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汚れなき子



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【この小説が収録されている参考書籍】
汚れなき子 (小学館文庫 ハ 12-1)

汚れなき子の評価: 4.14/5点 レビュー 7件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.14pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全7件 1~7 1/1ページ
No.7:
(5pt)

予想にもしない結末

本当に心の底からすごいとしか言えません。
こんなに頭をフル回転させてもなお、最後ちゃぶ台がひっくり返ったように展開が変わるミステリーは久しぶりに読みました。
登場人物一人一人の感情を自分のものとして感じ取れる構成も本当に気に入りました。
汚れなき子 (小学館文庫 ハ 12-1)Amazon書評・レビュー:汚れなき子 (小学館文庫 ハ 12-1)より
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No.6:
(3pt)

なっとくが

内容に納得がいかない、おしまいでした。しかし、魂を持って行かれた。
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No.5:
(3pt)

ネタバレあり

ハナの視点で語られる事件の始まり辺りを読んでいる時は興奮した。被害者が監禁されている間に生まれた子供であるハナの繊細さ、聡明さは精緻なガラス細工のよう。年間ベストは当然、監禁物の最高傑作かも、と思った。

でも読み進み登場人物が増えるに従い表現が文学的になり、ストーリーが技巧的になっていく。そしてハナと第二の被害者ヤスミンは、どんどん不実な証言者となっていく。

ハナは父親への愛情ゆえに、そうするのだから理解できなくはない。でもヤスミンが警官に正直に話して守ってもらおうとしないのはなぜだろう。特に、復顔図の男が犯人だと嘘をついたのが理解できない。別人だと言えば、犯人がまだ生きていて彼女が危険にさらされていると警官たちも気づいたはずなのに。

そうすればヤスミンは保護されて犯人と対決する必要などなかった。「頭がおかしいと思われるのが怖かった」と一応説明されているけど理由として弱すぎる。

実際は、作家が最後の対決シーンでストーリーを盛り上げたくて、わざとヤスミンに合理的な行動をとらせなかっただけだろう。

非合理的なシーンは他にもある。ヤスミンが妊娠していて誰も知らなかったというのも不自然。入院時に必ず検査したはずだから。

ヤスミンが救出されるきっかけとなった事故の際にドライバーの血痕が見つからなかったのもあり得ない。ただの交通事故じゃない。普通なら調べるはずだし、調べれば第三者が出血した事はわかったはず。

残念ながら傑作、秀作と呼ぶには瑕疵が多すぎる。欲張らずシンプルなストーリーで中編作品としてまとめれば良かったのに。
汚れなき子 (小学館文庫 ハ 12-1)Amazon書評・レビュー:汚れなき子 (小学館文庫 ハ 12-1)より
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No.4:
(4pt)

(2021年―第85冊)『約束はするな。守られない約束で人は壊れるんです』(125頁)

14年前、ミュンヘン在住の女性レナ・ベックが行方不明となる。それから14年経ったある日、同じバイエルン州のカームの病院に、車にはねられた女性と幼い娘が搬送されてくる。娘は「ママの名はレナ」だという。警察を通じて連絡を受けたレナの父マティアスは病院に駆けつけるが、そこで待ち受けていたのは、衝撃的な事実だった……。
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 ドイツ人作家ロミー・ハウスマンのミステリー小説『Liebes Kind(愛しき子ども)』の邦訳文庫です。被害女性、幼い娘、レナの父の三者が入れ替わりながらそれぞれの目に映る事実を語っていきます。それは事実ではあっても真実とは限りません。各人が事実の背後にある真実を十分に把握しきれていないため、読者は薄い膜がかかった真実を見せられることになります。その膜がゆっくりと、じれったいほどの速度ではがされていきます。

 おそらくレナは何者かによって拉致監禁されたのであろうこと。幼い娘は犯人と被害女性との間に生まれた子どもであろうこと。この二つは物語の初期段階でかなりはっきりと予測できます。いわゆる拉致監禁ものは、ここ数年、手を変え品を変え紡がれ、欧米のミステリー界で一ジャンルを築いている感があります。
 ここ10年の作品を挙げると、シェヴィー・スティーヴンス『 扉は今も閉ざされて 』(2011/11/25 ハヤカワ・ミステリ文庫)、ピエール・ルメートル『 その女アレックス 』(2014/9/2 文春文庫)、リサ・ガードナー『 棺の女 』(2016/11/8 小学館文庫)、シャノン・カーク『 メソッド15/33 』(2016/11/9 ハヤカワ文庫NV)、J・D バーカー『 悪の猿 』(2018/8/17 ハーパーコリンズ・ ジャパン)と枚挙にいとまがありません。映画化作品も含めると『 特捜部Q ~檻の中の女~ 』(2013)や『 ルーム 』(2015)などのヒット作もあります。
 そのどれもが、女性を長年月監禁するという異常犯罪なだけに、読んでいてげんなりすることこのうえない一方、歯を食いしばってその経験をsurviveしていく女性たちの凛とした美しさが垣間見られる魅力もまた否定できません。

 さて、この『汚れなき子』は、まずもって交通事故の被害女性が果たしてレナなのか、という冒頭部分で読者を幻惑させる展開が待ち受けています。レナならば彼女は14年間どこにいたのか。レナでなければ彼女は一体何者なのか。そして誘拐犯は誰だったのか。謎はなかなか明かされません。
 被害女性も幼子もマティアスも、事態の進展の遅さにいら立ちを隠せず、そこにまたメディアの好奇の目が降り注ぎます。閉塞状況から解放されたはずの三者ですが、新たな閉塞状況にとらわれていく様子が見事に描写されます。

 事件解決後のエピローグである人物のことばが綴られ、拉致監禁事件で囚われているのは、被害者ではなく加害者であるという視点の転換を示すそのことばに心揺さぶられました。

 訳者の長田紫乃氏は小説の翻訳は初めてとのことですが、とてもそんな風には感じられません。とても読みやすい和文のおかげで500頁を超えるこの小説を難なく読み通すことができました。

 最後に些末なことですが個人的に興味をひかれたドイツの事柄をいくつか記します。「ザルツシュタンゲ」という食べ物がさりげなく出てきますが、ドイツで私も何度か口にしたことのあるあの塩パンのことをSalzstangeということを初めて知りました。
 この小説でも「現実では、テレビの《CSI》とか《事件現場》みたいに、一時間以内に画期的な成果が得られたりしない」(198頁)と警察関係者が言う場面が出てきます。以前読んだ別のドイツミステリーでネレ・ノイハウスの『 森の中に埋めた 』(創元推理文庫)にもテレビドラマ『CSI』に不満を述べる警察関係者がいました。ドイツ社会に与えたドラマの影響力の強さがうかがい知れます。
 ドイツの引っ越し祝いに「パンと塩」を贈る習慣も興味深い話です。
 私にとって外国の小説を読むことの面白さはこんなところにもあるのです。

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*7頁:「ハイドハウゼン在住の女子大生」という表現がありますが、Haidhausenは「ハイトハウゼン」とカタカナ表記するのがドイツ語原音に近いといえます。『地球の歩き方』やExpediaなどでも「ハイトハウゼン」と紹介されている観光地です。

*161頁:「スザンネ」という女性名が出てきますが、ドイツでは「ズザンネ」/zuzánə/となるはずです。(『プログレッシブ 独和辞典』より)
 ドイツの女性大富豪として知られるSusanne Klatten氏も「ズザンネ・クラッテン」とカタカナ表記されるのが通例です。

*184頁:「精神病院」という表記が出てきますが、現在では「精神科病院」とするのが適当とされています。今から15年前の2006年に、「精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律」が成立し、「精神病院という用語には、精神病者を収容する施設というイメージが残っており、そのことが、精神科医療機関に対する国民の正しい理解の深化や患者の自発的な受診の妨げとなっている」ため、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等における「精神病院」という用語を「精神科病院」という用語に改めること」になりました。(参議院法制局HPより引用)
 これにより、日本の主要日刊紙では「精神科病院」と表記しています。
 ただし、面白いことに、今年(2021年)、亜紀書房から『 なりすまし 正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験 』という本が出ていますが、これを紹介する産経新聞の書評記事(2021/6/27付)が一貫して「精神科病院」という表現を使って、書名にある「精神病院」を黙殺していました。つまり出版業界ではまだまだ「精神病院」が生き残っているけれども、新聞報道では死語と化しているということですね。

*224頁:「ナフキンを掴み」とありますが、「ナプキンを掴み」の誤りでしょう。

*293頁:「サラ」という女性の名前が出てきますが、ドイツ語のSaraは「ザラ」と発音します。綴りが少し違いますが、2021年の東京五輪に出場するドイツ人体操選手「Sarah Voss」は日本の日刊紙では「ザラ・フォス」とカタカナ表記されています。(「サラ・ヴォス」ではなく「ザラ・フォス」です。)
 310頁に「イザール川」というのが出てきますが、Isarを正しく「イザール」と表記しているだけに、なぜSaraの発音が誤記されたのか不思議です。

*420頁:「ソニア」という人物の名が挙げられていますが、Sonjaは「ゾーニャ」とするのがドイツ語原音に近いといえます。

*498頁:「大学の成績表を偽装した」とありますが、「偽装する」とは「ある事実をおおい隠すために、他の物事・状況をよそおうこと」(デジタル大辞泉(小学館))です。ここは「大学の成績表を偽造した」とするべきでしょう。

*521頁:「墓に持って入って」とありますが、その直後に「持っていってくれた」とあります。「入って」は「いって」の誤変換でしょう。

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No.3:
(5pt)

汚れなき子

最後まで筋書きが見えず、しかも退屈する場所が無かった。最高です。
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4094068058
No.2:
(5pt)

巧みなストーリーテラー

冒頭から、起こっていることが短い章毎に3人の人物の視点で、極めて主観的に語られる。その語りがなんだか異様なのだ。どういうこと?と思う。しかし読み進めていくうちに、彼らが、極限状況を脱出した女、生まれてから外界というものを見たことが無い子供、娘を誘拐され絶望の人生を歩んでいる男だという事がわかってくる。最初のうち、物語の繋がりを見つけるためのピース集めだったのが、50ページを過ぎる頃からストーリーが掴めてくると一気に面白くなり、展開が気になって止まらなくなった。現在と14年前の事件が、回想や突然のフラッシュバッグで段落を変えることもなくあっという間に行き来するので斜め読みもできない。一文は短く、ほとんど現在形で語られるので、臨場感、スピード感が半端ない。作者は映像関係の仕事をしていた人だからか、リアルに情景が浮かんでくる。小屋からの脱出辺り、自分が追い掛けられているような気にさえなる。
ストーリー展開は巧み。私は大体犯人の予想はつく方なのに、今回は外れた。
またレナとはどんな女性だったのか、本編では父や娘、関わった人たち、第三者の口から語られる情報のみだ。私もそこからボンヤリその人物像を描いていたのだが、エピローグにきて初めて本人の語りがあり、それによってその人物像は自分がそれまで描いていたものより、より水晶のように透明で硬く希望のあるものになった。こういうところ上手いストーリーテリングだと思う。また、父性というものを考えさせられる作品でもあった。娘を誘拐した犯人を見つけ出そうと奮闘する父親の執念の描写がいい。
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No.1:
(4pt)

母の愛、子供たちの未来を信じる強さ

ページをめくる手が止められず、一気に読みました。一番印象的だったのはやはりレナの母としての愛でした。母の強さ、子どもたちの未来を信じる力、そうしたものを強く感じさせる終わり方だったなと思います。これは自分が母親だからこそ感じたのかもしれませんが。2015年の映画「Room」にも通じるものがありました。
なお、拉致監禁事件の被害者が美しくて真面目で学業態度の良い女性であれば「可哀そう」「助けてあげたい」と思われる、一方で学業態度が悪かった、男遊びをしていたといった噂・情報が出てくると一気に「自業自得」という評価になるんですよね。被害者には落ち度が許されない、100%の善人・正しい行動をとり続けていた無辜の人間でなければバッシングされなければならないのだろうか。人間は弱いしずるい。どんな人間にも間違えることはあるし道を踏み外すことはあるし、それでも生命や身体の安全は絶対に守られなければならないのに…と思います。
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4094068058

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