良書だった。

歴史的経緯を含めたフィクションと書かれているが、参考文献の数からもおおむね事実であることがよく分かる。

本書では、第一部は高校生の孔仁学が同胞たちに帰国運動を推進しながらも帰還事業の実態が判明して追い込まれていく話、第二部では玄勇太が北朝鮮に帰国して地獄のような環境でなんとか生き延びていく話、そして終章が仁学と勇太のその後の話が描かれていた。

在日朝鮮人帰還事業は、日本としては生活困窮者を北朝鮮へ追いやる棄民政策で、北朝鮮としては労働者をいくらでも酷使できる奴隷政策という側面があり、許されるべきではない人権侵害である。

帰還した人々は、異臭のする土壁のあばら屋で、水道やガスもなく裸電球一つだけ、働いた日数分だけの最低限の食料の配給しか受けられないという過酷な環境での生活を余儀なくされる。

体調を崩しても医者にもかかれず、ちょっとでも口答えすると反逆と見なされ処刑されてしまう絶望しかない状況。

「地上の楽園」というまやかしの言葉で自国民を欺いたにも関わらず、帰国運動推進部会も政治家も報道関係者も文化人も、誰一人として責任を取らず過去の歴史を都合よく忘れようとしている。

「なんや、おまえチョーセンか」といった国籍での差別や偏見は、どれだけ時間が経ってもなくならない。

何があったか、事実を正しく伝えて検証することが、現在の問題の解決にもつながる、という考え方は大切だと思ったし、多くの人に知ってもらいたい話だと思った。
地上の楽園 (単行本) Amazon書評・レビュー: 地上の楽園 (単行本)より
4120059596